2008年07月10日

清水翔太「HOME」

HOME
HOME
posted with amazlet at 08.07.10
清水翔太 BOY-KEN
ソニー・ミュージックレコーズ (2008-02-20)
売り上げランキング: 16051


<時代の流れが呼んだ?最新のサウンド形態>

 鳴り物入りで登場した、大阪出身の男性シンガーソングライターのデビュー曲。ゴスペルを学んでいたそうですが、こちらはR&BとHIPHOPが混ざったかのような、ソウルフルな歌い回しとすらすらと紡がれる語りかけの両方を味わえる内容になっています。

 これまででは、ケツメイシあたりの哀愁を感じさせるトラックでメロディアスなサビを持ったスタイルがもっとも近いでしょうか。そうしたポップスとHIPHOPのいいとこ取りみたいなサウンドが定着してきた頃に、R&Bのテイストを盛り込んだ本格派ボーカリストが参入してくる…というような構図でしょうか。
 耳に馴染みやすいコード進行でループするバッキング。その上に乗るのは、音階を持ち、内容が聞き取れ理解できる程度の速さのラップ。そして、抜けのいい高音とナチュラルなフェイクが巧みに展開するサビ。…こうした要素を盛り込んだ楽曲が当たる、という計算まで含めて、かなり隙のない出来に仕上がっています。

 この「HOME」のサウンドは、間違いなく、ここ最近のJ-POPの隆盛の趨勢を踏まえた上で作られたものでしょう。まるでこの曲が登場しヒットするのは必然だったと思えるくらい、流れに乗った新しさだなあと感じます。

 歌詞も、そういう意味では流れに乗っているのでしょうか。『格好つけて飛び出した/別れ惜しむ人達裏切った結果になった』『自分の弱さがそのとき理解った/でも夢叶った 少しそんな気になった』と、半生を振り返って得たものをリスペクトする…ET-KING「ギフト」でも書きましたが、こうしたリスペクトソングは近年多いです。しかも、支持を集めやすく出世作になっているケースが多いですし。そんなわけで、選んでいるテーマも、デビュー作としてふさわしいなと。
 言葉はかなりシンプルながら、とても力を入れている感があります。これまでの人生の集大成とばかりにすごくいろいろ盛り込んであって、その気迫はひしひしと伝わってきます。これはこれでいいんですが、今後こうしたシンプルなメッセージソングを作る際の手駒がなくなってしまわないか心配。シンガーソングライターとのことなので、もっと表現の幅があるものだと期待したいところです。


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2008年07月07日

メルマガ、Vol.149発行。

メールマガジン≪現代ポップス雑考。≫
Vol.149 2008/07/06 発行部数:めろんぱん 438/まぐまぐ 233

<雑考バトン>
トータス松本「涙をとどけて」
 〜バンドよりも「等身大」の曲世界

<新着レビュー>
秦基博「虹が消えた日」
〜夢を見られなくなっても、夢をかなえるために


 来週は、いよいよ配信150回というタイミングなのですが、一回お休みします。よろしくどうぞです。


 ※メルマガについての詳しい説明は、こちらへどうぞ。
  バックナンバーも開放しています。
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2008年07月06日

チャットモンチー「ヒラヒラヒラク秘密ノ扉」

ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
チャットモンチー
キューンレコード (2008-02-27)
売り上げランキング: 7560


<言葉の響きを生かした詞構成>

 7thシングルにして、相変わらず初期衝動が衰えていないと感じるパワーが溢れているチャットモンチー。メンバー3人が3人とも感性豊かな歌詞を書く点でも注目していますが、今回はドラム高橋久美子のもの。

 彼女は、自分の評価だと、メンバーの中でもっとも職人的に詞を書く人です。今回も、なかなか技巧的に構成を考えているところが散見できます。
 たとえば、真夜中、悶々とする感情を持て余している様子がメロで描かれています。で、『深夜二時』『深夜四時』と時間が進行していくことで焦燥感を出しているわけですが、さらには衝動が爆発するサビで「陽」つまり夜明けを志向する、というところまで表現が繋がっています。
 また、語感にもこだわりがうかがえます。「ヒラヒラヒラク」という響きのよい言葉をベースに、『サクサク』『ビリビリ』など擬音をサビのあちこちに散りばめてみたりしています。メロの『目 爛々と』『血 凛々と』なんてのも、相乗効果を狙っているんでしょうし、『生まれたての陽』などと「陽」という語を多用してきているのも、この「ヒラヒラ」と音の響きを合わせているのでしょう。

 ちなみに、出世作である「シャングリラ」もそうでしたが、一人称が「僕」になるのも、この3人の中では彼女だけです。『いま拳突き上げて』なんて、男らしい表現も混じっていますね。
 こんな点からも、歌詞世界をきちんと構築して作っている印象を受けます。

 ちなみに、あとの2人の書く詞は、どちらも感情優先だったりします。続きを読む
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2008年07月04日

今週の出張音楽コラム:7/3

 ニュース系メルマガ大手「忙しいあなたの代わりに新聞読みます」にて、毎週木曜日、音楽コラムを連載中しています。
 今週は、こんな内容を書いています・・・



デビュー以来、本格的なロックサウンドとみずみずしいセンスで
女性バンドの新しい歴史を切り開いたチャットモンチー。
そのニューシングル「風吹けば恋」は、これまた非常に勢いのある一曲に
仕上がっています。

彼女たちのこれまでの楽曲は、形は違えど多かれ少なかれ
<フラストレーション>を源泉にしているところがありました・・・



この続きは、本日発行されたメルマガにて掲載中。興味のある方は、どうぞ読んでみてください。
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2008年07月02日

ジェロ「海雪」

海雪
海雪
posted with amazlet at 08.07.01
ジェロ 宇崎竜童
ビクターエンタテインメント (2008-02-20)
売り上げランキング: 171


<プロフィールだけではない「印象付け」>

 HIPHOPど真ん中、といったいでたちの黒人が、なんと演歌歌手デビュー!?と、世間の話題をかっさらった新人のデビュー曲です。

 作詞に秋元康。そしてビートはHIPHOP。しかし、曲全体としては確かに「泣き」の要素が詰まった演歌です。メロディラインやギター、そしてリズムが入るあたりはどちらかというと歌謡曲に近いような気もしますが、でも、歌いまわしにきちんと演歌らしい「こぶし」が入っているので、個人的にははっきり演歌認定です。

 その他にも、細かく考えられて作られているなあという点がちらほら。
 イントロからの歌い出し『凍える空から』の「こご えるぅ〜」というあえて音を切った流れとか、伸ばしの多いBメロから急に『あなた 追って 出雲崎』と言葉が短く速くなったりと、メロディラインは聴き手の耳を適度に刺激し印象付けるように
 緩急がついています。
 また歌詞は、一人称「私」の女性視点で、『ねえ いっそ この私/殺してください』とやはりショッキングなフレーズが差し挟まれているもの。ここにも、より「話題性」を強めようとする作り手側(作詞・秋元康、作曲・宇崎竜童)の意図を感じます。

 秋元康が関わっているから、てっきりそうした話題性優先のプロジェクトなのかと思っていましたが、もともと本人が演歌歌手志望で自らデビューするためにあちこちで活動を行っていたそうで。
 演歌という日本独自文化の閉ざされた業界にひとり乗り込んでいるのに、巷ではかなり好感度が高いようなのは、そうした経歴や、本人は流暢に日本語をしゃべり、誠実な性格をしているのもきっと影響しているのでしょう。続きを読む
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2008年06月30日

宇多田ヒカル「HEART STATION」

HEART STATION / Stay Gold
HEART STATION / Stay Gold
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宇多田ヒカル
EMI MUSIC JAPAN(TO)(M) (2008-02-20)
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<胸のうちの想いを、インタラクティブに伝え合う>

 宇多田ヒカルの楽曲は不思議なところがあって、そこまで派手なメロディラインやアレンジや言葉でなくても、すっと入ってきて耳に残りやすかったりします。これが「声の良さ」ということなのか、何かはっきりした技巧があるのか、それとも気のせいなのか…ずっと不思議に思っています。
 今作も、『私の声が聞こえてますか?』のあたりなど、他の人が歌ったら違和感がありそうなラインをすっと歌いこなしているのを聴いて、やっぱり悩んだり。

 で、この歌のテーマは「伝わる/伝える」ということ。
 言葉にしていない/できない気持ちを、届いているのかどうかと投げかける。伝わっていってほしい、その想いを発信する人々それぞれが「Heart Station」=心の放送局を抱えているんだ、というようなところでしょうか。
 そんな観点を盛り込みつつ、フォーカスしているのは深夜に邂逅している『ワケありげな二人』のこと。歌詞を読んでいくと、どうやら別れ際のようです。お互いの行き違い、口に出そうとしてもきちんと伝えられない感情…そんな中でなんとかして胸のうちの複雑に絡まった感情を「伝えたい」、そんな切々とした想いが綴られているように思います。

 すごいのは、そんな風にひとつのドラマを浮かび上がらせつつ、この「伝わる/伝える」というテーマを一般的な内容まで広げてもいること。
 まず、忘れようとするほど『どうして/いい思い出たちばかりが残るの?』なんてぐさっとくるフレーズで「ワケありげな二人」の物語も印象付けています。かつ「Heart Station」という単語を生み出し効果的に使うことで、どんな人でも心の声を発信しているんだ、ということを暗に主張しているのですね。
 『私の声が聞こえてますか?』から『今もぼくらをつないでる』と一人称がシフトして広がっている点なども、裏付けとして指摘できそう。


 で、さらにどうしても押さえておきたいポイントがひとつ。続きを読む
posted by はじ at 01:47| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月29日

メルマガ、Vol.148発行。

メールマガジン≪現代ポップス雑考。≫
Vol.148 2008/06/29 発行部数:めろんぱん 439/まぐまぐ 233

<雑考バトン>
秦基博「虹が消えた日」
 〜独自の味を出しつつ、聴きやすい仕上がりに

<新着レビュー>
NEWS「SUMMER TIME」
〜夏への期待感を煽るポップさ


 そろそろ発行150回に到達しそうです。が、記念して何かできるかどうかはなかなか微妙なところ。息切れしない範囲でできることはないかを、ちょろちょろと考えています。


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posted by はじ at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | メールマガジン。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月26日

今週の出張音楽コラム:6/26

 ニュース系メルマガ大手「忙しいあなたの代わりに新聞読みます」にて、毎週木曜日、音楽コラムを連載中しています。
 今週は、こんな内容を書いています・・・



2008年上半期のCDシングル売り上げランキングを、オリコンが発表しました。
http://www.oricon.co.jp/music/special/080620_01_01.html

ご覧のとおり、第1位の座を獲得したのは、かなりのロングヒットを記録した・・・



この続きは、本日発行されたメルマガにて掲載中。興味のある方は、どうぞ読んでみてください。
posted by はじ at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 今週のコラム紹介。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月24日

平井堅「キャンバス/君はス・テ・キ」

キャンバス
キャンバス
posted with amazlet at 08.06.24
平井堅
DefSTAR RECORDS (2008-02-20)
売り上げランキング: 5233


<切なさに終始しない爽やかさ/シリアスでは届かないユーモアでの癒し>

 平井堅、両A面シングルは、それぞれ切ないバラードとアゲアゲのアップテンポ。テンションや方向性がうまく対比されています。


 「キャンバス」は、卒業を思わせる別れの心情を描いたバラード。このシチュエーションだといくらでも切なさを煽れそうなところですが、そこに終始しているわけではないようです。
 曲自体、そこまで哀愁を募らせるように響くのではなく、暖かみと穏やかさを感じさせる和音や音色を使っていますし。

 『僕の顔は 上手に 上手に 笑えていたかな』なんてフレーズは「いかにも」伝えられない想いを盛り上げる要素だったりします。こうした内容で全編が構成されていたらきっと泣きバラードになっていたかと思いますが、そうじゃない。『決して変わらない 決して汚せない ぼくらだけのキャンバス』と、青春のひとときをしっかりと記憶に留めておこうとしています。
 「君」へ伝えられなかった想いは胸に残れど、そこに過剰に執着したり後悔したりしている様子はありません。寂しさや哀しさも『涙で塗ったキャンバス』として保存し、「いい思い出」としてずっと抱えていく。そんなふうに結論が出ている、気持ちの落とし込みができているわけです。だから、楽曲のセンチメンタルすぎない暖かみと合わさって、どこか爽やかな印象を与えてくれるのですね。続きを読む
posted by はじ at 02:49| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(は行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月22日

メルマガ、Vol.147発行。

メールマガジン≪現代ポップス雑考。≫
Vol.147 2008/06/22 発行部数:めろんぱん 440/まぐまぐ 233

<雑考バトン>
NEWS「SUMMER TIME」
 〜王道!爽やかサマーポップチューン

<新着レビュー>
谷村奈南 〜楽曲自体の「露出度」は高くない?


 ※メルマガについての詳しい説明は、
こちらへどうぞ。
  バックナンバーも開放しています。
posted by はじ at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | メールマガジン。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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