2008年07月28日

KCO「春の雪」

春の雪
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KCO
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<既存路線と分かれる方向性>

 globeのKEIKOによるソロプロジェクト。実は2003年にも一度ソロとしてシングルをリリースしていたりするのですが、今回はavexにての専用のレーベル「avex globe」からユニバーサルミュージックに単独で移籍しての活動となっています。なので、本格的にソロで動いていく、ということなのかもしれません。
 globeが長いこと不活発だったので、意識を入れ替える意味があったりもするのでしょうか…?

 楽曲は、globeとは意識的に変えているなあという印象。トランス系の打ち込みダンスチューンが多かったglobeに対し、やはり小室哲哉らしくデジタルで彩られてはいるのですが、無機的ではなくふんわりとした柔らかさを感じるサウンドになっています。
 こういうとなんですが、往年の鈴木あみ(「亜美」ではない頃の)が歌っていそうな印象ですね。

 タイトルも「春の雪」となっているように、歌詞のほうも叙情性が入ってきているなあと。
 『降りつもる雪と共に咲く』『少しずつ桜色が舞う』といった情景描写。また、『「お願い夜明けよ…あと少し 静寂に瞬間譲って…」』というセリフ、『あなたのわたし…わたしのあなた…』という想いの吐露など、globeでは排除されていた生っぽさや質感、等身大の感情を重視していることが感じられます。

 歌い方も、一音一音をはっきりと発音するように意識しているっぽいです。声質がどうしてもglobeを想起させますが、それでもできるだけ方向性を分けよう、として作っているのかなあ、と諸所を分析すると感じます。
 今後は、こうした方向性で活動を続けていくのでしょうか…
posted by はじ at 01:43| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月13日

木村カエラ「Jasper」

Jasper
Jasper
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木村カエラ
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<マジメさを排除し、楽しさと「らしさ」を鮮やかに演出>

 堅苦しくない雰囲気で、どちらかというと今まではロック色を強めに出してきていた彼女の音楽活動ですが、こちらは電気グルーヴ・石野卓球提供の、どこかチープな打ち込み音が満載の、明るく楽しく不思議なテクノサウンドになっています。昨年の今頃は、BEAT CLUSADERS提供のポップでメロウな「snowdome」をリリースしていた彼女ですが、今年はまた大胆に新しい方向にチャレンジしてきましたね。
 ズンズンとした4つ打ちリズムとコンピュータっぽいベース音がインパクトありますが、自由なフレーズ感とか歌いっぷりとか彼女らしい部分は残っています。というか、新しいジャンルにもさくっと手を伸ばす奔放さこそが彼女らしい、と言えそうですが。

 タイトルの「Jasper」は、碧玉と言われたりする鉱石の一種。その種類はとても多様で、あれこれと色があったり模様があったりするようです。
 『Just like this 宙ブラリブランコ/Just like that 冷めたフラメンコ』など、軽く韻を踏みつつあれこれイメージを列挙していくスタイルは、そうした色とりどりの鮮やかさやカラフルさ、キラキラ感のようなものを表現しようとしているのかなあと。

 「Just like this」と、定型的にこれ好き!と繰り返しているのは、JITTERIN'JINN「プレゼント」を思い出しますね。
 ただ、こうして多彩なイメージを展開するような柔軟な作詞センスは、急に出てきたものではありません。「リルラ リルハ」ですでに片鱗が見えていましたし、「Samantha」カップリングの「Honey B〜みつばちダンス」なんて、子ども向けにみつばちをモチーフとして楽しげな歌に仕上げてみたりしていましたし、もともとかなり幅広く自由に言葉を使うことができる人なのです。

 ただ、曲調ももちろんのこと、今回は既発のシングルにはどこかに含まれていたメッセージ性がすっぽり抜けていまして、そこに違和感を感じた人もいるのではないでしょうか。マジメさはなく、ポップな世界作りに終始しているのですね。堅くならずに楽しんで聴ける!とプラスに取る人、今までのような強い意志が感じられなくて残念…とマイナスに取る人、分かれそうなところではあります。
 自分としても彼女の芯の強いメッセージ性は好きだったので、多少物足りないかなというところもあります。が、まあ、今後ずっとこういう方向性になるわけでもないとも思います。たまにはこういうのもアリでしょう。奔放な彼女のスタイルらしい、とも言えそうですし。続きを読む
posted by はじ at 08:54| Comment(1) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月28日

倖田來未「anytime」

anytime
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倖田來未
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<満遍なく立ち込めている「幸せ」オーラ>

 爽やかなアコースティックサウンドとキラキラした音に包まれた、穏やかなラブソング。ゴリゴリのダンスチューンというイメージを持っている人にとっては、かなり異色作に感じるかもしれません。
 しかし倖田來未は、本質的にはこうした楽曲に通ずる部分のほうが多いように感じます、歌詞作りにおいては。このあたりは過去作品で何度も言及していますので、そちらを参考に。『あなたの左に私 腕を組んで/頬を染めて 歩いていく』みたいな、甘い夢想が得意なのです。

 さて、この歌の面白いところは、まさにその幸せそうな歌詞にあります。
 『愛する気持ちの大切さ/教えてくれたの』なんていうフレーズは、どこにでもある幸せな気持ちをのぞかせるものです。ただ、この幸せさが、大きなポイント。曲中で描かれている感情はすべて「幸せ」一色で、そこに疑いの余地はまったくといっていいほどないような雰囲気です。
 ただ、『あなたの毎日がほしい』『あなたと過ごす日々/勝手に思い浮かべてみているよ』などから察するに、二人はまだ幸せなシチュエーションになりきってはいなくて、まだ一緒にいる時間を増やす余地があるようです。

 考えられる可能性は、以下のふたつ。
 『高鳴った 鼓動隠して』…から判断するに、まだ気持ちを打ち明けていない片想いの段階。それでもすでに切なさとか不安ではなく幸せ感に浸っているあたり、絶対にうまく行く!という前向きさとか自信があるように感じられる。
 『いつもみたいに 優しくしてね/私だけに』…から判断するに、すでに両想いで、だけど今以上に一緒にいたい…つまり、結婚したい!みたいなことか。それなら、幸せな感情に包まれている中に『あなたの毎日がほしい』というフレーズが混じるのも納得できそうです。

 個人的にはなんとなく前者かなーという気はしますが、まあお好きな解釈で楽しめばいいと思います。
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2008年03月04日

Cocco「ジュゴンの見える丘」

ジュゴンの見える丘
ジュゴンの見える丘
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Cocco こっこ 西條八十
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<変化の中で生まれた、上辺だけではない「強さ」>

 SINGER SONGER「初花凛々」以降、音楽活動を再開したCoccoは、以前のような焼け付くような鋭さはなく、緩やかで広がりのある作風になってきています。
 その中で、シングルでも「陽の照りながら雨の降る」などに見られるように、故郷・沖縄の手法や雰囲気を楽曲に織り込んでくるようになってもいます。発声の仕方も、沖縄民謡のような伸びやかなものに変わってきている気もしますし。自然体、という言葉が似合うような作風に変化してきているなあと。

 で、この「ジュゴンの見える丘」も、沖縄音階を奏でる三線の音色に始まり、沖縄民謡独特の掛け声を思わせるコーラスで終わっていきます。メロディラインもまた、どこか土着の雰囲気を持ったものですね。
 曲調だけでなく、テーマもまた、地元に根ざした内容です。沖縄の海に現れたジュゴン、しかし米軍基地建設が進むと彼らはその場を追われることになってしまう…そんなニュースを知り、ジュゴンたちのことを思って作ったという経緯があるのだそうでして。
 『泣きたかろうに』と気遣い、『もういいよ/少し おやすみ』と呼びかける。そうした態度は、活動休止前の彼女からは考えられないものです。ひたすら内側に溜め込んだ想いをふつふつと煮えたぎらせていたのが、自分以外の他者へ優しさを投げるようになったわけで。感情の発露の仕方が、180度と言っていいくらい変わってきているのです。
 それが物足りない、と感じる人がいるのはまあ当然と言えば当然なのですが、個人的には歌い手の変化って成長や広がりを感じることができて好きだったりします。Coccoにおいても、それは同じ。

 『悲しみは いらない/やさしい歌だけでいい』なんてフレーズがあります。理想的ですが、まあそうは言っても、哀しみをすべて排除してやさしさだけを得ようとするのって、限りなく不可能に近いわけです。
 では、叶いもしない理想を歌うのは、無意味で思慮が足りないことなのでしょうか?自分はそうは思いません。むしろ、「たとえそれが困難でも」などと付け足したりもせずに、臆することなく理想を歌い上げるのは、よほどの強さがないとできないことだと思うのです。
 『継いで接いで連ね/恥さらせ』というフレーズもありますが、こちらも同様。恥をかかないようにすることよりも、恥を堂々とさらそうとできるほうが、ずっと精神的な大きさを思わせるスタンスだなあと。継いだり接いだり、何度もやりなおし加え繕っていく、そして見栄えが悪くなってもいいんだ!という価値観が、この詞の強度を確固たるものにしているように思うのです。別のものを繋いでいってもいい!というのは、本人の方向転換を包括している
ようにも聴こえますしね…

 『あなたに降り注ぐ全てが/正しい やさしいになれ』
 こんな言葉は、暗く痛々しい言葉ばかりを綴っていた彼女だからこそ、強さ暖かさを感じさせるのでしょう。単に楽曲の力だけではなく、歌うCocco自身の遍歴もまた、楽曲をドラマティックに聴かせるスパイスになっています。
posted by はじ at 02:56| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月13日

倖田來未「LAST ANGEL feat.東方神起」

LAST ANGEL feat.東方神起
LAST ANGEL feat.東方神起
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倖田來未 東方神起 Negin Lira Gustafsson Kumi Koda Tomokazu“T.O.M”Matsuzawa H.U.B.
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<イメージを生かした強い語調のメッセージ>

 映画「バイオハザードIII」日本公開版イメージ・ソング。ということで、なのかはわかりませんが、韓国の歌手グループ東方神起が参加しています。
 ちょっと前にはK×ET-KING「この歌を・・・・・・・・♪」なんてコラボも出ていて、隆盛がひととおり落ち着いてきた感のある韓流勢をテコ入れしていくムードが合ったのかな?とも思いますが、とりあえず楽曲を見ていきましょう。

 デジタルで硬質なダンスチューンは、ズンズンと静かに迫ってくるような圧迫感。その中で、『失った理想 取り戻せるはず』『迷宮入りのStory 解いて見せるから』というような前に進む意志が提示されます。それは、『一緒なら越えて もっと向こうへ』と、パートナーの存在によってより強固なものになっている、という見せ方です。
 恋愛的な要素を残しつつも、主となっているのは明確に「進んでいく」姿勢をはっきりとアピールするメッセージです。まあ今作では「立ち向かう」っぽい雰囲気ですが。正直、この流れだと『この愛を』なんて要らないんじゃないかなーとは思うんですが、恋愛要素もあったほうがリスナーを多く獲得できるんでしょうね、やっぱり。そういうテーマのごった煮加減は、良くも悪くもJ-POPの特徴です。

 さて、詞世界の展開としては王道の作りなのですけれど、注目したいのはまず使う言葉の強さ。『当たり前の日常 繰り返すこと飽きた』など、全体的に素っ気ない口調で歌詞が綴られています。短めのフレーズが連続するメロディラインが制約になっている部分もあるんでしょうけれど、『ココにはもう要らない 消えて』なんてくると、ドキッとしますね。
 これはやっぱり、倖田來未の挑発的・攻撃的なイメージがあるからこその生きてくるものでしょうね。

 もうひとつは、英語の多用です。サビなんて『今すぐにCome on tonight/今なら間に合うかもBreak out alright』と、区切りごとに英語フレーズを差し挟んでいます。
 この手の書き方って「いかにもJ-POP」という印象を持つ方は多いでしょうけれど、でも90年代に比べると00年代は圧倒的に少なくなった手法だったりします。歌詞は日本語で書くべき、みたいな風潮が広がっていましたし、倖田來未より前に女性ボーカリストとしてカリスマ的地位を獲得した浜崎あゆみも、英語はタイトルのみという書き方をずっと貫いていたりします。
 英語はやっぱり日本語に比べると音へのはまり具合がよく、特にこうしたダンスチューンだとそれが顕著になってきます。自分も昔は言語の織り交ぜは嫌いでしたが、今は聴き手の耳に印象づかせるためのテクニックとしてアリだなあと思っています。
 流行には波があるものですし、日本語英語織り交ぜ方のスタイルも、そろそろ再び広がっていくのかもしれませんね。

 それにしても東方神起の影が薄いです。きっとダンスでは見事なコラボレーションをしているんでしょうけれど…歌詞も掛け合いになっていたりするわけではないですし。先のK×ET-KINGとは違い、「×」ではなく「feat.」なのもむべなるかな、という感じ。
posted by はじ at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月26日

木村カエラ「Yellow」

Yellow
Yellow
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木村カエラ 渡邊忍 會田茂一 Jez Ashurst Michael Hopkins Michelle Margherita Andrew Campbell
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<疾走の源には、強気な主張だけではなく焦りも>

 疾走感溢れるサウンドに引き込まれる、木村カエラ10枚目のシングル。10作目にしてはまだまだ初期衝動っぽい新鮮さを残しつつ、すっかり安定した風格も身につけてきているような。
 「You」なんかの時も感じましたが、ゴテゴテせず硬い音だけで構成していくソリッドでロックな雰囲気なのに、聴きやすいポップさもちゃんとあるんですよね。だから、耳に残りやすい、優秀な一曲だなあと。

 彼女の書く詞は、毎度我が道を行っていて清々しいです。言いたいことは「あるがままに生きる」というシンプルなテーマではあるものの、借りてきた言葉感がないので、突き抜けて響いてくるわけです。
 『とけてしまえよ 名誉』なんて独創性ある主張をしつつ、その後で『身を 滅ぼせばいいよ/強くないのよ』と、安全策をとらない無謀さ、かつ弱さを並べて言い切ってしまうのとか、なかなか真似できないところ。とっ散らかってて、優等生ぽくまとまっていないんですが、そこが魅力ですよね。
 ちなみに、「〜よ」で韻を踏んでいます。せり上がってくるようなメロディラインとともに『燃え上がれよ 目よ/見よ 高鳴る胸を/笑えないのよ』と畳み掛けてくるのがリズミカル。こういう軽さで韻を踏める女性ボーカルって、あとは宇多田ヒカルくらいしか知りません。選ぶ言葉のナチュラルさにしても、奥田民生に通ずる自然体っぽさも感じます。

 さて、タイトルの『いつだって Yellow』についてですが、これがちょっと難解でよくわかりません。黄色人種を指しているのかなーという推測はすぐ思いつくのですが、にしては日本とか生まれてからのこととかそういう要素が歌詞中にないので、ちょっと結び付けにくい。赤とかだったら情熱とかパワーとかそういうイメージになりそうですが、黄色だとなかなか。
 で思ったのが、「黄信号」。焦燥感というか、急ごうとはやる気持ちを象徴しているんじゃないかな、という。歌詞を読んでいると、自信たっぷりっぽい言動もあるものの、ネガティブな思考もぽつぽつあることに気がつきます。上に挙げたように急に「強くないのよ」とか出てくるし、『これみよがしに振り回したって/見透かされてんぞ』というような自覚もある。そういう考えをすべて吹っ切るかのように、前へ進む意志を貫こうとしている…そんな風に感じたので、黄信号をダッシュで渡りきってしまおうとするような感覚に近いのかなーと。
 本当かどうかはともかく、自分としてはしっくりきた思いつきでした。ラスト、さらにスピードが上がっていくクライマックスが実に爽快なんですけど、これも「焦燥」を煽っているかのようでもありますしね。
posted by はじ at 03:14| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月14日

倖田來未「愛のうた」

愛のうた
愛のうた
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倖田來未 Miki Watanabe Tomoji Sogawa Kumi Koda Kosuke Morimoto
rhythm zone (2007/09/12)
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<一心に相手へと注ぐ愛情はいびつに膨らみ、切なさを醸し出す>

 このところずっと両A面シングルや4曲入りマキシシングルなどが続いていた倖田來未、今回は久々にリード曲1つのシングルです。昨年の「恋のつぼみ」以来で、なんと間に5つも挟んでいます。
 そもそも1年半もしないスパンで7シングル出していることになりますし、しかも大部分がリード曲扱いになっているということで、これ以上ないくらい明らかに「量」を重視する方針が見えます。「恋のつぼみ」の前は12作連続リリースでしたしね。

 そんな生き急ぐかのような活動を続けている彼女ですが、世間では「エロかっこいい」というイメージが根付いている割に、実はかなり少女漫画的、感情が渦巻くウェットな詞を書く傾向にあります…これはレビューのたびに言っていますが。
 今回はしっとりバラードで、まさに恋に溺れる主人公の姿が浮かび上がってくる内容です。『もし私 ひとつだけ 願いが叶うとしたら/夢の中でもいいからと 逢いたいと願う』と、実に一途です。

 しかしこの曲、単なるバラードではありません。真摯で一途な想いは、相手も同じなのかというと決してそうではないことが、読んでいくとわかってきます。
 『もし君が この恋を永遠と呼べなくても/今だけは 嘘をついて 淡い言葉で信じさせてみて』…「私」は「君」のことをひたすらに想っているわけです。たとえ、「君」のほうがそうでなかったとしても。『あいまいな関係でもいい』『本当のことは言わないで』と、「君」は薄々その温度差に気がついていながらも、それでも自分の気持ちを止められない、諦められない…そんな何ともいえない悶々とした感情がここには込められているようです。

 嘘でもいいから、「恋」に浸っていたい。そんな内容なのに、タイトルは『愛のうた』というのは、どんな皮肉なのでしょうか。
 いや、もしかしたら皮肉のつもりではなく、ひたすらに想いぬく一途な愛を描こうとしたのかもしれません。自らの湧き出る感情に殉ずることが「愛」なんだ、と声高に主張したかったのかもしれません。もしそうなら、その主張自体には異論があるところですが、しかし結果的に描き出された世界は好きだったり。
 ちょっと聴くとありきたりのバラード風アレンジで、サビ部分の歌詞もオーソドックスな愛のささやきに聴こえてしまいそうなこの曲。ですが、だからこそ『さよならは 言わないでいて』と懇願する、いびつに膨らんだ愛情が何ともいえない切なさを感じさせます。
posted by はじ at 03:43| Comment(2) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月19日

木村カエラ「Samantha」

Samantha
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會田茂一 根岸孝旨 木村カエラ
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<憧れに掲げた人物が、自己嫌悪の暗さを払拭する>

 BEAT CRUSADERS提供だった前作「Snowdome」はぐっとメロウでとっつきやすい一曲でしたが、ここでまたロック感溢れるナンバーをリリース。
 余計な音のないバンドサウンド、ぐっと密度が高まる変拍子の混ざり込み部分、ハイトーンに飛ばず低い重心の低いサビ。これだけ並ぶと実にとっつきにくそうな玄人志向の楽曲っぽいんですが、でも聴いてみると案外聴きやすかったりします。本人の声質もあるのでしょうし、「You」「TREE CLIMBERS」などを思い出すエッジの利いたガリガリした響きは、けっこう耳に心地よく響いてきます。

 『あーこんな自分は/あーダメダメなんだ』と、自己嫌悪に陥っているわけではあるものの、「あー」とかコミカルな表現をしているため、あんまり暗さは感じません。ひらがなも意図的に多かったりしますし、深刻さよりは穏やかさを感じます。
 それは、『どんな時も たのしむため』という考え方に拠るものでしょう。さまざまに起こるマイナスの要因も、「たのしむ」こと。こうしたスタンスが、いつだって辛いんだ!と宣言しながら『毎日はきっとすばらしい』と言ってのけるような芯の強さに繋がってきています。

 「あーサマンサのような/大きな人になりたいな」と持ち出されるこのサマンサとは、海外の有名ドラマ「奥様は魔女」の主人公からだとか。どういうところが憧れなのか?については、『私よりも大切な人を/いちずに思い 守れる事』あたりでしょうか。「奥様は魔女」のサマンサは、夫のために魔法を使わない生活を選び、夫に寄り添おうとしたわけなので、確かに「いちず」ですよね。
 また、コメディドラマらしいサマンサや物語の明るい雰囲気も、織り込まれているように感じます。それが、『あーこんな自分は/さよならで バイバイ』というような、深刻すぎない自己嫌悪と身軽さに通じているのかなあと。これは、実に彼女自身に沿ったスタンスでもありますね。続きを読む
posted by はじ at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月27日

倖田來未「FREAKY」

FREAKY
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倖田來未 Kumi Koda Tommy Henriksen Jin Nakamura h-wonder
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<マイノリティに勇気を示すメッセージ>

 「4 hot wave」に続いての4曲入りシングル。そのすべてにタイアップがついているようです。
 ここから考えることは3つ。まず、12連続リリース以降の楽曲多数アピール路線を継続しているということ、倖田來未の人気は続いている(と、少なくとも製作側やタイアップオファーをする側は考えている)ということ、そしてこれだけ需要が集中するということは、この分野はなお彼女の独壇場であるということです。

 さて今回は4曲ともA面扱いではないようで、とりあえず1曲目「FREAKY」をここでは見ていくことにします。

 「FREAKY」という題は、「異形な」とか「麻薬の幻覚症状の状態」を指す単語。『太陽を見上げたいと泣いた』ということは、光の中に出られない何らかの理由があるのでしょうか。『暗闇に 心を/奪われた』とあることからも、この曲の視点は「陰に生きる何者か」からのものであるということが推測できます。
 曲調はかなりハードで、重々しいサウンドになっています。これは、闇に生きる(生きなくてはならない?)「FREAKY」な存在を表しているかのようでもあります。

 特別な存在として…といってもあんまり良くない意味のようですが、とにかく「普通ではない」ものとして提示されている主人公。日陰者、とまではいかずとも、そういった「世間からあまり好まれない」存在にスポットを当てているようです。
 『抜け出せない』という単語が2回も登場し、現状を変えてしまいたいけどできない、という感情も描かれていますが、これは「薬の中毒者」というタイトルに沿うものかもしれません。日陰の存在になったことは不本意で、逃れたがっているけどなかなかできない、そんなシチュエーションです。

 で、最終的には『自分の道は自分で開け』と自己を持って進んでいくことを目指し、『これがmy style』と自分の選択を肯定します。そうすれば『わかってくれるやつがいるはず』と同志にめぐり合うかも、という気持ちも見えます。
 なんというか、マイノリティとして虐げられている人々のための応援歌、みたいな色合いが感じられるなあと。たとえば『誰もが少しずつ違って 歩き出す』とかは、人々の多様性や我が道を行くオンリーワン志向を肯定しているように受け取れますしね。

 これ、ざっと読んだとき、何かダークヒーロー物の映画の主題歌なのかなー、とか思いました。バットマンとか、異形を持って闇に生き、悩みながらも己の正義や信念のために敵と戦う…みたいな。そんなスタンスで作られたのかなあと。
posted by はじ at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月30日

GAM「LU LU LU」

LU LULU
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<「離ればなれになる二人」の描き方>

 松浦亜弥・藤本美貴のユニット3枚目のシングル。
 今回は、「メロディーズ」で見られたような百合っぽさは薄れ、一般的な切ない系アイドルポップスといった雰囲気です。

 『I LOVE YOU FOREVER/でもサヨナラ』というフレーズがはっきりと明示しているように、「今も好きだけど別れる」という場面を描いています。
 この手のシチュエーションは、今更言うまでもなく、J-POPの世界では「切なさ」を容易に醸し出すことができるため、とにかく死ぬほど多いです。現実には、そんなキレイなパターンはそう多くないはずなんで、斜に構えて見るとあれこれツッコミどころがいっぱいあるものです。が、まあ現実ではなかなか味わえないからこそ歌で揺さぶられるという面があるので、あれこれあげつらうのは野暮というものですが。
 で、そんな「今も好きだけど別れる」という状況をすんなりイメージしやすいように、「遠く離ればなれになる」「死別(消える)」というような設定や書き方をすることが、歌詞の世界では多いのですね。

 今回の場合は、『嫌われちゃうほどに/あなたを/好きになってしまった』とあるように、「自分のほうが好きすぎてダメになってしまった」という形なのですね。
 これだと、相手の気持ちが冷めてしまったというkとになるので、「両想いだけど別れる」という悲恋の様式に当てはめることはできません。でも、相手から別れを切り出されても自分はまだ好き、という諦めきれない一途さを印象付けることになります。

 あと、すごく未練があるのに『今度はもっと良い恋を/絶対するのよ』とあったりしますが、これは『泣き尽くします』というフレーズが先にあるから生きてきますね。『何もなかったような顔で/ひとりで寝るわ』というのも、忘れようと懸命に頑張っている」という受け取り方を誘っています。
 好きだった気持ちはそのままに、きちんと次の幸せを探しに行く…そんな、過去も未来もポジティブに考えている歌は、これに限らず最近の主流です。これが今の時代の流れなのかなあと。
 現実的に考えると、昔好きだった人のことをずっと忘れないというのは、その次の恋人にとっては複雑に思われるパターンも多い気がします。それは、もしかすると元カレや元カノとも仲がいい人が増えている!みたいな話に繋がってくるのかも…ともちょっと妄想しますが、まあ歌で切り取っているところで盛り上げるには、やっぱり「ずっと忘れない」と言ったほうがずっと響くものですから。続きを読む
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2007年06月16日

倖田來未「BUT/愛証」

BUT/愛証
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<崩れた表現から漂う強さ/視点はテーマの内側ではなく外側に>

 倖田來未の両A面シングル攻勢が連続しています。
 12作連続リリース以降、「恋のつぼみ」だけは違うものの、その後は4曲入りマキシ「4 hot wave」が来て、そして「夢のうた/ふたりで…」「Cherry Girl/運命」に次ぐ3連続目の両A面。明らかに、量を主に置いた戦略をとっています。
 まあ、12連続の時点でこうならざるを得なかったというのはありそうですね。ただ漫然とシングルを出していたら、今頃はもっと人気が失速しているかもしれないという気もします。

 彼女の存在というのは、ある側面から見ると「自由と開放」の象徴になっているのですね。
 彼女は「エロかっこいい」という言葉で表現されていたわけですが、それは彼女が、女性が「エロ」を堂々とアピールできる時代の旗手、象徴としての地位を獲得したことの表れだと思うのです。あんまり詳しくないですが、たとえば見せブラとか見せパンとかローライズジーンズとか、そういった流れが近年の女性ファッション業界にあって。そんな時流にはじめてぴったり符合するキャラクターが彼女、倖田來未だったのかなあと考えたりするわけです。
 もちろん露出の多いファッションそのものはずっと前からあったわけですが、一般層にも浸透し、かつそれが単に性的なアピールという意味合いだけではなく、自己表現の一環として地位を確立したのは、まさに最近のことだと思うのですよ。そんな地盤があったから、倖田來未は絶大な支持を集め、エロだけどかっこいい/エロだからかっこいいという考え方が広まったのだろう、という。

 「エロかっこいい」だけでかなり文字使いましたが、それだけではなく、彼女の歌詞は非常に少女漫画的というか、根っこには純愛があったりするわけでして。それは違和感でもありますが、ファンにとってはセクシーでありながら一途、という二度おいしい魅力になるのですね。…と、このあたりは以前にも述べた主張です。

 要するに、彼女の存在は、既存の女性像の枠には属さずまったくもって自由であり、かつ魅力をいいとこ取りで持っているわけです。女性の性を開放しながら、女性の理想の「恋愛に生きる姿」を描き出す…という。
 なので、そんな彼女にとっては、リリースラッシュ/A面連発というのは実に理にかなった戦略なのですね。曲ごとに違う表情を出し、違うコンセプトを打ち出し、「縛られない」存在であることをもっと強くアピールしていくわけですから。

 ここまでが前段。長いなあ。
 こっからも長いので覚悟してください。


 そんな自由の象徴である彼女ですが、今回の2曲ではさらに、それぞれ「いっぷう変わった形の愛」を扱っているようです。「BUT」は同性愛をテーマに据え、「愛証」はドラマ版「愛の流刑地」の主題歌で、愛するがゆえに死を選ぼうとする狂おしい愛情についてをテーマに据えているとのこと。


 もろもろの事情で、まずは「愛証」のほうから。
 この詞、ひたすらに相手を求める言葉で埋め尽くされています。「深い愛」を全力で主張しているのですが、「あなた」側のアクションが、ほとんど描かれていないんですね。ほとんどすべてが、「私」の気持ちだったり願いだったり考えだったりなのです。
 描かれている「あなた」の行動は『寂しい夜には 必ず耳元から/吐息交じりの言葉』くらいで、これも「聞かせてほしい」という願望とも充分にとれる書き方。『もう止められない/愛は死なない』という言葉は、(少なくともこの「私」にとっては)まさにその通りだと感じさせられます。

 ほとんど展開もなく、徹底的に相手を求める言葉で満ちたこの散文は、表現のクオリティで言えばかなりアレな部類に入ると思います、正直。突っ込みどころは山ほどあります、『眠れないほど ギュッと抱きしめて』ってこれ眠ろうとしているシチュエーションじゃないでしょとか、『認めたいの あなたにはまってると』ってもっと言い方なかったのかとか、いくらなんでも2行連続して「あなたの愛」って言葉使うなよとか…

 ただねー、この過剰すぎる「愛」の詰め込みがあるからこそ、共感されたり支持されたりしているんだろうなあ、とも思うのですよ。子どもが「一億万」なんて言葉を使うとき、そんな単位はないんだけど、とにかく大きな数字を表したいってことはわかるじゃないですか。おんなじです。レトリックとしては破綻しているからこそ、描きたいものの大きさが感じられるというか。

 即物的な表現なのも、伝わりやすいという点では貴重なわけで。十代女性の間で増殖しているケータイ小説なんかも同じで、誰でもできそうな表現の拙さだからこそ、広く支持されているわけですよ。それを是とするか否かはまた別の話ですけれども。

 もろもろ書きましたが、その背景には、「倖田來未って、ヒットする前はもっとしっかりしたレトリックで詞を書いていなかったっけ…?」という個人的な思いがあってのことだったりして。
 ハイペースで曲を連発したためにすり減ってしまっているのかもしれませんが、意図的に崩している可能性もありうるのかなあ、と。続きを読む
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2007年05月29日

℃-ute「桜チラリ」

桜チラリ
桜チラリ
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℃-ute つんく 高橋諭一 山崎淳
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<低年齢アイドルユニットのコンセプト分け>

 いつの間にかハロプロ新ユニットが誕生していました。「キュート」という名前ですが、はじめの文字はCではなく℃です。

 なんでも、ハロー!プロジェクト・キッズという、ジャニーズで言うところのジュニアのような組織から、まずBerryz工房がデビューし、彼女らは本来はメンバーの入れ替え要員として待機していたようだったらしく。でも、今回で晴れて7人組でのデビューと相成ったとのこと。

 全員90年代生まれという低年齢グループで、またつんくのユニット濫発か!と憤慨する人もいるかもしれません。でも、決して無考えにユニットを組ませてデビューさせた、というわけではないと思うのですよね。

 ハロプロの女性アイドルたちは、男性ファンはもちろん、小中学生女子の憧れ的なポジションも今や獲得しています。彼女達の前身である「キッズ」のオーディションがテレビ番組連動で行われ、応募が集まったことがその証左になるでしょう。
 そうした傾向は、モー娘。のバラエティ進出からがありましたが、その後Berryz工房の登場で決定付けられました。彼女達は常に、少女が背伸びしたオトナの恋愛を求めるといった類のシングルをリリースし続けています。つまり、小中学生女子にとっては、少し前でオトナへの階段をリードしていってくれる先輩役のような位置づけで活動しているユニットなのだと考えられるわけです。

 で、この℃-ute。彼女達はこのシングルを聴く限りでは、Berryz工房とはまた少し違い、オトナ志向はそれほどないように感じます。
 ちょっと汁っ気を含んだ歌い方はやっぱり色気を(間違っていると思うけど…)出そうとしてのことだと感じますが、『だけどあなた 全部全部/受け止めてもくれた』と「あなた」に委ねているのとか見ると、積極的にリードしたいとかじゃなさそうです。前へ前へとどんどん進みたい、いろんなことを知りたい!じゃなくて、『私たちは いつまでも 手をつなぐ/かわいい恋をする』と、急がずに手を取り合っていこうという気持ちが見て取れたりもします。

 そういうわけで、現段階ではちゃんとコンセプト分けをしてやっていくのかな?と考えています。
 なんというかBerryz工房ともども賞味期限は20歳くらいまでのような気がしますが、こうした低年齢組のほうが今ハロプロでは勢いがあると思うので、まあ今後も注目していきたいなと。
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2007年05月17日

川嶋あい「My Love」

My Love
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川嶋あい 長澤孝志 enzo
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<デビュー時と変わらないままの、曲世界のピュアさとまっすぐさ>

 「あいのり」主題歌となった川嶋あいのアップテンポナンバー。
 すっかりソロでも定着しましたが、もともとはI WiSHという覆面ユニットだったということはみなさん覚えて…いますよね、さすがにまだ。そちらでのデビュー曲、大ヒットとなった「明日への扉」もまた「あいのり」の主題歌でした。なので、川嶋あい名義でははじめてですが、通算では2回目のタイアップということですね。

 とはいえ、「明日への扉」からそうは変わっていない感じです。『恋の魔法に今 かかっている はじめてだよ どうしようもない』と、まっすぐでピュアなラブストーリーを紡いで歌っています。「君」に出会って、はじめての感情に気がついた。『生まれ変わってもね』『ギュッと抱きしめて ねえ』…とにかくお約束のフレーズを、それでも何のためらいもなくストレートに歌い続けるというのは、これは凄いことです。
 あと、『窮屈な風 飲みかけのコーラ 読みかけの雑誌 作りかけの地図』といった単語を並べていく表現は、まさに「明日への扉」の『光る汗、Tシャツ、出会った恋』あたりを思い出すような。清々しいくらい、自分のスタイルを貫いているんじゃないでしょうか。

 で、『くじけそうな時は 私が守るから』という一文。女性側である「私」が「君」を守る、という図式が提示されています。いつでも、じゃなくて辛い時にという限定がつけられているので、普段、あるいは「私」が辛いときには「君」に守ってほしい、のかもしれません。
 何にせよ、初恋のピュアな感情をときめかせる女の子でも相手を「守る」と言うことにも、まったく違和感がなくなっているなあ、という。単純に女性が強くなった、と言ってしまうのも早計な気がしますが、でもやっぱりそうした傾向はあるんじゃないかなーとは思ってしまいます。10年前20年前のデータもきちんと調べないとフェアじゃないですけどね。
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2007年04月11日

木村カエラ「snowdome」

Snowdome
Snowdome
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木村カエラ Jez Ashurst
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<すっきりと切ない、思い出の風景>

 覆面バンド・BEAT CLUSADERS作曲という点でも話題となった、今や女性シンガーの中ですっかり独自の存在感を築いた木村カエラのシングル。

 なんというか、「素直な」メロディラインです。ちょうどいいテンポに乗って、変に複雑なことをしていなくて。だから、サビの伸ばしもとても伸びやかに響いてきますし、心地よい空気を生み出しています。
 で、それに合わせてなのかもしれませんが、歌詞もいつもよりも素直。二人の思い出の場所で雪景色を見て『私はあなたのその笑顔を忘れられないままでいる』と回想する。そこには、過剰な感情は込められていません。忘れられないと言いながらも、どこかさっぱり清々しい空気がここに漂っているような気がするのです。少なくとも、涙は流していない感じ。
 でも、それが何とも言えない情感を生み出しているわけで。個人的には、変にドラマティックに盛り上がるよりはこのくらいの淡さのほうが好みです。

 ただ、彼女の場合、モデル出身ではあるもののアイドル的な方向には進まず、自由奔放な音楽活動をしていて。枠にとらわれない歌を進んで歌ってみたり、なかなか他では聞けないような言葉をぽんと放り投げてきたりするという魅力がある人なので、そもそも失恋というモチーフが物足りないかなーという気持ちもあったりします。
 とはいえ、ずっとマニアックな方向に進み続けるのもそれはそれで偏るし、年に一回はポップな楽曲も歌うくらいのバランスがちょうどいいのかもしれません。これだけ素直な言葉を紡げるというのも、なかなかないですし。
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2007年03月26日

倉木麻衣「白い雪」

白い雪
白い雪
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倉木麻衣 池田大介 Yoko Blaqstone
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<暖かく穏やかな雰囲気と淋しい気持ちのギャップ>

 冬らしいしっとりバラード。楽曲はメジャー進行で、なんだか幸せそうな雰囲気がありますが、歌詞を読んでいくと『哀しみが抜けないの 今もずっと』と、一人「あなた」への想いを持て余している歌だったりします。

 コード進行を見ても、たとえばDreams Come True「LOVE LOVE LOVE」とかなり共通していたりするわけで。アレンジにしても、寂しさ切なさを煽っているようでもなく、むしろ暖かみさえ感じるくらい。
 ただ、そんな穏やかさの中で「あなた」への想いが語られるからこそ、その想いの大切さ、大事さが伝わってくるということもあるでしょう。また、曲調が変わり激しさを帯びるCメロ部分では『後 どの位 どの位 泣けばいいの?』と込み上げる激情を感じさせてきたりしていて、他が穏やかだからこそここがドラマティックに響くという点もあるでしょう。

 なのでそこの違和感は問題ないのですが、でも他にちょっと言葉が散らかりすぎているような部分も。
 『幸せにすると誓った』『覚えてる あの約束』とあるように、この二人には幸せな過去があったのでしょう。だから『まだ好きと誓う』のはいいんですが、そうすると『後 どの位 どの位 待てばいいの?』の待つという言葉が浮いてきてしまうような。せめて幸せな日々がもう一度やってくる時を待っているのか、哀しみが消える時を待っているのかは教えてほしかったかも。
 それと『白い雪』が一回だけ『白い勇気』になっているのもよくわかりません。その後に、もう一度「あなた」に会いに行く決心をした、みたいなフレーズが続くのであればわかるんですけど、そうじゃないですし。
 どうも最近の倉木麻衣の言葉は、今ひとつつかみにくいところが多いような…聴き手の想像に任せるため、あえてやっているのかもしれませんが、どうも「それっぽい言葉」というだけで考えているような気がしてなりません。
posted by はじ at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月19日

倖田來未「Cherry Girl/運命」

Cherry Girl/運命
Cherry Girl/運命
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倖田來未 Kumi Koda Andreao“Fanatic”Heard The Conglomerate Masaki Iehara
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<攻めも受けもこなす、「現代の女性」の旗手>

 倖田來未の形容としてすっかり認知された「エロかっこいい」という言葉。それは、当初は間違いなく男性に向けてのアピールがあってのことでした。そうでなければそれまでのR&B路線からは予想もつかない「キューティーハニー」のカバーなんて出しませんよね。
 ただ、この曲のヒットによって倖田來未の人気が上昇してきてからは、彼女の「エロさ」アピールは違った意味を持ち始めます。男性の欲望に忠実な繋がれたエロさではなく、不敵に煽り誘惑する、「オンナ」を武器に男を手玉に取る…そんな「かっこいい」女性像として、同性からの支持を急速に集めるようになっていったんだろうなあと。
 なので、「エロかっこいい」とは、男性のためにある言葉ではなく、女性のためにある言葉なのだと思っているわけです。

 なんでそんな話から入るかというと、両A面のうちハードなほう、「Cherry Girl」に、『そして男ってロデオを/うまく乗りこなさなきゃ』あるいは『今は女が強いんだから』というようなフレーズがあったからで。
 対等な関係を宣言し、そして強気に攻めていくアグレッシブなスタイルが、ずんずん迫りくるようなサウンドに乗って提示される。それはひとえに世の「強い女性」の象徴として、倖田來未本人のキャラクターに重なって、同性にとっての憧れに映るのだろうなあと。

 『周りの目を気にしていたら/ちいさい女で終わりだから』というのも、やはり同性に向けての訓示。『そんなこと…なんて女でもいいのよ』という意味深な言葉も、男性への誘惑のようではあるものの、『やりきればね』と続くことから、これも女性に対する投げかけだったりするわけで。
 扇情的でありながらも、決して男には媚びない、『使われないように』する。男女平等の精神が浸透してきている昨今、「性」を意識することを避けるフェミニズムとはまったく違う、「性」をあけすけにアピールする方向で、女性の精神的な解放の旗手になっているのが倖田來未という存在なのかもしれません。


 …と言いつつ、もう一曲「運命」のようなバラードになると、途端に古典的な「女性らしい想い」を歌い上げるのが彼女でして。
 『遠くにいても 支えたいと/心からそう願うから』と「支える」存在であることを希望したり、そもそも二人の出会いを「運命」として信じたかったり。「Cherry Girl」とはほぼ別人のようです。

 や、どっちがいいとか悪いとかっていう話をしたいわけではないですし、また、一貫性がないと非難したいわけでもないです。
 「エロかっこいい」という、強い女性のひとつのあり方として記号化された表現のもと人気を得た…という文脈でも倖田來未を語ることはできますが、彼女の歌詞ってどちらかというと、ナイーブな乙女っぽい部分、受け身な姿が多かったりするのです。で、それもまた彼女らしさであるわけで。このギャップが、さらに広く同性の共感を呼ぶのに一役買っているんじゃないかな、とは前にも書きました。
 ま、でもこの曲でも『君のこと包み込み/今すぐ抱きしめるから』『守るべきものを』など、相手よりも強くあろうとする姿が描かれていたりもします。ただこれ、主人公が少年という可能性もあるので、一概には言えません。
posted by はじ at 23:50| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月01日

熊木杏里「新しい私になって」

新しい私になって
新しい私になって
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熊木杏里 中島信也 吉俣良
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<忘れきれない気持ちも「さらっと」歌ってのけるフォーク感>

 資生堂のCMで流れ、一時期話題になったシンガーソングライター熊木杏里の楽曲。『ほんじつ私は ふられました/わかっていました 無理めだと』というイントロ無しの歌いだしは、柔らかな声で響くわりにはインパクト大ですね。
 楽曲の緩やかさもそうですが、ですます調の歌詞もまた、フォークっぽさを醸しだしています。以前一度ぜひ聴いてみてほしいというリクエストがあって、アルバム「無から出た錆」をレビューした時にも感じましたが、ゆず以降のネオアコ路線ではなく、本当に「古き良き」フォークの香りがする歌い手です。

 ふられたことを受け止め、『泣いて泣いて 泣き明かしたら』生まれ変わって=立ち直っていこう、というシンプルな筋立て。ところどころに挟まれる、『あの時少しだけ/ほほえんでくれた ような気がしたから…』など、自信はなかったけど、それでも…というエピソードがいい味を出していて、告白までのいじらしい想いを感じさせるのが心憎い演出です。

 たぶん、「あんなに好きだったのに!」とか、髪を振り乱すようなべっとりとした後悔ではないところが、彼女の持ち味と相性がよかったんでしょうね。好きだったことも、気持ちが通じ合わなかった悲しみも、さらっと歌ってしまう感じ。
 この曲、男の人が優しい声で歌うと、より昔のフォークっぽいなあと思ったんです。あの時代ってそういう曲けっこう多いですよね。「神田川」とか。それは、女性視点の歌を男性が歌うことで、込められた感情をさらりと表現できるからなのかな…と。そして彼女は女性でありながらその「さらり」感を出せているという、これはなかなかすごいことなのではないかなと。声の資質もそうさせるんでしょうし、やっぱりそうしたフォークを経由しているからでもあるんでしょうね。

 『忘れます 忘れます』と歌いながらも、『忘れられると思います』と断言できないあたり、まだショックから立ち直りきれていない雰囲気。
 ま、そもそも『忘れます 忘れます/新しい私になって』という順番からしてもそうですよね。「新しい私」になって「あなた」のことを「忘れます」というんじゃなく、先に「忘れます」が来る。「私」を生まれ変わらせようとするよりも、「あなた」を忘れることが先、「あなた」がまだ大きな割合を占めているんだろうな、とも感じられますね。
posted by はじ at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月23日

GAM「メロディーズ」

メロディーズアップフロントワークス(ハチャマ)GAM, つんく , 大久保薫 , 上杉洋史このアイテムの詳細を見る


<積極的すぎず・大人すぎずにエロティックさを出すための「朝」>

 「Thanks!」に続く、松浦亜弥と藤本美貴によるユニットGAMの2ndシングル。前作よりも落ち着いた雰囲気と思わせつつ、内容はかなりエロティックになっております。
 さて、後藤真希もなにやら「ガラスのパンプス」「SOME BOYS! TOUCH」とアダルト路線に進んできていますが、両者はまたちょっと違ってきます。後藤真希がセクシーなダンスと言葉で聴き手をストレートに挑発してくるのに対し、こちらはもっと屈折した形でエロさを醸し出そうとしているんですね。

 まず、前回もちょっと触れたような、百合っぽさ。歌の内容は完全に男女一対一(や、相手は「あなた」としか表現されていないので、もしかすると女同士なのかもしれませんし、きっとあえてそう不明瞭にしているんでしょうけど)なのに、PVとかずいぶんと二人が思わせぶりな雰囲気。そもそも、こんなプライベートな内容を歌う曲は、二人で歌うよりも一人で歌わせるのが定石というものでしょう。
 そこをあえて、後藤真希のようにまっすぐ聴き手を挑発するのではなく、歌い手の二人の間でなにやらやり取りさせる。そういう思わせぶりな表現が、逆に聴き手の興味をかき立てることに繋がるわけです。ともすると下品に感じられがちな「女性側からのアピール」を、直接発さないことでうまくソフトにしているのではないかなと。

 また、詞のシチュエーションが「夜」ではなく「朝」なところも大きなポイントでしょう。ここでも、相手を積極的に挑発・誘惑するのではなく、『小さめのシーツを/巻きつけたまま』と暗に服を着ていないことを示しつつ「幸せの余韻」に浸らせている…と、同じエロティックさを出すための描写でも、よくある「夜」のシチュエーションとは違った雰囲気や感情を出せているわけです。

 だから『女の子のReality』という語も自然に響いてきます。これが後藤真希「SOME BOYS! TOUCH」だったり、状況が「夜」だったりしたら、「女の子」というよりは「女」のリアリティという風情になるでしょうから。
 「女の子」っぽさを保ちつつ『女の一番 いい素顔なんだから』といったドキッとさせる主張をするために、アレコレ配慮された一曲(というか、ユニットそのもの)なんじゃないかなと。『泣いてるみたいな/声が出ちゃうの』とか『キスが先』とかも、アダルトになりすぎず幼さも漂わせる描きかたですしね。
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2007年01月21日

倖田來未「夢のうた/ふたりで…」

夢のうた/ふたりで…
Kumi Koda , Tohru Watanabe , hwonder
倖田來未

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<対照的なシチュエーションの中でも、相手へと向ける想いは同じ>

 12週連続シングル4曲入りマキシシングルなどとにかく量重視のリリースを続けてきている彼女ですが、今回はひとつの曲にふたつの詞を乗せ別個の曲としてリリース。詞で見ると量産ですが、曲で見ると節約。どちらで考えるかは人それぞれでしょうけれど、どちらにせよ話題性はありました。

 似たようなケース…つまりリアレンジ等ではなく別個の歌として同一メロディを使用しているパターンとしては、たとえばさだまさしが「関白宣言」の数年後に自己パロディ的に「関白失脚」を歌ってみたり、THE 虎舞竜の大作「ロード」のうち第一・二・七・十三章を同一のサビに統一したりなどが思い浮かびました。ただ、これらはまったく違う部分もあるんですけど。純粋に同じメロディを使ったものとしてはASIAN KUNGFU GENERATION「サイレン」があり、これはタイトルも、確かアレンジも同一のものだったかと。

 「夢のうた」は失恋後の歌。対して「ふたりで…」は恋愛中の歌ということで、詞の内容は両者で明確に分かれています。片方は『また今日も一人』、もう片方は『これからも 側でそう笑いたい』と明暗がくっきり。どちらも一途に相手のことを切々と想っているあたりは、「エロかっこいい」の通称に似合わず乙女な詞を書く傾向のある彼女らしいというか。まあ、2曲をはっきり対照的に見せるために、あえてそうしたのかもですね。

 アレンジの雰囲気も対照的。「夢のうた」はピアノでストイックな雰囲気を作り出し、ストリングスで悲劇的に盛り上げていますね。一方、「ふたりで…」はビブラフォンの多用からもわかるように、ファンタジックで穏やか、柔らかめな印象があります。
 歌い方もおそらく意識してある程度使い分けているよう。ちなみに、シャウトというかアドリブというか、間奏Cメロ後(リフレイン前)や後奏の歌詞のない部分なども、「ふたりで…」のほうはファルセットを多用して、ふわっと抜ける感じになっています。地声で歌い続ける「夢のうた」のほうが、やっぱりどこか悲痛な響きを帯びて感じるわけですね。

 それにしても、メロディだけでなくコード進行や展開のしかたまでほぼ同じなので、もっと明確に分けちゃってもよかったような気もします。特にコード進行なんか、もっと大胆にふたつで変えちゃってもよかったんじゃないかなと。
 これ、大元が、どちらかというとマイナー気味なのです。メロはマイナーで始まるし、サビ前の盛り上げかたにしてもこれはマイナーのそれの手法っぽいですし、もともと暗い歌用に意識して作った曲だと思うんですよねー。先に「夢のうた」があって、明るい「ふたりで…」版は後から付け足された内容のような気がします。もちろんただの推測ですが。
 だから「ふたりで…」はだいぶ頑張って明るくしている感じ。アレンジャー大変だったんじゃなかろうか。

 あと細かいツッコミどころとしては、「夢のうた」の『どうかお願い もう泣かないで/心迷ってしまうけれど』の「泣かないで」は誰に言っているのか、「ふたりで…」の『あなたがもしも 「もうやめたい」と/言ったなら 側に寄り添って』の「もうやめたい」がなんのことなのか、がイマイチ不明確。前者は「泣かせないで」あるいは「もう泣きたくない」のどっちか、後者はコーラス違いの同じ部分『あなたがもしも 悩んだ時は』となんとかして区別させたかった、あたりかなあと…
 試みとしては面白いと思うんですけど、12作のときもそうだったように、彼女の場合はあんまり作詞面で無理させないほうがいいと思っているんですけどねー。
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2007年01月11日

後藤真希「SOME BOYS! TOUCH」

SOME BOYS! TOUCH
アップフロントワークス(ピッコロタウン)
後藤真希 , つんく , 田中直 , 鈴木俊介

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<不特定多数へのささやきかけが、淫靡なムードを盛り上げる>

 前々作「今にきっと…In My LIFE」を紹介したときには、いろんな方向性にチャレンジしている途中なんだなー、とか思っていたらいきなりのセクシー路線2連発になっていました。びっくりです。

 前作「ガラスのパンプス」もなかなかアダルトな雰囲気を醸し出していましたが、今回はさらに輪をかけている感じ。ダンスも、ウィスパーボイスも、トランスっぽい淡々とした打ち込み音楽も、なんだか淫靡なムード。『乳房 揺れだす 鼓動 激しく』とズバリ言ってみたり、『挨拶でしょ キスくらいは/上手に出来るでしょ?』と挑発してみたり。
 さらにこの曲のエロさのポイントは、「SOME BOYS」なところ。特定の誰かを設定しているんじゃないわけです。その上で『指に キスして 耳に 優しく』と高揚してみたり、『欲張りなの 私って』と唆してみたり、『恋人には 早いけど 大事にしてあげる』とちょっと倒錯しつつ受け入れちゃったりする。そうやって不特定多数へアピールしてみせることで、リスナーはこうした過激な誘いをよりダイレクトに感じるわけです。

 とはいえ実はサビのメロディーはそれほどエロティックでもなんでもない、普通のラインだったりするんですけどね。メロはシンプルでエコーもかかりまくっていたりするせいか妖しいムード漂っていますけど、サビはかなり明るい雰囲気に。これはキャッチーさを失わないようにする戦略なのか、それともムード徹底に失敗したのか…どっちなんでしょう。
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2006年12月17日

GAM「Thanks!」

Thanks!
アップフロントワークス(ハチャマ)
GAM , つんく , 西田昌史 , 橋本由香利

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<そのメッセージ、そのセクシーさは誰に向けられたものなのか>

 松浦亜弥と藤本美貴により結成されたこのユニット、「GAM」というのは英俗語で「美脚」を意味するのだとか。
 松浦亜弥が主演した映画「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」の主題歌だそうですが、じゃあなんでソロじゃなく二人なの?とか、後藤真希も一緒だった「ごまっとう」からなんでわざわざ二人になったの?とか、そもそも何でいまさら…みたいな印象をどうしても抱いてしまうわけですが。ま、「単なる抱き合わせ」と処理してしまうのもなんですし、ここはきっと意図があるんだろうということでいろいろ考えてみましょう。

 そもそも衣装とか、派手めな楽曲とか、あるいはダンスとか見ていると、ピンクレディーを意識しているのかな、という気がします。振り付けとか、ちょっと「UFO」みたいなとこもありますし。
 こっちも「美脚」というだけあってセクシー路線ですが、後藤真希のほうはさらになんというか淫靡でエロティックな雰囲気の方向に固めていっていますし、同じセクシーでも棲み分けをさせている感もあります。

 そして触れておきたいのは、このユニットが醸し出す「百合」っぽさです。説明しておくと、百合というのはまあ女性どうしの恋愛関係を指す用語だったりします。その向きはこの次のシングル「メロディーズ」で(特にPVで)より顕著なんですが、この曲の内容もまたどうもその感じを匂わせているように感じるのです。
 タイトルにもあるとおり「ありがとう」と相手に呼びかけてお別れするという場面の歌なのですが、この相手はフツーであれば「恋人」なのが一般的です。でもこの曲はそうじゃない。『恋人にさえ話せず/困っていること全部』を叫んでいたり、『抱きしめたあの夜の/約束が気になる友情』とあるくだりを読むと、はっきりと「恋人」ではなく「友達」へ向けているメッセージだということがわかります。
 そしてこれもフツーに考えれば「男友達」と考えるところですが、でもこの相手が男だという証明になるような描写はひとつも出てきていません。「そのたくましさが」…とかあれば男なのかな?というイメージが付きそうですが、この相手に関する具体的な描写は唯一『孤独なのを/忘れるほど/美しい瞳だった』だけ。「美しい瞳」…もちろん男性にも適用できる表現ですが、どちらかというと女性っぽいですよね?

 百合というジャンルは、馴染みがない人にはまったくわかんないかと思いますが、サブカル界隈では最近それなりに一定の支持を集めていたりします。もともとは80年代に根付いたものらしいですが、近頃はまた隆盛しているようで。
 現代はどんな分野でもマイノリティ層がだんだんオープンになりつつありますし、性のボーダーレス化も進んでいます。そこに「百合」が受け入れられやすい下地が形成されつつあるわけですね。音楽でも、ピュアでプラトニックな恋愛が受け入れられやすい雰囲気もあるからか、女性が一人称「僕」で歌ったりすることも非常に多くなっていたり。
 そんな時代背景も受けて、ピンクレディーにもWinkにもPUFFYにもWにもなかった「百合」の要素を盛り込んでみた、という意図もあるのかもしれないなあと。ま、去年くらいに男性デュオのブームも起こったので、じゃあ女性で!というとこもありそうですけど。
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2006年10月28日

倖田來未「4 hot wave」

4 hot waveエイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ倖田來未, tasuku , Miki Watanabe, Yo Tairaこのアイテムの詳細を見る


<イメージをひとつに絞らず、複数の方向性を同時進行で保つ>

 倖田來未の4曲入りマキシシングル。 Mr.Children「四次元 Four Dimensions」GLAY「G4」のように4つともA面扱いというわけではないようですが、どれにもタイアップがついているなど「これがA面」という押しはないようです。イントロとアウトロ用のインストを付けていることからも、ミニアルバム的に「4曲で1枚」という見せ方になっています。


 1曲目は「人魚姫」。ロマンティックなタイトルとは裏腹に、ハードなロックサウンドといった様相。悲しい恋の結末に身を焦がし、おとぎ話のように『泡になって消えて』未練を浄化できたならいいのに、と願うわけですね。それをバラードでなくこういう重いサウンドで気だるく吐き出すというのは、なかなか好きです。キレイに切なさを語るのもいいですが、「歪んでしまうくらいの溢れ込み入る感情」を表せるんですよね、こういう組み合わせだと。
 ただ、それにしては『君じゃなくても大丈夫だとか甘かった』とか『どうすればいい?/約束したじゃない!??』とか、ストレートな言葉遣い⇒ストレートな感情表現すぎる箇所があって、ちょっと生かしきれていないかもという印象も。これらのわかりやすい口語的な言葉も同世代の共感を得るって点ではアリだと考えているんですが、ちょっと「人魚」にしては蓮っ葉すぎないかと。

 2曲目「I'll be there」は爽やかミドルテンポ。弾んだシャッフルのリズム、かつキーもかなり抑え目で、あまり力を入れずに聴けるリラックスした雰囲気です。
 曲中に「君」は頻繁に登場し、語りかけています。『光が海に溶けて このままkissをしよう』とあるからには恋人同士なのでしょうが、あんまり恋愛要素は強くなく、『君の未来も 果てしなく 広がるだろう…』など、未来を勇気付ける志向も出ています。爽やかな情景描写が多く、キスのほかは『そばで笑ってよ そばで笑いたい』くらいで、エロカッコイイだけじゃないんだと言わんばかりのピュアな世界観が出来上がっています。『海に映った 月の上を 裸足で渡ろう』なんてフレーズは好きだなあ。

 3曲目「JUICY」は、もともとのR&B路線+アダルティーな雰囲気。オリエンタルな雰囲気に乗る言葉は、唯一の外部作詞となっています。こういうセクシャルなイメージ喚起に徹するコンセプトの曲では、本人の言葉でないほうがいいのかも。
 倖田來未本人の詞は、何だかんだいって「女の子」な感じになるんですよね。『特別な夜の果実/Ooh 食べたいでしょう?』みたいな挑発的なフレーズは使えるにしても、最終的には「私を満たして」とかそういう着地点になりがちだったりするので。

 4曲目「With your smile」はアップテンポで爽やかさもある、4つ打ちのビートが響くディスコ風サウンド。メロが淡々と進むぶん開けて感じるキラキラ音を多用するサビは、夏を感じさせてきます。
 一人称は「僕」。『プライドかけて伝えたい/君の笑顔ある限り』と、「君」が傍にいることで強くなれる、進んでいけるんだと語りかけています。『涙が頬を 流れてしまいそうになる』というくだりとか、いかにも女性が「僕」視点を使うときの「純粋な少年」ぽさが出てますね。ちょっと弱々しすぎるような気もしますが…
 そのほか、ほかと比べてちょっと詞の密度が薄い印象。


 12週連続リリースもそうだったけど、これって単に寄せ集めなんじゃないの?みたいな批判も出ていますが、おそらくは「倖田來未といえばこれ!」という音楽を絞らないことで、バラード歌手がなかなかアップテンポを定着させられなかったりするような、固定イメージの定着を嫌っているんでしょうね、このあたりは。
 もっとも勢いのあった時期に別々に分けて12枚出し、前作「恋のつぼみ」で関西弁+ラブラブな雰囲気というちょとした新境地を挟み、今回はバラバラの曲調を1枚に入れてくる、と、戦略としてはなかなか巧みだなあと。
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2006年09月18日

木村カエラ「Magic Music」

Magic Music
コロムビアミュージックエンタテインメント
木村カエラ
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<軽快な音楽の中にいざなおうとする、和英を効果的に織り交ぜたメッセージ>

 すっかりモデルとしてよりもミュージシャンとしての地位を固めつつある木村カエラです。
 非常に軽快なテンポ、しかもそこかしこに短い小節が挟まってスピーディーな展開で進んでいく曲は、シンプルながらも心地よいです。

 英語が入り混じる歌詞になってますが、『雨なBOY/外はBeautifulでPerfectなeveryday』なんて過剰な言い方を見る限りでは、わざとおかしな言い回しにしているような遊び心を感じます。曲の颯爽としたテンポに合わせて、うまくハマる英語にしたというのもあるんでしょう。あとここ、「美しくて完璧な毎日」なのに少年は「雨降り」と言っているのは、内側に閉じこもりっきりだね、みたいなことが言いたいんでしょうね。

 さて、『あなたの中にねむるExciting/おこしてあげるわ』など、彼女の詞は、こうして他人にアクションを呼びかけるタイプが多いです。ここのほか「Exciting」という語が曲中に頻出しますが、これは「興奮」「熱狂」というような日本語を英語に置き換えたというよりは、はじめから「Exciting」という単語そのものを志向して使っているような感覚があります。言いかえではなくて、日本語では該当するもののない、この言葉でこそのメッセージというか。
 『くつをならし 高く高くJUMPして/あなたにかけるMagic Music』ということですが、これは「オズの魔法使い」を意識しているんでしょうかね。でもあの作品だと、「靴のかかとを3回鳴らすと家に帰ることができる」だから、魔法をかけるというよりは魔法を解く方法に近いような…


 最近1stアルバムとか聴いてみたりしてますが、やっぱり彼女の長所は、メッセージ性に富んだ歌詞ですね。既存のポップスの典型的な耳障りのよいフレーズに毒されていない、生の声。本人の資質なのか、もともと音楽畑じゃなかったことが幸いしているのか、とにかくありがちな言葉に終始するシンガーソングライターは見習ってほしいものです。
 デビュー曲「Level 42」とかは、やっぱり展開とか言葉の乗り方が雑っぽくて未だにそんな好きじゃないんですが、まあその頃から言葉は目を引くものがありましたし、その後どんどんよくなってきたなーと。
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2006年08月11日

倖田來未「恋のつぼみ」

恋のつぼみ
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
倖田來未, Kumi Koda, Yusuke Kato

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<同性になじみやすい、コミカルかつ一途なキャラクター>

 昨年のブレイクから、12作連続シングル発売と波に乗っていたものの、すぐに引き潮になってしまわないためにとても重要なポジションにあった、倖田來未の一曲。結果的には悪くなく、またヘンにどーんと行ってしまうこともなくで、なかなかの好成績だったのではないでしょうか。

 「エロカッコイイ」と言われたキャラとはかなりギャップのある、片想いを募らせている女の子が主人公。『大事なときには/いつも最悪。』とか、『心の叫びいつ伝えればいいの???』と、うまくいかない恋愛に振り回されている様がなんだかコミカルだなあ、というよりまさにコミック、少女漫画の主人公っぽいなあと。ちょっとドジで、想いを伝える勇気がなくて、でも一途で、恋愛のことばっかり考えていて…っていう。『ひだまり』を感じさせる相手役も、2極あるうちの「意地悪だけどカッコいいアイツ」じゃないもうひとつの等身大パターンですよね。イメージ的に。さわやか系。

 まあ、少女漫画の主人公ってイメージが固まっているけど、それってやっぱり昔から今までずっと受け入れられやすいキャラクターだということで。めっきり男性よりも同性人気を基盤に置くようになった(と思うんですが…)彼女にとって、この共感を呼びやすい少女漫画なキャラ設定が功を奏したんじゃないかなと思ったり。
 反面、この恋愛モードなハイテンションは、多数の男にとっては少々厳しいトコもあるんですけど。

 顔文字を使ったりのコミカルな表現は、やはり 12作連続の2番目「Birthday Eve」を出しておいたことが有効に働いたのでしょう。いきなりコレだったらもっとリスナーは戸惑ったはず。12枚の中の1枚、飛び道具的なポジションでまず新たな地平を切り開いておいたからこそ、単発の今作も、似た設定を受け入れやすくなったわけですね。やっておくものです、何事も。
 まああの12作、新しい引き出しってこっちと歌謡曲&演歌な雰囲気だけだったような気もしますが。

 ともあれ、『恋って恐ろしすぎる…』とか『!!!!!』とか、文章のつながりが微妙に「?」だったりとか、全体に適用するんじゃなく「決め所だけ」関西弁になったりとか、そもそも恋の花、つぼみどころか咲き乱れていますよってくらいパッション全開だとか、ツッコミどころは多々あるのですが…でも、他の人で何度か言った気もしますが、こういう「ちょっと拙い」みたいな点もある種より共感を得るもんなんですよね。すっとキレイに表現しちゃったら、ドジで一途な主人公像と合わなくなってきちゃうわけですから。
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2006年08月07日

Cocco「陽の照りながら雨の降る」

陽の照りながら雨の降る
ビクターエンタテインメント
Cocco, 根岸孝旨

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<陰から陽へ、恐る恐るながら足を踏み出していくための、リハビリとしての祈り>

 復活した歌姫Coccoの、「音速パンチ」に続くシングル。前作はカタカナ織り交ぜ表記の詞とアッパーで乾いたサウンドでしたが、今回はまたそこからも変わって、途切れ途切れの言葉と厚みをつけていく音世界、島唄のような祈りの雰囲気に彩られています。

 活動休止前は、何がしか「狂気」あるいは「トラウマ」あるいは「ゆがんだ愛情」のうちのどれかの匂いを常に纏っていた彼女でしたが、この歌からはそれはほとんど感じられなくなっています。『許さないで 私を/失くさないで あなたを』に若干その気配が残ってはいますが、これもまた何かの罪悪感(これも以前のCoccoによく見られる特徴ですが)を持ちながらも、退廃の空気につながっているわけではなく…むしろ『生きるように 歩いた』とあるように、これからのためにケリをつけた、というようなポジティブさを内包しているように思えるのです。
 短く並べていく断片的な言葉、そして言葉を紡ぐ代わりに『ハイヤイヨ』と、自らの拠るところである沖縄の祈りの掛け声(らしい)を繰り返し、その中で『守りたい あなたを』という意志を、ふと、こぼす。シングルとしては(実は)珍しく沖縄っぽさを前に押し出してきて、シャーマニックな装いを作りつつも、本質的には、これはある種の「リハビリ」のようにも感じます。明るい場所へ行くための通過儀礼というか、まだ幸せを感じるのに恐々としているというか…陰性から陽性に転じていくために、前作から今作へと、段階を踏んで昇っているような感覚がするのは、自分だけでしょうか。『燦々と 雨』と、陰のイメージを持たれがちな雨というモチーフを鮮やかに描く、そんなところに、彼女の陽への変化が現れてはいないでしょうか。

 ところで、島唄っぽいのはメロディラインやアレンジや「ハイヤイヨ」のせいもあるんでしょうけれど、歌い方もまた影響しているなあと。コブシがきいているんですよね。小節の頭に本来ある音が、ちょっと溜めて、遅れて出てきているんですね。これが祝詞というか、祈祷のような雰囲気を出すのにもつながっています。
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2006年05月05日

Cocco「音速パンチ」

音速パンチ
ビクターエンタテインメント
Cocco, 根岸孝旨, 長田進

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<照れ隠しとしてのヒネりが加わった、新たな「はじまり」を求める歌>

 Cocco完全復帰を告げるシングル曲。前哨としては2005年にくるりメンバーとコラボし、こっこちゃんとしげるくん名義で「SING A SONG〜NO MUSIC,NO LOVE LIFE〜」を、SINGER SONGER名義でシングル「初花凛々」、アルバム「ばらいろポップ」を発表していました。そちらではすっかり明るくなった曲調で、これって本当に腕をどうしたとか腰がどうなったとか歌っていた人なのか、と驚いた方も多かったのではないでしょうか。

 で、今回はどうかといいますと。
 なんか暗めのジャケット、椎名林檎じゃあるまいし…な漢字+カタカナで表記された歌詞と、これってまたダークなんじゃ…と思ってしまいます。メロもマイナー進行だしね。
 でも、そうじゃない。サビではそれまでの硬いロックサウンドから一転、ふんわりした音とコーラスがついて、急に視界が開けたようになります。まるで光が差し込んできたかのような、何かを祝福しているような。

 言葉も、しっかり読んでいくと、内容は決して暗くありません。『サア 始マリノ接吻ヲシテ/初メテノ接吻ヲ』『甘エタ願イ/叶エテ賜レ』など、ポジティブに「求める」呼びかけが随所に見られます。
 この表記で、さらにやや過激な言葉を使っているので、なかなかそうは感じにくいかもしれません。でも、『ヤサシイ腕デ/ブチ壊シテ見セテ』というフレーズだって、この「壊す:break」はやはり「break out」=「始まる」ということを指しているのだと推測できます。
 言い方が過激なのは、それだけ激しい感情で「はじまり」を求めているのかもしれません。もしくは、沈黙をはさんだとはいえ急激な方向転換をしているので、このカタカナ表記や大げさな言い回しは、ある種の「照れ」のようなものなのかもしれません。今言いたいことをそのまま書いてしまったら、昔のイメージとズレが生じる…という気持ちがあったのかもしれないな、と。昨年の活動は別名義だったけれど、自分の正式な再出発となる今回は特に、ポジティブなメッセージをそのままポジティブに伝えると違和感があったのかもしれません。それは聴き手側でも、同じようなことを感じている人はきっといるはずですし。

 今回は、バンドサウンドでヒネった呼びかけでしたが、次回以降はどうなることやら。段々照れがなくなって幸せムードになっていくのか、それとも以前のようなダークサイドの楽曲も作っていくのか。楽しみですね。
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2006年03月26日

倖田來未・12作連続リリースシングル。

 2005年12月〜2006年2月まで、連続で12枚リリースされた倖田來未のシングルたち。
 メールマガジン「現代ポップス雑考。」の中で順々に紹介した文章を、ひと記事でまとめて紹介しちゃいます。

BEST ~second session~ special edition
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
倖田來未, SOULHEAD, Mr.Blistah

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○「you」
 第一弾は、意表をついてのバラード。しかし、こういうのはリリースを重ねるにつれて注目度が下がり気味になるものなので、注目度が曲の風評に大きく関わってくるバラードを先に持ってくる、というのはなかなかクレバーな戦略かなと。
 内容そのものはオーソドックスで、これも後のほうに出したら「ネタ切れ」っぽく受け取られるところだったかもしれませんし。

 舞い散る雪の中に描かれる、愛する人を失った哀しみ…「雪が降り積もる」のは「想いが(伝える相手を失って)心に降り積もる」のにイメージを重ねやすく、また「白で埋め尽くす」ことが「世界が色味を失っていく」と連想できるので、非常に曲世界に入っていきやすいです。
 注目したフレーズは『もともと合わない 二人がこうして/一つになっていたけど』ってとこでして、こういう言い方は珍しい。現実って何から何まで相性のいいカップルばかりじゃないわけですが、歌詞ってなかなかそうは言わないで、キレイに飾りがちですよね。でもそんなにこんなにも想いを募らせている…ということで、逆に聴き手に与えるインパクトは大きいのかなと。相性がいい二人が幸せな日々を築くってより、「もともと合わない」
相手どうしが幸せな日々を築いていたってほうが、なんだかスゴイことぽくて、感慨深くないですか?
 まあ、「合わなかった相手になんでこんなに未練があるんだろう?」とだけ思われてしまう可能性も高いわけですけど。それだけドラマティックな物語なんだよ!と反論しておきたいところです。

 ただ、『あんなにもそう あの時には/ここにしか幸せ ないと思った』ってのは、どうなのかなと。無理やり言葉を埋めたっぽい感じ。ちょっといただけないです。やっぱり連続リリースで忙しくて雑になったのかなー、と考えちゃいますし。


○「Birthday Eve」
 うって変わって(でないと飽きられちゃうから、まず意図的でしょうが)ハッピー全開の第二弾。恋人の誕生日前夜、ケーキ作りにいそしみながら一人盛り上がる女の子の様子が描かれています。

 歌詞だけ読むと、ハロプロか?って思うくらいにハジけていて、詞だけ見れば自作他作含め今回の企画の中ではもっとも異色。『だってだって/私は彼女だもん(*^_^*)』とか、顔文字までオマケについてきて、いい具合にチープです。うん、こういうのだって私はできるのよ!という不敵さを感じるなあ。これはただ単独のシングルとしては出せないだろうし、
アルバムに混ぜても違和感あるしで、この「12連続」企画だからこそ成立した曲だよなあと。バリエーションの豊富さが求められる中、その最右翼として重要な存在意義があるわけですね。
 ケーキ作りに絡めて、恋愛は『レシピ通りやればいいわけじゃない』と言ってみたり(マッキーっぽいなあ)誕生日から『来年も私といてね』と一年後までを期待したり、シチュエーション設定から歌詞がしっかり膨らんでいて、微笑ましいです。『テンションぶっちぎりHigh!』と言うわりにそこまでグワーっと盛り上がっている訳じゃないのが、気になると言えば気になるくらいでしょうか。


○「D.D.D.feat.SOULHEAD」
 姉妹ヒップホップ(なのか?)デュオ、SOULHEADをフューチャリングした第3弾。というか作詞作曲もSOULHEADですね。他アーティストとの絡みを連続リリースの中にちりばめることで、音楽性の幅を広げ、マンネリ感を防いでいるのでしょう。

 かなりヒップホップ色が強く、歌詞の内容も『誰にも邪魔はさせない』『欲しい物は誰が何と言おうと欲しいの』と強気な発言があったり、『Go!KUMI go go go!/Go!SOULHEAD go go go!』というようなお約束な自己アピールがあったり、「私たち3人が揃ったら無敵なのよ」と言わんばかりの主張がぶつけられてます。
 でも、いくら詞を読んでもタイトルの「D.D.D.」がわかりませんでした。3人だから3つDが並んでるんだと思うんですが…

 ちなみにこの曲のアンサーソングとして、今度はSOULHEAD側から「XXX」という曲がリリースされています。


○「Shake It Up」

 第4弾は直球ダンスチューン。ミラーボールが回っているような歌謡曲っぽい雰囲気も混ぜつつ、でもどこか妖艶なイメージで、そこまでベタなディスコチューンにはしていない辺り、こだわりがあるのでしょうか。
 上の「D.D.D.」も「踊る」ということが表に出てきていましたが、『OiOiOh!』というカケ声もあり、こちらのほうがメロディアスで耳馴染みはいいかなと。そのぶん、ちょっとばかりチープさもどうしてもありますが。サビがずっと同じリフレインなのも、聴いていて飽きるかも。エンドレスでオールナイトな雰囲気なんだ!というつもりなのかもしれませんが…やっぱり12週の反動なんじゃないかな。


 この「D.D.D.」「Shake It Up」はどちらも特定の「君」とか「あなた」とかが出てこず、「D.D.D.」は3人で、「Shake It Up」は『仲間たちと』ひたすら音楽にあわせて踊ろう、という内容になっていますね。


○「Lies」

 クールで緊張感漂うミディアムナンバー。そんな曲調と、すれ違いゆく二人を炙り出していこうとする詞の方向性はなかなかいい具合にマッチしています。
 特に、相手の心変わりを感じとる、その描写がいいんです。『喧嘩も徐々になくなって/束縛だってされていたのに/平穏な二人が そこにいる…』というように、波風が立たなくなった関係に「嘘」の気配を見出しているんですね。
 「my baby」と「my bad boy」という2種類の呼びかけ方が、相手に対しての愛しさと疑いの感情の両方それぞれを表しているかのようで、狙ってやっているのかはわかんないですけどこれも好きです。

 曲のクールさも合わせて、12連続のシリーズの中では一番好きかもしれません。まあ後半まだ聴きこんでいないので変わるかもですが… だから、『恋愛ってものほどこう/複雑なものはないのよ』みたいな、曲の雰囲気に混ぜ合わせきれていない、安易さを感じさせるフレーズが、余計気になったりもします。この辺りだけ明らかに浮いてるんですよねー。


○「feel」

 上の「Lies」もそうなんですが、倖田來未ってムーディーな曲に合った声をしているとは思うんですが、歌詞がちょっとそこにそぐわないなあと感じることが多々あります。個人的に。

 この曲だと『それが恋愛なのかな?』とか『「これからもずっと一緒にいようね」/素直に言えた日』みたいなところ。ちょっと曲調よりも幼いというか、親しみやすすぎる言葉遣いというか。キャラは「エロカッコイイ」と言われているけど、言葉を読んでいくと「純情乙女」のほうに近かったりすることが往々にしてあったりとか。

 ま、非日常的でオトナな雰囲気の歌で、でも一般の女の子にも感情移入しやすいとっつきやすさがある言葉なのは、「憧れ」と「親しみ」の両方を感じさせるんだとも言えるわけで。もしかしたら、ファンが増えた要因のひとつなのかもしれません。
 個人的にはどうも違和感あるんですけどね。

 でもこの「feel」は英語詞部分が多いので、あんまりそういう違和感を持たずに聴くことができました。言葉を詰め込みやすい英語は、低音域で囁くようなメロディラインともうまく合っている感じです。


○「Candy feat.Mr.Blistah」

 アラビアンというかなんというか、妖艶なムードの漂う一曲。Mr.Blistahの渋めの男声ラップも加わり、めくるめく夜を演出しています。決して細かくならないバックトラックのゆったり感がいい雰囲気ですね。

 『だから ソレが欲しい…』『体すり寄せて/下からそう babyゆっくりして欲しいの』とか、イマジネーションをかき立てる言葉が随所にちりばめられていて、「エロかっこいい」キャラらしいです。Mr.Blistah側でも『奥底は桃源郷』とか応えてますが、せっかくムード出しているのに『エロすぎるS字カーブ』とかはっきり「エロ」とか言っちゃうのはどうなのかなー。直接的に言わないほうがムード出ると思うのですよ。

 『何でもいいわけじゃない あなたの手で暖めて』ときちんと「あなた」を指名しているあたりはチェックですね。これだけエロ全開ならば、「何もかもどうでもよくなっちゃう」「誰だってかまわない」というように、自由奔放に描くことも可能なことは可能だと思うのですが…
 でも、それだときっと受け入れられないんだろうなあと。「エロかっこいい」という言葉からもわかるように、倖田來未のエロさはあくまでもファッションとしてのエロさなのですね。だからどんなにエロい曲にしようとしても、「私はあなたが好き」というラブソングの範疇からは抜け出ることは許されないんだろうなあと。

 にしても『そこらの安い女と違う』てのは…
 ここだけ演歌の世界っぽいっすよ。


○「No Regret」
 昨年のナンバー「Butterfly」のような、…というか若干かぶっている気がしなくもないアップテンポナンバー。意外にも今回、スピード感全開の曲はこれだけなんですね。2曲くらいくるかと思っていたんですが…
 メロ部分がかなり低音域で抑えられていて、サビで一気に急上昇。シンプルなやり方ですが、インパクト付けには非常に効果的ですね。
 『どんなに辛くて 逃げ出したくても/その先にある明日へと 立ち上がれ!』と自分や「君」を鼓舞するメッセージソングになってます。ちょっと「私」を主張している部分と「君」を勇気付けている部分が混ざってしまっているのが気になったり。あと、『真実はいつだって一つだけ』という言葉、上の「Candy feat.Mr.Blistah」でもありました。どうやら、「人の数だけ真実はある派」ではなく、「真実はひとつ派」のようです。


○「今すぐ欲しい」

 Sugar Soulの楽曲をカバー。チョイス的には面白いところを突いていると思いますが、いかにも「エロかわいい」イメージを出せる曲、という観点から選ばれた感じ。

 ただ、前回「Candy feat.Mr.Blistah」で“どんなにエロい曲にしようとしても、「私はあなたが好き」というラブソングの範疇からは抜け出ることは許されない”と倖田來未の「エロかわいい」の限界について書いたわけですが、こうして外部の曲を使うことで、『どうなっても構わない夜があるの』『誰だって 自分のSexしたい時があるから』なんてなんてストレートさを出すことができるというのはあるのかなと。倖田來未本人がこういう詞を書くのはNGだと思うので。エロはあくまでも「身にまとうもの」、ファッションなんですから。

 曲調に浮遊感があって、これもオリジナルではありそうでも実はチャレンジできない領域ですね。売れてしまった今は特に。なので、けっこう新鮮に聴けます。
 でもラップが直接的すぎる、っていうかちょっと品がない?ので、それが雰囲気にそぐわないような。なんですか『すご技』って。


○「KAMEN feat.石井竜也」

 こちらは元米米CLUBボーカルの石井竜也をフューチャリング。他のコラボとも一線を画す、完全デュエットソングです。『信じられないの?/信じさせてみて』などなどの細かな呼びかけ合いや、曲調や歌い方、もうすべてが歌謡曲の世界。『確かに俺は年上さ…/その言葉はもうやめて!』って、何じゃこりゃー!今時こんなやり取りありえませんて。

 隠しごとはやめてほしいと願う女と、それに戸惑う…あるいは戸惑うフリをする年上の(笑)男。『とても許されない/恋の形だけど』から類推するに、おそらくは不倫をテーマにしているんでしょう。『仮面をつけたままのキスね』みたいなやるせないシチュエーションは面白いのに…デュエットという形態をとると、どうしても古めかしくなっちゃうんでしょうか。…わざとパロディっぽくしているという推測もできそうですが。

 しかし、どっちかというと倖田來未よりも石井竜也の曲っぽく感じます。作詞作曲したからというだけでなく、おいしいところは男性パートのほうが多く配分されているような…


○「WIND」

 フジテレビのトリノオリンピックテーマにもなった、さわやかなミディアムテンポ。
 『誰かよりも 上だ 下とか/本当は関係ないんだ/自分らしく精一杯やることに/意味があるんだ』というフレーズ。競い合うこと、闘争心を煽るのではなく「自己実現」の方向に持っていくあたり、時流を感じますね。

 真っ当なメッセージソングで、あんまりツッコミどころがありません。良くも悪くも無難。彼女が好きな人は好きだろうし、興味ない人は特に揺さぶられることもなさそうな。
 R&Bだけじゃなく、こういうさわやか路線も押さえておこうという姿勢はじゅうぶん理解できます。が、そうすると「倖田來未じゃなくても…」な印象に仕上がるのは、うーん、まあ致し方ないのかも。


○「Someday」

 ラストを飾るは、シャッフルリズムのミディアムナンバー。終始マイナー風味進行のコードとパッショナブルなストリングスはなかなか好みですよ。
 『赤く染まる私の鼻を可愛いと言う』というフレーズは面白いと思いますが、その後『あなたに出会えて本当に嬉しく思う』って書き方するのが、なんだか居心地が悪いです。他人行儀だなあと。まあ『お互い今も強く想う』けれども決別するって内容なので、「今までありがとう」という意味で「嬉しく思う」なんて言い方なのかもですが…

 しかし『何気ないあなたからの一言で』別れることになってしまったのに、『お互い今も強く想う』と信じきれるものでしょうか?なんだか、切ないシチュエーションを無理にまとめたような感触がしてしまうんですよね…
 『髪形を変えても気づいてくれなかったけど』とか、細かい描写はよかったんですが、「好きあっているのに別れざるをえなかった」いきさつがどうにも見えてこないのが残念です。続きを読む
posted by はじ at 23:59| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月25日

加藤ミリヤ「ソツギョウ」

ソツギョウ
ソニーミュージックエンタテインメント
加藤ミリヤ, Miliyah, 3rd Productions

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<赤裸々すぎるほどストレートにつづられた、集団内での「ひとりぼっち」の空虚さ>

 現役女子高生シンガーソングライター加藤ミリヤの卒業ソング。17歳ってことなんで、まだ今年卒業するってわけではないようですが。

 卒業おめでとうありがとう、お別れだね思い出ずっと忘れないよ…というのがまあ卒業ソングの王道というか、一般的に想像できると思うのですが、この曲はそうではないです。煙田さんも書かれてましたが、尾崎豊「卒業」と共通するところがある感じです。
 まあ、彼女の場合は、アンサーソングとして発表された「ロンリーガール」、UAのカバーだった「ジョウネツ」など過去曲との親和性が高い曲を連続して出してきたという経歴もあって、今回も何か関連があるんじゃないかとか思い浮かべちゃう…ってのもあるんですけど。

 たとえば『今 支配の中を抜け出して』とか、『教科書も捨てた 風に吹かれた 自由になった』とか。学校に縛られていた、気持ちが癒されなかった、解放されたかった…と思い悩み続けた果ての卒業、そこにあるのは喜びではなくとまどい…みたいなところはかなりリンクしてますね。
 また、窓ガラスを壊して回ったりしませんけれど、『すれ違う大人たちの 視線ひどく感じる/(苛立ってくる 睨んでみる)』というように、「オトナ」を敵視している様子も感じます。

 とはいえ時代やら性別やら何やらが違うことですし、いろいろと違う部分ももちろんあるわけで。上のフレーズを見ても「壊す」ではなく「睨む」までですし、『うるさい 聞きたくない ほっといて わかる訳ない』など、やっぱり時代のせいか、もうちょっと内向的な感じがします。「焦燥感」というよりは「孤独感」がクローズアップされているみたいです。これは「ロンリーガール」から続く流れなんでしょうかね、やっぱり。

 『寂しい 虚しい 一人だけ取り残されてる』というような、イマドキの若者の空虚さ、生きづらさが表現されています…が、どうもこの人は「孤独感」にしろ「大人への反抗」にしろ、もしくは前回の「ジョウネツ」で描かれていた「恋心」にしろ、めちゃくちゃストレートなんですよね。それが貴重だなあと思うと同時にちょっと心配なんですよね。
 特にイマドキの孤独感って、あんまり赤裸々に歌われちゃうと、同じ気持ちを抱えている人って一歩後ずさりしちゃいそうな気がするんですよねー。共鳴する内容であっても共感したくないと考えちゃいそうというか、自分は違う!と反発しちゃうような気が。
 ま、そういう意味では、卒業という特別な状況を描いているぶん、受け入れられやすいかもしれませんけれども。
posted by はじ at 14:37| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月19日

後藤真希「今にきっと…In My LIFE」

今にきっと・・・In My LIFE
アップフロントワークス(ピッコロタウン)
後藤真希, つんく, 鈴木俊介, 田中直

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<働く女性のための等身大ソング、その設定の意図は>

 後藤真希のニューシングル。デジタルサウンドが大きく出ている、元気系ソング、という感じ。なんだか転調がものすごく頻繁です。揺れ動き思い悩む気持ちを表しているんでしょうか。

 注目は、主人公「私」が、学生ではなく明確に社会人として描かれていることですね。意外とそういう歌って少ないです。社会人は学生設定の歌も懐かしむことができますが、学生は社会人のことはピンとこないものですし。

 そこをあえて『上司の顔色 気にしてばかりいるの』とか率直に歌わせているのは、どういう意図なんでしょう。
 考えられる理由はいくつかあります。まずは「働く女性からの共感を得る」ということ。日々の愚痴や不安などを描くことで、共感させようという同性へのアピールですね。新しいファン層を拡大しようとしているのかもですし、または中高生のときにファンになった女性だったら、もう働き始めている人もいるでしょうし。
 「成長を演出」というのも考えられますね。「LOVEマシーン」でイェイイェイウォウウォウ言ってたのに、今では悩みながらもポジティブに働くOLの歌も歌うんだ!みたいな。10代っぽい歌から20代っぽい歌にすることで、本人の成長を感じさせよう、とう狙いがあるのかもしれません。
 もうひとつ、それは「単純に今回はこういう歌だった」ということ。ジャケットでも眼鏡かけているし、この曲は「働く女の子」のかわいらしさをアピール!みたいな、コスプレ的意味合いなのかもしれません。バリエーションのひとつに過ぎない、ということですね。

 以上3つ、どれが正しいかとかはわかんないです。今後どういう曲を出していくかにもよりますし。同じ系統で行くなら本人の成長と合わせ「20代共感系」で行くということなのだろうし、また全然違う雰囲気になるならバリエーションだったと。なんだか書いているうちに後者のような気がしてきました。

 全体を読めば明らかに働く女性の歌ですけれど、1コーラスだけではそこまで判断できないようになっていたり、『男子にだって負けちゃいられない』と「男子」なんて言い方をしているあたり、学生ファン層も捨ててはいないようですね。

 あと、『根っからの不良になれず』とか『かわいいね!だけじゃその先 いけない/らしいよ…』とかは、笑いどころなのかどうなのか判断に苦しむところです。
posted by はじ at 23:24| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月25日

木村カエラ「You」

You
コロムビアミュージックエンタテインメント
木村カエラ, 渡邊忍, 會田茂一

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<向かい合う相手を見据えて届けようとするからこその、力強いメッセージ>

 毎回恋愛ではなく、メッセージのこもった詞を書く木村カエラ。メッセージと言っても、一緒に歩幅を合わせて歩いていこう!というような「共感系」ではありません。自分は先を行き、聴き手にこっちまで来い!と呼びかける「啓発系」のスタンスを取っています。

 『目を閉じて 悩める君よ//なんで もろいんだ?/独りでは生きてゆけるわけないから』…これは、サビ前から盛り上がり、一気に音圧を上げるサビに突入していく部分のフレーズです。「君」に対して、自分が伝えたい言葉を言い聞かせるような雰囲気が漂っているのがわかるかと思います。
 その前のメロでは『問いただしたよ でもちゃらけてばっかり』など、何かを独り抱え込んでいるのにそれを明かそうとしない「君」に、少し苛立っているフシも見えます。それでも、『つないでいたいんだ YOU』と呼びかける。そこには「君とつながっていたい」という自分の望みじゃなく、「YOU」と入っているように、「君のために絆を保っていたい」というような、あくまでも相手への気持ちが表れているように感じます。
 自分のことを歌わず、相手へ届けたいことだけをひたすら歌に込める。これが、彼女の言葉から感じる「力強さ」になっているのかなと。


 サウンドは、リズミカルなギターに乗せて軽快に歌われるメロ部分と、音圧を一気に上げてキャッチーに歌われるサビ部分、ふたつを併せ持っています。おそらく彼女に求められている「オシャレさ」も取り入れつつ、また多くの人の耳を引くようなポップさも持ちつつ、そして言葉は彼女自身が伝えたいこと…このバランスは、今回実にうまくいっているんじゃないでしょうか。前回の「BEAT」では、メッセージそのものはやはり生き生きしていましたが、曲そのものがストイックすぎたかなという気もしていたので。
posted by はじ at 07:35| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月23日

木村カエラ「BEAT」

BEAT
コロムビアミュージックエンタテインメント
木村カエラ, kaela kimura, 奥田民生

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<ポップさよりもストレートさを重視した、自らの性格を貫くスタイル>

 奥田民生の作曲。というのが一聴してわかるくらい、シンプルなコード&メロディライン。心なしか、木村カエラ本人の詞もどことなく奥田節っぽくなっているような。『ここから何をつかむやら/一体何を探すやら』みたいな、砕けた感じの言葉遣いとか。
 むしろはじめて聴いたときは声がなんか違って聴こえて、木村カエラなの?とか思っちゃいました。今までよりずっと低く響いているような。音域も確かに上のほうがぜんぜん使われてないけど、でもそこまで低いってわけじゃないので、あえて太くドスきかせようとして歌っているんじゃないかなと。

 個人的には、奥田民生イズムを継承してくれる女性シンガーが出てきてよかったなーと思いました。PUFFYはほら、あくまでもダラダラ感脱力感のみなわけで、シンプルな気持ちをシンプルに歌にしてシンプルに進んでいこうという率直さという点で、彼女は�常に共鳴できているような感じを受けました。

 ただそれはあくまでも木村カエラ個人の性格的な面であって、聴き手が彼女にそれを望んでいるかというとまた事情は変わってきます。モデルやタレントとして今や本人の人気はどんどん広がっているなか、こういう遊びのないストイックな方向の曲というのはあんまりウケないんじゃなかろうかと、ちょっと心配です。本人の資質は、デビュー曲からずっと「人に流されずあるがままに生きる」みたいな詞を書いている(それでいて、きちんと自分の言葉で書けている)ことからも、奥田民生のスタンスと親和性高いのは疑いようがないとこなんですが。ただ、タレントとしての彼女のファンが期待しているのは、もっとポップな曲なんじゃないかなーと。
 前作「リルラ リルハ」からそういう傾向はありましたが、一段とシブくなった今作。これからもファン受けとかよりも、自らのやっていきたい道を突き進むのでしょうか。
 まあそれはそれで、信念を持って取り組んでいると評価されそうなところではありますが。
posted by はじ at 19:36| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月10日

加藤ミリヤ「ジョウネツ」

ジョウネツ
ソニーミュージックエンタテインメント
加藤ミリヤ, UA, 加藤ミリヤ loves mflo, mflo, Shingo.S

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<90年代ミュージックリスペクトを前面に出しつつ、個人の解釈を混ぜ合わせる新しさ>

 いまさら解説するのもなんですが、9年前リリース、UAの出世作「情熱」をサンプリングしてできあがった1曲。彼女はこの前も「ECOのロンリーガール」のアンサーソング「ロンリーガール」なんてのを出したりと、過去の曲をリスペクトするのに非常に積極的です。
 まだ高校生ということで、いろいろ吸収したい!という本人の意向も強いのかもしれません、が、今回はマーケティング的にもひと考えある気がします。いわゆる90年代ミュージックを聴いて育った世代へのアピールというかなんというか、そういうものが。
 自分と同世代の友人とか、みんな最近の曲はわからん90年代が懐かしいとか言うわけです、これが。業界的にも、まだ00年代も折り返しのところですが、どうも90年代カムバックな傾向も感じられるし…その点、今回の「情熱」のセレクトはなかなかいいツボ押してるなあと。

 で、さらにサンプリング度合いがかなり強いのです。本来の歌部分もがっちり使われていて、でも加藤ミリヤ自身は歌わないので、カバーというわけではない。で、新しく付けた歌詞は、掛け合いのように元歌詞と響きあうように作られている。この前のアンサーソング的な要素もあり、より元の曲そのものに接近したといった感じ。
 なんというか…サンプリング、フューチャー、カバーというよりは…「二次創作」とでも言うべきものですね、これは。「二次創作」というのはまあ、マンガや小説のキャラや設定を基にしてマンガや小説を書く、同人界隈から生まれた言葉です。もともと出来上がった世界から自分の解釈なり創造なりを広げて描いていく、という点では、かなり近いような気がします。
 最近は同人の流通するオタク業界もなんやかんや脚光を浴びているし、オレンジレンジが批判の槍玉に上がったり鮎見だのが出てきたり(最後だけかなり違いますが)、出来上がっている作品に自分の色をつけるというのはなんだかブームなのかもしれません。まあ昔から日本人はそういう民族性があるわけですが。自分はそれでいいものが出来ればいいんじゃん?という立ち位置です。貪欲にいいものを取り入れるというのは全然いいことだと思いますし。すでに一定の評価を受けている「いいもの」に胡坐をかいて、クオリティが落ちたりしなければね。

 っていう前置きをした上でこの曲を評価するとすると、単に話題づくりやセールスを狙っただけじゃない、曲に対する思い入れは伝わってくるなあ…だけど、という感じ。曖昧だなあ我ながら。つまり、「情熱」という歌に胡坐をかかず、彼女なりに曲を再構築して「ジョウネツ」という歌を作り上げていて、それはすごくいいことなのだけれど、でも自分の好みではないなあという。今度はミもフタもない。
 『恋しすぎて もう苦しくて あなたが愛しくて』とか『愛してる100回言ったって足りないよ』とか、「どうしようもないほど愛してる」というのをひたすらにアピールしているわけです。確かに「情熱」という曲の一辺を表してはいると思うんですけれど、この辺のどうしようもないほどのあふれる感情を表に出さないのが「情熱」という曲だったんじゃないかなあ、と自分なんかは考えてしまうわけなんです。『きっと涙は音もなく 流れるけれど赤裸々に 頬濡らし/心まで』という原曲のフレーズ、確かに心までも涙が伝って、どうにもならないほどの想いを抱えている状態ではあるんですけれど…それをあえて吐き出さず、ただ音もなく涙だけを流しているそんな情景が、自分の頭の中にはずっとあって、う〜ん…と唸ってしまうんですよね。

 まあ、歌も雰囲気もいいし、こういう解釈でも間違っているとは思いませんし、高校生の等身大って感じもしますし。若いっていいな〜ということで。いくつだお前、っていう感じですが。続きを読む
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2005年08月20日

倖田來未「Butterfly」

Butterfly(DVD付)
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
倖田來未, 渡辺未来, 渡辺徹, Yuichi Ono, 宮地大輔

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<ブルースとポップの融合の中、現代的・現実的な視点で鋭く描かれる恋愛の機微>

 特別盤と通常盤のどちらも画像があるときはふつう通常盤を使っているのですが、今回はスキャンダラスなDVD盤のジャケットのほうがふさわしいかなと。
 キャッチーなサビとムーディーなメロの対比がきいています。っていうか、曲調、ルパン三世を思い出してしまいました。あと、スパイ映画のテーマみたいな、そんな雰囲気です。ブルースの音階であるブルーノートが取り入れられてまして、これのおかげでちょっと陰のある雰囲気になっています。でもサビは、調子こそ大きくは変わらないものの、普通にJPOPの文法ですね。で、そのぶん、メロでの陰が取り払われて、パッと鮮やかになる印象が加わってきます。

 『君は私の「すべて」ではない/だけど いないと「すべて」が/ダメになる』
 詞をざっと読み下していくと、この一文が光りますね。「あなた以外見えない!」というなりふりかまわない情熱的な愛情表現ではなく、クレバーな女性を描こうとしているのがわかる一節です。
 最近はこういう「わきまえた」詞が、ちらほら目立ってきているような気がします。ちょっと前もどこかで触れたような覚えが…どの曲でしたっけ。一歩引いて現実を見据える目線、というものを持ったタイプの歌は、今の時代の感覚のどこかで膨らんできているのかなあと思います。
 その中でも、上に引用したフレーズはいいですね。恋愛感情の不思議さ・面白さを、いい形で取り出しています。
posted by はじ at 14:39| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月09日

Crystal Kay「恋におちたら」

恋におちたら
ERJ
Crystal Kay, H.U.B., Shingo.S, 渡辺なつみ, Jamelia Davis, Ashley Ingram

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<広がりから収束し、じっくりと聴かせるサビがずっしりとした重さを持つ>

 この冬に出ていた前曲「kiss」は静かにロングセールスを続けていたのですが、今回は一躍、メジャーな位置で長いこと君臨しています。ドラマ主題歌に抜擢されたってのもありますが、でもそうしてテーマに採用されたことを含め、ちょうど上り調子だったのではないでしょうか。

 注目なのは、曲構成です。
 とにかく、サビのキーが低いのです。全然声を張り上げません。Bメロのほうが基本的に高く、かなり上下に動くなどしています。導入の落ち着いたAメロ、広がりのあるBメロときて、サビでまたどっしりと安定する。なので、サビの『君が大切なものは何ですか?』あるいは『ずっと守ってくと決めた』というメッセージが、聴き手に重みや、静かな力強さを与えてくるのではないかと。
 これは、Bメロのテクニカルなハイトーン部分をさらりと歌いこなせていないと、そちらのほうが意図せず盛り上がってしまうという不恰好な形になってしまうので、なかなか難しいところがあるかと思いますが。
 また、全体を通してメロディラインに統一感があるのもポイント高いですね。

 「サビが低い曲」というのは、本当にヒットチャートにはなかなかないです。それを「大して盛り上がらない曲」ではなく「味わいのある曲」として聴かせることというのは、なかなか難しいですからね。この曲の場合は、「わかりやすいメロディ+ややトリッキーなリズム」にすることで、印象付けを強くしたりもしています。その辺りもきっと成功の要因でしょう。

 詞は特にコメントないですね。サビで、繰り返すリズムにちょうど反復する語を乗せるテクニック、なんてのはそれほど珍しいものでもないですし…
 あ、『i love you』って「I」じゃなくて、小文字なんですか。ふむ。これは…主語の強さを弱めて、「私」=「あなた」と同等な感覚を持ちたい、ということなのかなあ…なんて、こんなふうに聴き手の想像力を膨らまさせる小粋なテクニックですね。この曲を好きな方は、各自この「小文字の『i』」の意味を自分なりに解釈してみると楽しいかもです。
posted by はじ at 17:38| Comment(1) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月05日

木村カエラ「リルラ リルハ」

リルラ リルハ
コロムビアミュージックエンタテインメント
木村カエラ, 會田茂一

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<聴きやすく、でも独自のセンスも感じられる、「顔見せ」に最適な一曲>

 さて、1stアルバムが好評を博し、とはいえ、すっかり人気が出てきた木村カエラです。ハマッている人と未だに「誰それ?」という人と、かなり温度差があるような気もしますが。

 けっこう好き勝手な感じにはっちゃけていた前二作(「Level 42」「happiness!!」)に比べると、ずいぶん万人に受け入れられるシンプルなメロディラインになったなと。たぶん、本気で売りにきているってことでしょう。ジャケット写真なんかも、はじめの「趣味で作ってみましたー」って雰囲気から、アーティスティックに変わってきたような気もしますし…
 実際に売れ行きは成功と言っていいと思います。その結果、このシングルは多くの人にとって彼女の第一印象的な曲になってくると思うのですが、アッパーでロックでポジティブで、でも女の子らしさもあってわかりやすくて、という、印象付けのためにはとても優秀な曲なんじゃないかと。

 「リルラ リルハ」っていうのは、歌詞中の『REAL LIFE』『REAL HEART』のことだそうです。っていうか今まで知りませんでした。ずっとリルラリルハって言っているものだと。なにかの呪文だと。
 まあでもこれはたとえば「REAL LIFE,REAL HEART」とかってタイトルじゃダメですよね。カタカナにすることで、「元気を出すためのおまじない」みたいな、ちょっと不思議な感覚になってます。
 メロディの関係で、短いフレーズでしか詞を乗せられないにしては、うまくその一言ひとことで聴かせられているなあという印象。この太いサウンドに『お花 マーガレット』なんて乗せちゃうセンスも、ちょっと千秋とかジュディマリとかが入ってますが、彼女は別にロックと少女趣味のギャップを狙っているわけではない感じです。我が道を行っていてよいのではないかと。
 あとはもうちょっとメッセージに斬新さがあれば、言うことはなかったんですが。ちょっと模範的に終始しているかな。
 前のシングルまであったクセのある曲構成はあんまり好きになれなかったんで、今後このシングルのようによりポップになっていってもいいと思いますが、言葉まで万人ウケを狙ってクセがなくなっちゃうとヤだなー、と。メッセージ性においても、けっこうオリジナリティのあるいいセンスを持っているはずなので、その辺をちゃんと表に出していってほしいです。
posted by はじ at 00:07| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月04日

倉木麻衣「ダンシング」

ダンシング
GIZA
倉木麻衣, 徳永暁人, Cybersound, 大賀好修

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<もっとアダルティーに踊ってみませんか?>

 「倉木麻衣にしてはアッパー」という印象。JPOP全体で考えてみると、アッパーチューンと呼べるのかどうなのか、って辺りのような気がします。ファンの方から見れば、平均的な位置よりも温度の高いナンバーなのでしょうけれど、ちょっとそれ以外の人へのインパクトには欠けるかなあと。あくまでも倉木麻衣のイメージの中での触れ幅の内側、っていう感じがします。

 たとえば、この曲は、「ダンシング」なんてタイトルがついているように踊りに誘う曲なわけです。しかし、すごく「清潔」な感じに留まっているんですよね。そこが、あんまり高揚感がないなあというように感じてしまう原因なのかなあと。
 踊るっていうのは、清廉潔白なものじゃないと思うんですよ。特に、男女が誘い合って踊る、というシチュエーションでは。すっぱり言えば、その先にセックスを見ているんですね。狭い室内空間、体を預けあう、夜、アダルトなムード、などなど、1対1で向き合うダンスチューンのイメージというのは、男女関係の「お膳立て」的な要素で構成されているわけです。この背景をみんな無意識的に感じているから、踊りに誘ったり誘われたりする曲を聴くと、ちょっとドキドキしたりします。
 しかし倉木麻衣はというと、『一緒に君も心のシェルター/崩してみようよ』なんて歌っていても、まったくもって性的なアピールは感じません。全体を見ると、普通の健康的な励ましソングですし。それはそれで「清潔」なイメージっていう彼女の資質で長所でもあるんですが、今回のようなやや大人びた雰囲気の曲であっても、ちょっと淡白かなあと感じてしまう原因でもあると思います。あんまりドキドキしないっす。
posted by はじ at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月03日

加藤ミリヤ「ロンリーガール」

ロンリーガール
ソニーミュージックエンタテインメント
加藤ミリヤ, Takashi Matsumoto, Miliyah, Shingo.S, MaestroT

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<ステレオタイプなレッテルを、自ら認め、主張する哀しさ>

 ECDというラッパーの方が1997年に出した「ECDのロンリーガール」という曲に対してのアンサーソングということで。ちなみにさらに大元には、佐東由梨って人の「ロンリーガール」があるとのことですが、どちらも全然知らないです。
 しかしネットというのは便利なもので、その辺りをきちんと詳しく解説してくれているサイトがあるものです。以下のブログは、この記事を書くにあたって非常に参考にさせてもらいましたので、トラックバックするとともにここに紹介させていただきます。

everyday/music「佐東由梨/ロンリー・ガール」

でも、私には「今」がある「ロンリーガール」

 「everyday/music」さんの記事を読めば、だいたいの流れがわかるかと思います。大ざっぱに言えば、「ECOのロンリーガール」が渋谷の少女たちを眺めている視点なのに対し、加藤ミリヤ「ロンリーガール」はその少女たち側からの返答である、という形。ただし、サビの『ロンリーガール』というコーラスは、佐東由梨の「ロンリー・ガール」にあった旋律だということらしいです。ややこしいですね。

 ただ、そういう成り立ちのややこしさのわりに、歌われている内容は、いたってシンプル。『メール携帯手放せない』『どんなに 言葉くれても/満たされないの』などと、「現代の病んだ少女」みたいな、ステレオタイプな描かれ方です。
 ただし、アンサーソングという形式になっている、言い換えれば「少女たち」の代表として歌われている、というところに、重要な意味があります。客観的な視点から「近頃の若いモンは…」と決め付けるのなら目新しくもなんともないですが、そうではなく、決め付けられる側が、「自ら認めた」形になっているわけですね。
 そのために、どんなことが起こっているか。押し付けられた「イマドキの女の子はみんな刹那的で、誰もが実は病んでいる」というようなレッテルを否定するのではなく、いや、『容易く分析なんかしないで』と否定したがっているのにもかかわらずそうできない、そんなステレオタイプから抜け出すことができない、というある種絶望的な心情が、ここに立ち表れてきます。

 独りぼっち、どこにも行けない、楽しもうとしているのにふとため息が出てしまう…
 しかしそんな感情は、至極ありふれたものです。いつの時代にも、この年ごろになら誰でも、多かれ少なかれ経験するものでしょう。それは、8年前に書かれた歌に今ごろ返事をしていてもあんまり内容としては違和感がない、ということからも裏付けられると思います。
 ただし、上に述べたように、「答え」として言えるものがそれしかない、というのは、かなり悲痛な叫びであるように感じられます。また、さまざまな名前を羅列するのも、効果的な手法と言えるでしょう。ただ記号のように並べられる名前は、まるで表情もなく街を漂っているたくさんの少女たちの姿のようで、少しぞっとします。
 こういう点で生々しさを出せているので、ありふれたつまらない内容にはなっていないと感じました。アンサーソングという形式も、自分のこの観点からしてみたら、成功しているかなと。


 さて、付記というかなんというか、この女性名の羅列について、二点ほど。
 上で紹介した「でも、私には「今」がある」さんの記事で指摘されていますが、佐東由梨の「ロンリー・ガール」の発売と同時期に出た中島みゆき「あの娘」でも、女性の名前の羅列があるとのことです。そちらはどうやら、「こんなにたくさんの名前がある中で、私は選ばれない」という意味を持たせてあるようです。「私の名前」(=私自身)の唯一性を際立たせるために、別の名前を列挙してそれらを無個性化させているわけです。対して、「ロンリーガール」での使われ方は、無個性化する羅列の中に、自らの名前もまた混ざり、埋没していくといった雰囲気が感じられます。
 もう一点。こっちは、単純に疑問なんですが。この羅列の先頭が「マリア」という、いわゆる聖母としての意味合いがある特殊な名前なのは、何か意図的なのでしょうか?これは曲からは読み取ることができませんでした。
posted by はじ at 01:05| Comment(2) | TrackBack(3) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年02月26日

倖田來未「hands」

hands
倖田來未, Kumi Koda, hwonder, Hiroo Yamaguchi
エイベックス・ディストリビューション

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 『本当は引き止めてほしい』この一文が実によくきいています。この曲はサビが「A→A'→A→A'」という旋律パターンになっているのですが、上の一文はその最後のA'の頭、もっとも高音でかつ直前に何度も出ているラインにあります。つまりこここそは「一番フレーズを耳に染み込ませられる場所」なんですね。その位置も手伝ってか、別れたくないのに別れを選んでしまった女性の心境が、印象的に表されてます。
 しかも、本心を聞き手の前にさらけ出した後、さらに『そう言いたかった…』とセンチメンタルに続いてます。個人的にはこれはどうかと思いますが、共感の訴えを畳み掛ける、という意味では、徹底されているなあと。

 スローバラードですが、前倒しのリズム&コードのおかげで、わりと飽きずに聴けます。もっとこの「食っている」リズム感を強く出してもよかった気が。そして、ハンドクラップぽい音がフィーチャーされているのは、「かつてつなぎ合っていた手/一人凍えている今の手」という題材によるものなのでしょうか。だとしたら、なかなか遊び心がきいてますね。
posted by はじ at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年12月27日

川嶋あい「『さよなら』『ありがとう』〜たった一つの場所〜」

「さよなら」「ありがとう」~たった一つの場所~
川嶋あい, ieP, いずみたく
ソニーミュージックエンタテインメント
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 タイトルが長いよー。
 副題って、シンプルで重複する可能性のあるタイトルに簡略な説明を添えるようなものならともかく、それ以外である場合は、たいてい作者のエゴの発露である気がします。付ければかっこいいってもんじゃないんだよ、と言いたくなったりしますが、でも確かに「『さよなら』『ありがとう』」だけだったら変だよなと。「たった一つの場所」だけなら、まあ、アリかな。

 オーソドックスなバラードですが、相変わらずのピュアピュアな少女漫画っぷりが楽しめます。超王道なコードのメロディにしてもシチュエーションに浸りまくりな詞にしても、かなり「自分の好きなもの」を「こういうのが好きなんだ!」となぞっているような部分が見られ、まだまだ自分らしさを出すまでには至ってないかなと。幅が狭いというよりは、こういうのが正しいんだ、って閉じこもっちゃっている感じ。まあ、だから、好きな人は、本当にどっぷり漬かれるでしょう。
 個人的には、記念日とかカレンダーとかプレゼントの指輪とか、そういう乙女なシーンよりも、何気なく差し挟まれる『海に落ちていく粉雪たちよ せつないね』って一文にはハッとさせられたりして。こういうセンスを磨いていってほしかったりするんですが、たぶんこういう風景描写より、切ない気持ちそのもののほうに力を注いじゃうんだろうなあ、とも考えていたり。
posted by はじ at 14:15| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年12月22日

後藤真希「さよなら『友達にはなりたくないの』」

さよなら「友達にはなりたくないの」
後藤真希, つんく, 鈴木Daichi秀行, AKIRA
ピッコロタウン

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 また珍妙なタイトルですが、つまり「別れてからも友達でいよう」ってのはいやだ!って主張しているわけです。確かに微妙っちゃ微妙ですよね、恋人から友達に戻るのって。突き詰めてしまえば「お互いに、お互いを嫌いになったわけじゃない」っていう、内外へのアピールなんでしょうね。でも実際そうなると、なんだか、すごくよそよそしかったりなんかしちゃうわけです。そんなわけで、「まだ好きだから、そんな関係にはなれない、さようなら」というのは説得力があります。『一日でも 早いうちに/忘れたいの』って訴えも、真に迫ってきます。

 たいせー作曲という新しい試みで、メロディーそのものにちょっとしたクセはありますが、でも詞ともアレンジともうまく融合できているような好感触。
 後藤真希ソロはだいぶ長いこと迷走しているような気がしてましたが、元気系では松浦亜弥、正統派純情系では安倍なつみ(今消えてますが・・・)と身近に競合相手がいるわけで、そういうことも含めると、今回のような「強がり」な感じの曲がキャラ的にも市場的にも適切なのかなーと思います。

 それにしてもつんくは『ふるさとの 風景とか』とか「ふるさと」好きですよね。モー娘。の「ザ☆ピ〜ス!」みたいなアッパー系でも入れてきたりとか。こういう土着性、郷愁が根っこの方にあるつんくは、やっぱり歌謡曲的な人だとつくづく思います。
posted by はじ at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年12月20日

GARNET CROW「忘れ咲き」

忘れ咲き
GARNET CROW, AZUKI 七, 古井弘人
GIZA

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 今は遠く離れている相手への想いが、ときに記憶の奥からふっと現れてきて、どうしようもなく胸がざわついたりする。そうしたさまを、思い出の「忘れ咲き」と表現しています。
 そんな美しいタイトルに負けず、詞の内容も繊細に作り上げられています。1コーラスの中、つまりメロからサビへ流れるなかで「風景描写→(過去の出来事)→今の主人公の気持ち」と内容が移っていきますが、まず世界に引き込み、シチュエーションをそれとなく示し、盛り上がるサビで伝えたい思いのたけをぶちまける、と実に効果的な作詞の王道アプローチなので、詞を自作する/したいアマチュアのみなさま方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
 その表現も練られています。『さよならも言えず傘に隠れた』というフレーズがありますが、この短い一文で「想いを伝えられず別れてしまった」という物語がまず見え、また「そのことを後悔している」心情を聴き手に匂わせ、さらに「傘に隠れた」という表現で、フレーズの独自性と、「雨降り」というドラマティックな場面を想像させています。高等テク。

 気になるのは、口調の変化が大きいこと。綺麗な情景描写や「人は〜」と大きく語るなどの格調の高さが目につく一方で、『ずっとね』『ほらね』『そんな風にいれたらいいなって思う』という親しげな呼びかけがそこかしこに差し挟まれてまして。書き手のレンジが広いのはいいことですが、やや散漫な感じ。
 ただしこのユニットはボーカルの声質が独特で、格調高さと親しみやすさの両者を共存させるのには、かなりプラスに働いているんじゃないかなと。

 胸に込み上げる切なさを押し殺し、『思い出そっと枯れゆくまで』やり過ごそうとする。でも「花」とは、何度でも再び咲くものです。そうして「君」の記憶は、いつまでも繰り返しよみがえり、残り続けるわけです。
 美しければ美しいほど辛い、思い出の花。何度でも咲く花の特性にマイナス要因を含ませた使い方が、「伝えられなかった想い」のセンチメンタリズムと組み合わさって、いい味になっています。下手に聴くと、聴き手の記憶からもつられてあれこれと咲いてしまう力があるので、注意が必要です。
posted by はじ at 17:41| Comment(2) | TrackBack(1) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月23日

木村カエラ「happiness!!」

happiness!!
木村カエラ, Kaela Kimura, 武藤星児
コロムビアミュージックエンタテインメント

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 現役モデル、というよりなんかテレビ番組のMCで人気を博しているらしい木村カエラの2ndシングル。前回の 「Level 42」はうちのブログにしてはかなり厳しくコメントしましたが、今回はだいぶいいかなーと。適度な落ち着きあるテンポで、ポップで力強さもあって。前作はどうもテンション勝負で、メロディラインが無意味に思える乱高下をしてて構成も疑問符ついて、だったんですが今回はそういうことはないです。ハイトーンが出せるからってちょっと上がらせすぎな気はしますけど。

 詞は木村カエラ本人の自作で、どうも動きにかなりメリハリがついた旋律に合わせてフレーズが切れるのが個人的には気になってしまうんですけど、何と言いますか、プロには出せない素朴な味があってなかなかいいです。本当に飾り気のないメッセージというか・・・うまく言えないんですが。『今日を乗り越えられたら/明日だって同じはずでしょ』とか、もうちょっとうまく言えそうだけど、言わないからこそより奥まで響くものがあるような感じがするんですが、そんなことないですか?

 アルバムも12/8に出るようです。けっこう本格的に歌方面に乗り出していくみたいですね。こういう出自の方にしてはうまいほうではあると思うし、今のシーンには取り立てて競合する人もいなさそうなので、案外いい位置につけるかもしれませんね。
posted by はじ at 16:58| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年10月24日

華原朋美「あなたがいれば」

あなたがいれば
華原朋美, Kang Hyun Min, 並河祥太, Kenji Suzuki, 小室哲哉, 松井寛
ユニバーサルミュージック

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 えーと、ドラマ「東京湾景」の主題歌だったWeather Forecast「君さえいれば」のカバーということで。元曲は男声で、何よりも韓国アーティストということで韓国語で歌われてました。だから歌詞がどの程度似ていてどの程度オリジナルなのか、ようわかりません。タイトルは対応させているみたいですけどね。

 とりあえず意図がよくわかりません。日本語版を出すなら、はじめからドラマもそれでやっていればよかったと思うんですよ。いくら韓流ブームといっても、やっぱり日本語のほうがはるかにとっつきやすいんですから。しかも激しくまくしたてるようなロックでもなく、韻も意識しないこういうミディアムテンポの曲なんだし、歌詞が聞き取れることは重要なんじゃないかと。と、有線でWeather Forecastバージョンが流れていたとき、韓国語であることに気づかず「全然歌詞が聞き取れないなあ」とか思っていたことの逆恨みが、ややこもっていたりもしますが。
 そして華原朋美の起用。華原朋美がこんなカバーをする必然性はないはずですけど、なんか営業回りしているみたいでちょっと不憫になります。ソニンみたいだ。しかも、より後がなさげ。

 まあでもこの人の声そんなに嫌いじゃないし、さすがにそろそろベテランなんで安定してるし、曲調にも合ってるし、余分なこと考えなければ落ち着いていていい感じに聴けます。
 ただねー。どうしても引っかかるのがね、パッヘルベル「カノン」の一番有名なとこをあからさまに取り入れてるじゃないですか、この曲。それ自体は別にいいんですけどね、あのー、8小節の旋律を6小節で無理やり終わらせているのは、ちょっと許せないですよ。原典への愛がまったく感じられないです。単に耳を傾けさせるためだけに使われた印象です。
posted by はじ at 13:30| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年10月09日

倖田來未「奇跡」

奇跡 (CCCD)
倖田來未, Kumi Koda, Kosuke Morimoto, Reo Nishikawa, hwonder, Hiroshi Kim
エイベックス・ディストリビューション

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 R&B調に、邦楽的コード進行をうまく混ぜた、いかにもなバラードです。ゆったりしたテンポに、細かくて表拍に重さを置かない流れのあるメロディラインが乗っていて、緩やかで気だるくブルージーな雰囲気を作ってますが、もうすっかり聴き手側はこの種の音楽にも耳が馴染んでいるので、インパクトはあんまりなさげです。歌もうまいし雰囲気もあるし、いい曲なんですけどね。その辺は昔に平井堅「瞳をとじて」でバラード論として書いた部分をご参考に。

 詞は、またしても女性ボーカルによる「僕」一人称。最近BoA「コノヨノシルシ」矢野絢子「夕闇」と、紹介する機会が多いですね。二人になってからのELTやあるいはZONEはずっとその路線だし、もしかして流行ってきてるんですかね。倖田來未って初めてじゃないですか?僕視点。
 たぶんこれはJリーグ放送のテーマソングで、それで歌詞も恋愛と夢を絡めてあって、だから「僕」のほうが都合がよかったんだと思います。「君がいてくれるから夢を目指すよ」というシチュエーションは、特にスポーツのテーマだとやっぱり「わたし」や「俺」よりは「僕」がはまって聴こえるのかなと。
 まあ一人称「僕」にはまったく文句も何もないんですけど、二人称が「あなた」と「君」の二種類あるのはいただけないですな。自分としては、ただの文章でなく歌なんだから多少の言葉や文法がおかしくてもアリだというスタンスですけど、さすがにこれは見過ごせないですね。

 しかしこの曲、EXILEが歌ってても違和感ないような。メロディラインはもちろんのこと、アレンジまで似ている気がします。同じ事務所だからかなあ。
posted by はじ at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年10月06日

加藤ミリヤ「Never let go」

Never let go/夜空(CCCD)
加藤ミリヤ, Miliyah, ILLMATIC BUDDHA MC’S
ソニーミュージックエンタテインメント

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 あちらこちらで「ポスト宇多田だ」との呼び声高い、加藤ミリヤのデビューシングルです。
 えーと、そうですか?うーん。

 宇多田ヒカルと共通する点。音楽がR&Bで、まだかなり若いのに自ら作詞作曲をこなしている、というとこですか。確かにちょっと15歳とは思えませんね。
 ただ、だいたいの雰囲気は似てますけど・・・というかパッと聞きだとR&Bはだいたい同じように聴こえてしまう人が多いからとか、もしくは話題づくりのために宇多田を使っている、としか思えないですね。以下、検証。

『もう振り返らないで そう遠くへ行って/そんな悲しい瞳をしないで』
 「Never let go」冒頭部です。いきなり突き放したような出だしですが、これって「恋人よりも自分の夢を選ぶ」という歌なわけでして。恋愛至上主義になりがちであろう彼女の年代を考えると、非常に特殊に思えるというか、オトナな感じですね。

『七回目のベルで受話器を取った君』(宇多田ヒカル「Automatic」)
『夜中の3時a.m. 枕もとのPHS』(同「Movin' on without you」)
『最後のキスは/タバコの flavor がした』/ニガくてせつない香り』(同「First Love」)
 で、こちらが宇多田デビュー頃の曲の冒頭。こちらは、ドラマ性を感じさせる、かなり具体性ある描写になっています。まあだんだんとこの傾向は薄れてくるんですけど、たとえば宇多田であったら『そんな悲しい瞳』などとは言わずに、どんな瞳なのか/どう悲しく見えるのか、を述べると思うのですよ、今でも。
 宇多田に比べると、加藤ミリヤはやはりその辺の具体性が足りないかなと。全体を通して、テーマが鮮烈なぶん印象的には思えますけど、実際の言葉を拾っていくと、いかにも「歌詞によくありそうな」表現が並んでいるように思えます。ばっさり切り込んでくるような表現が見当たらないんですね。
 まあそれは別に悪いことってばかりでもなくて。宇多田のドラマ性とは異なってきますが、平易なメッセージが並んでいることで、一通りの隆盛を誇っている青春パンクに通ずる「わかりやすさ」を持っています。今の聴き手に受け入れられやすいタイプであるとは言えるでしょう。
 なので、曲調は確かに宇多田寄りですけど、詞はどちらかというとMISIAに近いですね。近いといっても、また毛色は違うと感じるんですけどね。「シンプル」と「ストレート」の違い、かな。

 歌い方も、「R&Bです」と主張しているかのようで。テクニックや雰囲気は出てるんですけど、「出そう」としているのも出てるというか。もっと肩の力を抜いて歌いこなせるようになるといいと思います。宇多田の後釜を名乗るなら、余計にですね。あの人すさまじいほど自然体だし。

 てなわけで、自分としてはTiAのほうが期待度は高いです。こっちは宇多田、あるいは加藤ミリヤの目指す大人っぽさとは違い、若さ初々しさが武器なんですけど、自然に歌うって点は宇多田に近いです。
 加藤ミリヤ、中学時代は生徒会長ってことですけど、音楽も優等生な印象です。悪くはないんですけど、もっと味があってもいいんじゃないかなと。
posted by はじ at 12:13| Comment(0) | TrackBack(1) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年09月06日

川嶋あい「マーメイド」

マーメイド
川嶋あい, Ai Kawashima, NAGASAWA, ieP
ソニーミュージックエンタテインメント

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 タイトルの「人魚」の物語になぞらえて、思いをそっと断ち切ろうとする女の子の心情を描いています。
 なんというか、ピュアさが思いっきり前面に出てきていて、ちょっとひいてしまいます。なんていうか、夢見る女の子の日記を読んでいるような、どうも落ち着かない気恥ずかしさ。別れの時とか幸せだった日々とか現在のまだあの頃を忘れられない一人の「私」とか、場面があれこれ飛ぶのもそうだし、『空飛ぶ人魚になれたのなら』なんてのもみんな、現実とはまったく異なる世界、空想が繰り広げられている感じ。
 うん、だから『あなたはもし私が見えたら/追いかけなくていいから』なんて台詞が、どろどろと締め付けられるような感情ではなく、悲しくも強い決意然として見えるのでしょうね。涙浮かべつつの笑顔で「私は平気だよ」と言う、あのスタイルです。そういうのってどっちかというと、男の子をときめかせるよりは、女の子の共感を得やすいものだと思います。
 なので川嶋あいは、女性シンガーというよりはむしろ、純愛系少女漫画の系譜に属するんじゃないかなと思うんですよ。

 ふわふわしたつかみ所のない声も、ファンタジックなピュアさには適してますよね。I WISH名義でヒットした「明日への扉」もこないだの「525ページ」(あ、こっちですでに少女漫画っぽいって言ってたや)にしても、ほとんど声を伸ばしたりしないで、細かい音符をさざ波立たせるように歌わせていて、声の特性を実にうまく利用しているなと。
posted by はじ at 18:20| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月16日

KOKIA「夢がチカラ」

夢がチカラ
KOKIA, 千住明
ビクターエンタテインメント

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 前回リリースの「so much love for you」もぜひとも紹介したかったんですが、タイミングを逃してしまいまして。そうしたら、今作はオリンピック選手団公式応援ソングになって。ああ先にメジャーになってしまった!と悔しい思いをしています。
 軽く聴くくらいだと、ちょっと拍子抜けするくらいインパクトのないように感じるかもしれません。曲も声もさわやかさは出ているんですが、応援歌にしては迫力ないですし。でも、この人の声は耳に残るんですよ。これは本当に不思議で、音楽学校でオペラを専攻しているにしては声量もあんまり感じないし、高音部は多少無理しているように聴こえるんですが、いいなあと思えるんです。表現力の問題なんですかねえ。すっごく楽しそうに歌っているなあと思うので、それも関係しているんでしょうか。うーん。
 詞は、もう、直球ストレート。なんのひねりもなし。びっくりするくらい。『合言葉は夢さ』って、ちょっとこんなベタなセリフ言えないですよ今。そういうまっすぐなままじゃいられない時代/世界だけど、それでも頑張るぞー、っていう、単純な励ましをいったん退けて、一呼吸置いたメッセージが現在同時代のポップスの主流じゃないですか。そんな時代なので、この実に単純な歌詞は、言葉だけだと陳腐にしか見えないんです、が、歌に乗るとそのてらいのないまっすぐさが、心地よく新鮮に聴こえるんですよ。やっぱりこの人の声、何かあります。絶対に。

 この「夢がチカラ」と、ありがたいことに紹介したかった前作「so much love for you」が、しばらくこちらで映像つきフル試聴できるので、興味のある方はぜひどうぞ。7/21リリースのアルバムの曲もすべて聴けます。と、回し者のように宣伝。いや、某方面でこの人の「ありがとう」って曲を聴いてえらく感動して以来、気になっていたもんで。

 最近の女性シンガーソングライター系は充実してますね。あんまり重くないのがいいし、このKOKIAとかトミフェブとか大塚愛とか、楽しそうにやっているのがやっぱりいい。これで柴田淳あたりが注目を浴びたりしたら、また一段と面白くなると思うんですけどね。
posted by はじ at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月14日

木村カエラ「Level 42」

Level 42
木村カエラ, 武藤星児
コロムビアミュージックエンタテインメント

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 モデルさんだそうです。方向性としては、矢井田瞳に近いんでしょうかねこれは。テンションの高さとか。
 いや、でも、正直言ってあんまり歌うまくないような。カラオケならうまいほうなのかもしませんが、声細いし。曲がけっこう音上下して難しそうではあります、が、歌いこなせていないっぽいのはどうかと。なんとかライン辿れている、といった感じで。あんまり好きなタイプの声じゃあないかも…

 曲も不可解。サビ前にいったんリズム隊がやんでコーラス入る意図がわからん。間奏入って最後のリフレイン前だけならわかるけど、三回もやらんでも。
 また、上で言ったように、旋律が飛んだり跳ねたり、あんまり流れのない動きをしているみたいで、そういう意味でも矢井田っぽくて。邦楽にアリガチな旋律っぽさがカケラもないので、独自性があると言うこともできるんですけど、それだったら歌詞のコトバをもっとうまく乗っけてもらわないと。声と相まって違和感ありまくりです。『自分らしくいるのが怖いなら/誰かのフリしたっていいじゃない!!』なんてフレーズは、好みだし面白いと思うんですけどね。人に同調するのも個性なわけですし。
 タイトルにはなにか深い意味があるのかなあ。
posted by はじ at 01:00| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月12日

GARNET CROW「君を飾る花を咲かそう」

君を飾る花を咲かそう
GARNET CROW, AZUKI 七, 古井弘人
GIZA

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 某曲や某曲のヒット以来、花をモチーフにした(しかも、精神的なものを花に例える)歌が増えたように思うのは、うがち過ぎな視線でしょうか。うーん。まあそんなに珍しい作り方でもないし、今までもいろいろあったけど聴き流していたのが、某曲たちのせいで気に留めてしまって耳に残るようになってしまっただけなんでしょうか。
 少なくともこの曲を聴いて、現在の和風ブームの流れを感じてしまったのは、過剰反応しすぎだったかなあと。なぜかというと、このGARNET CROWや、あとDo As Infinityあたりは、デビュー当初から一貫したメロディの傾向があって、それが時に日本陽音階を感じさせる、というだけのことで。そんなレベルで和風がどうのと言いはじめたら実際キリがないのです。
 ああ、でもこの曲は、簡単に三味線系の音色を入れたアレンジが思い浮かんでしまいます。違うというのに。

 そこまで独創的なメロディラインじゃあないはずなんですが、なんだか新鮮に聴こえるのは、声のせいなんですかね。芯がある一方で柔らかみもあるというか。個人的には、この独特さはちょっと聴いていて落ち着かなくて敬遠気味だったりしますけど、でも表現力に優れた声質だとは思います。
posted by はじ at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年06月16日

川嶋あい「525ページ」

 なにが525ページなのかというと、辞書のそのページに「LOVE」が載っていたからということです。さいですか。前回も三年間を「12個の季節」と表現していたし、そういうのが好きなんでしょう。まあ確かにそういうところは一風変わった視点で面白いかもです。
 っていうか、基本的には完璧バリバリ少女漫画の世界なんで、そのくらいのひねりがないと正直きついです。「朝の風景、登校中に『君』を見つける」「授業中仕草を見ている」「部活姿がかっこいい」「両想いになった夢を見た」「雑誌の恋占い」と、ベタベタなネタのオンパレードですが、きっと実際学生生活を送っている恋する乙女のみなさんには直球ど真ん中なんでしょう。もしかしたら、ごく少数の男の子(内気な文化系だけどオタクではなく、近所のお姉さんに憧れちゃってたり、五人以上女性がいるとかな家族構成だったりするような)なんかも入ってくるかもしれませんが。
 まあ、でも、内容としてはもう完全に「みんなこうだよね、がんばれっ」と女子中高生に向けられたメッセージになっていて、メッセージにはきちんと力がこめられています。

 だから、辞書開いて「LOVE」に印を付けたりするのって、冷静に考えるとそれってどうなの?とか思ってはいけません。ほら、プッチモニも昔そんなこと歌ってたし。『恋という字を 辞書で引いたぞ/あなたの名前そこに 足しておいたぞ』でしたっけ。で、プッチモニの方の主人公は、なんかもうその辞書なんか開かないような感じだけど、この曲の主人公は、きっと何度も付けた印を確認してたりするんだろうなあとか考えてみたり。さて、あなたはどっちが好みですか?
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