2008年07月20日

aiko「二人」

二人
二人
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aiko
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<隠された本心から漂う、切々とした切なさ>

 タイトル、そしてアップテンポで始まる曲調からして、愛し合う「二人」を描いたハッピーな歌なのかな…と想像していると、実はまったく違うテーマが盛り込まれていることに気がつかされる一曲です。

 のっけから『夢中になる前に 解って良かった』。意味深なフレーズを出しつつも、その後には一途でなかなか制御できないくらいの恋心が切々と描かれていきます。想いが止まらなくなってしまいそうな、ギリギリの状態にあること。「あなた」のどんなことも知っていきたくなっていること。そんな激しく渦巻く感情を隠すため、気がつかれないようにあえて『同じ様にあなたを見た』。
 恋の駆け引き、というにはあまりに甘酸っぱいドキドキが伝わってくる初々しさを感じる展開です。

 そう、この歌は両想いの歌ではなく、片想いの歌なのです。
 そして、ただの片想いでもありません。

 2コーラスに入ると、冒頭に示された内容がようやくわかります。『あたしの背中越しに見てた/その目の行き先を』知ってしまった。「あなた」が見ていたのは、自分ではなく、「あの子」なのだろう…

 意中の人が自分ではないことに、『夢中になる前に 解って良かった』。
 しかし、本当にそうなのでしょうか?もっと深入りしていたら『きっとダメだっただろう 怖くなってただろう』とつぶやく、それはとっくに夢中になってしまっているのではないでしょうか?「よかった」なんて言うのは、そうしなければ胸のうちの切なさを自分ではどう片付けることもできないからではないでしょうか?続きを読む


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2008年07月11日

絢香「手をつなごう」

手をつなごう/愛を歌おう
絢香
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<深みを目指すサウンド、視点の広がった言葉>

 ドラえもん映画の主題歌にして、かなり入魂のという気迫が漂う壮大に展開していくバラードです。

 上下動が激しかったり、ファルセットを多用していたり、情感溢れる歌い方にしても非常にソウルフルかつテクニカル。前作の「CLAP&LOVE/Why」でも感じましたが、より高みを目指そう、「本格派」な雰囲気をまとおうとしているようです。
 今回なんか、いかにも上質のJ-POPバラードだったヒット作「三日月」と比べると、とても洋楽に近い色合いですし、声の張り方もそちらを意識しているように思えたのですが、どうなのでしょう。

 そんなふうに、サウンド側ははっきりと一段上のレベルを狙っています。手が込んでいて深みを感じさせる一方、ややとっつきにくいという欠点もあります。
 対して、歌詞はとても平易です。『みんな生きてる 愛する人と』『未来を想うと 怖くなるけど/ずっと ずっと 続く夢があるから…』など、難しい、抽象的で回りくどい表現は一切なく、明快です。
 言葉がシンプルなので、そこまで敷居が高い歌というわけでもありません。

 ただ、語っている内容は、自分だけでなく他人の歩みにも目を向ける慈愛に満ちています。自分ひとりで悩むのではなく、「君」を気遣い、『一緒に行こう 光差す方へ』と導くように呼びかけているのですね。
 初期の頃の歌詞、たとえば「I believe」や「Real voice」などは、自分自身を奮い立たせる形で紡がれた言葉でした。そう考えると、「CLAP&LOVE/Why」から今作と、自らだけではなく周囲も巻き込んでいこうとする意志が感じられる内容なのは、本人が成長し視点が広がった成果なのかもしれません。
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2008年06月30日

宇多田ヒカル「HEART STATION」

HEART STATION / Stay Gold
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<胸のうちの想いを、インタラクティブに伝え合う>

 宇多田ヒカルの楽曲は不思議なところがあって、そこまで派手なメロディラインやアレンジや言葉でなくても、すっと入ってきて耳に残りやすかったりします。これが「声の良さ」ということなのか、何かはっきりした技巧があるのか、それとも気のせいなのか…ずっと不思議に思っています。
 今作も、『私の声が聞こえてますか?』のあたりなど、他の人が歌ったら違和感がありそうなラインをすっと歌いこなしているのを聴いて、やっぱり悩んだり。

 で、この歌のテーマは「伝わる/伝える」ということ。
 言葉にしていない/できない気持ちを、届いているのかどうかと投げかける。伝わっていってほしい、その想いを発信する人々それぞれが「Heart Station」=心の放送局を抱えているんだ、というようなところでしょうか。
 そんな観点を盛り込みつつ、フォーカスしているのは深夜に邂逅している『ワケありげな二人』のこと。歌詞を読んでいくと、どうやら別れ際のようです。お互いの行き違い、口に出そうとしてもきちんと伝えられない感情…そんな中でなんとかして胸のうちの複雑に絡まった感情を「伝えたい」、そんな切々とした想いが綴られているように思います。

 すごいのは、そんな風にひとつのドラマを浮かび上がらせつつ、この「伝わる/伝える」というテーマを一般的な内容まで広げてもいること。
 まず、忘れようとするほど『どうして/いい思い出たちばかりが残るの?』なんてぐさっとくるフレーズで「ワケありげな二人」の物語も印象付けています。かつ「Heart Station」という単語を生み出し効果的に使うことで、どんな人でも心の声を発信しているんだ、ということを暗に主張しているのですね。
 『私の声が聞こえてますか?』から『今もぼくらをつないでる』と一人称がシフトして広がっている点なども、裏付けとして指摘できそう。


 で、さらにどうしても押さえておきたいポイントがひとつ。続きを読む
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2008年03月22日

ERIKA「Destination Nowhere」

Destination Nowhere
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<自然に身を置き、前進しようという意志を放つ>

 「FREE」で華々しくデビューした新人アーティスト?ERIKAの2ndシングル。ドラマ「モップガール」主題歌でもありました。
 まあ沢尻エリカの変名プロジェクトなわけですが、例によって当ブログの方針により、沢尻エリカ自体のあれやこれやについては特に触れません。

 曲調はロックテイストで、そこに『私はどこまで歩いてゆけるのだろう』とつぶやいてみせる歌詞がそこに乗ります。
 「砂漠」「星」「雪」「風」など、自然情景描写が多いのが特徴でしょうか。雄大な景色の中に「私」を置いてみせるこうした歌が多いのは、現実から自身を切り離せる、ということが大きいでしょう。自問自答をして、「自分らしさ」だったり「これからの未来」を考えたりするために、日常の喧騒ではなく、大自然の中にぽつんと立ってみる…ということは、実際に多くの人がやっていることなわけで。それを歌詞の中、イメージで作り出しているんだと考えるとわかりやすいでしょうか。

 また、そんなキレイな自然描写の中で、『目先のことに迷うな』とちょっと強めのメッセージが入っているのもポイント。はっきりした決意をしたんだというアピールを感じます。『聞こえない声さえ聞こう』というあたりも、貪欲に前進しようという意志を感じさせます。

 細かく見るのであれば、特にメッセージ部分に関しては、表現において焦点を絞りきれていないかなあという感はあります。
 顕著な例が、『夜のうちにつもってた 雪を踏むように/静かに歩いている』なんてなかなか素敵なフレーズだと思うんですけど、サビでは『Take off to the sky』と、歩くんじゃなく空を目指しちゃっているのとか。
 『目的地なんかいつも通過点』『今を感じて』と、とにかく進んでいきたい!という気持ちが強いのは感じます。だから、歩いてでも飛んででも、みたいになっちゃったのかもしれませんね。
 そういうわけで、歌詞は意外と荒削りな気持ちが見え隠れする一曲なのでした。
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2008年02月09日

大塚愛「ポケット」

ポケット
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<一緒に歩もうとしながら、相手を主体にするいじらしさ>

 大塚愛のしっとり系ナンバー、2007年は「CHU-LIP」「PEACH」とアッパー系が2曲続いたぶん、「金魚花火」のような夏らしいものではなく、楽曲の雰囲気も「あなた」の『ポッケの中』で手を繋ぐというフレーズも、肌寒い季節を連想させる内容になっています。

 『あなたのポッケにおじゃまして』と、タイトルは「ポケット」ですが、歌詞に出てくるのは「ポッケ」。こういう言い方に象徴されるように、この曲は恋人に対する女の子のかわいらしさ・いじらしさを感じさせるフレーズが多いなあと感じます。

 わかりやすい例が、サビの『あなたの重荷とかじゃなくて/荒れやすいあなたの手をあたためてあげよう』です。
 サビの頭というのはもっとも聴かれるポイントで、だからもっとも重要なフレーズを置くのが、暗黙の…というか自明のセオリーです。そこに「重荷になりたくない」。
 助けてあげたい、じゃなくて、邪魔になりたくない、という言い方は、似ているようでかなり違います。積極的に相手に干渉していこうとするのではなく、主体はあくまでも「あなた」で、そこに頑張って着いていくという感情なのですね。続く、手を暖めてあげたいという感情も、よりその色合いを強めています。
 主流としては『二人でステキになろう』と共に歩んでいこうというスタンスを主張していながらも、実はちょっと男性を立てるような想いを混ぜ込んでいるのです。ここに「いじらしさ」を感じてかわいいなーとぐっとくる男性、共感する女性は多いのではないでしょうか。

 作った料理を残さず平らげるのを『優しいあなたの心使い』と言ってしまうのも、「料理を作ってあげた」自分の行動より「食べてくれた」相手の行動をより大きいものと捉えていることがわかるフレーズで、やっぱりいじらしさをかき立てる心情になっていますよね。「あたし」の料理が下手でおいしくない、ということではないのです。…たぶん。続きを読む
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2008年01月30日

Every Little Thing「恋をしている/冬がはじまるよ feat.槇原敬之」

恋をしている/冬がはじまるよ feat.槇原敬之
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<飾らない会話のリアルさ/細やかな観察眼のリアルさ>

 両A面で、冬らしいバラードと槇原敬之のカバー2曲となっています。

 オリジナルの「恋をしている」ですが、こちらはそういう触れ込みはないものの、「冬がはじまるよ」のアンサーソングというか、同じようなシチュエーションを自分なりに解釈して書かれたかのような印象を受けます。
 とあるカップルが、冬を迎える。何気ない日常が続く幸せを願いながら、決してシリアスすぎず優しい雰囲気が漂っている…と、設定やコンセプトが非常に近い。小物にビールが出てくるところもおんなじです。
 最初から念頭にあったわけではないのかもですが、「冬が〜」を同じシングルの中に入れているということは、おそらく意識してのことでしょう。

 穏やかな恋人同士の描写が歌詞の大半を占めていて、そこに『こうやって/また同じ冬を/君といること/愛しく想うよ』と、飾らない気持ちをさらりと歌っています。
 で、1コーラスでは相手のセリフとして「僕」が、そしてラストでは「僕」が一人称に使われているので、男女双方の視点から歌っているものと推測できます。たぶん、1コーラスが女性、2コーラスからが男性、という感じでしょうか。

 楽曲も派手ではないように、綴っているフレーズも凝った言い回しや目を引く表現があるわけではありません。が、ただ「ありがち」なのではなく、いかに「何でもない」普通の恋人同士を描き、そのありふれた幸せを浮かび上がらせるか?という点にあれこれと心を砕いていることが感じられます。
 わかりやすいのは、ここ数作そういう傾向があるのですが、ひらがなを多用したり、細かく区切って書いたり…という表記上の工夫。きちんとした形で引用してみましょう。

 ちいさくキスをした
 ほら
 愛しいものがたり

 というこの出だしだけでも、柔らかな印象がつかめるのではないでしょうか。

 で、言葉の言い回しもまたさりげない気遣いを感じるのですが、今回は特に、何箇所か挟まれているセリフ部分に気を引かれます。
 『沈んだ日でも/それも素敵な僕だ、と/君は言う』『「やっぱりいいな/こうゆうのが凄く/嬉しいな」』…という言葉たちは、前後関係は特に説明されません。また、言い方が「〜でも、それも」「こうゆうのが」と少しだけ正しくなくて、何のことだかややわかりにくい。
 でも、あえてそんな言い方をさせることで、口語的・日常空間での何気ない一言というような雰囲気が出てきます。そして、話しているお互いはきっと充分に通じ合っているんだな、と聴き手に感じさせる働きもあります。この辺り、さりげないですが「何気ない恋人たちの日常」を巧く切り取っているのですね。続きを読む
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2008年01月16日

安藤裕子「海原の月」

海原の月
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安藤裕子 山本隆二 松本隆
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<奥行きのある感情を表現する曲とイメージ>

 2004年デビューの女性シンガーソングライター、安藤裕子の新曲。
 2005年にCMで起用された「さみしがり屋の言葉達」で知った人で、その曲では松任谷由美っぽい声と楽曲アレンジだなーと感じたのですが、今回はまた違った歌い方&曲調になっています。

 映画「自虐の詩」の主題歌ということで、感動作品とのタイアップらしくストリングスを多用したなかなか壮大なアレンジ。そしてそれに応じるように、透き通りながらも遠くまで届いていくような広がりを感じさせる歌い方。力強く歌い上げまくるわけではないのですが、この広がりが感じられるぶん、淡々としながらも感動的に響いてきます。
 サビでかなりファルセットを多用しているのも、しみじみとした感慨深い雰囲気を醸し出すためのものなのかも?とも。

 タイトルである「海原の月」ですが、実は、歌詞中には海も月も出てこないのです。状況の描写ははじめの『夕闇に 光るアスファルト』だけ。歌詞だけ見ると、海である必然性はどこにも感じられないんですよね。
 だからこの題は、上記のアレンジや歌い方に見られるような、静かな感動を呼び起こすためのイメージなのかもしれません。広い夜の海に、燦々と輝く太陽ではなく静かに光る月…まさにちょうどいいシチュエーションですし。

 そして同時にこのイメージは、歌詞に描かれる「私」と「あなた」の関係性にもかかってきているように感じます。片想いの相手との別れ際、というシチュエーションのようですが、『翳るような 私の背中を/抱き寄せて あなたは泣いた』という冒頭は、単にそれにとどまらない、二人の間のドラマを感じさせます。
 「あなた」がちょっと弱々しい、あるいはためらいや翳りがあるように描かれているのが気になります。泣いてしまう冒頭もそうですし、「私」は「あなた」からのアクションを待ち望んでいるのですが、『ためらってキスをして』や『うつむいて離さない そう誓って』などのフレーズからは、「好きだ!」「あたしも!」みたいな激しさ/ドラマティックさではなく、どこかぎこちない想像をしていたりするんですよね。単純にはいかない、何か奥行きのある事情を想像してしまいます。

 複雑な事情を感じさせる二人。そんななか『動けない/だって目の前に あなたがいる』という「私」の大きな感情…そんな歌詞世界が、「海原の月」というイメージで包括されているわけですね。
 暗くて、不安定で、静かな中にも確かに輝くものが浮かんでいる。…そんな感じでしょうか。
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2007年12月23日

絢香「CLAP&LOVE/Why」

CLAP & LOVE / Why
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<曲調に合わせた、メッセージの投げ方の違い>

 「三日月」「Jewelry day」とバラードが続いた絢香ですが、今回は両A面、片方は今までの枠内から大きく外れる攻撃的なサウンドに乗せたメッセージソング、もう片方はここまでの路線を引き継いだバラードとなっています。


 アグレッシブな音に乗り、今までにない骨太な声で歌い上げられているのが「CLAP&LOVE」。
 名前のように手拍子が全編に渡り鳴り響いていますが、特に歌詞中には登場せず。これはジャカジャカとかき鳴らされるギターやヘビーなベースと共に、「ハッパをかける」感じなのかなと。応援とか一体感とか、そういう一般的な手拍子のイメージよりも、もっと攻めの姿勢で、『青い空に「戦いのスタート」が鳴る』というフレーズが示すように、気持ちをどんどん前に前にと煽るような響きになっているなあと。

 『変なテクニックばかり身につく』『行ったり来たりの毎日』というような惰性に埋没した日常から脱しようとする、これはメッセージソングの王道ど真ん中。ただ、サビで叫ばれるメッセージ『広がる世界の中で/何度探しても答えは一緒』てのは面白いですね。目新しいことを見つけだそうともがくんじゃなく、いつの時代も答えは同じなんだ、とすっぱりと宣言する。このストレートさは清々しいですね。
 『計画通りになんかいかない人生 だから面白いんじゃないの?』というのも同じメソッドで、うまくやろうともがくんじゃなく思い通りにならないことを楽しめばいいじゃん、という。
 で、どちらも「言いっぱなし」なところが曲調に合ってます。答えは一緒だ、までで、「だから無理しなくていいんだよ」とまでは言わない。面白いんじゃないの?と尋ねておいて、「面白いよ、楽しもう!」と誘ったりはしない。あんまり優しく呼びかけすぎず軽く突き放したまま、というこの距離感が、攻撃的なサウンドにちょうどいいのかなあと。続きを読む
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2007年12月04日

宇多田ヒカル「Beautiful World/Kiss&Cry」

Beautiful World / Kiss & Cry
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<「ほんの少し」の関係性に宿る「救い」/肩肘の張らない、身近な勇気付け>

 ダブル大型タイアップで話題になった、宇多田ヒカルの両A面シングル。前作の「Flavor Of Life」と合わせ、すっかり人気も復活した感があります。

 「Beautiful World」は、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の完全新作版と銘打たれた映画3部作の第1作、「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序」のテーマ。宇多田本人が大ファンで、かなり作品側を意識して曲を作ったとのことです。
 ピアノの音色が印象深く鳴り響くスタイリッシュな楽曲に仕上がっていて、はじめは違和感もありましたが、聴いているとけっこう馴染んでくるものです。また、歌詞は確かに意識しているなあという感じ。

 『寝ても覚めても少年マンガ/夢見てばっか 自分が好きじゃないの』というような自己否定、また『何が欲しいか分からなくて/ただ欲しがって』『言いたいこと言えない』というような閉塞感は、作品にも通ずるものですし、また現代社会に生きる若者の病理のひとつでもあります。
 そこに投げかけるのは、「僕」に対する「君」、というような他者との関係性からの救いです。重要なのは、決して「救う」「救われる」わけではないということ。つまり、上から助けようとしたり、何かを要求したりするのではないのですね。等しい関係を歌っているのです。
 それにしても、ただ『君の側で眠らせて』とだけ願っていますが、たったひとつの願いにしてはずいぶんとささやかです。『どんな場所でもいいよ』ですし、ほんのささやかな関係性を作ることを、ひたすらに願っているような印象を受けます。
 「救う」でも「救われる」でもなく、ただ側にいることだけの関係。そこに「救い」がある…そんなところでしょうか?

 多く深くを主張しない「ほんの少し」テイストは、『元気にしてるなら/別にいいけど』『気分のムラは仕方ないね』などのフレーズにも読み取ることができます。
 ただ、『自分の美しさ まだ知らないの』なんて言葉からは、その「ほんの少し」の関係性から相手を変えていきたいと願う、そんな意志も感じられはしないでしょうか。
 ちなみにこのフレーズですが、「エヴァ」原作のオープニングだった高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」の『少年よ 神話になれ』に共鳴しているような気がしているのは、自分だけでしょうか。続きを読む
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2007年11月28日

aiko「星のない世界/横顔」

星のない世界/横顔
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<何気ない日々にふと感じる「切なさ」と「愛しさ」/重過ぎない適度な「切なさ」>

 aiko両A面シングルは、どちらも「切なさ」を感じさせる内容。とはいえ、シチュエーションはまったく違います。

 まず、「星のない世界」のほう。こちらは最初は失恋の歌なのかなと考えていたんですが、どうもそうじゃないのかなと。サビだけを聴いたら、<失ってはじめてその大切さに気がついた/あなたとの日々を思い出すと強くなれる>という王道パターン2連続かなと思ったりしたんですが…現在進行中のカップルを歌っているみたいです。

 aikoって、こうしたミディアムテンポのしっとり楽曲が圧倒的に多かったりします。ドラマティックな展開よりも、こうした何気ない心地よさのある雰囲気のものが、彼女自身のモチベーションにもっともしっくりくるのかな、とか思ったりします。
 『昨日より少しだけ多めにあたしの事を考えてほしい』
 『思い出の帰る温かい匂いと共に抱きしめてほしい』
 日々の中で、ふと考えること。当たり前の生活の中にしみじみと相手の大切さや、自分の想いの強さ大きさを切々と見出す…どうもそんな描写になっているようです。

 こうした楽曲のフレーズを読んでいくと、なんというか、「何気なさ」を描き出すのが巧みだなあと感じます。大きな展開があるわけじゃなく、かつしっとりした曲調でも飽きさせないように言葉を繋げられるのは、やっぱり恋愛の細部を描写する彼女のスタイルだからこそ、ではないでしょうか。
 『許してくれるなら』『全部我慢してやっと溢れ出した涙』とあるので、すれ違いやぶつかり合いもこの前にあったのかもしれませんね。そのあたりを明確にしないところも、自然体の「思い」という雰囲気を醸し出しているのかもしれません。

 『星がない世界なら 目を閉じて証明するのに…』
 タイトルにもなっているこのフレーズですが、実はいまひとつピンときていなかったりします。なんか、すごくキレイな言い回しだし、感情もこもっているんだろうなあという一文なんですけど、じゃあ具体的にどういう感情を表しているんだろう?とちょっと考え込んでしまうのです。
 もちろん、そんなのは各自聴き手側で補完すればいい話です。もともと断片的な言葉の紡ぎ方をする人なので、自分なりにシチュエーションを補えばいいんですけど、個人的になかなかぴったりと落ち着かせられないのです。
 「たとえ暗闇の中でも…」と想いの深さを伝えようとする流れだろうなあとは考えつつ、目を閉じるのはなぜだろう?と。いろいろ考えましたが、自分の腑に落ちる解釈が見つかりません。いまのところ、「星がない暗い世界だったら、目を閉じてでもあなたとなら大丈夫なんだと証明できるのに」という、自分の想いの深さをなんとか伝えたいからこその空想なのかなあ、というのがもっともしっくり来るかな?続きを読む
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2007年11月05日

RSP「Lifetime Respect-女編-」

Lifetime Respect-女編-
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<ただ応えるだけが「アンサー」じゃない?>

 今から6年前にスマッシュヒットとなった、レゲエに乗せた直球プロポーズソング、三木道三「Lifetime Respect」。男性から女性に向けたミリオンヒットシングルに対し、女性側からの返答として作られたのが、このアンサーソングです。

 このRSPが何者かというと、肩書きは「HIPHOP・R&Bダンスユニット」。ソニーミュージックエンタテインメントと読売テレビが主催したオーディションプロジェクト「REAL STREET PROJECT」の選抜メンバーで結成された、女性ボーカル×2・ダンサー4という構成のユニットです。
 そのためか、三木道三の原曲よりもR&Bの色合いが感じられる、しっとりした雰囲気になっているように思います。

 サビは、原曲の『一生 一緒にいてくれや』をサンプリングした後で、『嬉しいよあたしを選んでくれて』と答えていく形式。『ちゃんと俺に愛さしてくれや』⇒『ちゃんとあたしに愛さして欲しい』とか、『けど欲しいお前との赤ちゃん』⇒『あんたの子供産んで育てたい』のように、原曲のメッセージをそのまま投げ返しているなあという印象があります。
 原曲で「言われた」セリフをすべて丁寧に拾い投げ返していくあたりは、愛情の量や、二人の関係は対等だ!という意図があったのかもしれません。

 プロポーズソングへの返答という目の付け所、そして原曲ときちんと相対している姿勢は評価できます。まあ、ただ、それ以上の広がりがあるかというと…と考えると、原曲を反対側からなぞった程度かなあという気も。
 それは原曲に対して真摯な態度だとも言えるので、原曲が好きだった人は楽しめるかと思うのですが、そうでない人にはどうしても「話題づくりのためにこしらえた曲」という印象を持たれやすいのではないかなと。

 例えば、『今の気持ち 子供や孫に伝えたい/二人の両親に感謝伝えたい』なんていうフレーズは、ひたすら二人で生きることについて語っていた原曲にはなかった部分です。こういう部分がもっと意図的に取り込まれていたなら、より面白いし意義のあるものになっていたんじゃないかな?と思ったりするわけで。あるいは、男性のメッセージである原曲に対し、もっと女性らしいアプローチをする、とか。本来アンサーソングとは、何らかの形で原曲を元に新しいものを生み出していくものですし…

 まあ、でも考えてみると…プロポーズしてきた相手の言葉を、ひとつひとつ、丸ごと受け入れていくというスタイルそのものが、女性側の深い愛情だとも言えるのかもしれません。
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2007年11月02日

Every Little Thing「キラメキアワー」

キラメキアワー
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<明確な意図に裏打ちされた表現で、我が道を行く>

 なんというか、もうあんまり大ヒットには興味がないのかなー、という印象です。こういうのやりたいから、好きな人だけついてきて、みたいな。

 Every Little Thingの新曲は、爽やかさを感じさせるポップなナンバー。ほぼ1年ぶりの新曲となりますが、近年のELTの変化を見て取るには格好の題材です。

 まずは曲。Aメロの大部分がコードの上にない音になっていますが、このことで聴き手にわかりやすさ/インパクトを与えるよりも、抜けのある響き/すっきりした雰囲気を作ろうとしています。これはサビ最後の歌い終わりにも共通することで、主音、いわゆる「ドレミで言うところのド」で終わっていないため、明確に「ハイ終わり」となるわけではなく、そのぶん先に続いていくような広がりを、余韻に持たせる形になっています。
 定型的な王道ラインを、少しずつ「あえて」外している感がありますね。

 90年代、五十嵐充がメンバーに在籍しシングルの作詞作曲を行っていた頃とは違い、サビと言えどもハイトーンに頼らない流れになっているのもポイント。当時の持田香織のハイトーンは、かなり粒がはっきりしていて、そのぶん耳に残るという点はありました。
 が、そうした発声はこの曲では使われていません。印象の強さよりも、後ノリ・シンコペーション多用の曲調に沿い、流れていく音楽を壊さないような、さらっとした雰囲気を重視したかったのかなと。
 …まあ、歌を聴いていると、単純に高音があんまり伸びなくなっているような気もしますが…

 言葉は、まず目に付くのは「ハイファイ メッセージ」で見せたような、普通は漢字で書くような語にもひらがなを用いているところ。ひらがなを多用して柔らかな感触を作る、というのは言語表現の定番ネタではありますが、かなりこだわって実践しているのがわかります。
 『どこにだってとべるんだ』『夏は あさやけと かがやきのアワー』など、普通は漢字で書くような語もひらがなに変えていたり、『そう みあげてごらん 御覧よ』というフレーズを見ると、ただひらがなにするというのではなく、明確な意図を感じますよね。まずはひらがなで優しく語りかけ、その後「御覧よ」と漢字で付け加えることによって「強さ」を出そうとしている…というところではないでしょうか。
 その他、「ほぅら」という言い方などからも、同じような方向の表現意図を感じました。

 持田香織は、歌い方も変わってきた感がありますが、合わせて詞のほうもあれこれと考えて工夫しているなあと思います。今回くらいになると、かなり肩の力が抜けて、幅も広がってきている気が。
 たとえば「キラメキアワー」というタイトルに対し、曲中では『夏は ときめきと きらめきの泡』と歌っていまして。「泡」と「アワー」をかけているわけです。こういう表現って、変に「カッコいい詞を書こう!」みたいな意識があると避けてしまいがちなタイプのものですが、その辺もさらっと入れられる遊び心があるわけで。

 そして、このフレーズ部分での「ときめき」「きらめき」の言葉選びについては明快ですが、実は冒頭でも『さぁ ゆこう ひらめきの空へ』とありまして。この「ひらめき」も、おそらくは関連させて選んだ言葉だろうと。部分ごとではなく、全体に気を配って詞を練り上げていることを感じさせてくれる箇所でした。
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2007年10月26日

大塚愛「PEACH」

PEACH/HEART
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<収束しないまま詰め込む連想モチーフ>

 「CHU-LIP」に続き、今年2発目の脳天気系アッパーチューン。夏リリースということで、季節も意識したかなりノリ重視の速いテンポで展開していきます。
 「桃」=「おしり」という発想だけだとベタですが、この曲では「ハートマーク」の逆さまの形とも見立てているところがポイント。確かにそうだ。「CHU-LIP」のときもそうでしたけど、こうしたちょっと面白いネタを拾ってきますね。

 で、この発想を中心に据え、そこから広げていくように(+夏っぽさ陽気さを加えつつ)詞が綴られています。ハートの形は『一点で不安定だからすぐ一転する』=桃の形になる、『だけど返してみるよ』。つまり、カッコよく言えば<愛ってとてもアンバランスなものだけど、たとえ何度つまづこうとも、私はあなたへの想いを貫いてみせる>といった感じでしょうか。
 真面目なことをあえて真面目に書かず、あえてユーモアを交えて軽く書いてみせる…というよりは桃→ハートの発想から単に広げてみたという感じでしょうけど、結果的には脳天気でポップな楽曲にそういうメッセージを織り込み、ちょっと深みを持たせているわけですね。
 あと、「おしり」への連想も入ってます。2コーラスでは「PEACH」を「BEACH」にして、『お尻だらけの誘惑/少しくらい心配したっていいじゃない、信じてるけど』…と、バランスを崩した状態=誘惑が多い、と合わせている、と。

 そういうことで、脳天気な中にもあれこれ意味が織り込まれているわけですが…ただ、あんまり設定を詰め込もうとするあまり、字余りや字足らずが多くメロディラインが安定しないのが気になるところ。相変わらずキャッチーなことはキャッチーなんですけど、言葉がうまく乗っていない点があるため、ちょっと間延びしたような印象を受けてしまいます。
 また、あれこれイメージを広げていくのはいいんですが、中身がとっ散らかっている感はぬぐえません。桃やハートの一節と『夏だねぇ!』という季節設定および「お尻の誘惑」にはあんまり繋がりが見えないですし、『機嫌直して 楽しもうよ』というのも唐突で、あれ?ケンカしてたの?みたいな。まあ「PINCH」って言ってますけど、状況説明があんまりうまくないなーと。
 前回「CHU-LIP」でも、というかずっと前から感じていましたが、彼女の詞の乗せ方はあんまりうまくないのです。それが今回は特に気になってしまいました。また、「フレンジャー」なんかもそうでしたが、歌詞にあれこれ詰め込みすぎて、中心がぼやけてしまいがちな傾向もそうですね。まあ、これはこれでバラエティ豊かでいいんじゃないか、とも言えそうではありますが。

 そういう素っぽさと、だからこそのわかりやすい言葉や音、そしてマイナス面が気にならないくらいにカバーするアレンジ力が彼女のアッパー系楽曲の特徴でして。今回も、手拍子の合いの手や『愛しちゃうから』のキメ部分なんて、実にうまいですよね。
 ただ、そうしたあれこれでカバーできない部分で息切れし始めてしまっているような気がします。だからリリースラッシュさせずにゆっくり育てるべきだ、って「金魚花火」の時点で言ってたんですが…

 アッパー⇔しっとりの往復だけでなく、新しい方面に挑戦したり、誰かに曲を提供してもらったり。あるいは充電期間を置くという選択もあるかもですが、とにかくちょっと次の段階に移る時期なんじゃないかなーという気がします。
posted by はじ at 23:52| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月02日

ERIKA「FREE」

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<別人扱いにすることで、キャラクターを独立させる>

 「フランス出身の新人アーティスト」としてデビュー、オリコン1位を獲得し颯爽と表舞台に現れた期待のニューカマー…という扱いですが、「沢尻エリカに激似!」どころじゃなく本人です。
 覆面での活動というならあんまり野暮なことは言わずにおこうかとも思うんですけど、誕生日などの公開プロフィールも同じだし、あんまり別人だと言い張るつもりは初めからないような感じです。事実上、別名義での歌手活動ということになるのでしょう。

 で、なんでわざわざ別人という見せ方をするのか。もちろん、「話題性」という点も大きいでしょう。もともとは清純派な役柄で出てきたのに、いつの間にか芸能ニュース常連、何かとお騒がせキャラで通っているみたいですし…あえて話題を作っているような面はあります。でもただ話題づくりというわけではなく、そういう彼女自身のキャラクターと切り離したかった、という意向もあるのかなあ、と思うのです。
 今回のこの曲は、ロック系サウンドに乗せ、『答えがあるから 今を生きてる/守りたいものが ここにある』と、純粋な想いをつづった内容。Kaoru Amane名義で出した「タイヨウのうた」とも違う方向性ですし、彼女自身のこれまでのキャラともちょっと違います。そもそも、一人称は「僕」ですしね。

 思うに、この「ERIKA」という設定は、何かとスキャンダラスな存在になった沢尻エリカ本人とある程度切り離して見せることで、音楽は自由にあれこれやっていきたい、自由に聴いてもらうようにしたいからこそのものなんじゃないでしょうか。
 たとえバレバレでも、別人として主張することで、「こんなの沢尻エリカらしくない!」という批判を封じ込めることができる…と言うと、わかりやすいですね。

 そういう意味では、作品中で演じた役柄名義でリリースした前作とはだいぶ意味合いが違ってくるのかなと。どちらかというと、DJ OZMAなんかと近そうです。あれも、氣志團ではできないディスコサウンドをやるには、本人そのままではなかなか難しい面があったでしょうから…
 特に今回なんか、『君がいるだけで 僕は飛べるよ』『失ってきたもの 手にしたもの/全部抱いて 走る』など、歌詞に描かれているのはとてもピュアな感覚です。こうした内容を効果的に演出するには、「あの人気女優が歌っている!」というよりも、「彗星のごとく現れた無名の新人歌手!」のほうが似合っている、ということもあるでしょうから。

 それにしても、2003年柴咲コウのRUI「月のしずく」以降、架空の設定でのリリースが増えてきています。フィクションが身近になった、楽しめるようになったという聴き手側の心理も背景にありそうです。
posted by はじ at 01:49| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月30日

絢香「Jewelry day」

Jewelry day
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<「いい思い出」になる、その前に>

 映画「ラストラブ」主題歌。絢香初の映画タイアップということです。
 「三日月」に続く、音の薄い、シンプルなバラード。あちらはピアノ主体から徐々にストリングスやリズム隊が盛り上がる形式でしたが、こちらはアコギ主体。より音が薄くアコースティックな色合いが強いようです。
 その中で語られるのは、終わってしまった恋を振り返る切ない想い。『君といた あの歌がまだ聴けない』など、忘れきることができない幸せな日々を「Jewelry day」という言葉に表し、思い返しています。

 終わった恋をただ嘆くのではなく、『愛する喜びをくれたあなたに/“ありがとう”叫ぶよ』と感謝するなど得るものを見出すのは、ここ最近人気の潮流に沿ったものです。
 ただし、その後に『聞こえてるなら/声を届けて お願い…』と、まだ過去のことだと割り切れない感情が色濃く残っているのが印象的。ここでの「ありがとう」は、これから前を向いて進んでいくために区切りをつける言葉、いわば「君」との記憶を「いい思い出」にするためのものです。なのに、それに対して「君」からの返答を求めてしまわずにはいられない。曲の結びが『立ち止まっては/夢を見るのよ 今年も…』となっているように、「いい思い出」化するにはまだ時間がかかりそうです。

 華やかなタイトルでも、曲調はぐっとシンプル。ここまで音の少ないシングルというのも珍しいですし、「二人の幸せな日々」と「独りになってしまった今」を対比しているようでもあり、いいアレンジだなあと。
posted by はじ at 03:01| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月22日

あみん「待つわ'07」

ひまわり/待つわ’07
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あみん
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<「懐メロ」の代表格と、今この時代の共通項>

 今回はちょっと変化球で。
 代表曲である「待つわ」が大ヒットしたのは、実に1982年。あれから25年、伝説の女性デュオが活動を再開しました。
 といっても、片方の岡村孝子はずっとソロでシンガーソングライターとして活動し、少なからぬ地位を築いていたりはするわけですけれど。最近では映画「逆境ナイン」の主題歌として、「夢をあきらめないで」をリマスタリングしたりしていました。

 アリスとかサディスティック・ミカ・バンドとか、最近は長年のブランクを経て活動再開したり再結成したりする往年の名グループがいくつか現れています。
 数年前の懐メロカバー曲の隆盛もそうですが、CDの登場から1990年代ずっと「若者」のための市場であったJ-POP界隈は、セールスが伸び悩み始めた2000年くらいから、世代をもっと広げるべく少しずつ膨んでいこうとしている感があります。実際、これからは特にそれが重要になるだろうとは思っていますが。

 とりあえず、あみんについては、25周年という区切りであることあたりが再開の理由なのでしょうけれど…考えてみると、今回セルフカバーした「待つわ」って、案外この今の時代に合っているような気もするんですよね。

 『私待つわ いつまでも待つわ/たとえあなたが ふり向いてくれなくても』という一途な思い。当時から「暗い」と言われていたそうです…が、でも、そこまで突き抜けた暗さじゃないですよね?
 確かにマイナー調だし、真摯な感情がこもっていて、あっけらかんとしてはいません。でも、ハーモニーはキレイだし、『青く広いこの空 誰のものでもないわ』なんて強さをかんじる言葉もある。弾みのあるリズムなのもポイントで、もしメロディラインが弾まずベタだったら、それこそ本当に暗いだけの曲になってしまっていたかもしれません。
 思うに、決して暗いだけの内容じゃないからこそ、ヒットしたんだろうなあと。曲調の弾みや歯切れのよさ、そして透き通るハモリがマイナー調を押さえたのも大きいですし、また言葉もきっとそう。「待つ」一辺倒なのは、受動的なようでいて、『いつもあなたの前では/おどけてみせる道化者/涙なんていらない』とまで徹しきるのは相当な精神力が要るでしょう。「あなた」の恋が叶わないのを待ち続ける…というのも同様です。内に秘めた精神的な強さ、それが感じられるという点が、ヒットの理由としては外せない面だと思うのです。

 当時は生まれた頃なので、もちろんそんなよく知っているはずもなく、たぶんに憶測になってくるのですが…なんというか、当時は現役女子大生デュオ!という肩書きだったわけで、そうするといわゆるユーミンとか中島みゆきとかのシンガーソングライターよりは、アイドル寄りに受け取られていたでしょうし。
 そんな立場でこの手の歌を歌うという点で「暗い」と思われてしまいやすかったのかなーと。振り付けも薄いし、色恋沙汰での悩みには違いないのですが、「生き方」に通じるシリアスな面もありますしね。


 で。
 この曲の持つ「一途さ」「芯の強さ」「シリアスさ」…こういった諸々の要素って、実は、今の時代のJ-POPにかなり近い部分があるのでは?と、ふと思ったのですね。続きを読む
posted by はじ at 08:38| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月01日

aiko「シアワセ」

シアワセ
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<「女の子らしいハッピーチューン」が万人に受け入れられるためには>

 『見上げたら喉が愛しかったので 甘いキャンディーの事も忘れて
 小さいあたしの唯一の特権 思わずキスをしたの』
 そんなわけでaikoらしさ全開の、ハッピーなラブソングです。

 このところ、女性ボーカリストでも一人称が「僕」になるような中性的で透明感が出るタイプの楽曲が目立っているように感じます。が、そんな中にあってaikoは、ひたすら女の子らしさを全面アピール。
 しかも、今回のような「シアワセ」に満ちたアップテンポナンバーで。どうも最近はハッピーな歌というのはバラードばかりで、アップテンポなものでは少なくなっているような気がするんですよねー。すぐ思いつくのはYUI「CHE.R.RY」くらいです。でもあれも正確には片想いかー。

 近年の傾向として、聴き手はより楽曲に「感動」を求めるようになっていると思います。00年代のヒット曲って、90年代のそれよりも、はるかにメッセージ性が多く含まれている、あるいは、わかりやすく示されているというか。意味がある、何かを教えてくれる、そんな部分がある楽曲を好んでいるという実感がります。

 そうすると、恋愛真っただ中のハッピーな楽曲というのは、内容がない、得るものがないとしてちょっと遠ざけられてしまうのではないかな…という気がします。
 失恋の歌だと、「離れてから気がついた」「これからも強く生きていく」みたいな方向性が打ち出せるので、教訓になります。だから受け入れられやすい。一方で、失った恋の痛手に浸り、前に進んでいかないというタイプは、あんまり見かけなくなりました。それもまた、仮説を裏付ける要素になりそうです。
 逆に、両想いな内容でも、「君を得たことで生きていける」とか「二人で手を取り合い進んでいこう」というポジティブさひた向きさがあるものは問題なく受け入れられています。ただ、女性の歌うラブラブな内容の曲だと、そういうのはあんまりないのですよね。現に、その手の歌がもっともファン層に受け入れられそうな女性アイドル業界を見ても、ラブラブさアピールに終始する歌は少ない印象です。
 総じて、聴き手が「マジメ」になってきているよなー、というのが最近感じる正直なところ。歌とは感動できるものであるべき的な空気が当たり前になっているような気がします…この辺はまたそのうち改めて。

 で、だいぶ外れましたが、そんな空気感なんてどこ吹く風のaikoと、今回の楽曲の話に戻りましょう。続きを読む
posted by はじ at 18:36| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月09日

アンジェラ・アキ「サクラ色」

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アンジェラ・アキ 亀田誠治 河野伸
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<しっかりとした意志のもと、過去の記憶を抱えていこうとする強さ>

 さて、つい最近「アキ」は苗字のほうなんだと知って驚いたアンジェラ・アキです。「安藝(安芸)」らしい。そりゃアンジェラが名前なんだから当たり前だよなあと。

 すっかり、春といえば桜ソングみたいな流れができて、去年今年あたりはタイトルに「桜」があるってだけで差し引かれて見てしまうような人もいそうですが、今年の「桜」はどうもハッピーな桜が多かったようで。
 FUNKY MONKEY BABYS「Lovin’Life」は咲き誇る桜を結実した愛になぞらえ、℃-ute「桜チラリ」は両想いの幸せを謳歌し、YUI「CHE.R.RY」は片想いながらも微笑ましい明るさを感じさせ…
 去年までは、舞っては散っていく儚さ切なさが主流だったわけで。同じ「桜」でも、だいぶ持たされる意味合いが変わってきていたのかなあと。流行というものはこうして移るのでしょう。

 この曲は『時間との流れと藍の狭間に落ちて/あなたを失った』とあるように、なくしてしまった恋を思い返す歌です。だから決してハッピーなわけではないのですが、『サクラ色のあなたを忘れない』と歌う様子には、あんまり後悔は感じられません。
 華やかな楽曲の雰囲気が、そう感じさせるのかもしれません。また、この人の声はすっきりまっすぐなので、背筋の伸びてしっかりした印象を与えがちです。その響きの強さが、過去に溺れるような弱さを感じさせない、ということもあるのかもしれません。「忘れられない」ではなく、「忘れない」であることも、なし崩しに思い出に浸るのではなく、はっきりした意志を持って「あなた」との記憶を大切にしようとするかのような印象に繋がってくるのかもしれません。
posted by はじ at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月30日

宇多田ヒカル「Flavor Of Life」

Flavor Of Life
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宇多田ヒカル Alexis Smith 冨田謙
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<質感のある描写の中で、シリアスさと遊び心が溶け合う>

 感情のこもった(そして奇をてらっていない)詞、親しみやすいメロディライン。ひさびさにパブリックイメージど真ん中、「宇多田らしい」楽曲をリリースしてきました。メロウなアレンジと表情豊かな声に浸ることができる佳曲ですね。こういう曲をさらっと出してくるあたりはさすがだなーと。

 メロディラインは、ほぼ2オクターブのとても広い空間を自由に動き回っています。メロは女性としてはかなり低い位置まで潜っているんですが、その分『収穫の日を夢見てる』からぐっと『青いフルーツ』に昇るのが印象的。
 この「青いフルーツ」という表現は、友達以上恋人未満の関係にある自分自身を喩えているわけですが、オトナっぽい言い方ですよね。これってやっぱり「熟れた」状態を知っているからこそ出てくる言葉だろうと。青いフルーツなんて言葉自体は青春真っただ中な感じですけど、そんな頃を見つめる視点で描かれているなあと。

 タイトルについてもそうで、恋愛の一歩手前で踏み出せずにいる純情な等身大の少女そのままの感覚では、初々しく描かれるひとコマひとコマを『淡くほろ苦い/Flavor Of Life』なんて総括した視点では言えないと思うんですねー。初恋のような気恥ずかしい切なさを感じさせつつ、視点はすごく冷静でオトナっぽい。これは「First Love」でもそうでした。

 『さようならの後に消える笑顔/私らしくない』とか心理描写が巧いのでなかなか気がつきませんが、宇多田ヒカルの詞はどこか客観的な視点から描かれているフシがあって。
たとえば「Traveling」では恋人に会いに行く浮き立つ気持ちをすごくコミカルに描いていたり、どこかで演出があるんですよね。今回も、切ない感情を炙り出す中に『じれったいのなんのってbaby』みたいな、ちょっと軽い言葉もすっと混ぜ込んでいたりして。作者自身が曲の主人公に完全に没入してしまうと、どうしても重くなりこういうフレーズは出てこないものです。
 こうした遊び心を含んだ演出こそが、彼女の最大の魅力だなんて個人的には思っていたり。そして、生々しい描写と雰囲気のあるボーカルがあるからこそ、シリアスもユーモアも自然に一体となって迫ってくるのだろうなと感じるのです。

 原点回帰・王道のようでいて、アレンジは最近の深めの響きがしますし、節々にはユーモアも感じさせます。スキのない出来だなあと思いつつ、スキのある曲をぽんと出せるのも彼女ならではなので、まだまだ遊び心のある曲も作っていってほしいものです。
posted by はじ at 02:50| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月22日

大塚愛「CHU-LIP」

CHU-LIP
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大塚愛 愛 Ikoman
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ (2007/02/21)
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<フシギなこともわざわざ悩まないお気楽さ>

 すっかり楽曲のサイクルが決まってきつつある感じの大塚愛。今回は「さくらんぼ」「SMILY」といった脳天気系アッパーソング。陽気なホーンセクションと肩の力の抜けた歌、こういうタイプのイメージが一番強い人も多いのではないでしょうか。
 とは言っても、こういうアッパーなのが聴きたい!という人、メロウなバラードだけならいいのに…と思っている人、どちらもいそうな感じです。まあ、どっちもやっちゃうからこそ、彼女の独自性が出てくるんだろうなあとも感じるのですけどね。

 花のチューリップと「CHU-LIP」、つまりキスを掛け合わせているわけですが、そういう駄洒落のしょーもなさ、キスではなく「チュー」という言葉をあえて連発するのって、まあ上品にまとめようとするとなかなかできないことです。大塚愛というキャラクターだからこそ歌うことができる、という意味では、見事に個性を獲得できているなあと。
 そんな中で『チューすれば気付く運命のお相手』というお気楽な主張が中心にあるわけですが、これ、明確な「私」というキャラクターが登場するわけではないです。ひとつの主観的な恋のストーリーを描くんじゃなく、恋する人々を見下ろす客観的な視点から、恋愛全般における考えを述べていくというスタイルです。で、それが恋における『謎』だと言っているわけですね。

 「パパ」や「ママ」が登場したり、『彼と暮らすと 癖が似てくる/ユニゾったりする』と言ったり。近しい人と惹かれあいながら、繰り返し恋愛を続けていく人間という存在の不思議…なんて言っちゃうと堅苦しいところを、『なぞ 遺伝子』でもう潔くばっさり片付けてしまう。恋愛というもの、遺伝子というものがどういうメカニズムなのか…みたいな深い洞察は、恋してハッピーな人にはちょっと疑問に感じこそすれ、そこに明確な回答はいらないわけです。
 「チューすれば気付く」から問題ないし、「なぞ」のままにしておけばいい、という。

 「CHU-LIP」というタイトルの目の付けどころは面白いので、もっとそちら関連を掘り下げてくれてもよかったかなーとは思います。花のほうのチューリップを入れる、とか。両親を持ち出しての遺伝子のフシギも、それはそれでいいんですけど、「CHU-LIP」というタイトルとはちょっと違うところに行っちゃっている感じなので。

 歌詞の内容にしても、またメロディの作り方にしても、今回はちょっとアラが多めかなー。アレンジが相変わらず多種多様で飽きさせないので、かなりカバーしている感じ。
 ま、そういう細かい部分は『理屈も理論もいらないわ』ということで。
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2007年05月03日

AKB48「制服が邪魔をする」

制服が邪魔をする
制服が邪魔をする
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AKB48 秋元康 井上ヨシマサ
DefSTAR RECORDS (2007/01/31)
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<恋のためなら躊躇せず強気な行動をとる、「現代の」女子高生>

 秋元康が手がける新時代アイドルグループ、AKB48。その名の通り、秋葉原をホームグラウンドに総勢48名のメンバーで成り立っているわけですが、これだけ規模がでかいともはやユニットとかグループとか言うより一大プロジェクトという感じですね。
 実際、テレビ番組に出演するなどメディア攻勢を仕掛けていくのではなく、自身の専用劇場を持ってそこでほぼ毎日講演を行い、そして公演情報をブログで発信していくという、今までにないアピールの仕方をしています。
 新しい見せ方ではありますが、いかんせん露出がないため、成功しているかどうかはいまひとつよくわかりません。形式として、よりコアなファンに特化した売り出し方だなあ、と言う気はするのですが、これだけの人数を固定ファンだけでまかなっていけてるのかしら。

 秋元康プロデュース、大人数アイドルと、どうしてもおニャン子クラブを想像しがちなこのグループですが、今回の曲はタイトルから「制服が邪魔をする」とあって、どうしても往年の「セーラー服を脱がさないで」を連想してしまいますね。
 といっても、「セーラー服〜」が、『友達より早く/エッチをしたいけど/キスから先に進めない』と興味はありつつも躊躇してしまう「恥じらい」を描いていたのに対し、こちら「制服が邪魔をする」のほうは、もっとずっと積極的。『制服を脱ぎ捨てて/もっと 不埒な夢でもいいから/スリルを味わいたい』『誰か/見てても/関係ないわよ/キスしなさい』と、強気な発言をしています。曲調も、やたら明るかった「セーラー服〜」とは対照的に、ちょっと憂いを含みつつアップテンポなマイナー調です。

 ここにはやっぱり「時代」を感じるわけですが、でもただ「女の子が強くなった」とだけ言っても平々凡々なわけで。もちろんそれもあるわけですが、もうひとつ、ここには現代の「恋愛至上主義」みたいなものが見え隠れしているなあと。
 『どんな視線も/愛の本能 止められない』『何されてもいいわ』と言う彼女には、何よりもまず「愛し合う二人」が優先されています。二人の愛の前では、周りの目なんて気にならないし、どんなことだって躊躇せず受け入れられるのですね。
 何を当然のことを、とお思いでしょうか?別に珍しくもないじゃないかと感じるかもしれませんが、「セーラー服〜」を見ると、恋愛感情そのものというよりも、恋愛のプロセスとか周囲とか、そちらのほうに興味がある感じだったりして。20年前の「等身大女子高生」として描かれたおニャン子クラブが歌っていたのは、そういう内容でした。

 おニャン子全盛時代にはまだ小学生にすらなっていなかった自分があれこれ言うのもなんですけれど…いわゆる「好き」という感情がすべてに優先される「恋愛至上主義」的な主張は、この20年間にJ-POPの土壌の中で育ってきたものではないか、と思ったりするのですよね。
 それ自体は悪いことじゃないんですけど、結果として、打算的に受け取れるものが嫌われ排除され、無視されるようになっているような気もするのです。「セーラー服〜」に見られたような『“MI・MI・DO・SHI・MA”』な感覚、友達よりも先へ行きたいっていう焦りとかって、今だって変わらずあるもんだと思うんですよ。けど、AKB48もまた歌わなくなってしまったわけで。
 そう考えるとちょっと微妙な面もあるなーって思ったりします。この辺りの考察はしばらくゆっくりとやっていきたいなあ。

 ところで、秋葉原を拠点としている彼女らですが、この曲の舞台は渋谷だし、特に「萌え系」という訳ではなく、「イマドキの女子高生」そのままをイメージしているようですね。まあアニメ好きとアイドル好きは文字通り次元が違うわけですし、その辺はかぶっていないのかな。
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2007年04月20日

安室奈美恵「Baby Don't Cry」

Baby Don't Cry
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安室奈美恵 Nao’ymt
エイベックス・マーケティング (2007/01/24)
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<波状に畳み掛けながら、誰から誰へでもなく広がろうとするメッセージ>

 マイペースな音楽活動を続けている安室奈美恵ですが、今回はかなりポップよりなダンサブルナンバー。コーラスを絡めつつ切れ目なくひたすらに流れゆくメロディライン、どこか漂うオリエンタルさなどは非常にクールな洋楽テイストを感じます。
 とはいえ日本語の歌詞が乗って安室が歌うとJ-POPに聴こえる不思議。や、いい意味で。洋楽ぽさをうまくJ-POPのフォーマットに溶かし込んだという感じがします。

 サビでは、『そうだからBaby悲しまないで/考えても分かんない時もあるって』…と、切れ目なく続く優しいメッセージがかなり心地よい雰囲気を作り上げています。ただ、自分励ましソングかと思いきや『一人になんてしないから』というフレーズも出てきて、完全なセルフメッセージではないことがわかります。
 では、神の視点からの呼びかけなのでしょうか。確かに、『だってそうして人は何度でも/闇に立ち向かう強さあるはず』というような言葉は、広くさまざまな女性たちに投げかけているようにも感じます。ただ、一人称っぽい部分もあったりもしますし、『ねえ 良くなる方に捉えたら?』と語りかけるのは、まるで親友からの助言のようでもあります。

 きっと、この詞の主人公は誰だとか、明確な人物なんて設定されていないんじゃないかな、とも思うのです。それは視点の混乱というマイナスポイントではなくて、あえて細かく考えずごちゃ混ぜにしているんじゃないかと。
 自分から自分への勇気付け、友人へのアドバイス、不特定多数の頑張る女性へのメッセージ。どうとでも解釈できるし、どうとでも拡げていきたい、投げかけたいからこそ、あえて切り分けを行っていないのでは、なんて感じちゃうのですね。
 そんな風に感じるのは、みんなで元気だしていこう!みたいな、やたらポジティブな考え方のせいかもしれません。『望みはあるから』『いつか笑って話せる日がくるから』とか、はっきり信じられるような根拠がなくても、次から次へと勇気を奮い立たせるような言葉が連なって放たれてくる、そんな曲展開が、言葉に力強い印象を与えるのに一役も二役も買っているように思えるのです。続きを読む
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2007年02月25日

宇多田ヒカル「ぼくはくま」

ぼくはくま
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宇多田ヒカル 冨田謙
東芝EMI (2006/11/22)
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<言葉遊びのセンスをゆる〜い童謡に取り入れる>

 テディベアのぬいぐるみをプレゼントされた際にできたのが、「みんなのうた」に提供することにもなったこちらの楽曲。

 ひたすら「くま」を連呼するこの童謡めいた内容は、今までの宇多田ヒカルのキャリアとはまったく異なるアプローチです。よく言えば柔軟性のなせる業、悪く言えばお遊び要素ですね。とはいえ実はなかなか凝っているなーと思わされる部分もちらほらあったりもしまして。 

 『くるまじゃないよ』とか『くま 九九 くま/ママ くま くま』、あるいは『夜は「おやすみ、まくらさん」』などなど、言葉遊び的な向きが強いです。言葉遊びはマザーグースを引き合いに出せばわかりやすいですが、語感、発音の妙を楽しむもので、意味や内容は二の次だったりします。
 とはいえ単なる言葉遊びに留まらず、『歩けないけど踊れるよ/しゃべれないけど歌えるよ』と「くま」のキャラクターへの肉付けも混ぜ込んでみたりして。この辺りはおそらく「動かして遊んでもらう」ぬいぐるみの特性を面白く表現してみているのかなーと。続きを読む
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2007年01月20日

いきものがかり「コイスルオトメ」

コイスルオトメ
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いきものがかり , 水野良樹 , 田中ユウスケ , 山下穂尊 , 中山加奈子 , その他

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<女性視点から男性が描くことで、相思相愛の関係が浮かび上がる>

 デビューから「SAKURA」「HANABI」と季節に沿って叙情性ある楽曲を連続でリリースしてきたいきものがかり。3作目は秋には特にちなんでいない、バラードになっています。

 和風な単語を駆使していた前2作とは違い、『好きだよ 大好きだよ いつまでもいっしょ』と、今回は女の子の心情をストレートに綴っています。
 ポイントは、作詞作曲がメンバー水野良樹と、男性が描いていること。このブログがテキスト系サイトであれば、やたら甘えてきたり『「運命の人よ」「白馬の王子様よ」』なんて言っちゃったりする女主人公をツッコみまくるところでしょうけれど、分析して面白そうなのはむしろそう言われたりして『あなたはまた照れて 聞き流すけど』の「あなた」、相手の男の子側ですね。
 「あたし」もなかなかよく描けているなあと思うんですが、恥ずかしがりで照れ屋、積極的な「あたし」に振り回されがちな「あなた」のほうがキャラとしてすごく面白い。歌われる中の彼の挙動に、共感を覚えてしまう男子は少なくないはず。
 また、『初めて握る左手は あたしよりもふるえていた』なんてフレーズとかは、これは男性視点でないと書けないんじゃないかなと。初恋くらいの男ってのは、たいていそんなもんです。

 『いつもやたらと足早』になったりする態度っていうのは、もちろん相手のことを好きだからなんですが、それは男の子側の共通認識ではあっても、女の子にとっては不安になったりもするものなんじゃないかなと。そのへんで上手くいかなくなって終わってしまう初恋話は、世の中に山ほど溢れているわけで。そこをこの曲では、すっかり「あなた」を信頼しきっている「あたし」の描きかたと、男性が書いているがゆえの安心感みたいなもので乗り切っているなあと。
 だから、『カンジンなことは ちゃんと伝えて欲しいんだ』という女の子→男の子の呼びかけにも、不安不満は漂ってはいません。ストレートに想いを伝えている「あたし」サイドはもちろん、そういう態度をとっていない「あなた」もまた同じ気持ちなんだ、という相思相愛の関係だということが、よくわかるんです。

 そのほか、『どうしようもないくらいに 好きだから』の「好き」の前でタメて、「好き」を印象付けようとしているとことか、バンドとしても感情を音で表現しようという意欲が感じられますね。なかなか考えられた佳作だと思います。
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2006年12月25日

絢香「三日月」

三日月
ワーナーミュージック・ジャパン
絢香 , L.O.E

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<離れた相手への強い想いを、印象的なメロディに乗せて投げかける>

 絢香4枚目のシングルにして、最大のヒットとなった今作。1コーラスはピアノ中心、2コーラスから楽器が増えて盛り上がっていくという、オーソドックスなバラード形態になっています。

 特徴としては、そのシンプルさ。前奏もメロもさらっと、あんまり長くない。で、盛り上がり方もストリングスをふんだんに使用してはいますが、あんまりベタベタし過ぎない印象です。リフレインもサビ箇所を2回繰り返したりとかせず、ちょっとだけ拡げてみるだけ。アウトロもさくっと終わり。4分38秒あるんですが、ずいぶんすっと終っちゃう印象を受けるんです。

 ある程度ドラマティックに仕上げてはあるものの、しつこくない、胃にもたれない感じは聴きやすく上品な仕上がりでなかなか好感なのですが、でもそれだとやっぱりインパクトが少なくツカミは弱くなるはずで。
 そこをカバーするのが、サビのメロディです。
 たとえば、出だしのラインはイントロの頭にも出てきますが、前奏は繊細な響き、サビはどっしり+深みの出るようにとコードを若干変えていたり。『そう no more cry』のオクターブ跳ね上がり、そして上がった1音に「cry」と3音分詰め込める単語が入っているのも、細かいながらも聴き手の心を掴む重要なポイントです。
 で、やっぱりインパクトがあるのは『がんばっているからねって 強くなるからねって』の部分。特徴的なメロディ、言葉のはまり方、どちらも○。遠くにいる「あなた」へ向かっての意志を表明する、曲でもっとも重要な部分を担うにふさわしい作りになっているなあと。

 と、サビのメロディに工夫があるので、あっさりめの作りでもじゅうぶんな印象付けができたという面もあるんじゃないかなと。メロの短さ、展開のシンプルさも、サビにさくっと繋げるという点で生きてきますしね。

 歌詞は、少し触れましたが離ればなれの環境にいる恋人への呼びかけ。ひとりで心細いながらも強くあろうという意志を、『消えそうな』細さながらも夜空に輝きを放つ「三日月」に重ねています。夜空を見上げて『君も見ているだろう』…というパターンは最近どうも頻出しているなあと感じていて( mihimaru GT「いつまでも響くこのmelody」でも触れましたが)、その見上げる月に意味を持たせてタイトルにしているのは、ひと工夫あるなと。
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2006年12月16日

綾瀬はるか「交差点days」

交差点days
ビクターエンタテインメント
綾瀬はるか , 一青窈 , 小林武史 , 名越恵子 , 清水ひろたか

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<作り手と歌い手がすり寄って、新鮮な王道スタイルができる>

 デビュー曲「ピリオド」に続き、小林武史プロデュースのセカンドシングル。しかも今回は作詞に一青窈も加わり、これは先に紹介したSalyu「name」と同じ布陣になっています。
 が、感情を純化させ透き通るように煮詰めてあったSalyu楽曲に対し、こちらは非常にあっさり味に仕上がっています。小林武史色は前作に比べるとかなり薄く、しっとりめなアイドルポップス王道という印象が強いですね。

 それにしても『たった15分でも/歯が痛くても飛んできて』とか、『誤魔化しきれないあたしを差し出します』とか…一青窈がこんなに清純派アイドルな歌詞を生み出せるとは。クレジット見るまで気がつきませんでした。確かに「らしさ」も香ってはいるけど。

 綾瀬はるかの声はニュートラル、まあ特徴のない普通の声なんですけど、そのニュートラルさが一青窈の濃い味をすっと薄めている感じ。それが物足りないか聴きやすいかは個人差が分かれるでしょうけど、Salyuのように作るわけにも行かないですし、正しい選択だったんじゃないかなと。
 もともと歌手じゃないし声量も控えめですが、でもメロディもちょろっと工夫されていたり。高音の前にはかならず手前に踏み台に鳴る音が配置されていたり、『ここにきて誰かのために/生き抜くと決めちゃいました!!!』の最後のハイトーンを伸ばすかと思いきや、バックと合わせて階段状にさくさくと下っていくのですね。こりゃきっと声がそんなに伸びないためなんでしょうけど、その辺りをうまくフォローしてアレンジされているなあと。…しかしこの「!!!」とかも一青窈が描いたのかー。

 『勝ち負けのない明日を見て』なんてメッセージも、このくらいの軽さのほうがいいのかもしれません。一青窈本人やSalyuが歌ったら、ずっしり腹にたまってしまいそうですし。
 デビューの「ピリオド」は小林武史に塗りつぶされてしまっていた感がありましたが(それはそれで小林武史好きには面白かったですが)、今回は綾瀬はるかという素材でできること、生かせることを詰め込んだ良質な楽曲になっているんじゃないかなと思いました。
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2006年09月30日

aiko「雲は白 リンゴは赤」

雲は白リンゴは赤
ポニーキャニオン
aiko, Masanori Shimada

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<曖昧で微妙な表現にこそ宿る感情と、そこから生まれる「共感」>

 aikoはアルバムだと実はしっとりめの曲のほうが多かったりするのですが、今回は夏らしい軽快な一曲。ただし、中身はというと、今は遠い「あなた」を思い返す内容になっています。明るく爽やかに歌っているからこその切なさ、みたいなものが感じられます。

 とりあえず曲のほうは、相変わらずのオリジナリティ溢れるメロディセンスが炸裂しています。半音を多用する流れはもう言わずと知れた特徴ですが、コードから微妙に音を外してくるところも見逃せません。
 特に今回はサビ最後の『こぼれ落ちた水にまぎれ泣いた』の終わりがズレているんですよね。ふつーは曲の終わりといったら、落ち着いた、終わる感じになったりするために使われる音は決まってくるものです(業界用語で「解決する」と言います)それがこの曲の場合、和音進行はきちんと解決するのに、伸ばす音はその着地点からひとつ上にズレているという不思議な状態になっている、と。ただ、その少しだけ浮き上がった感じが、ポップな曲調の中で急に挟まれる「泣いた」という言葉の持つ余韻にあっているような気もします。

 そんな風に、ただ明るいだけじゃないこの曲の歌詞。読んでいくと、ある程度の内容は想像できるものの、明確な一本線の通ったストーリーを思い描けるところまではっきりとはしていません。ま、たいていの曲の歌詞ってのはそんなもんであって、足りない部分は聴き手が想像したり自分の実感に重ねたりしながら補い広げていくもので。でもaikoは、その聴き手側に想像させたり重ねさせたりするのが実に上手なんですね。
 『2人の間を隔てたものはあたしの中の黒いもの』なんてフレーズがあります。たとえばここで「黒いもの」って何だ!もっとちゃんと表現しろ!と糾弾するのは、ちょっと違う。もしもちゃんと表現したとするならばきっと「嫉妬」とか「不安」みたいな感情なのでしょうが、はっきりそう言っちゃうと、むしろ興ざめしちゃうはず。曖昧な表現だからこそ、聴き手は共感できるんです。『あなたの様にあたしも大丈夫になりたい』というとこも、考えてみると「大丈夫になる」ってどんなだろう、とか思っちゃうんですが、感覚的にはなんとなく納得できるものがあって。特にここはあえて曖昧な表現にすることで、「あなた」に対しての「あたし」の憧れとか信頼が伝わってくるんだと思うのですよ。「あなた」の様になれればいい、という。

 同じことを、『夢中で空仰いで』という部分にも当てはめることができます。仰ぐという動作は「見上げる」ということなので、「夢中で」という形容が正しいのかどうかは怪しいところです、文法上では。
 でも、ニュアンスは、前述のとこのようになんとなくわかるわけで。何かこう、いてもたってもいられない感情の昂ぶりを空に向かって開放しようとする、飛び込んでいく、みたいな気持ちが透けて見えはしないでしょうか。そう考えれば、このフレーズは「誤り」ではなく「表現」として捉えたほうがいいのではないか、ということになります。
 今思うと、「三国駅」で取り沙汰された『首をもたげて』もこの視点で考えてみるべきフレーズだったのかもしれません。

 まあいろいろ語ってみましたが、aikoはすべてを意識してやっているわけではないと思うのですよ。メロディにしても言葉にしても、きっと、不安定で揺れ動いたりする気持ちを表そうとするあまりに、音では細かい半音で移り変わるメロディになっちゃったりとか、詞ではもやもやと曖昧だったり元々の意味を超えてしまったりするけどなんとなく伝わる表現になったりとかしちゃうんだろうなあと。
 考えてみれば、人間の心なんかすっぱり表現なんかできないもので。特に恋愛感情なんてものは何やかやと揺れ動いちゃうものだし、あんまり的確に突いた表現ができたとしても、共感を得られるわけではないんですね。曖昧さある表現のほうがむしろ、絶妙に聴き手の心をとらえるのかもしれません。で、上述の通り、aikoはそれがうまい。
 もちろん何でも曖昧にすればいいってもんじゃなく、『不安を埋めるように抱きしめ返した夜』なんていう鋭すぎる表現もできてこそ、映えるものだったりしますけれど。…しかしこのフレーズはすげえな。抱きしめた、に「返した」が入るだけで、こんなに奥深くなるものか。ここはあえてアレコレ書かないので、各自その深さを考えてみてください。

 というわけで長々と書いていたら、タイトルについて触れていませんでした。曲中では「リンゴ」はぽっと出るだけであんあまり重要なモチーフに感じられないので、なんでこんなタイトルなんだろうと感じた方も多いのでは。
 曲調と雲の「白」が揃えば、あとは自動的に9割の聴き手の意識には空の「青」と草原の「緑」が連想できるんじゃないかなと思います。そんな爽やかな夏真っ盛りの風景に、鮮やかなアクセントとして入ってくるのがリンゴの「赤」なのです。はい、イメージ、イメージ。どこまでも続く広い城と青と緑の中、ぽつんとあるリンゴは、それでもその赤さゆえにしっかりと存在感をアピールしてますよね。それは、<広く明るい初夏の風景の中に染まりきらない「私」自身の存在>であり、<あれから時間が経っても残っている「あなた」への感情>であるのかもしれません。想像できましたか?
 同じ要領で『水風船』も考えてみましょう。遮るもののない心地よい陽気の中で、突然降りかかる冷たい水…明るい曲調の中でふと香る切なさに照らし合わせられはしないでしょうか。

 まだまだいろいろ書けそうですが、まあこんなところで。
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2006年09月03日

Every Little Thing「ハイファイ メッセージ」

ハイファイ メッセージ
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
Every Little Thing

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<ことばのもとの意味あいもソフトにとかしていくような、「やわらかさ」をふきこむ表現>

 歯ぎれのいいリズムでくりだされるポップソング。このところバラードが続いていましたが、こういった曲もやっぱり手なれたものだなあと。

 歌詞に目をむけると、一見してわかるのが、ひらがなの多用です。『まるい わ になって』『足りないものなんてないよ/よくみてあげてほしいの』などなど、全体にやわらかい雰囲気をだしています。漢字かひらがなかは、たぶんフィーリングで切りわけているんだと思いますが、動作をあらわすことばはほとんどひらがなになっている感じですね。
 さらに言えば、優しくよびかけるような口調もまた、その効果を醸しだすことに一役かっています。『いたずらにわらう天使に/ごあいさつをしよう』とか、『みんな がんばってるのよ』とか。ほかにも、『ことばにするって/すごく素敵で/すっごく無敵です』の「っ」や「です」、『さらり 傷つけられた日』の「さらり」とか、意識してことばをえらんでいますね。

 「ハイファイ」というのは、もとはオーディオでの高再生度をしめす単語とのことですが、わりともっとひろく、クオリティが高いくらいの意味としてもつかわれているような気がします。ただ、ここでの「ハイファイ」は、質の高いメッセージを!だと、ちょっとあわないですよね。より高次元へ!とかじゃない感じ。これは、曲全体がそうつくられているように、もっとやわらかいメッセージ…『まずは 君に/もっといいコトがあるように/ねがっているよ』というくらいの、ささやかな、でもたいせつな気持ちのことなんじゃないかなあ、と。

 ちょっとメルヘンもまじった歌詞、甘みのあるうたいかた…やっぱりCharaとかYUKIとかへの志向があるような気がするなあ。曲の総じての雰囲気はぜんぜんちがいますが、バックで淡々とテンポをきざむ四つ打ちのビートとハンドクラップは、どこかYUKI「JOY」を思いださせました。
 とはいえ持田香織は綾瀬はるか「ピリオド」で詞を提供したりもしているし、ELT自体のここ最近のうごきからしても、かなりしばられ自由にのびのびやっているなあ、というイメージのほうがつよいですね。
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2006年08月20日

いきものがかり「HANABI」

HANABI
ERJ
いきものがかり, 水野良樹, 江口亮, 山下穂尊, 斎藤勇二, 松本隆, 湯浅篤

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<情景的な曲世界をさらに拡げる、奥行きのある動詞表現>

 スマッシュヒットしたデビュー曲「SAKURA」に続き、ローマ字で和風単語が連続しました。じゃあ次は「MOMIJI」か?と思いましたが、オフィシャルサイトによると次は「コイスルオトメ」というタイトルらしいです。フジファブリックのようにデビューから4枚春夏秋冬揃えてみる、というのも面白そうだったんですが。
 ちなみに、神奈川中部の出身らしいということは前回のレビューで触れましたが、どうもメンバー2人は県立厚木高校卒業ということで。ここ、ドラマ「ダンドリ。」のモデルとなったダンスドリル部がある高校なんですよね。本人たちのブログにもその辺りの内容が書かれていました。今、厚木が熱い!のかもしれません。

 曲は、アップテンポな中にも情景的な言葉を散りばめています。バックで鳴り続けているハーモニカ(ブルースハープ?)がいいですね。メロディラインも、いわゆるドレミソラの5音音階を基調にしていて、和風な響きを出すのに一役買っています。

 歌詞を読んでいて、気付いたことがひとつあります。
 『煌いて 揺らめいて 蒼き夢 舞い放つ』
 『願うまま この想い あなたに 鳴り渡れ』
 『繋ぎゆく この想い 愛しき 君 我』
 これ、すべてサビ部分のフレーズですが、共通している特徴があるのがわかるでしょうか。どこかというと、動詞です。「舞い放つ」「鳴り渡れ」「繋ぎゆく」…ふたつの単語を組み合わせひとつにした動詞を多用しているわけですね。「鳴り響け」「舞い上がれ」とかは一般的ですが、上記などはかなり独特で、あえて使っているように感じます。
 こういうのは、もちろんメロディに文字数を合わせる関係というのもあるんでしょうけれど、異なる単語を組み合わせている造ん奥行きのある表現ができるのですね。ただ「放つ」というよりも、「舞い放つ」といったほうが、直線的でなく動きのあるイメージを与えられるわけです。
 …また、『此の花 燃えゆく』などもそうですが、「〜ゆく」というような形が多く。そのほかの表現も、単純に「〜する」というよりも、現在進行形でずっと続いている、といった印象を感じさせます。こういうところ、作者の好み、特徴を感じることができますね。
posted by はじ at 14:44| Comment(2) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月03日

安室奈美恵「CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK/人魚」

CAN’T SLEEP,CAN’T EAT,I’M SICK/人魚
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
安室奈美恵, Michico, T.KURA, NOKKO, Nao’ymt

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<切れ目なく流れる旋律の中、パッパッと切り替わる「織り交ぜ型」の言葉>

 すっかり独自路線を走りつつ、しかし確かな評価を得ている最近の安室奈美恵です。今作「CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK」も、現在同時代のどんな曲とも違いつつ、かなりクセになる魅力がある感じ。
 聴いていると、メロディやバックの切れ目のなさが面白いですね。メロディラインがシンプルで明確な定型を持たずに、つらつらと流れ続けていくので、聴いていてどんどん奥のほうに連れて行かれるような気がしたり。パッと聴いて口ずさめるようなわかりやすさはない代わり、でもなんだか聴いていて印象に残る…そんな作りになっている感があります。

 バックの音の切り張りの仕方とか、ウイスパーボイスとか、洋楽っぽい雰囲気を漂わせながら、日本語と英語織り交ぜた歌詞の作り方は昔から続くJPOPの手法。『その他大勢見えないの Am I fool?』とか『全部ダーリン次第のeveryday』とか…こうして歌なしで書き出すと違和感ありますが、曲に乗るとそう不自然でもないんですよね。恋愛に溺れる詞の内容なのですが、あんまりバカっぽく聴こえてこないのは、彼女のスタイルがしっかりしているからでしょうか。
 にしても、『少しめまいがしてきたみたいhold me』とかまで来ると、この「日本語英語織り交ぜ」型の歌詞というのは、ひとつの新しい言語表現になっているんじゃないかとさえ思います。「めまいがしてきた」⇒「だから私をしっかり受け止めて(=hold me)」というように、ここには「流れ」が生じているわけですよね。「めまいがしてきたみたいだから抱きしめて」とすべて日本語で言っても、あるいは英語にしても、混ぜたときのパッとふたつの思考が切り替わる感覚は生じないでしょう。そう考えると、けっこうすごいのかも。ヒップホップのラップ部分でも、韻を踏むときにこういうことが起こりますよね。


 カップリングの「人魚」もまたいいですね。NOKKOの代表曲のカバーですが、自分の歌い方のスタイルできっちり勝負しているというか…声の掠れさせ方とか、すっかり板についてきましたし。

 それにしても『アカシアの雨にうたれて』ってすごい鮮やかなイメージだなあ。ひらがなが多いこともあり、全体的にやや子供っぽいイメージで彩られているのに、そこに『本気で思った 抱いて抱いて抱いて』というような、強く強く相手を求めるフレーズがビシッと入っているから、聴き手としてはドキッとしますよね。
 『すてきな事もさみしさも輝きに似て』と、別種のものをすべて「輝き」にまとめあげてしまうような感性というのは、女性的だなあと思います。で、そんな感性が、「あなた」への一言じゃ表せない、何語かかっても伝えられなさそうな溢れる感情を『抱いて抱いて抱いて』というひとつの呼びかけに集約させるんだろうな、と。
 表現を費やすよりも、感情や感覚をどんと投げてしまうことで、その強さ大きさを表すこともできるんですね。
posted by はじ at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月26日

大塚愛「フレンジャー」

フレンジャー
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
大塚愛, 愛, Ikoman

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<「絶対」ではなく「できるだけ」の範囲を宣言することが、より強い共感を呼ぶ>

 ロングヒットした「プラネタリウム」から、ひさびさのリリースでした。脳天気めなアップテンポ・ポップかしっとり和風なバラードか、という二極化がすっかり定着している感じですが、彼女に関しては今後もそのまんまでいてほしいものです、と最近思うようになりました。いい意味で。

 「フレンド」+特撮戦隊モノの「レンジャー」で「フレンジャー」。ピンチのときには駆けつけるから頼ってよね!と友人に呼びかける歌です。なので、「あなたにとってのヒーロー」モノに分類してもいいんじゃないでしょうか。詳しいことはEXILE「HERO」の記事をご参考ください。

 ま、それだけじゃなく、戦隊モノの基本である「色」を詞の中に散りばめているのがすぐに読み取れます。『ミルクパンをほおばりつつ/チョコパイにも手を伸ばす』とかにも「白」と「黒」が出てきてますね。
 ただ『いろいろとエネルギーが必要 緑で補給して』とか、ちょっとそりゃ無理やりだろうと思いました。今回のノリだと「野菜を食べよう」くらいの脱力加減のほうがむしろ雰囲気に合ったんじゃないでしょうか。や、現行の無理やり感もある意味合っているんですけれど。

 今回、もっとも興味を引かれたのは、『何かイヤになったら できるかぎりで/いつだって そこにかけつけてあげる』、サビ頭という重要地点でした。「何かイヤ」になったとき、という漠然ぶりからも広げられそうですが、それよりも何よりも「できるかぎりで」です。「何があっても」じゃないんですね。「いつだって」と矛盾してんじゃん!というツッコミは野暮なので、ここは気持ちはいつでも、くらいに考えておきましょう。
 こういう友情をテーマにした曲の場合、友人がピンチのときは「何があっても」だろう!と思う方は多いでしょう。なんか冷めてるなあ、結びつきが弱いなあ、現代っ子はこれだから…とまとめてしまうのは、しかし、ちょっと待ってみましょう。
 「何があっても」というのはこういうときの常套句であって、気持ちがそうだったとしても、実際問題として駆けつけられないことだって現実にはきっとあるでしょう。そのことを考えると、「何があっても」と約束するのは無責任だ、とも言えるわけです。無理なことは無理、ときちんと言っておいたほうが、本心からの言葉っぽいし、真摯だ、みたいに感じるということもあるわけです。
 「何があっても」よりも、「できるかぎりで」のほうがいい。こういう感覚は、けっこう最近のものですよね。たとえば「頑張れ!」という言葉は重荷になるから/言外に「協力しない」と感じさせるからあんまりよろしくない、みたいなことが言われているのと何かリンクするような気がします。

 あと『1人はとてもめんどうだから』友達同士で助け合いましょう、というのも、なかなかぶっちゃけているなあと。「つまんないから」とかじゃなく、「めんどうだから」。きわどいですが、確かに「助け合い」の裏返しですよね、これって。
 こういう「できるかぎりで」とか「めんどうだから」とか、常套句やきれいごとでないフレーズというのはなかなか評価できると思います。まあ狙ってやっているんじゃなくって感覚で書いたと思うのですが、そうじゃなきゃ出てこないフレーズだと感じるのですね。作詞家には書けないでしょう、きっと。
 いろいろ至らない点はあるし危なっかしいんですけど、だからこそ表現できることというのもあるものです。そういう意味で、他にこういうキャラがどうも出てこない今、彼女の存在は割と貴重じゃないかなと。なのではじめに書いたように、しばらくこのままでいてほしいなあ、という。
posted by はじ at 00:21| Comment(6) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月11日

いきものがかり「SAKURA」

SAKURA
ERJ
いきものがかり, 水野良樹, 島田昌典, 山下穂尊, 亀田誠治, 荒井由実, 江口亮

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<別れの記憶を呼び覚ます「春」の「桜」に心をふと留め、そして決別して歩き出す>

 今年の「桜」バラードとして、一部で話題になっていた歌。不思議なバンド名ですが、今回がデビュー曲のようです。

 オフィシャルサイトでインディーズ時代のデータとかも見られます。タイトルだけ見ていくと、どうも和風なテイスト、郷愁的なものを表現していきたいのかなあと推測できます。それはこのレビュー書いている既に発売されている2nd「HANABI」においても読み取ることができるので、たぶんそうなんでしょう。
 そういう意味では、春のデビュー曲に「桜」を持ってきたことは、近年の桜ブームにも乗りつつバンドの方向性としてもちょうど沿っているなあと。

 『さくら ひらひら 舞い降りて落ちて』という出だしの言葉が象徴するように、メロディラインは流動的でひらひら/ゆらゆらとした印象を与えてきます。裏拍ノリや細かい流れのある旋律だから、そういう感覚を受けるんですね。
 そんなメロディに乗るのは、「君」との思い出。『それぞれの道を選び ふたりは春を終えた』という過去の記憶があって、春が巡るたびにその別れを思い出す。「君」をだんだん忘れていくけど、ふたり過ごした日々は今も大切で…という、まあ王道パターンです。迷ったりもするけど『春のその向こうへ歩き出す』と、はっきり未来に向かっていくという意志を「春」=「桜」=「別れの記憶」から先へ行くという形で示しているのが、ポイントと言えばポイントでしょうか。
 あと、『書きかけた 手紙には 「元気でいるよ」と/小さな嘘は 見透かされるね』というフレーズ。ここは、「書きかけた」「小さな嘘」という言葉から、元気だと手紙を書こうとしたけど、本当は元気じゃないし結局手紙も出さなかったんだ、ということが読み取れます。こういう裏読みができるフレーズは好み。

 神奈川県の中央、厚木・海老名あたりの出身と言うことらしく『小田急線の窓に 今年も桜が映る』と地元を走る路線の名前が。ということは、『ふたりで通った 春の大橋』も、具体的なモデルがあるんでしょうか。
 っていうか地元のほうなので、もしかしたらあそこのことかなーという推測ポイントがいくつか浮かぶのですが。
posted by はじ at 16:28| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月03日

宇多田ヒカル「Keep Tryin'」

Keep Tryin’東芝EMI宇多田ヒカルこのアイテムの詳細を見る


<話しかけるような親近感をベースに、「こっそり頑張りたい」みんなを「挑戦し続ける」まで導いていく>

 復帰後3作目。今回は「Be My Last」のように内向きの音楽ではなく、また「Passion」にあったような幻想志向もなく、ぐっと外向きで現実的な「強さ」を呼びかけるメッセージになっています。
 単なるありきたりなメッセージソングと違うところは、大まかに言って3点。

 まず、非常に砕けた口調であること。これは元々あった傾向ですが、今回は特に『とっても気にしぃなあなたは少し/休みなさい』『どんぶらこっこ/世の中浮き沈みが激しいなあ』とか、いわゆる「歌詞」として飾り付けない素のままのメッセージっぽい雰囲気があります。歌というよりは、つぶやきっぽい感じ。

 第二に、現実的であること。
 たとえば『月夜の願い 美しいものだけれど/標的になって 泥に飛び込んで』なんてあたりを読むと、意識的に現実を語ろうとしているのが感じられます。上の「歌詞っぽくない」にもかかってきますが、お笑い番組とか遅刻したとか恋人がサラリーマンだとか車掌さんだとか、かなり具体的であんまり歌詞中では見かけないような単語が並んでいます。「長い道のりを一歩ずつ進んでいこう」や「月の光に願いを込めて」など、抽象的でなんとなくかっこよさげに聞こえるフレーズを並べるのではなく、現実的な身近さ、悩みを相談した友達に勇気付けられるような親近感を与えようとしているのですね。

 それともうひとつ大きいのが、「実はみんななんだかんだ言ってもっと頑張りたいはずなんだ」という観点が、はっきりと表れているということ。
 『どうでもいいって顔しながら/ずっとずっと祈っていた』。『ほんとは誰よりハングリー』。『クールなポーズ決めながら/実を言うと戦ってた』。がむしゃらに頑張るのはカッコ悪い、と思われがちな今の時代、みんな表面上はそれに合わせているけど、実は影では頑張っているし、もっと頑張っちゃったっていいんだ、と後押しする言葉がたくさん散りばめられているんです。
 主題はタイトルにもあるように「挑戦し続けよう!」ということです。が、ただ真正面から呼びかけるだけではないんですね。「実はもっと前に進みたいって気持ちもあるんでしょ?」と投げかけ、「チャレンジしようと思うのは『バカみたいなんかじゃない』」というようにフォローしてあげる、というプロセスが曲中に組み込まれています。

 そういうわけで、やっぱり外向きのメッセージを書くとつくづくこの人はうまいよなあ、と感心することしきりです。
 特に言葉の選び方が独特で。世の中にはすでにある程度歌詞の定型フレーズみたいなものがあって、それはやっぱり王道で響きやすいものなんですが、それだけじゃ発展はないわけです。そういう点で宇多田ヒカルは常に新しい風を吹き込んでくれる奇抜さを持っているので、そこは評価されてしかるべきかなと。
 ただ、以前はリスナー全般にもプラスに受け止められていたこの「奇抜さ」が、活動再開後はなんだかマイナスに感じられているような空気があるんですよね。そこはもう流行り廃りの流れなので仕方ないのかもしれませんが、ちょっと残念な気がします。
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2005年12月29日

Every Little Thing「きみの て」

きみの て
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
Every Little Thing, 持田香織, HIKARI, 十川知司, 伊藤一朗

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<少年「僕」のピュアな視点から、母性的な愛情を映し出す>

 さて、ELTです。このベテランになりつつあるユニットは、前回の「恋文/good night」で触れたことからほとんど変化なしっていう感じがします。つまり、一人称「僕」/どこかたどたどしいがゆえに共感を呼ぶ歌詞/CharaやYUKIのようなちょっとクセをつける歌い方、という辺りですね。

・一人称「僕」
 日本語の「僕」は、数ある一人称の中でも「少年性」を表せるぶんもっとも純粋さを感じさせられるものです。しかも本来的に性別の違う女性が歌うことで、より性的なものを感じさせないイノセントな響きにすることができるわけで…という話はどこだっけ、BoA「QUINCY/コノヨノシルシ」とか倖田來未「奇跡」とかでもしました。
 ただこの曲では、『僕へと触れつづけた/その手は やさしかった』とあるように、向かい合う相手のイノセントさ、包み込むような母性的な愛情を表現するためにも、「僕」でなければいけなかったのかなと思います。女性の「わたし」だと、自らが母性的な愛情を持つような種類の歌はいっぱいありますが、二人称の相手にそういう部分を見出すっていうのはちょっと違和感ありますよね。
 しかし、最近はヒット曲の傾向も世の中も男性の中性化が進んできているように見受けられますし、そのうち女性が男性に母性的な広い愛情を見出す日も近々来るのかもしれません。

・どこかたどたどしいがゆえに共感を呼ぶ歌詞
 なんか語弊がありそうで、ファンの方から怒られそうなんで補足しておきましょう。
 たとえば『さりげなく だけど 強く/僕はゆくんだ 君からゆく』とか、書き方からしてもそうですが、自分で言いながら自分で「そうだ、僕はこれから新しい場所へ進んでゆくんだ」と確認し、言い聞かせているようなフシがあります。それがほんとうに独り言、つぶやきのような印象を受けるので、生々しさがあるって意味で「たどたどしい」感じがする、ということなのです。

・CharaやYUKIのようなちょっとクセをつける歌い方
 これ、持田香織にっていうより、「僕」路線にちょっと合わないような気がするんですけど、どうでしょう。せっかく「純粋さ」を感じさせられるのに、まっすぐじゃない歌い方をしているってことなので。

 あとこの曲の特徴としては、メロ部分では前倒しの食ったリズムなのに対し、サビで急に拍どおりのかっちりしたメロディになる、というところが聴いていて面白かったですね。このリズムのノリの変化は、サビの印象付けに一役買っているなと。
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2005年12月13日

宇多田ヒカル「Be My Last」

Be My Last
東芝EMI
宇多田ヒカル

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<退廃と清々しさが奇妙に入り混じり、内向きに反転する世界>

 自分が解釈したままを述べるならば、この歌は「心中」の歌ととるのがもっとも妥当なんじゃないか、と考えています。
 後悔のようで、しかし少しも後悔はしていないような、そんな不思議な感情が、この歌にはあるように感じます。後ろ向き、否定的な語を並べながらも、それほど迷っているようには感じられないのです。『間違った恋をしたけど/間違いではなかった』とあるように、間違えたことこそが正しい選択だったんだとでも言うかのようなフレーズ。負け惜しみでも開き直りでもなく、これでよかったんだという奇妙な安らかさが滲んでいるように思えます。そんな、陰気なはずの空気の中の奇妙な清々しさが、死を決意した人間の感情と重なってくるような気がするのです。
 『慣れない同士』の自分と「Be my last」=「一番大切な君」を、『何も繋げない』『私の手で』…

 とはいえ絶対に心中の歌だ、なんて言い切るほどの自信はないです。ただ、たとえば『今夜一時間会いたい』とあるけれども、それじゃあ会って二人はどうするのか?と想像したときに、まったくその先の未来が思い描けなかったりするんですよね。非常に刹那的だし、危ういムードだし、上記のようにどこか悟ってしまっているしで。
 ただし、『バラバラになったコラージュ/捨てられないのは』の、この「捨てられない」だけが、わずかに未来を感じさせる言葉になっています。もしかしたら、バラバラの欠片を捨てられないまま、ずるずると生きていく…そんな歌なのかもしれないなあ、とも思います。

 どちらにせよ、今までの宇多田ヒカルの楽曲を省みると、ほとんど初めてと言っていいくらい、「内側」へ向かう要素で構成されている歌です。
 「誰かの願いがかなうころ」もシリアスなムードの曲でしたが、あれは周囲すべての人を巻き込むほどの「外側」へと呼びかける歌だったことを考えると、ほとんど反転していると言っていいくらいです。『母さん』への呼びかけも、これは身近な人に縋りつきたい自分の心情を吐露しているだけです。
 この「内向き」な音楽が誕生した背景は何か?…三島由紀夫ファンである彼女が自ら入れ込んで作ったから。…アメリカ進出に失敗した影響。…心境の変化。…迷走。あれこれ想像する余地はありますが、その辺りは当ブログの領分ではないので省きます。

 ただ、宇多田ヒカルの起こしてきたムーブメントは、「内向き」気味な社会に対し「外向き」の言葉を無邪気かつ巧みにぶつけてくる強さに拠るところが少なからずあった、と思うわけでして。こういう内向的な歌にもやはり独特の風情を漂わせることができる実力者であることは疑わなくてよいと感じるんですが、しかし果たして「外向き」の印象をこちらで上回ることができるかとなると、ちょっとわかりません。
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2005年12月07日

大塚愛「プラネタリウム」

プラネタリウム
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
大塚愛, 愛, Ikoman

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<満天の星空に向け、強くはなりきれない切なさを吐露する>

 昨年の「金魚花火」に続き、夏のバラード。世間的には圧倒的に「さくらんぼ」「Happy Days」「SMILY」というイメージが強いはずなのに、「甘えんぼ」「大好きだよ。」も「金魚花火」も「黒毛和牛上塩タン焼680円」も、とバラードのほうが多いんですよね、この人。これだけバラードを多く出す歌い手というのも珍しいです。作詞作曲やっている本人が、スロー系のほうが好きなんでしょうか。

 で、Aメロでさらに和風な感じをプラス。メロディラインと、頭の『夕月夜』という単語。これ以降は詞曲そのものにはそれほど和風な部分はないんですが、出だしのこのインパクト付けとバックで笛を鳴らしているアレンジで、すっかり情緒的な雰囲気を出しています。

 いなくなってしまった相手を、夜空に想う…『花火』とか『願いを 流れ星に』とか、「夜空にちなんだ歌詞っぽい単語」がいっぱい並んでいます。その中で興味深いのは、『あの香りとともに』と、「匂い」から記憶を手繰り寄せようとするフレーズがひとつ。嗅覚って、記憶につながりやすい感覚ですよね。情景描写つまり「視覚」や、主人公の心情が大部分を占める詞において、匂いを効果的に使う歌ってなかなかないんですよね。
 あと、『泣かないよ』/『泣きたいよ』の使い分け。それ自体は珍しくはないですが、『泣きたいよ』→『泣かないよ』と強さを持って締める歌のほうが一般的かなと思うんですよ。でもこの曲は『泣かないよ』→『泣きたいよ』。どうにもならない胸のうちをどうにもできないままに締められています。つまり「悲しさを踏み越えて強くなろう」という想いより、「忘れられないせつなさ」が勝っているわけですね。


 ところで、プラネタリウムという題なのに、明らかに夜空そのものを歌っています。星がきれいな場所という設定のようなので、「まるでプラネタリウムみたいに、星がいっぱいある空」ということなんでしょうか。…満天の星空よりもプラネタリウムのほうに身近さがある感じ。大塚愛って、都会っ子なんでしたっけ?
posted by はじ at 03:50| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月26日

大塚愛「SMILY」

SMILY/ビー玉-エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
大塚愛, 愛, Ikoman

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<理由付けがないからこそ生まれる、得体の知れない説得力>

 さて、例によってとなりつつありますが、ネットではパクリだなんだと言われていたりもしますが、大塚愛の場合、単純に「作るメロディラインが非常にシンプルである」せいだろうなあと。今の大塚愛の感じだと、たぶん探せばどこかしらに似た曲はあると思います。っていうか、大塚愛に限らずどんな歌い手でも「探せば」それなりに見つかってくるとは思いますが。
 まあ「彼女の曲にはヒネリがない」ということなんですが、こういう能天気な曲でヒネられてもなあと。ダン、ダン、ダダダン、のリズムよろしく、直球ど真ん中がちょうどいいかなと。

 詞とか、改めて読んだら、ちょっとびっくりするほど内容がなかったんですよ。本当に「楽しく笑っていよう」っていうことだけしか入っていない。
 ただこうやって、何の前提もなく、何のストーリーもなく『笑って 笑って』と呼びかける歌、だからこその良さっていうのはあって。
 「人生は辛く苦しい、傷つくこともあるだろう、だけど笑っているほうがいい」と言ったほうが、きっと感動はすると思うんです。ただそういうふうに含蓄を持たせようとすると、「泣くな、笑え」という、この曲の、ある種傍若無人なまでのパワーは得られないと思いもします。

 そうそう、『みんな集まって』という場を用意しつつ『君の笑顔が見たい』と一人を指名してくるのは、前回も指摘しましたが、たくさんのファンの各個人に届く殺し文句を歌う必要のある「アイドル」的なスタンスを感じます。自覚してるのかなー。

 楽曲は、シンプルな直球でくる中にも、あれこれ単調に聴こえないよう工夫していて、大変そうだなあとか思ってしまいました。そしてすっかり「合いの手」は欠かせなくなりましたね。
 完成度、で言えば、高いと思います。正直、作詞作曲能力があるわけじゃない人ですが、逆にそれを生かした作りにできているので。ただ、いつまで持たせられるかなー、という気はしますが…
posted by はじ at 23:29| Comment(3) | TrackBack(1) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月14日

安室奈美恵「WANT ME,WANT ME」

WANT ME,WANT ME
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
安室奈美恵, MICHICO, D.O.I., AKIRA, JUNYA ENDO

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<インパクトあるループサウンドと、流動的な言葉。両方の側面からの挑発と煽動>

 下北沢の商店街でこの三味線(?)のイントロが流れたときは、何事かと思いました。ほんとに。いまだにそのときの鮮烈な印象が残っていて、なんともまあ凄いアレンジです。
 でも何が凄いって、そのインパクトのでかいアレンジが、ただのインパクト勝負に終わっていないことですね。例のループ三味線といい、『Oh boy,』とか『Ah....hey,』とか、音程が変わらないせいかなんだか野太く感じる掛け声とか、一歩間違えればすごく滑稽になってしまうこんな難しい曲を、実に見事に歌いこなしているんじゃないかと。ちょっとこのバランス感覚にはびっくりですよ。

 歌詞も冴えてます。煽情的な内容というのもありますが、それだけではなくて。
『WANT ME,WANT ME はじけ飛ぶ/胸のボタン 焦りすぎて』
 このように、明らかに倒置法が使われていますね。最後の「焦りすぎて」の部分は音程が低く、いかにも後から言葉を付け足したような、…言い換えれば順番どおり言葉を並べることができていない、思考回路が錯綜した状態を、うまく表現しています。
 あと、「〜する」「〜した」「〜だ」で終わっているフレーズが、まったくありません。これも曲の「途切れなさ感」を演出するのに一役買っていますね。どこかに着地せず、常に動きがあり、落ち着くことがない。詞も曲も、非常に流動的で攻めの姿勢になっています。
posted by はじ at 03:25| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月03日

aiko「三国駅」

三国駅
aiko, 吉俣良, 島田昌典, 根岸孝旨
ポニーキャニオン

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 相変わらず独特なメロディラインを歌っています。旋律が調からはみ出していたり、コード進行がやや唐突だったり、コードにはまりきっていなかったり。そんなaikoの歌は、体系化した耳馴染みのいいオーソドックスな流れからあえて外れるているがゆえに、聴き手に印象的に響いてくるのでしょう。
 「ズレ」には、感情が篭りやすいのです。aikoは、音を半音ずらすのが得意です(一番すごかったのは「かばん」でしょうか)。また、メロディをリズム通りに乗せず遅らせる、リズムを歌いこむことで「ズレ」させるのが、演歌の「コブシ」なわけですね。

 aikoは「ズレ」を利用して(というよりは無意識に「こうした方がいい」って感じでやっているんでしょうけど)、個人的な感情を歌い込みます。今回の曲は特に、「三国駅」と自分とつながりの深い実在の場所名を入れることで、超個人的な歌であることを表に打ち出しています。
 それゆえか、いつもよりも意味深なフレーズが目に付きます。『自由に舞う 声がする』の声の主は誰なのかとか、『少しならこぼしていいけど』ってのは何をでなぜいいのかとか、きっと本人の深いところでは納得がいっているんだろうけど他人にはちょっと…な部分があったり。(あ、あちこちで取り沙汰されてた『首をもたげて』は、単純にミスだと思いますが)
 でも、aikoはそれでいいのです。個人的な思いを強く乗せるからこそ自然と「ズレ」のある印象的なメロディができるのだし、そのメロディや声で周りを自分の個人的な世界に引き入れることができているわけですし。そういう意味で、「個人」の印象が強くなる「ご当地ソング」というのは、aikoのスタイルに合った形だと思います。

 サビの最後が『離したくない』から二言三言続きそうな感じだけど、でもずっと伸ばし続けているじゃないですか。オーソドックスなポップスに慣れていると「えっ」て思いますけど、なんかこの常道を無視した長い伸ばしの間に、きっといろいろなものが詰まっているんだろうなあ、あれこれ思い出しながら声伸ばしているんだろうなあ、って気にさせられません?で、聴いているこちらもシミジミなんかしちゃったりして。オーソドックスからの「ズレ」、「個人的な歌」っていうのは、そういうことです。
 いつもよりもキーが低く淡々としているのも、声を張り上げる「作った歌」というよりは「自然なつぶやき」っぽい感じがしますよね。
posted by はじ at 21:06| Comment(0) | TrackBack(1) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月20日

大塚愛「黒毛和牛上塩タン焼680円」

黒毛和牛上塩タン焼680円
大塚愛, 愛, Ikoman
エイベックス・ディストリビューション

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 はい、いろいろ反響を呼んだインパクトあるタイトルの曲です。
 男女のちょっと踏み込んだ関係を焼肉に仮託して書いているわけですが、そもそも小説の世界でも食事の描写に性的な要素を取り入れるというのはひとつの手法だとかなんとかあるので、馬鹿だなーと一蹴することもないし珍しいってほどでもないくらいでしょうか。

 ただ、モチーフが「焼肉」って点には注目したいです。インパクト狙いとか本人が焼肉好きだとか、そういうこともあるんでしょうけど。
 『あみの上』に「自分(=食べられる側)」を置き、『お味はいかが?』と「あなた(=食べる側)」を配置する。この関係性の時点ですでに「あたしを食べて」という煽情性が発生するわけですが、さらに加えて焼肉というのは、一つの網を複数の人間で囲んで食べるものなわけでして。
 つまり、『あみの上』を「衆人環視のステージ」、食べる側(複数)を「観客、ファン」に見立ててみると、『お味はいかが?』と堂々と挑発し、あくまでも『あなた』と一人だけを相手にしているように描く大塚愛は、「アイドル=見られる者」としての自覚を明確に持って曲作りをしているんじゃないかなあ、と思います。自分で作詞作曲しているといっても、「心の赴くままに」作るのではなく、「どう作ったら反響があるか」という意識のほうが強いんじゃないか、と感じるわけです。だから、シンガーソングライターと言うよりは、自らをプロデュースしているアイドルだと思いますし、本人もそういうつもりで活動しているんじゃないかなと。

 しかし、またもや三連バラードですか。「大好きだよ。」と連続ですよ。この人はとにかくメロディの引き出しが(言葉もですが)少ないので、もっと充電するべきだと前から言ってますが、そうもいかないんだろうなあ。もっといろんな音楽を聴いたら、少しずつ広がってくると思うんですけどね。それはそれで、何を聴いたか影響がバレバレな感じになったりしそうですが。
posted by はじ at 03:35| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月28日

Every Little Thing「恋文/good night」

恋文 / good night
Every Little Thing, 持田香織, HIKARI, 伊藤一朗, 十川知司
エイベックス・ディストリビューション

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 両A面のどちらもがバラード系統。ただし「恋文」はわりあい淡々としていて一本芯が通っているという感触を受けるのに対し、「good night」はぐっと盛り上がり、広がりが大きい、とタイプに若干の違いがあるように思います。
 両方とも同じ作曲者なんですが、このクレジット「HIKARI」って人、けっこうクセのあるメロディ&コードを展開させてますね。クセあるっていうか、わざと王道からズラしズラしやっている感じがあります。極端に変なことをやっているわけじゃないですけど、おやっと感じる人はいると思います。それが味に聴こえるか違和感でしかないかは、まだ半々くらいかな。なかなかチャレンジ精神がある姿勢で好きですが、「恋文」のBメロ中盤と「good night」のサビ真ん中のつなぎ方はちょっとヘンかも。

 さて、詞です。
 持田香織の書く詞は、高確率で一人称が「僕」です。今回も両方ともそう。「僕」と出てこない曲でも、ざっと見る限りでは中性的なものばかり。これは、かなり特徴的な一面です。
 90年代、プロデューサーの五十嵐充がいた頃は、詞も彼が書いていました。それは非常に「イマドキの女の子」を前面に出した詞でして、今の持田香織の路線は、あの反動なのかもしれないなあと思ったりもします。
 こういう解釈は、こういうサイトであれやこれやと書いている自分にとって都合のいい憶測でしかないのですが。でもまあ、たとえば「僕」とも「私」とも出てこないけどやや女性的かな、と思える「frajile」が大ヒットしたのに、その女性路線でやっていこうとは全くしていない(あるいは「ファンダメンタル・ラブ」みたいな書き方をする)あたり、かなりこだわりの強さを感じます。

 持田香織の詞は「共感を呼ぶ」と、巷では評判が高いです。でも、決して彼女、フレーズの魅せ方や表現の技巧がうまいっていうわけじゃないんですよね。たとえば「恋文」では『僕のためといって/君がついた嘘なら/僕にとってそれは 本当で』とか、もうちょっと短くぎゅっとまとめた言葉にならないかなあと思ったりします。初めの一行とか、取ってもじゅうぶん通じますし。
 ところが、これがもしかすると「共感を呼ぶ」ゆえんになっているんじゃないかと。この、詞の内容のまとまりきっていないたどたどしさが、「僕」の真剣なんだけどうまく伝えられないもどかしさに重なって、聴き手の感情移入がしやすくなっているという推測もできるんですね。
 というわけで今回は、いろいろと突っ込みどころはあるんですが(特に、どうも死別の歌らしい「good night」のほうに)そういうところが良さなのかもと言ってしまった手前やめておきます。もうかなり文章長いし。
posted by はじ at 23:25| Comment(6) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年12月23日

上戸彩「ウソツキ」

ウソツキ (CCCD)
上戸彩, Tetsuro Oda, NORI, Naoya Osada, Shinji Araki, Koma2Kaz, Yoshiko Miura
ポニーキャニオン

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 哀愁漂うフォルクローレ調。元気なポップロック 「愛のために」、和風テイストだった 「風」、さわやかサマーチューン「あふれそうな愛、抱いて」と、こうして一回ごとにバラエティに富んだ歌を持ってくるのは、やっぱり正統派アイドルらしいやり方ですね。次は冬の間にバラードでしょうか、それとも一気に硬派にロックでしょうかってな具合です。

 なんというか、そうやって歌手イメージのためにあれやこれや様々なジャンルの曲をさらりと仕上げてしまう織田哲郎の凄さが、特に今回は際立っていますね。フォルクローレに手を出してみたというより、自らの手の中にフォルクローレを引き入れてきたかのような、見事な節回しになってます。前奏とかの微妙な変拍子は、アイドルポップスとしては別にいらないような気もしますが面白いです。
 詞は、別れ際になっても本心を打ち明けられずに「友達」のまま送ろうとする、そんな気持ちウラハラな自分を『ウソツキだね』と言ってます。ベタですが、ベタゆえに哀愁あるフォルクローレと合わさってなかなかの破壊力になってきます。
 あと「ウソツキ」もそううですが、『ココロ』がカタカナ表記になっているのとか、いかにもな見せ方だなあと。
posted by はじ at 23:06| Comment(2) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月17日

鬼束ちひろ「育つ雑草」

育つ雑草
鬼束ちひろ, HIDEYUKI FUKASAWA
ユニバーサルミュージック

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 活動休止、移籍を経ての久々のシングルは、ピアノの聴こえてこないバリバリのロックサウンド。当然のように賛否両論あるようですが、まあこれはこれでいいんじゃないかと思います。ピアノ主体の楽曲をもうすでにアルバム三枚分も作ってきたのだから、新しい分野に手を出すにはちょうどいいくらいの時期なんじゃないかなと。
 まあなんかちょっと、気合入りすぎな出来ではあるような気がしますけどね。おそらくはイメージチェンジを意識しすぎていて、やや過剰すぎな感じを受けます。アレンジセンスも微妙なとこですが、でも見事に洗練されたロックンロールと彼女が合うかって考えると、このくらいのベタベタなバッキングのほうがむしろいいような気もします。
 とりあえず、2ndアルバム「This Armor」の「ROLLIN'」とかですでにバンドサウンドは取り入れていて、それがけっこういい感じだったりするし、「鬼束ちひろにはロックが合わない」ということはないはずです。肩の力を抜けばもっとしっくりくるんじゃないかなと。

 詞のほうも、なんだか今までと違う方向に、妙に入れ込んでますよね。いや、入れ込んじゃうのは昔からそうなんですけど。いつも、全然リラックスしてない。
 今までの彼女の詞は、代表曲「月光」の『I am GOD'S CHILD』というフレーズに代表されるように、「神」を強く志向した詞世界が特徴的です。神といっても信仰心とかうんぬんはすっぱりと抜け落ちているっぽくてその辺はそういう意味で日本的だなあとか考えているんですが、ポイントなのはそうした神聖なイメージを引き合いに出しながら、自分、あるいは周囲の汚さ弱さ醜さを意識してしまう、というところです。この自覚が大元にあって、あとはその絶望や無力感から「貴方」に助けてもらったりこっちが助けたり、いろいろやってるわけで。とにかくいつも「神、神聖なもの⇔汚れたわたしたち」という対比がありました。
 ただ今回は、天を見上げていません。『食べていくのには/稼がなきゃならない』と、地を這って行こうという姿勢が見られます。タイトルの「雑草」にしても、『気分は野良犬』にしても、『もう必要もない あらゆる救済』とはっきり示したり、やや無理やり目を背けている感はありますが、神に頼らず現実をひたすらに生きていこうという主張になっています。
 やけに芝居がかっているようなのは別に今始まったことじゃないですし、「sign」はともかく「私とワルツを」で見せたような「救済されたい側」から「救済する側」への転換は、なんだか自らを神格化、宗教の教祖化していくようでちょっと怖かったんで、まあ変わっていくなら一から出直しのこちら「育つ雑草」のほうが、まだ好感は持てるかなと。
posted by はじ at 22:52| Comment(2) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月14日

愛内里菜「Boom-Boom-Boom」

BoomBoomBoom
愛内里菜, corin., 尾城九龍
GIZA

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 さて愛内里菜の新曲です。曲はもう彼女のイメージそのまんまというか、打ち込み主体の疾走系ハイテンションナンバー。こういうタイプの曲はいつの時代も必ずあって、いつの時代も一定数の好きな人がいて、という感じで。かくいう自分も一時期、友人の影響でTWOMIX聴いていた頃もありました。名探偵コナン役の声優高山みなみボーカルのユニットって言えばわかりやすいのかな。声とか曲とかってより、訳のわからない振り仮名ばっかの歌詞が好きでした。
 脱線しました。いや、いつの時代も需要があるんだよという例示だということにしましょう。

 今回の「BoomBoomBoom」は、打ち込み疾走ロック「そのまんま」でありながらも、メロとサビの対比が鮮やかで、聴き手を惹きつけるものが多くなかなかいい出来になっているかと、っていうか自分がちょっとピンときたってだけなんですが。
 ただね、歌詞がね、妙にエロいんですよ。『誰かじゃいけそうにない』『熱いものしかイヤなの』ですからね。『でも私はそれですごくいいの』とか『洒落にかためたものは/上から下まで思い切り脱がせて』とか、思わせぶりなフレーズのオンパレード。
 まあアリガチな手法っちゃそうなんですけど、コナンのテーマって印象が強かっただけに、インパクトがあって。タイアップで小学生のファンとかついているのかもしれないのに、いいのかなあ。余計な心配ですか。
 あと、これ、本人の作詞ですからね。自分でこういうの書く人になると、ぐっと減りますよ。普通思わせぶりエロ系の詞ってのは男性プロ作詞家が書いて、んで必ずどこかに三文エロ小説的な、オヤジっぽい微妙なセンスが見えちゃったりするもんなんですけどね。そういう要素がなくって、スッキリしていると言えばスッキリしてます。あ、『欲しいのはReal show time』がリフレインで『Pink show time』になっているのとかは、また方向の違ったアレなセンスだなあとか思いますけど。
posted by はじ at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月09日

大塚愛「大好きだよ。」

大好きだよ。 (CCCD) (通常盤)
大塚愛, 愛, Ikoman
エイベックス

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  「甘えんぼ」と同じ三連バラードですが、歌い方はそれなりによくなっているかもなあと。前回はいくらなんでもリズムに縛られすぎでしたが(きっと三連バラードってそうなってしまい易いんじゃないかと)今回は多少歌いこなせているというか、自然な揺らぎが加わっていたりも。ただやっぱり『あなたが恋しくて』が「こいぃしくぅて・ぇー」になっていたり『ずっと ずっと 大好きだよ』が「ずっと・ぉー ずっと・ぉー」になっていたり、リズムの頭拍を意識しすぎなのがすごく気になります。

 旋律への歌詞の乗せ方も、多少流れに沿ったところもちらほら出てきているんですけど、まだちぐはぐなところが目立ちますね。
 しかしこの「乗せられなさ」は、わざとなんでしょうか。毎回毎回1コーラスと2コーラスのメロで音数から何から流れが全然違うのとか、「言葉が揃えられない」のかはたまた「わざと別物にしている」のかが、ちょっと判別不明です。まあ揃えようとしているのにこの惨状なんだとするとかなりアレなので、意図的に効果を狙って変えているんだ、と考えておいたほうが無難ですが。はい。

 歌詞、内容は甘々。ちょっと「恋する女の子の理想」すぎる気もしますがまあそういう歌だし。デビュー前から暖めていたということなんで、甘々なのを狙って作ったんじゃなく、もともとこういう作風なのかなと。それってけっこう凄いことだと思います。なかなか代わりがいないはず。
 微妙な脈絡のなさが、感情が『これ以上どうしようもなく』なっている感じの演出に(結果的に)なっていて、たとえば恋している女の子がこの曲に浸りこんじゃうとしたら、そういう部分の影響なんだと思っています。冷静に見てたりすると『知ってた?』ってそんなこと知ってるわけないじゃんとかツッコみそうになるんですけど、尋ねずにはいられないのが女心、ということなんでしょう。また『徹夜で帰ってきて疲れてるのに・・・』というくだりは、私と仕事どっちが云々な方向性をちょっと感じます。あたしが一番でいてほしい、という。
 きっとそういう過剰な思い入れの部分がうざったい男性の方々も、共感できない同性の方々も、多数いらっしゃるとは思いますが。

しかし一年ちょいでアルバム二枚。もっとゆっくり成長させたほうがいいと思うんですけどねー。ちょっといろいろ至らないカンジなのも、確かにウケてる要素の一つだとは思うのですが。
posted by はじ at 22:21| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月05日

安室奈美恵「GIRL TALK/the SPEED STAR」

GIRL TALK/the SPEED STAR(CCCD)
安室奈美恵, T.KURA, MICHICO, AKIRA
エイベックス・ディストリビューション

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 両A面扱いで、同じCM曲。どちらも声を張り上げない、ウイスパー系のダンストラックですが、内容はかなりはっきりと色分けがなされています。

 まず「GARL TALK」は、柔らかく穏やかな印象。女同士の友情ものって題材というと相川七瀬「彼女と私の事情」が思い浮かびますけど、あっちはガーっと騒いでいる感じなのに対して、こちらはひたすらおしゃべりに花を咲かせています。曲調のせいでずいぶんおとなしめに聴こえますが、『ストレスさえ吹き飛ばすどっか遠く』『かまわずハメ外しておかないと』なんてあたりを見ると、かなりエキサイトしていると考えたほうがよさそうです。
 さらにどうやらこのGARL TALKは二人ではなく、三人以上で行われている模様。サシならしんみりすることもあるでしょうが、三人以上となると、テンションは止まらないんじゃないかと。なので、当人の気持ちとしては話すことですっきりして穏やかにもなるんでしょうけど、周りから見たらちょっと近づけないくらいにヒートアップしている姿が目に浮かんでしまいます。ちょっと怖いです。
 なんか曲と関係ない話になってしまいました。でもやっぱりハメ外すにもムードをつけて歌えるという点で、安室奈美恵もすっかり大人のイメージが定着したなあという気がします。

 で、「the SPEED STAR」のほうは、かなりキメキメのハードな曲。ひたすらループする旋律とか、音作りとか、すごく洋楽っぽいです。旋律の付け合わせに入ってくるシンセとかは、やっぱ日本的センスが混じってるなあと思うんですけどね。
 一応車のドライブを歌っているってことになってますが、『グラマラスなBody line』『あたしのすべて今にも むき出しにしてく感覚』等々枚挙に暇がないくらい、明らかに性的なイメージをかぶせてきています。よくある手法っちゃそうなんですけど、ただ大抵は男性視点で「魅力的なクルマ=魅力的なお前」を乗りこなしてやるぜ、みたいなのとか、あるいは女性視点なら「アタシをうまく扱えるかしら?」という扇情的なものが主流なんじゃないかと。あ、裏づけとかのないイメージの話ですけどね。
 その点この曲は、もちろん扇情的ではあるんですけど、『誰よりも速く』『力でねじ伏せる/そんなだけのやつらに 絶対に負けられない』と、媚びず、どこか気高さを保っているような描き方をされていて、なかなか面白いです。
posted by はじ at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年10月22日

奥田美和子「夢」


奥田美和子, 柳美里, 西川進, 隆勇人, 前嶋康明
BMGファンハウス

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 映画「感染」主題歌。なんだかこの映画、本物の霊が映っているとかありがちなニュースが流れているようです。記事は こちらですが、問題のシーンの写真がしっかり載っているので、怖いのダメな人は注意。確かになんかいますけど、毎回こんな騒ぎないですかホラー映画って。人を集めるための演出、話題づくりっぽいですよねー。まあ自分は観に行きませんけどね。怖いから。

 というわけでこの曲も怖いです。正確に言えば「怖くしようとしている」ですけど。サビで『死んだのは夢? それとも わたし?』(二コーラス目では『それとも あなた?』)というように意識が混乱していて、そう書くことで幻覚、狂的な印象を引き出そうとしてますね。メロ部分で情念的な二人のやりとりを描いていて、そのおかげで、このサビで一線を越えてしまった感じが出ています。柳美里も「青空の果て」のときよりも作詞に慣れたようですね。
 ただ、作詞者も歌い手もやや過剰気味で、意図がかなり見えやすいんで、「ほら、わたしって病んでるでしょ?」って言われているような気になってしまいます。ちょっと『心臓』とか『ピストル』とか『死』とか、単語で誇示しすぎかなと。でもこれはもう独自の持ち味ってことなんでしょうから、合うか合わないかって話なんでしょうね。
posted by はじ at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年10月13日

小野真弓「シーソー」

シーソー
小野真弓, 尾崎亜美, 小原礼, 高見優, mayu, 新井理生
日本クラウン

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 ちょっとメジャーじゃないですけど、有線で気になったもので。公式サイトで試聴ができますんで、知らない方はどうぞ。
 あれ、俳優さんなんですかこの人。曲も声もずいぶんほんわかしっとりしているんで、全然そんな感じしませんでした。だって、主演したドラマの主題歌も歌ってるのに、その「風のケーキ」は今回のカップリング扱い。まったく「売り」に来てませんよね。まあ、そのおかげでこの曲ののほほん具合が余計なところで失われたりしてなくて、よかったとも言えるかもしれませんけど。
 うん、考えてみれば今、あんまりこういう朗らかタイプの人っていないですね。そういう意味ではKOKIAに近いですかね。さすがにKOKIAほど歌唱力はなく、心は揺さぶられたりしませんけど(実は最近聴きまくってるんですよね、KOKIA)でも「聴いていてまったく疲れない」というのはそれはそれで重要なことなんで、いいんじゃないですか。刺激が欲しいって人には退屈で仕方ないでしょうけども。

 タイトルになっている「シーソー」というモチーフの示す通りちょっと幼い雰囲気で、まるで「みんなのうた」の一曲のようです。で、『シーソーがうまくできない 一人ぼっちじゃ』と、別れが表されてます。
 はじめ聴いたときは、子供のころの友達との別れなのかなと思ったんですけど、ちゃんと詞を読むと失恋のようですね。恋愛にシーソーはちょっとなあって感じですけど、穏やかな雰囲気のおかげか、違和感とまではいきません。シーソーのくだりから『いつか飛べたら』と締められるように、一回り主人公が成長しようとする展開になっていることですし、その差を出すための小道具として見てしまっていいかなと。

 曲の提供は尾崎亜美。杏里「オリビアを聴きながら」を生み出したという、ベテランですね。懐かしげな雰囲気にも納得。イニシャル云々はちょっとばかし古すぎる気がしますが、『あなたの口ずさんでた/歌が街に流れてた/そんなことが 何故か嬉しかった』なんてフレーズはうまいですね。堂に入っています。
posted by はじ at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年09月30日

aiko「花風」

花風 (CCCD)
aiko, Masanori Shimada
ポニーキャニオン

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 タイトル、パソコンで鼻風邪って変換されて、なんだかショックでした。
 久々のアップテンポで、aikoにしてはあんまり感情が渦巻いてなくてすっきりさっぱりしている感があります。でも旋律は、リズム良く進む中にも彼女らしい伸びやかさが漂ってますし、きっとあんまりすっきり行こうという意図とかはなく、するするとこの調子でできてしまった曲なんじゃないかなと推測します。
 まあ、歌い方のせいもあるんでしょうけどね。このメロディラインだと、もっと歯切れよく歌ったほうがポップ感が出ると思うんですけど、aikoは全部つなげて、緩やかで伸びのある流れを作ってます。

 aikoの詞って、恋愛のうたなんですけど、実はたいてい一人で物思いや回想に耽っているばかりなんですよね。失恋や片想いのシチュエーションが多いということもあるんですけど。
 たとえば今回だと、今はそばにいない「あなた」を想像している歌なんです。で、『生まれ変わってもあなたを見つける』と、再会を志していると。
 ポイントになるのは、上に続く言葉で『雨が止んで晴れる様に/光が射しててそれは綺麗で/あなただけを照らしてるから』とある部分。ここにはむしろ「あなた」そのものよりも、「あなた」を想像している中で射し込む光まで見て取ってしまう「あたし」の心理を、強く感じます。この「あたし」の度合いの強さが、自問自答な詞の傾向にも関係してくる、ある意味内向的な特性だったりします。なんですけど、aikoの場合は声などのせいか正々堂々として聴こえますんで、その辺をすべて「共感」に持って行きやすいんじゃないかなと。今回も、諦めきれなすぎ!イメージ美化しすぎ!ってツッコミ入れようとしたって、まったく的を射ないものになって見えちゃいますし。

 「花風」というのは、別に特定の花があるわけでないんだろうなあと思っていたら、「お花畑に咲く風」=「恋しているときに吹く風」なんだという情報があって、なるほどなと。ただの風よりも、暖かさを感じますよね、花風と言うと。人によっては、匂いまでも感じ取れるかもしれません。
posted by はじ at 04:56| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年09月16日

I WiSH「キミと僕」

キミと僕 (CCCD)
I WiSH, ai, 家原正樹, nao
ソニーミュージックエンタテインメント

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 このI wishはだいぶ前本人がカミングアウトしたように、川嶋あいのユニットなわけです。ただ、覆面ユニットだった以前ならまだしも、今個人の活動とユニットを平行してやっている意義ってものが、いまいちよくわかんないんですが。
 だって今回のこの「キミと僕」、川嶋あい名義で出している「マーメイド」とか「525ページ」とかと、全然違いなく思えるんですもん。もっとちゃんと聴き込めば、差異がはっきりしてくるんでしょうか?あえて言えば、アレンジは多少ソロよりもユニットのが賑やか華やかめで、詞は、川嶋あい名義のほうは実感を基に作っていて(そして片想いが多い)、I wishは頭の中で構想して作ったのかも、と思えました。でも、大元にあるものは、おんなじ方向性です。ぱっと聴きでわからない程度の違いしかないんであれば、わざわざ分裂状態で進めていくこともないと思うのですけど。

 というわけで今回も、ユニット・ソロ両方通して、相変わらずです。
 とにかく、ピュア。この純粋さと声が好きな人には間違いなくお勧めです。ちょっとだけ汚れてしまった人にもたぶん、個人的に切なさが混じっていいかも。ひねくれ者には不向きです。

 特徴としては、前にも触れたように、ほとんど音を伸ばさない、声の長所を生かした旋律になっていること。
 また今回気付いたのは、歌詞で『君をいつまでも守って行きたい』と、強さがあるメッセージ性を持っている、というところでしょうかね。ただ「一緒にいたい」じゃなくて「守る」というのは、意外と大きな差だと思うんですよ。ざっと見た限りで共通して言えるのが、ただ「出会った二人」の喜びを書くのでなく、今現在から先の未来に、積極的な意志が見えるということです。「二人で今幸せ」なんじゃなく、『誓った愛を育てよう』(明日への扉)『未知の2人信じて歩みだそう』(ふたつ星)みたいな、「二人で未来を作っていきたい」という思いが感じられますね。
posted by はじ at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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