2008年09月20日

KAT-TUN「DON'T U EVER STOP」

DON’T U EVER STOP(初回限定盤1)
KAT-TUN 亀梨和也 田口淳之介
ジェイ・ワン・レコーズ (2008-05-14)
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<一貫したコンセプトの中、さまざまな要素が交じり合う>

 デビュー以来、著名アーティストの提供楽曲とそうではない楽曲を交互に繰り出してきたKAT-TUNですが、ここにきて前作「LIPS」に続き連続で著名アーティスト外の楽曲です。だいぶ人気もカラーも定着したからでしょうか。ノンタイアップでのリリースというのも、制作サイドの自信を感じさせるような。

 曲調は、前作のロック系統から変わり、ダンス系トラックに。ただ、『裏切りの街角に 咲いた君の花』『失うもの無いぜ 戻れないぜ 全てを賭けて』というような、ハードなテイストは変わらず。
 ジャニーズ事務所、というか男性アイドルは「等身大」で「優しい」ソフトなイメージが定着してきた中で、当初から陰のある雰囲気を出してきた戦略が貫かれている感じです。

 全体としては、ダークで悲劇的なムードが漂っている中で、『運命はDon't stop』で翻弄されるけど向かっていこう…というようなところに落ち着いています。
 で、「LIPS」でもそうだったように、硬派っぽくあっても『上手く言えないけど 一人じゃない』というような優しさがあったり、その一方では『感じた夜は 正直に 欲しがって』とちょっとアダルトな一面もあったり。ラップでは『From千葉 サイコラッパー』とか『日の丸背負い Lock on 生きろRock道』とかHIPHOP的な強気さがあったりと、それぞれにカッコよさをアピールしているんですけど、ちょっと方向性が散らかっている印象。
 とはいえ、スタイリッシュな曲調の中、各人がパートを分けて折り重なっていく展開は、なかなかのものかと。あんまり注目されていない気もしますが、KAT-TUNの楽曲は意外とこういう点が面白かったりします。
ラベル:KAT-TUN
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2008年07月26日

関ジャニ∞「ワッハッハー」

ワッハッハー
ワッハッハー
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<ユーモアに彩られる中の、きっちりした首尾一貫性>

 シリアスにではなくユーモアで彩られたポジティブシンキングシンキングに満ちた、明るいムード満点の一曲。関ジャニ∞は、初期の地元・関西密着系から、うまくより広がりも需要もある路線へと切り替えてきていますね。事務所内のポジショニングとしても、シリアスでキメキメなKAT-TUNとは好対照で、はっきりとしたポジションを確立しています。
 で、ポジションが明確なせいか、込められたメッセージもきちんと焦点を絞ったものになっています。

 ポジティブメッセージソングって、けっこう整理されずごちゃっとしてしまいがちだったりします。
 そもそも誰に向けての言葉かはっきりしなかったり(目の前の「君」なのか、それとも「みんな」なのか)別方向の主張が混ざっていたり(今を生きるの?それとも遥かな未来を目指すの?とか、走り出すの?一歩一歩進みたいの?とか)あとは恋愛要素が微妙に絡んできたり…などなど。
 それでも、「いいこと言ってる!」というのは確かだったりするので、違和感なく聴けたりしちゃうものなんですけれど。

 その点、この歌詞はきちんとしています。テーマは言うまでもなく「笑顔」。悲しみや孤独はあるけれど、「僕」→「君」へ、そして『君が笑えば また誰かが笑うさ』と笑顔を繋げて、笑い飛ばしてしまおう。実にシンプルな内容です。

 ポイントは、無理に「答え」を出そうとしたりしていないこと。『この空の 澄み渡る青のよう悲しみが全部消えて/なくなればいいのに いいのに』と願っても、実際やることはひたすら笑うだけ。それじゃ気は紛れても、根本的な解決になってないじゃん!と感じる人もいるかもですが、でも、この曲はきっとこれでいいのです。
 ひとつは、ユーモアのあるキャラクターが持ち味の彼らだから、変に真剣な顔をして答えを導くよりも、ひたすら笑ってばかりのほうがらしいですし、特徴も出ます。ふたつは、ここで「笑う」以外の要素を持ち込んでしまうと、先に言った一貫性が崩れてしまう危険性が高いこと。テーマは「笑顔」なのですから。続きを読む
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2008年07月17日

GReeeeN「旅立ち」

旅立ち
旅立ち
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GReeeeN
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<王道ど真ん中の「別れ」シーン>

 ミディアムテンポ&平易な言葉とキャッチーなサビ&シャッフルのリズムに乗るラップ、とすっかり毎度おなじみとなったGReeeeNです。
 今回は、リリース時の季節柄もあるのか、「桜」のイメージを盛り込んだ別れの歌。お互いに離れる中でも、未来を追っていく「君」を応援する、というポジティブな内容に仕上がっています。

 何度かこのブログでも取り上げましたが、この曲で描かれる別れは、一人称視点の男性側が「残る」そして相手の女性側が「旅立つ」構図になっています。
 男性主人公が旅立つのではなく見送るパターン、やっぱり近年増えてきている気がしますが、いかがでしょう。現代の若者が受動的な意識になってきていることの表れだ!女性の社会進出が定着してきたことの表れだ!…なんていきなり言っちゃうのは、さすがに飛びすぎでしょうか。
 ただ、「誰かにエールを送る」メッセージソングに人気が集まる傾向は感じていて。その点を踏まえると、別れのシーン、相手を見送る視点、さらに<明るく送り出すポジティブさ>もセットで、受け入れられやすい設定として増えつつあるのかなと。

 いつものデートで、『夢を求めて 旅立つと言ったね/君の涙と共に』と、夢を追うために新天地を目指す決意をした「君」。「僕」は『笑顔で送り出すと決めたから』と、その決心を受け入れます。
 『君は/「少しの間、、、」と』というフレーズから、おそらくはこの二人はもう二度と会わないというわけではなく、今後も連絡を取り合ったり、そのうち再会することを考えているのでしょう。歌詞中に描かれるフレーズを追っていくと、まるで今生の別れのようにドラマティックですが。

 「駅で見送り」「手紙を渡す」、あと「ぶつかったのが出会い」なんて、とにかくベタなストーリー展開。意外性はないですが、まあこういうタイプの楽曲はヒネっても泣き度合いが下がるだけなので、このくらい王道な感じがいいのかもしれません。
 一番ぐっと来させるべきサビ頭が、するっとインパクトなく始まってしまうので、ちょっとキャッチ的に弱いかな。テクニック的には面白いんですが、ここまで王道を行って感動を誘おうとしているなら、もっと引き込んで聴かせる形のほうが正しかったのではないでしょうか、と。
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2008年06月07日

KAT-TUN「LIPS」

LIPS
LIPS
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KAT-TUN
ジェイ・ワン・レコーズ (2008-02-06)
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<疾走する激しい感情の中にも優しさが>

 メンバー亀梨和也主演の「1ポンドの福音」主題歌として、KAT-TUN史上最速のナンバーという触れ込みでリリースされた6thシングル。
 グイグイ前へ押し出されるギターリフとドコドコと打ち鳴らされるバスドラム、そして裏拍を刻むスネアが、疾走感を演出しています。ここまで高速ビート感にこだわった楽曲は、ジャニーズのシングル史上としても初めてなんじゃないでしょうか。ノリがよくて、かつ余計な音もそぎ落とされていますし、好きなサウンドです。

 サウンドもそうですし、歌い出しのスロー部分からしても、ビジュアル系ロックバンドを意識している作り。『Lips』=口唇に惑う狂おしい感情の昂ぶりを描くところ、それも『近づけて壊したい 激しく』とどこか倒錯気味の雰囲気も香っているところなんか、特にそうですね。
 とはいえ、そこまで狂気的ってほどでもなくて、『自分だけ責めないで』『もう一人きりじゃない』みたいな暖かみあるメッセージも入っています。押さえられない感情を前面に出しつつ、きちんと「君」への気遣いを見せているあたり、やっぱりアイドルグループです。冷静に考えると、実はミディアムバラードでこの歌詞を歌ってもいけそうだったり。その場合はV6あたりになるかな。
 振り切れていないなー、こういう曲のノリだったらもっとダークに退廃的に行ってほしいなーと個人的には思ったりもしますが、あえてそこまで行かずいかに多くの人に受け入れやすいものを作るか、というエンターテイナーのプロとしての意識が感じられます。

 メロディラインは、サビの大部分を構成している前のめりのリズム(付点8分・付点8分・8分。これって何か専門的な名称があったりするんでしょうか)が印象的。疾走感のあるメロディラインを作るには、うってつけのものです。このリズムに『そのままで そのままで』とか『めぐりめぐる』といった言葉を当てているの、実に巧くはまっていますよね。
 で、歌にそこまでパワーがあるかというとそうでもないんですけど、キー的に高い位置が続くこともあり、振り絞った感じになっているので、それはそれで迫ってくる迫力として受け取れるかなと。
ラベル:KAT-TUN
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2008年05月24日

ケツメイシ「出会いのかけら」

出会いのかけら
出会いのかけら
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ケツメイシ
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<落ち着きを感じさせる「つながり」の描き方>

 こういうのはもうお手の物、といった感じのゆったりしたテンポでのハートウォーミングナンバーです。

 人の世の出会い別れをテーマにしているのですが、『巡り会いの中で生きてく』『人と人が繋がって やがてそれが形になって』と、大きなつながりとちっぽけな個人、そんなマクロな視点を感じます。一人称ではなくて三人称で語っている感じ。どこか悟りを開いたかのような雰囲気もあります。
 出会い別れを繰り返して、人は成長していく。そんな普遍的なメッセージを届けようとするアーティストは多いものの、特にヒップホップの分野だと伝えたい気持ちが先行しすぎて前のめり気味になっていたりします。それはそれで若さと勢いと純粋さがあってよいものですが、ケツメイシの音楽にはもう少し余裕があるように思います。

 音楽的にもそれは同様で、ハネたシャッフルのリズムをうまく緩やかに拡げているあたり、他の同種のユニットよりも精神年齢の高さを感じさせるところ。そのゆったり感が、小さな個人を経ていって大きな輪になっていくイメージを作り上げているんじゃないかなと。
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2008年05月16日

GReeeeN「BE FREE/涙空」

BE FREE/涙空
BE FREE/涙空
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GReeeeN
NAYUTAWAVE RECORDS (2008-01-16)
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<別れから強く歩き出す際の涙/辛さを洗い流すための積極的な涙>

 「愛唄」のスマッシュヒットから支持基盤をしっかりと固めた感のあるGReeeeN。今回は両A面で、どちらも大きく「涙」がフィーチャーされています。

 「BE FREE」は映画「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」主題歌などトリプルタイアップという快挙。その理由は、おそらくはキャッチーな楽曲の響きが大きいのではないかと。印象的なループトラックが強く鳴るなかに、オリエンタルな色合いのメロディライン。とても覚えやすいサウンドを展開しています。
 そして、『春夏過ぎて秋冬が来て 時は戻らない刹那の中』というフレーズ。時間は戻らない、そんな感傷を漂わせることで、オリエンタルな響きに切なさを醸し出しています。その手前の春夏秋冬の部分、はっきり言ってなくても意味は通じるんですけど、これ、NEWSに提供した「weeeek」のときと同じですね。つまり、春→夏→秋→冬と並べていくことで聴き手の意識に流れを植えつけ、知らず知らず歌に引き込んでいく効果があります。

 そんなふうに感傷に浸らせる一方、『もしも世界が嘘だらけでも僕ら2人ならばいける』という強いメッセージがあったり、夢や愛しさに涙を流したり、いろいろと詰め込まれています。「人」ほどのことはないですが、やっぱりごちゃ混ぜ気味かなーという感じ。どれもいいこと言ってるんですけど、触れ幅が大きいのでついていくのが大変です。

 こちらの「涙」は、出会い別れの時に置いていくもの。対して、もう一曲の「涙空」での「涙」は、ひとつ成長するために必要なもの、という位置づけです。こぼしたごとに強くなれる、という点では一緒ですね。続きを読む
posted by はじ at 02:41| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月12日

桑田佳祐「ダーリン」

ダーリン
ダーリン
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桑田佳祐
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<華やかなサウンドの中に滲む哀愁>

 横浜を舞台に、真冬の恋の終わりを描いた一曲です。
 ベテランならではの渋みがある…というか、たとえば横浜の地名を取り入れたご当地ソングっぽい作りとか、男の哀愁が滲むようなテーマ設定とか、『いいオンナがひとり/明日へと旅立つよ』みたいなフレーズとか、実に演歌・歌謡曲っぽい。それでもこの人がしゃがれ声で歌うと、新しさとか古さとか気にならなくなるのが不思議。

 今回は、『もう二度と結ばれぬ/運命と知りながら』という別れのシーンを扱っていながらも、明るいホーンセクションが賑やかに盛り上げています。クリスマスだからというのもあるでしょうし、『俺よりもいい男が/いるならそれでいいのさ』と、自分と離れての相手の新たな人生を送り出す、というはなむけの意味も込められているのかもしれません。

 しかし、笑ってさよなら…というだけの歌でもないように感じます。それはフレーズの端々からも漂っていますが、特に、横浜の名所の部分が、胸に隠した哀しみを物語っているかのようなんですね。
 『中華街で酔って朦朧/振り向けば山手のチャペル』なんていい例で、華やかに送り出そうとする一方で、自分は飲まずにはいられない。そこに響き渡る幸せそうな鐘の音が、より孤独を色濃くしているわけです。そんなふうに、賑やかめな楽曲も、押し隠した辛さを裏に持っている、と考えていいのではないでしょうか。
 『本牧埠頭で泣いて Walking』なんてのも物悲しいです。本牧埠頭からは横浜ベイブリッジが伸びていますが、対岸の大黒埠頭のようにデートスポットになっているわけでもない、だだっ広いコンテナターミナル。夜、独りで歩くには、寂しすぎる場所なんじゃないでしょうか。
 こうして、実際の場所から主人公の心情を滲ませる手法は、まさに演歌の世界からある手法です。具体的なイメージがあるぶん、聴き手の想像力を刺激しやすいのです。

 そんなわけで、『泣いたのは幸せな/お前が見れたから』…という言葉も、ほとんどは強がりなのでしょう。寂しさは表に出さず独りで噛みしめる、そんな男の哀愁が感じられる一曲です。
posted by はじ at 15:27| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月01日

KAT-TUN「Keep the faith」

Keep the faith
Keep the faith
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KAT-TUN 氷室京介 SPIN 三上吉直 ha-j
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<どちらかに偏らず交錯する硬派さと優しさ>

 KAT-TUNの5枚目のシングルは、氷室京介の手による硬派な印象のロックナンバー。
 ここまで、奇数枚目は名の通った大物からの提供、偶数枚目はそうでもないもの、とはっきりと順番を考えて交互に出してきている感があります。適度に話題性も持たせつつ、でもプロデュースべったりにしてしまうと、彼らのイメージにそぐわないから…というところでしょうか。あんまり過保護な印象を付けたくないのかもしれません。

 そんな意図があるのかないのか、この楽曲も、優等生っぽくなさを醸し出そうとしているようです。『とばすぜ 燃え上がれ本能』『足りない言葉 ピエロは痛み抱え 作り笑い 立ちつくしてる』などなど、男っぽい口調やアウトローな表現が多数。というか、あー氷室京介っぽいなあ、という。なんというか、黒革でキメている感じです。
 ただ、アウトローっぽくはあるものの、底にあるものはとても真っ直ぐだったりします。『俺らが 明かりを灯すから』と言い放ち、『君をそこから 救い出すよ』と助けようとする。無頼っぽくても、きっちりと優しさを見せてくるわけです。氷室京介そのものの方向性もこういうところありますが、『俺ら』とぶっきらぼうに言いつつ『泣かないで』とまで言っちゃうあたり、やはり甘さが多めな気がします。

 で、ハードにロックを決め込んで、低音ラップも織り込んで、『敵無し 不可能も無し』と強気ながらも『だから 近くに…“Sweety”』なんてはっきりと「君」を求める。このあたりのバランスが、KAT-TUNの方向性なのでしょう。
 ただの甘い囁きにはしないし、かといって恋愛や繋がりを思わせる要素を抜き去り、本当の意味でハードボイルドに決めるわけでもない。『間違いだらけの街』の闇を疾走していくようなカッコよさを見せつけつつ、「俺ら」はちゃんと「君」=ファンのほうを向いているんですね。
posted by はじ at 04:41| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月26日

ケツメイシ「聖なる夜に/冬物語」

聖なる夜に/冬物語
聖なる夜に/冬物語
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ケツメイシ NAOKI-T YANAGIMAN
トイズファクトリー (2007/11/21)
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<隙のないクリスマス感/叙情性より感情を主体に>

 両A面で送るケツメイシ初の「冬」ソング。片方はゆったりしたテンポに幸せなクリスマスの一幕を描き、もう一方は4つ打ちで迫るリズムの中で失った恋を嘆き続ける切ない感情を投げかけてきます。

 「聖なる夜に」が描くのは、初々しさも感じられる恋人たちのクリスマス。二人で『迎える 初めての冬であっても/大した事など 出来ない』と、平凡ではあるものの、確かな幸せを感じていたい…という内容です。ハッピーさに溢れているのですが、恋人の二人が揃っているのではなく、描かれているのは実は「僕」が「君」に会いに行くまでだったりします。
 1年でも、大きなイベントの日であるクリスマス。その日に二人で過ごせることに浮き立つ気持ちをひたすら語っているんですね。
 『朝から何も手につかず』な状態で、『弾む足取り こらえて笑う』し『もうすぐで 君と手を繋ぎ笑う』という想像に浸る…これが、聴いているほうも何だか嬉しくなってしまうような心地にさせられます。。

 一方では『大事な夜 派手に飾りたい』と期待を膨らませながら、でも『平凡だけど』『僕の言葉で メリークリスマス』なんて、特別じゃなくても自分らしく、みたいなフォローもしっかり。サンタやイルミネーションやジングルベル、聖歌、そして雪まで、とにかくクリスマスらしい単語も大量投入してあって、実に隙のない作りになっているなあと。続きを読む
posted by はじ at 21:54| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月20日

GReeeeN「人」

人
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GReeeeN
UNIVERSAL J(P)(M) (2007/11/14)
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<「切なさ」と「ポジティブさ」の両立は>

 「愛唄」で一躍「時の人」となった現役歯学部生4人組、GReeeeN。ヒットからけっこう間は空いていますが、「人」という字を書くことでお馴染みの?武田鉄也扮する坂本金八をジャケットにさっくりと起用してくるあたり、強まった影響力を感じさせます。

 前作がストレートに愛を伝える両想いの楽曲だったのに対し、今作は別の道を歩むことになったハートブレイクの歌。『机の横の写真は今も 笑っているからさ』と寂しさをかき立てるフレーズが差し挟まれていたり、『それはつまりね 僕は今でも』…と言いかけて余韻を残してみたり、切ない感情を描こうという意図が見られます。
 そしてサビでは、人は誰もが自分の想いを持っている、そして『今はただ別々の道を歩んで行く』と、別れを俯瞰して、しみじみと述懐しています。

 そして『まだまだこれからも行くぜ 自分らしくあれ!!!』と、ポジティブに締める。…のですが、この部分がちょっと先の「切なさ」とちぐはぐになっている気が。メロではけっこう未練がある雰囲気なんですが、サビだとすっぱりと「強く生きていこう」と前向きになっていて、なんだか違和感あります。
 現在のラブソングは、ただ恋愛を楽しむだけではなく、そこに成長や人間的な強さを見出そうとするスタンスを示すものが目立っている、というお話は何度かしています。それは相手を失った場合にも言えることで、失恋を嘆きつつもそこから立ち上がって一回り大きくなとうろする、そういった流れがあるものが隆盛しているように感じるのですね。
 なのでこの「人」もその範疇にはあるのです。ただ、要素を盛り込んでいるけれど、まとまりきっていないような。Bメロが「切ない想いに浸る⇒強い意志を持つ」転機になっているっぽいですが、『今までただ二人は楽しかったこと』を想起するだけで立ち直る、というのは少々言葉足らずな気がします。

 「人は」と、一段高みから見渡している視点になるのも、個人的な切なさ寂しさと乖離があって、それも影響しているのかもしれません。
 彼らの詞は、なんというか良い言葉を伝えようとしすぎるあまり、ちょっと詰め込みすぎたり、空回っている面があるのかなー、という印象です。「愛唄」はひたすら直球ど真ん中だったので、それほど気になりませんでしたが…
 まあ、拙い部分もまた人間味として共感できる魅力になったりするものですし。伝えたい!という姿勢はハッキリしていますしね。もう少し肩の力を抜き、遊び心を入れたもののほうが、結果的に完成度が高くなる気はします。
posted by はじ at 23:46| Comment(1) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月06日

コブクロ「蒼く 優しく」

蒼く 優しく
蒼く 優しく
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コブクロ 小渕健太郎
WARNER MUSIC JAPAN(WP)(M) (2007/11/07)
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<回想をドラマティックに演出する技巧>

 昔、一度諦めた夢を思い返し、立ち止まって自らに問い直す。
 コブクロの新曲は、その過程をドラマティックに描き出しています。

 こうした曲の定石は、過去の自分を振り返ったうえで、もう一度夢を追ってみよう、となるのがパターンで、そこまでを曲中で追っていくとそれだけでドラマティックな展開になります。
 しかし、この曲は、ちょっと違います。もう一回やりなおしてみるぜ!とまでは行かず、『あの日の僕』に対し『少しだけ話を きいてくれるかい?』と語りかける…とまででまとめているのです。
 そんなわけで、中心に描かれているのは、「再出発」ではなくて「過去の自分への想い」なのですね。テーマはそこまででも、十二分に盛り上げていくテクニックは、さすがの一言です。

 「過去の追憶」は、使いやすいテーマではあります。無難にまとめれば、たいていの聴き手の記憶やイメージと結びついて、感動を生むことができるので。
 しかし、この曲はそんな使い勝手の良さに胡坐をかいていません。その象徴が、サビ直前『あの日のロッカー』。静かな中でハモるAメロ、楽器が増えるBメロが緩やかに続いてきて、急激にボルテージが上がるのがこの箇所。そこに、視覚的なフレーズをどどん!と提示するのですね。
 ここまではずっと抽象的な言葉を並べて、パッとイメージを与える。そしてサビ、タイトルにも出てくるように楽曲の中心イメージとなる『今よりずっと蒼く 優しく見えた空』に繋がっていく、と。単純に想い出を書き綴っていくよりも、ドラマティックな印象を聴き手に与えることができる書き方になっているのです。

 さて、2楽章の同じ部分では、『引き返して しまえばまた 後悔だけが 僕を待ってる 下り坂』と歌って、そして間奏に流れ込んでいきます。こちらも1コーラス目以上に劇的に歌い上げられているんですが、最初はなんで曲最高潮ともいえる盛り上がりの部分に「下り坂」というマイナスイメージの言葉を当てるんだろう?と疑問に思ったりしまして。
 しかしこれも、どうしても沸き起こってしまう、激しく狂おしい「恐れ」「不安」といった感情を表したかったのかなーと。
 2コーラスでは、その前にもこんなフレーズがあります。『何度負けても 間違っても 夢は 終わりじゃない/何度勝っても たった一度の 諦めに 崩れてゆく』…普通のポジティブ志向のメッセージであれば、この2行は上下反対の順で提示されるはずです。でも、ここでは最後の「諦めに 崩れていく」を強調したかったのでしょう。
 で、「崩れること」への恐れが、「下り坂」の歌い上げに結びついていく、と。この部分はどうも、曲中でのブレーキ、いったん「落とす」ためにフレーズが組まれているようです。

 で、その後、間奏のあとに音が静まり、「再生」が始まるのです。
 『心の叫びなど 誰にも聴こえない/だから笑うんだよ 涙が出るんだよ だから 輝くんだよ』
 そして再び楽器が加わり、もう一度盛り上がって、クライマックスになだれ込んでいく。これだけ展開が徹底してドラマティックに作りこまれていたら、そりゃあ感動するってもんです。続きを読む
posted by はじ at 19:05| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月02日

GLAY「SORRY LOVE」

Ashes.EP
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GLAY TAKURO John Lennon
EMI MUSIC JAPAN(TO)(M) (2007/10/31)
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<楽曲展開と歌詞展開のリンク>

 前年の「G4」と同じく、4曲入りのEPシングル。ただ内容としては、こちらのほうがバラエティ豊かな印象を受けました。骨太に疾走するロック「Ashes-1969-」は切れ味鋭いですし、「ROSY」はダークな魅力があるちょっと新味のあるサウンドを味わえます。また、ビートルズのカバー「MOTHER NATUER'S SON」も、初の洋楽カバーで初の全英詞。と、かなり多様な表情になっています。
 その中で、今回はバラード「SORRY LOVE」をセレクト。哀愁漂う恋の終わりを歌った、いかにもGLAYらしい一曲です。

 らしい、とは書きましたが、曲構成を見ていくと、興味深い工夫が施されているなあと。
 Bメロ、『どれくらいの愛でなら 君の涙止まるかな?』なんてフレーズの箇所は、ぽっと投げ出されるように独立させてあったりします。ただでさえ印象的で、しかも問いかけてくるドキッとする言葉が、さらにサビかと思うようなキャッチーなメロディに乗って届いてきます。対して、サビも決して盛り上がらないわけではないんですが、その前で一気にボルテージが上がっているので、すっとそのまま入っていくような感じに聴こえますね。

 Bメロでぐっと昂揚し、そのままさらりとサビに入る。この音楽の流れは、そのまま歌詞の流れでもあります。
 Aメロでは、別れの場面に降る雪…というような寂しく辛い心象風景を描いていたのが、Bメロでは『友達でいられたら/傷付けずにいられたのに』など、感情がむき出しになります。で、サビは情況や心情を超え、『こぼれ落ちる涙の雫は/思い出の河となり 流れのままに』というように、ひとつ高い視点から客観的に「恋の終わり」を描いているのですね。

 その中のどこがもっとも激しい内容かと言えば、それはもちろん感情を表に出すBメロ部分となるわけです。で、サビでは『冬が来て春が来て 夏の後秋が来る/それだけ それだけの事』とむしろ気持ちを落ち着かせようとしているという。まあ、「それだけ」とまるで自分自身に言い聞かせているように繰り返すのが、聴き手にはより切なく映るのですが。

 サビをもっとも印象深く聴こえさせるのがヒットソングのセオリーですが、この曲はちょっと違った形で構成されています。ただ、上で指摘したように、それはしっかりと歌詞の展開を考えた上でのものだなあ、と思うのです。すっかり感動的な歌い上げバラードのイメージが付いている彼らですが、単純な再生産に堕さないようにしていることが伝わってくる一曲なのです。
posted by はじ at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月25日

CHEMISTRY「最期の川」

最期の川
最期の川
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CHEMISTRY CHOKKAKU 秋元康
DefSTAR RECORDS (2007/10/24)
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<看取る側にも看取られる側にも、別種の感情移入できる余地がある>

 CHEMISTRYによる、映画「象の背中」の主題歌。
 歌詞は、はっきりと「死別」というテーマが表れている内容です。「消える」とか「終わる」くらいではっきりと示さないようにしているタイプの詞が多い中で、ちょっと珍しいくらい映画の原作者でもある秋元康の手によるものですし、映画との結びつきを重視しているのでしょう。
 とはいえ、さすがに「死」と言い切ってはいません。それは、ぼかすというよりはより綺麗さを際立たせるため、というところでしょうか。どう考えても「死」に向き合っている内容でも、はっきりと言わないことで、余韻を作っているわけです。「川」と表現しているのも、三途の川と直結させるんじゃなく、「向こう側に行く」というような婉曲的なものだと考えたほうがよさそうです。

 そしてこの歌詞は、看取る側ではなく、看取られる側の視点から語る形式になっています。自分の運命を悲しむことなく、穏やかに受け入れていく。そして、『君を残すこと/それがつらかった』『離れ離れでも/君のその胸に/僕はまだ 生きている』と、残していくパートナーに静かに言い聞かせるのです。
 視点は違えども、やはりこの歌は「看取られる側」のための歌というよりは「看取る側」のためにある歌なのだと思います。看取る側が「あなたはこれからも自分の胸で生きていく」というのもグッとくるものですが、やっぱり看取られる側本人が「あなたの胸で生きていく」と言ったほうが、説得力が増すというか。

 聴き手が感情移入しやすいのはやはり看取る側であるわけですが、ただし、看取られる側にもその余地は充分にあります。自分の運命を静かに受け入れる様子は、秋川雅史「千の風になって」が大ヒットした時代の流れにも、ちょうどリンクするものですし。死に行くものの視点からの言葉、そして『僕は陽射しになる』と自然に還るんだという意識があることなど、共通項を見つけられますね。
 それにしても、『太陽の近くで見守ってる』と、「太陽」そのものにはなろうとしない奥ゆかしさが面白いところ。日本人らしいというか、やっぱり日本の「自然に還る」メンタリティというのは、そういうささやかさが含まれるものなんでしょう。

 やたらと感動ものが濫造され、その中で死別ものもどんどん増えているような気がする昨今ですが、まあ流行り廃りは世の常なので。ただ忘れてはならないのは、この歌などでは「死別」がそのまま「純愛」の完成形として描かれているところです。
 看取られゆく人は、ただ「君」を愛しぬいたまま人生を終える。そこには、この先決して心変わりすることのない愛情が残るわけです。たった一人の相手、運命の人と心を通わせる「純愛」が今とても求められていて、それを満たす確実で効果的なシチュエーションが「死別」なのですね。
 自分としては、「死別」を扱った作品が増えていることに憤慨するというよりも、ひたすら「純愛」至上主義が加速していくことに不安を感じたりはします。

 あ、CHEMISTRYの二人は相変わらず歌が上手いです。全体にわりとベタなメロディラインなんですが、それをR&B的に表情豊かに聴こえさせるという点はさすが。
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2008年01月21日

ゴスペラーズ「It Still Matters〜愛は眠らない/言葉にすれば」

It Still Matters~愛は眠らない
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<途切れない流れに途切れない愛を乗せて/旋律のうねりに言葉の力を乗せて>

 前作「Platinum Kiss/陽のあたる坂道」に続く、両A面シングル。
 どちらも制作体制が豪華でして、「It Still Matters」はバックストリートボーイズのハウィー・Dとの共同制作、「言葉にすれば」は、日本の二大学生合唱コンクールのひとつ「NHK全国学校音楽コンクール」の2007年度の高校課題曲として共同制作に携わったものだそうです。

 「It Still Matters〜愛は眠らない」は、コーラスが心地よいゴスペラーズらしいナンバー。洋楽っぽいなーと感じるのは、音がするすると流れていくせいでしょうか。J-POPでも、こういうスタイルはR&Bの隆盛以降珍しくはなくなったのですが。
 コーラスグループである彼らにとっての真骨頂というと、やっぱりアカペラでしょう。しかし音楽が入ったらそれよりも価値が低くなるかというと、そうではなく。今回のような、切れ目なく続くタイプの曲調は、歌だけでは補えない連続性をきっちりと生み出しているなあと感じます。
 もちろん、コーラスワークもそこに多大な効果をもたらしています。重なり合い途切れずに繋がっていく各パートは、緩やかながらもひとつの確かな流れを楽曲に与えているように感じます。

 歌詞のテーマになっているのは、タイトルにも据えられた「愛は眠らない」、一度は離れた相手に再び優しく愛を呼びかけていくメッセージになっています。『二人の恋は 迷路のようさ/答えなんてない 「さよなら」はまだ早い』と、「迷路」をプラスのイメージに転じさせようとするレトリックが、なかなか思いつかない面白い着想だなあと。
 『傷つけあい 離れていても/心でずっと 扉が待ってるよ』というフレーズや、サビの交互に続いていく波のような構成などは、穏やかで優しくありながらも、二人の関係を「もう途切れさせない」という意志をも感じさせています。続きを読む
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2008年01月15日

GOING UNDER GROUND「さかさまワールド」

さかさまワールド
さかさまワールド
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GOING UNDER GROUND 松本素生
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<強くしなやかに現実を見据える新境地>

 胸キュンロックバンドとしてすっかり確固とした地位を築いたGOING UNDER GROUND。すっかり安定感を身につけ、安定した活動をしている彼らですが、今回のこの楽曲は特に「新しい」と感じたので、その辺りを書いていきます。

 ラブソングもいいんですが、個人的には「サンキュー」「ハミングライフ」といった、恋愛要素のないメッセージソングのほうが好きだったりします。言葉の切り取り方や音の響かせ方が巧くて、それに何より疲れないメッセージを投げかけてくれるのが一因なのかなと思います。
 シリアスになりすぎず、こうしたほうがいい!と肩に力が入ってしまうことなく、届けてくれる言葉。そうした彼らの歌詞世界が、この「さかさまワールド」ではさらにもう一歩前に進んだように感じるのです。

 『今見てる世界が 全部ウソだっていいさ』と、ばっさりと言ってのけるのにまず驚き。もちろん、投げやりになってしまった、厭世的になってしまったというわけではありません。世界がウソだったとしても自分は揺るがない、そういう強さをさらっと主張しているフレーズなのです。
 この手の「清濁併せ呑む」といったスタンスを示す歌は、Mr.Children「フェイク」平井堅「fake star」など、ちょうど流れができつつあるようにも感じます(3つパッと挙げられるだけで「流れ」といってしまっていいのかは注意するべきところですが)『ニセモノ』も受け入れてしまおうという強靭さを描く一方、そういう主張をしなければならないほどフェイクが世に氾濫している…という意識も、逆説的に感じさせられるスタンスです。

 ただ、この歌は、そこだけに留まりません。
 『同じ夜を過ごしても 一人ぼっちで歩いてく』
 『「きっと僕らはずっと友達」なんて言葉にすればウソだし』
 と、あえてネガティブな想いをズバズバと口にのぼらせていきます。これでひねくれたり露悪的だったりに聴こえないのが彼らの純粋なイメージのなせる業で、実はすごいところなのですが、とにかくこうして現実的な本音をどんどん並べていくのです。
 でも、そこには常に前向きな意志があります。『ありもしない架空の世界を探して旅してる』ことを笑われたり悲しみを抱えることだと書きながらも、それを否定する言葉はありません。時間は戻らないとすっぱりと受け入れた後で、『全てはここから始まる』と宣言してのけてもいます。世界がたとえウソでも、『僕らには消しゴムでも消せない名前がある』と、臆することなく堂々としているのですね。
 「夢から覚めなさい」とか「現実を見ろ」といった類の言葉は、往々にしてネガティブな文脈で使われます。しかしこの楽曲は、それをポジティブに変えて呼びかけてきているわけですね。

 そんな中でも、特に『今日が昨日を超える事がきっとなくても/僕らは待っている』というフレーズが興味深いポイント。進歩史観の鎖とでも言いますか、「明日こそ」と先の未来に期待を持って発奮を促す言葉が、J-POP内に留まらず世間に溢れている中で、過去を超えられなくてもいい、超えようとしなくてもいい、と呼びかけるのは、これはなかなか凄いことです。
 まあ、「超えなくてもいい」というか、それでも超えたほうがいいし超えようと頑張るべき、というメッセージだと読むのが正しそうな気もします。また、超えなくてもいいのは「今日」なので、それは「明日」に「昨日」を超えるための一息休憩のつもりなのかもしれない、という含みはあります。
 でも、どちらにしろ、聴く側をぐっとラクにしてくれる一言だよなあと思うのです。この点が、先に述べた「疲れないメッセージ」という彼らの歌詞世界の特徴を受け継いでいる部分だなあと。それでいて全体には、今までよりもぐっと先に踏み込んだ呼びかけになっているわけです。

 現実的な視線をポジティブに語る強さ。さらに加えて、受け取る相手をすっとラクにできるような柔らかさ。ふたつを揃えた一曲になっているなあと。続きを読む
posted by はじ at 03:38| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月13日

関ジャニ∞「イッツ マイ ソウル」

イッツ マイ ソウル
イッツ マイ ソウル
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関ジャニ∞(エイト) CHOKKAKU 長岡成貢 ha-j 上中丈弥 依田和夫 Madoka
インペリアルレコード (2007/10/17)
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<ユーモア溢れる言葉が、ポップソングの中に奥行きを生む>

 『スーパーの袋しまっとくよーなとこ/そーゆーとこツボなのさ』と惚れた相手に、一途な気持ちで接していく姿をユーモラスに描いている一曲。冷たくされてもメゲないし、『しょげたりしないーい』と明るく言ってのける主人公。砕けた口調がいい味出していますが、こういうキャラクターは関ジャニ∞らしいなーと。
 『まっ今もそれほど可愛いってわけじゃない』とまで言っちゃうのは、たぶん歌う人が人だったらアウト!になってしまいそうな危ないラインですが、彼らならヒョーキンな物言いで何とかなってしまうわけです。

 従来の「大阪」を大々的にフィーチャーした一連の作品群から、最近は地方色が削ぎ落とされてきた模様。今回なんて、曲調としては遊び心はふんだんに見せてくれますが、わりと他のジャニーズポップスに近づいてきている感じ。
 とは言っても、没個性化が進んでいるかといえば、決してそうではないです。「関風ファイティング」そして「ズッコケ男道」とシングルを重ねていく中で、コミカルさやユーモアはそのままに、ポジティブで明るいキャラクターを前面に出したポップソングへとシフトしてきつつあるようです。
 そういう意味ではやはりノリは関西ですし、曲調はともかく、こういうキャラの視点や口調で歌えるというのは、間違いなくはっきりと彼らの個性と言っていいでしょう。

 KAT-TUNがクール&シリアス路線で活動しているのに対し、関ジャニ∞はちょうど正反対、ポップ&コミカル路線を進んでいるという印象があります。ジャニーズ事務所は今はっきりと多層化戦略を展開していますが、その観点からしてもKAT-TUNと両翼をはる重要なポジションだよなあと。

 さてこの曲、ただユーモラスで底抜けに明るい真っ直ぐな歌だ、で終わってしまうことはありません。細かく見ていくと、けっこう面白いのです。続きを読む
posted by はじ at 21:58| Comment(2) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月18日

Kinki kids「永遠に」

永遠に
永遠に
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KinKi Kids CHOKKAKU 鈴木雅也 U-SKE Satomi 井手コウジ 紅茉來鈴
ジャニーズ・エンタテイメント (2007/09/12)
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<丁寧な作りのメロディラインが、静かな決意をそっと物語る>

 このところ、ジャニーズ事務所への大物アーティストからの楽曲提供が多数実現しているのはご存知の通り。
 TOKIOへの中島みゆき提供「宙船」「本日、未熟者」、甲斐よしひろ提供の「ひかりのまち」と、歌い上げる男臭い楽曲。嵐にはスガシカオから「アオゾラペダル」、再出発のNEWSにはなかにし礼作詞の「星をめざして」、などなど…
 ただ、闇雲に楽曲をあてがっているというわけでもなく。KAT-TUNは大御所プロデュースとそうではないものを順番にシングルにしていますし、TOKIOにアクの強いものを与え嵐やNEWSにはさらっとした作風の人を…など、意外性や話題性も取り入れつつちゃんと考えて売り出されているなあ、と感心します。

 今回のKinki kidsは徳永英明によるバラードですが、この組み合わせもいいですよね。キンキは、ジャニーズ勢の中でも叙情的で儚げ・切なげなタイプの歌を担当することが多いですし。
 徳永英明の楽曲は、天性のボーカリストっぷりを発揮したメロディライン。なんというか、「丁寧」です。抑揚を生みやすく、揺らめくような印象を聴き手に与えさせる面もあり、スローテンポで激しくはなくとも、動きを感じさせるものになっています。
 サビ頭の『永遠にキミとふたりで』だけを見ても、入りは上にちょっと浮いたサスペンデッドコードのような響きで入ることで、荘厳さを演出。かつ、「ふたりで」は3連符でじっくりと聴かせ、ここだけでぐっと印象を強めています。

 作詞は、「Anniversary」や「ビロードの闇」も担当しているSatomi。この人、中島美嘉「雪の華」もそうでしたけど、しっとりと穏やかな中に強い決意を心にそっと抱く、みたいなシチュエーション好きですよねー。今回で言うと、全体的にそんな感じだけど特に『傘もささず雨のなか/歩いた時に感じたんだ/この愛 守りたい…と』とか。
 『誰より アイシテイル』がカタカナなのは、その前の『こんな男ではあるけれど』を受けてのことなのかなあと。「愛している」と書くとシリアスすぎるし、ダメなやつだけれど…と前置きしているので今ひとつ決まらないような気がします。カタカナ表記にすることで、変に重くしすぎない印象になるわけです。また、「愛の本当の意味なんて本当はわからないけど…」というような想いも、もしかしたら背後に孕ませているのかも。
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2007年11月27日

桑田佳祐「風の詩を聴かせて」

風の詩を聴かせて
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posted with amazlet on 07.11.27
桑田佳祐 山本拓夫
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<余情をたっぷりと漂わせる「死別」の歌>

 今年は「明日晴れるかな」に続くソロ活動2枚目のシングルとなる桑田佳祐。今回は、ずいぶんと毒気がなく、シックさを感じさせるA面が続きますね。ドラマタイアップだった前作に続き、今回は映画「Life 天国で君に逢えたら」の主題歌として使用されています。

 タイアップの影響か、『波に舞い 帆揺れてた/人はもう亡い』と、死別をテーマに据えています。アコースティックな響きの中で、張り上げることなくかすれる独特の声は、哀しみを漂わせる雰囲気に満ちていますね。
 夢の中、『ひとりぼっちの世界で/かりそめの逢瀬』を求めてしまう寂しさと哀しさ。真夏の海辺の風景描写が、その感情をいっそう浮かび上がらせています。まさに、桑田が多用する「慕情」という言葉がぴったりの雰囲気。

 個人的には、雰囲気的にも内容的にもサザンの40thシングル「BLUE HEAVEN」に似ているなあと感じています。ただ、あちらは空想の「君」が舞い降りてくるのに対し、こちらは『天使のような翼で/空を翔べたなら/逢いに行きたい』と、ちょうど対照的になっているのが面白いです。
 また、『守ってくれたら/悲しみにはもう負けない』とあるように、ちょっと前向きな面も。相手のことを忘れるのではなく、胸に刻み付けることで、前に進んでいく…という流れは、このブログでも何度か取り上げているように、現代の失恋ソングの王道パターンですね。

 また演出のポイントになっていると感じたのは、サビの終わり方。これ、歌われているメロディラインだけ追っていくと、きっちり終わっていないような印象を受けるはず。これはちょっと聴けばわかりますが、その後に入ってくるソプラノサックスへと引き継がれ、そして最終的に着地するような流れになっています。
 問題はなぜこういう形にしたのか?ということですが、それは余韻/余情を漂わせる効果を狙っているんじゃないか、と推測できます。あえて歌いきるようにしないことで、その後の言葉のない部分で聴き手に想像の余地を与えているんじゃないかな?と、考えてみたのです。
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2007年11月16日

ザ・クロマニヨンズ「ギリギリガガンガン」

ギリギリガガンガン
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ザ・クロマニヨンズ 真島昌利 甲本ヒロト
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<衝動を保ち、意味を捨て、よりナチュラルなスタイルへ>

 真島昌利作詞作曲の、シンプルなロックンロールチューン。映画「ワルボロ」の主題歌、西原理恵子が映画タイアップに合わせたジャケットのイラストを手がけるなど、話題性も豊富でしたが、そこで歌われているのは『ギリギリガガンガン ギリギリガガンガン』というサビだったりします。

 甲本ヒロトと真島昌利は、これでもう20年以上に渡る付き合いで、バンドもTHE BLUE HEARTSにTHE HIGH-LOWSとこれで3つめとなりますが、またクロマニヨンズではちょっと変わってきたなあと感じます。
 ブルーハーツ初期は、シンプルにメッセージを叩きつけるというような作風でした。後期からはちょっと叙情的だったりひねった内容が増え、ハイロウズでは強烈なメッセージ性は薄れたものの、裏には伝えたい何かがあると感じさせるような表現も多々ありました。
 クロマニヨンズは、「タリホー」にしても「紙飛行機」にしても、そして今回にしても、変わらないロックへの初期衝動はビンビンと感じます。音とか、ハイロウズ時代よりも余計なものが削がれたむき出し感がありますし。
 そして、メッセージ性を前面に打ち出さなくなりました。むしろ、「ギリギリガガンガン」なんて擬音語を持ち出すあたり、メッセージや意味を遠ざけよう、無くそうとしているようにも感じられます。

 『なりふりかまわない ロマンチックだ』というスタイル、『自分でわかるぜ 自分で決めるぜ』というスタンスは、ブルーハーツ時代から一貫して続いているように感じます。しかし、昔のように、社会やら世界やら何やかやを仮想的にしたり打ち倒そうとしたり、聴く側をアジテーションするような呼びかけではないです。ただ自分自身に向けて、わざわざ立ち位置を確認するというような大げさなことでもなく、自然に自らを出し切る。
 経験を積み重ね、しかしそれで本質は変わることはなく、むしろよりナチュラルになってきている感があります。こんな境地になれたら、それはきっと『今日は最高の気分だ』と思えることでしょう。なぜ最高なのか?なんてどうでもいいとばかりのこの歌は、考えさせられることなく、実に痛快に響いてきます。
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2007年09月25日

ケツメイシ「また君に会える」

また君に会える
また君に会える
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ケツメイシ
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<季節が巡る描写が、オトナな感傷を生み出す>

 PVはほとんど蛯原友里のDVDかと思うような、夏らしい爽やかでちょっと感傷的なポップチューン。

 ケツメイシは、他の同系統のユニットよりも多少「大人」な楽曲を作るような感覚がありますね。それはアレンジのせいもあるのでしょうが、たとえば来る夏に『君が綺麗になって 戻って来る』というようなフレーズのセンスも、また一因なのではないかなと。
 この曲は、『光る髪は 潮風になびく/浴びる太陽 波音に抱かれ』なんてテンプレどおりの描写に溢れた、夏=出会いの季節、恋の季節という図式そのままのサマーチューンです。しかし、そこに登場する人間関係は、少し違っています。
 この種の曲だったら、開放感に任せ、闇雲に「誰か」を求めたりとかするのがセオリーですね。不特定の水着の女の子にモーションをかけようとしていたり、あるいはこの夏に新しく出会ったヒロインに夢中になったり…しかし、この曲では、「君」は夏に「戻って来る」という言い方になっているわけです。

 ここでの「君」は、特定の人物のように描き出されてはいますが、毎年夏が来るたびに『少し大人になって』いくすべての女性たちのイメージを重ねることもできるでしょう。ただ、どちらにせよ、「僕」は「また君に会える」と、知らない誰かとはじめて会うのではなく、旧知の、再会する相手として「君」を見ています。
 ポイントは、見ず知らずの相手ではないこと、そして確かな時の流れを感じさせる表現を多用していること。前者はマジメな恋愛を求める今の世相に合っていますし、後者は『ここへ何度 通ったろう?』『来年も眩しさまた変えて』と、移ろう時間を意識させ、素敵なこの夏も過ぎ去っていくことを暗示し、感傷的な雰囲気を形作っています。

 季節の循環を描くことで郷愁や感傷を生み出すのは、大ヒットした「さくら」でも色濃く出ていた要素です。で、こういった手法が、楽曲の精神年齢を引き上げているんだろうなあ、と感じるのです。
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2007年09月19日

Gackt「RETURNER〜闇の終焉〜」

RETURNER~闇の終焉~
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<トリッキーな中にもしっかりと根付いている美学>

 シンプルでアコースティックな「野に咲く花のように」から一転、ハードで重々しいロックサウンドに、響き渡る笛の音。そして、やたらと変拍子が混じる曲の展開と、実に独特の世界が広がっている一作です。

 独自というか、あんまり一般的ではない要素は、メロディラインを見てもいくつか挙げられます。たとえば、Bメロがすべてファルセットになっていて、まるでコーラスのようになっているところ。そして、サビのメロディの作り方も。サビ頭から3小節の旋律が流れたあとに、1小節の空白があるんですね。ここで、サビのメロディが、はっきりとふたつに分かれているわけです。もっとも聴き手に印象づける部分であるサビでこれだけの空白があると、求心力は若干弱まってしまいます。
 ただ、こちらの旋律に関する2点は、歌詞の内容を見ていくと、あえてやった表現なのかなと考えられるのです。

 歌詞は、「もう二度と逢えぬ微笑み」とあるように、おそらくは死別した恋人を想う哀しみに溺れている主人公像となっています。
 死別ってモチーフはわりと容易く深い哀しみを演出することができるのですが、実際にはそうあるわけじゃないもので。なので、濫発しすぎるのは何だかなーと思ってしまいますが、彼の場合はキャラクターがわりと非現実的なので、けっこう許せてしまうというか。PVもサムライなGacktが登場したりと、ファンタジックな世界になっていますしね。

 で、まずBメロのファルセット部分を見ていきましょう。ここの部分の歌詞は『暗闇で叫び続ける貴方が見える/遠過ぎて…』とあります。
 これ、恋人を失って生きる主人公というシチュエーションを考えると、「主人公を彼岸から見守る、死んでしまった恋人」の視線なのかもなーとも考えられるのではないでしょうか。二人称が他と同じ「貴方」なので、そんなつもりはないのかもしれませんが…別の視点からの言葉を、声を変えることで表現している、とすると、全ファルセットでの表現にも納得がいきます。

 さらにサビの空白について。ふたつに区切られた前半の部分歌詞は、『壊れるほど私を強く抱きしめて』という叫びです。ここに込められているのは、今は叶えることのできない悲痛な想い。とても強い感情なわけです。
 先に述べた1小節分の空白は、直前で語られるこの想いの強さを噛みしめる「余韻」として機能しているな、と感じるんですね。次の内容が入ってくる前に、ここでたっぷりと哀しみを聴き手に伝えることにつながっていると思うのです。

 そういうわけで、一般的ではない要素が多数盛り込まれたこの楽曲ですが、キャッチーさよりも表現したさを優先する、美学のためにやっていることなんだろうなあと感じます。
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2007年09月08日

KAT-TUN「喜びの歌」

喜びの歌 (通常盤)
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KAT-TUN N.B.Comics JOKER Gin.K Flying Glind
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<いい人止まりではない「俺」のキャラクター>

 『愛してる 愛してる それ以外 見つからない』
 『泣きそうなときは思い出して ちゃんと俺がいるから』
 今までにない、ストレートでひた向きなメッセージを届ける王道チューン。等身大な思いをポジティブに伝えようとしています。
 ただやはり「KAT-TUNらしさ」というか、他のジャニーズユニットにはない部分もいくつかありまして。

 まず、一人称が「俺」であるところ。「僕」ではないというただそれだけですが、これだけで全体の雰囲気はかなり変わってきます。主人公が「俺」というキャラクターであるか「僕」であるかは、それだけ大きな分岐点なのです。
 この曲、もっともインパクトがあるのはやはり『愛してる』の連呼ですが、この「愛してる」の言葉を放っているのが「僕」である場合と「俺」である場合では、受ける印象は少し、でもはっきりと変わってきます。「僕」が愛してると言うと真摯さ柔らかさを感じますが、「俺」だと真剣さはあるものの、柔らかさはない。むしろ、一本まっすぐ尖っているような響きを受けはしないでしょうか。
 『消えそうなKissで暖めて』というフレーズもまた、「僕」が言ったのであればどこか穏やかで暖かみを感じるものですが、「俺」が言ったのであれば何か切迫感のある雰囲気が漂ってきます。
 『守りたいから』という言葉にこもる印象もまた、かなり違ってきます。「僕が君を守る」と言うと、普段は弱気だったり穏やかだったりするけど、いざというときは頼りになるよう頑張る!的な、優しさの中に強さを見せる形になります。一方、「俺が君を守る」だとどうでしょう。何かとつんけんしている自分だけど、それでも「君」を守りたいんだ、というような感じでしょうか。これだと、強さ、ぶっきらぼうさの中に優しさを見せる、という正反対の性質になってくるわけです。

 ラップが入ったり、「止まらねえ!!」なんてシャウトが入ったりというのもチェックしておきたいところ。「俺」もそうなのですけれど、全体的に、男っぽさを前に出してきているのかなあと感じます。中性的で「いい人」なタイプではなく、もっと攻撃的で、どこか斜に構えていて、いい部分だけではない弱さも見せてくる。これまでのシングルからも、そんな人物像を感じるのです。まあ、ラップは嵐やNEWSにもありますが…
 とはいえ完全に野性的だったり、ネガティブだったりはしない。「愛してる」の連呼にしても「止まらねえ!!」にしても、どこか微笑ましさもあるわけです。この辺りは、ポップな部分も失わないように、とアイドルグループとしての矜持もあるのでしょう。

 ところで、ラップ部分だけに「僕」が登場するなあ…と思ったら、これ今までのシングルの題名が3つ入っているんですね。直球で真剣な歌なのに、シャウトにしてもこれにしても、遊び心があります。
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2007年08月24日

桑田佳祐「明日晴れるかな」

明日晴れるかな (通常盤)
桑田佳祐 島健 山本拓夫
ビクターエンタテインメント (2007/05/16)
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<「郷愁」を受け入れつつも、ほんのちょっと前に踏み出そうと呼びかける>

 サザンオールスターズのボーカリストとして息の長い活動をしながら、ちょくちょくソロでも作品を発表し、ヒットを飛ばしている桑田佳祐。ソロ活動については、今年で通算4期目となるとのことです。

 内容としては、歌い出しは『熱い涙や恋の叫びも/輝ける日はどこへ消えたの?』とあり、過ぎ去った過去を思い返すところから始まります。で、この一文にもあるように、曲中には「?」で終わるフレーズが大変頻出します。Aメロのリピートでも、『耳を澄ませば心の声は/僕に何を語りかけるだろう?』と自問してみたり、『これが運命でしょうか?/あきらめようか?』と悩んでみせたり。
 ただ曲全体を見据えてみると、こうした「?」は、必ずしも疑問を投げかけているだけでなく、その問いかけを乗り越えていこうというような意志を感じさせるのですね。

 始まりこそ郷愁の念で、その後もなかなか煮え切らなさそうな言葉が続きますが、やがて出てくるのは『在りし日の己れを愛するために/想い出は美しくあるのさ』というフレーズ。これは、「想い出が美しく見えるのは、過去の自分を受け入れたいためだ」というような、揶揄を含んだ言い方だと感じます。
 で、過去に頼るのではなく、『もう少しの勝負じゃない!!』と鼓舞し、ほんの少しだけでも前を向かせようとする…それが、最後の『「明日晴れるかな…」』というつぶやきに繋がってきています。この部分だけは子どものコーラスが歌っているという珍しい演出になっていますが、その前の『誰もがひとりひとり』を踏まえての多人数でのコーラス、しかも「純粋な願い」という響きを出したかったからなのかなーと想像できます。
 とりあえず、郷愁に浸りながらも、想い出は想い出として胸に秘め先へと進んでいこうとする、そんな流れのある内容になっているわけですね。続きを読む
posted by はじ at 04:04| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月23日

GReeeeN「愛唄」

愛唄(あいうた)
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posted with amazlet on 07.08.22
GReeeeN JIN
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<「ストレートなラブソング」という楽曲の特徴を貫くために>

 メンバーの全員が現役歯学部生で構成されている今年のニューカマー、GReeeeN。3枚目のシングルにしてスマッシュヒットしたのがこちらの「愛唄」ですね。

 非常に直球なラブソングです。『「愛してる」だなんてクサイけどね/だけど この言葉以外 伝える事ができない』とシンプルで明快な言葉の選択。そして、『君の選んだ人生は僕で良かったのか?/なんて 分からないけど、、、』なんてちょっと弱気になってみせるところも、いかにも現代の若者男子という感じ。
 「守ってみせる」とか「ついてこい」とは言わず、『隣に立って 居れることで』と傍にいること、『隣でずっと 愛を唄うよ』と愛を呼びかけ続けること…こういうところも、今の時代に「共感」を呼ぶ部分ですね。強気に押すのではなく、そんなに強気にはなれないけど誠意を見せる、という形です。

 こういうシンプルイズベストな直球ラブソングは、ある程度の周期を置いてスマッシュヒットになっている気がします。去年のこのポジションは、湘南乃風「純恋歌」でした、たぶん。その前は…河口恭吾「桜」とか、三木道三「Lifetime Respect」あたりでしょうか。
 こうした、わかりやすく単純な言葉だけで構成された詞は「ヒネリがない!」と批判されがちですが、やっぱりこうして定期的にシンプルなラブソングがヒットしているところを見ると、大衆はなんだかんだで「わかりやすい」愛の歌を求めているんだろうな、と感じます。
 …思えば、90年代初め、どちらかというとヒネったりささやかな内容の歌が多かったKANが「愛は勝つ」で一躍大ヒットになった(なってしまった)のなんか、象徴的な気がしますし。

 さて。
 この曲に関しては、注目が集まった頃から「盗作疑惑」が語られていたりします。槇原敬之「僕が一番欲しかったもの」にサビのメロディラインが酷似しているのですね。続きを読む
posted by はじ at 02:46| Comment(2) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月06日

KinKi Kids「BRAND NEW SONG」

BRAND NEW SONG (通常盤)
BRAND NEW SONG (通常盤)
posted with amazlet on 07.08.06
KinKi Kids Gajin CHOKKAKU 成海カズト オオヤギヒロオ 久保田洋司 石塚知生
ジャニーズ・エンタテイメント (2007/04/25)
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<日常風景にスパイスきかせる非日常の香り>

 キンキの楽曲って、オリエンタルっぽかったりなんだりと、ジャニーズの中でもどこか哀愁を感じさせるものが多いです。しかし今回は、わりと普通の爽やかで明るめの路線。
 裏ではしっかりブラスも盛り上げ役に入っているし、ジャニーズ・ポップな作りになっています…が、やっぱり他のユニットに比べるとゴテゴテせず涼しげな印象。コーラスやビブラフォンの音のせいもあるのでしょうけれど。編曲はジャニーズ楽曲を多数手がけているお馴染みのCHOKKAKUだったりするので、意図的に「キンキらしさ」を出すために明るさを控えているのかもなあ…とも思ったり。

 歌詞を見ていくと、『シャツのほころび なにげに見つけるキミ』のような些細なワンシーンを切り出したりしつつ、『やっぱり キミの傍が キミの腕が 自然でいい』と穏やかな日常を礼賛する内容になっています。
 テーマとしては等身大路線ですが、目を引くのは『僕らは何か 忘れ物したみたい』というような、ちょっと切なく儚げなフレーズが差し挟まれていること。やっぱり明るくなりすぎないよう配慮されているんじゃ…
 それと、細かいですが「蒼色の」「時間(とき)」「寄せては還して」「華咲かそう」といった言葉の表記にも注目したいところ。日常の言い回しや表記ではなく、あえてちょっと飾った見せ方をしています。

 何気ない二人の日々を大切にしつつも、ふと遠くを見るように切ないモノローグを入れたり、非日常的な表記をしてみたり…ただ「日常」を描くだけじゃなく、こうした部分をアクセントにしよう、という意図があるように思います。それって、キンキの楽曲って「幻想性が香る」タイプの楽曲がひとつの傾向としてあると思っているんですが、それに近い面なのかなあと。
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2007年07月30日

ザ・クロマニヨンズ「紙飛行機」

紙飛行機
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ザ・クロマニヨンズ 真島昌利 甲本ヒロト
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<熱をあえて抑えたスタイルの裏には、変わりのない初期衝動>

 THE BLUE HEARTS、ザ・ハイロウズの甲本ヒロトと真島昌利が結成したニューバンド、ザ・クロマニヨンズの2ndシングル。
 「タリホー」に続き、またもガンガン前に突き進む感じのロックサウンドが味わえます。ブルーハーツ後期からハイロウズ時代は、わりとミディアムテンポの作品も多数残しているのですが、少なくともこのバンドに関しては、まずは突っ走っていきたい!という思いがあるのではないでしょうか。

 かと言って、ブルーハーツ初期に戻ったかのような疾走感!というわけではありません。「リンダ リンダ」や「TRAIN-TRAIN」など往年の名曲と違うのは、シンプルで勢いのあるバンドサウンドを打ち出しつつも、当時のような「熱気」を持っていないこと。そして、明確な「メッセージ」を打ち出していないこと。この2点が挙げられます。
 こう書くとなんだか批判的に感じられるかもしれませんが、そうではないのです。

 音楽活動を開始して間もない、年齢も若い時期というのは、初期衝動をそのまま形にして行こうという「熱気」がバンドにはあるものです。地道なライブ活動をひたすら展開していることが多いのも、そうした傾向の要因になっているんじゃないかなーとも思います。しかし、年を重ねていく間に落ち着いてしまったり、考え方が変わったり、ヒットした代償として目標を見失ってしまったり、同じような作品ではなく新しい要素を求めていったり…などなどで、失っていくことも多いのですが。
 ヒロトとマーシーの二人はデビュー21年目ということもあり、クロマニヨンズの場合は、そうした「熱」はあまりこもってはいないように感じます。また、社会に対する不敵さ、自分の生き方を貫き突き進んでいこうとする強い意志と衝動を感じさせるメッセージもありません。『揺れて 乱れて 紙飛行機』と、もちろん空を進んでいきながらも、もっと砕けた生き方を乗せているように感じるのです。

 でも、それは悪いことだというわけではなく。
 むしろ、彼らの持っていた初期衝動そのものは、今も強く残っているんじゃないかなーと感じます。『団地の窓から 飛べ紙飛行機』といった何気ない一節も、管理された建物である「団地」を用いることで、それとなく現代社会からの脱出を想起させるフレーズになっていたりします。また、『明日とかわからないし/別にいい』みたいなシンプルな言葉にも、彼らの当初からのスタンスは滲んで表れてきているのではないかなと。
 決して「このくだらねえ窮屈な街から抜け出すんだ!」なんて高らかに言ってはいません。けれども、より身近な、何気ない言葉で、熱を帯びずに歌うようになった…と見るべきではないかなと。『スーイ スーイ スラララ』なんて擬音を持ち出しているのも、それ自体には意味のない響きだけの言葉を多用し、あえて直球ではメッセージを投げつけないように構えているのかなーとも。「タリホー」もまたそうでしたしね。

 新バンドを結成することで気持ちを新たにしようという思いも当然あったでしょうし、初期衝動を忘れずにいよう!という姿勢は間違いなくあると思います。ただ、それがより方肩の力を抜いた表現方法になった…ということなのかなーと。
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2007年07月15日

関ジャニ∞「ズッコケ男道」

ズッコケ男道
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関ジャニ∞(エイト) 上中丈弥 白井良明 マサ 馬飼野康二 白井裕紀 新美香 加藤祐介
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<「ユーモア」「人情」スパイスの効いた、ごった煮的歌謡曲>

 このところのジャニーズ多角化の象徴ともいえる、地域密着・演歌要素を取り入れたユニット、関ジャニ∞。
 最近では、大阪固有のモチーフは薄れてきて、ユーモアを感じさせる内容だったり、どことなく人情を滲ませる内容だったり、それでいて歌謡曲のこってり感を取り入れていて、といったジャニーズお得意のごった煮てんこもりな方向性になってきている感があります。

 今回は、ドレミソラの5音の日本陽音階をベースとしているので、和な雰囲気が出ています。でも完全に5音なのではなく、締めどころなどの要所では西洋7音になっていますし、曲調は完全にファンクです。
 『男道』というととっても演歌調な世界に思えますが、そこに込められているのは、「世知辛い世の中を笑って進んでいこう」というメッセージ。うまく行かない人生を、面白おかしくちょっと切なく語って見せるのは、確かに昭和から連綿と続く歌謡曲の世界にもありますが、といって今の時代にそれほど珍しいものでもなく。
 結局のところ、『生きてこーや』『きばってこーぜ』といった砕けた語り方、擬音語の多用なども合わせ、見せ方をさまざまな部分で一風変えている以外は、非常にオーソドックスなJ-POPの作りをしているなあと感じます。

 「∞SAKAおばちゃんROCK」くらいハジけているとその範疇に留まりませんが、まあコミックソングばっかだとマズイですし。どちらにせよ、「歌謡曲」要素はともかく、「ユーモア」と「人情」を組み合わせた見せ方というのは今とても珍しいので、ヘンに大阪をフィーチャーしようとしすぎるとか、逆にごく普通のJ-POPになったりとかなく、この路線を続けていくのが一番面白そうだなあと。
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2007年07月14日

ケツメイシ「トレイン」

トレイン
トレイン
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ケツメイシ NAOKI-T
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<伝えたいメッセージを生み出すため、モチーフをカスタマイズしていく>

 昨年の「男女6人夏物語」から久しぶりとなるシングル。ケツメイシらしい、歌メロが何とはなしに切なく、どこか郷愁を感じさせる緩やかさのある一曲になっています。

 歌詞のモチーフはタイトルの通り、列車。大ざっぱに言えば、前に進んでいく中でいろいろあるけど、夢に向かって行こう、みたいな内容です。
 「前に進んでいく」というだけなら、単純に歩く/走る、あるいは飛ぶ、あるいは車とか自転車とか船とか、いろいろな手段があります。ここでは、その中であえて列車を選択していて、そこには列車でこそ適切に表現できる感覚が詰まっているはずです。

 ≪歩いていく≫というと、「この道をまっすぐに踏みしめていく」と能動的な印象を出すことができます。時には立ち止まってしまったり、誰かと出会う(「クロスロード」ですね)こともあったり、分かれ道を選ぶこともありそうです。
 ≪走っていく≫の場合は、前向きでがむしゃらなイメージ。「転んでしまう」こともありそうです。≪車≫でもやはり軽快にすっ飛ばすイメージですが、自分の足ではないので疲れることはなく、疾走していく感じが出せます。誰かを乗せたりすることもあるでしょう。
 ≪飛ぶ≫とか≪船≫だと、ひたすら大きな空間に向かって当てもなく飛び出していく…そんな雰囲気になってきます。

 では、≪列車≫の場合、この曲の場合はどうでしょうか。
 列車は、一般的なイメージだと、「線路に沿って一本に進んでいく」とか、やはり乗り物なので「自分の力で進むというより、運ばれていく」というような印象があるものです。
 で、この曲では、そうした電車のイメージを、自分達が伝えたいメッセージ向けにカスタマイズしているなあ…というように感じるんですね。

 『切符 書かれた 「夢駅」の文字』というように、目的地はすでに決まっている。ただし、まだ見ぬその場所はどんなところかはわからないし、『今何処で 何処へ 向かってるかは/分からなくていい』というように「見知らぬほうに運ばれている」感覚もあります。その中で、『夢に向かって走るのか/それとも 途中 腐って錆びるのか』と、線路が終わってしまうかもという不安もある。『途中下車 無効にて』ともあり、ただひたすら先へ先へと運ばれていくしかないわけです。
 こう書くと少し受動的すぎる気もしますが、しかしこの列車は、『子供の頃の 夢見心/それを燃料にして 走り出す』ものだったりするわけで。そしてサビでは力強く『動き出せ 僕の中の 少年のようなピュアなハート』と、自分自身の「夢」を想い信じる気持ちで列車を前に進めようとしているんですね。
 こうして、どちらかというと受動的な「列車」というモチーフを能動的に描き出し、聴き手に届けようとしているわけです。「僕」の心が原動力だ、という流れがあるからこそ、『車掌いない 時刻表無い』というフレーズも、「自分の力だけで進んでいかなければならない」というメッセージを発しだすのです。
 さらには空まで進んでしまう辺りは「列車」モチーフにしては反則な気もしますが、そうやってモチーフのイメージを拡げることで、自分達の伝えたいことにつなげていきたいんだなあという意志を感じます。

 ミディアムテンポの安定したリズムも、ガタゴト進んでいく列車のイメージに沿うものだなあ、と。
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2007年07月05日

GLAY「鼓動」

鼓動
鼓動
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GLAY TAKURO Masahide Sakuma Seiichiro Nagai Ken Harada
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<懐古もありつつ、世界を肯定する懐の深さ>

 GLAYは、大本にある現実を歩む人間賛歌的な部分のイメージが強く、いわゆるビジュアル系バンドの枠から脱することに成功したバンドです。
 ただ本人達は、人生とか愛とか、確たるものを感じさせる言葉を紡ぎだすというイメージを貫きながらも、シングルではなんだかんだと音楽的にも歌詞的にも新しい要素を取り入れようと常に取り組んでいるフシがありまして。意外と実験作というか、新しい試みを盛り込んだ楽曲のリリースが多かったりします。

 今回は、彼らの音楽的には珍しい3連ミディアムバラードという形式をとり、さらに歌詞的には『さぁ 歩きなさい』など、呼びかけるような書き方になっています。特に3連のメロディメイクに関しては、どうも慣れていない感が漂っているような気も…TAKUROの作るメロディって、あんまり3連には合わないような。
 とはいえ、そのせいなのかBメロはかなり独特の味があって、どこか荒涼とした曲のイメージに沿ったものになっているなあとも思ったり。

 そう、今回はどうも『あの時代に誰もが夢を あの憧れに届くと信じてた』など、懐古的な要素が大きいです。映画タイアップの関係もあるのかもしれませんが、素敵な思い出に対し『明日はケモノ道 この世の痛み 荒野に独り叫ぶ』と、現在を厳しいものとして描いているのが特徴ですね。
 ただ、それでも『人の世ほど愛しい現実はない…』と言ってのけ、力強いメッセージを投げかけてくれる、というGLAYらしさイメージを決して裏切りません。自分自身の置かれている厳しい境遇だけでなく、世界すべてを肯定してしまう辺りに、懐の深さを感じますね。
posted by はじ at 03:48| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月26日

コブクロ「蕾」

蕾 (通常盤)
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コブクロ 小渕健太郎
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<印象深さを与えるための、音と言葉の工夫とは>

 ドラマ主題歌採用はこれで4作連続となるらしい、コブクロのミディアムバラード。もはや盛り上げ役として確固とした信頼を得ているようです。
 それもそのはずで、彼らの生み出す楽曲はどれも、真摯な感情を込めようとする詞にドラマティックなメロディラインが合わさり、さらにハモリも加わって、とにかく感動を増幅させるたえに心血が注がれている感があるのですね。

 彼らのメロディラインの特性については「ここにしか咲かない花」「君という名の翼」の際にいろいろと述べました。平たく言えば、前者は「曲のピークが持続する」後者は「山が何度も何度もやってくる」という形式になっていまして。そして、どちらにせよポイントは「盛り上がり」を印象付ける、ドラマティックに聴かせるメロディラインに作られているということです。

 今回もそれは同様。特に目立つのは、「フレーズの引き伸ばし」ですね。
 わかりやすいところで、小節数を数えてみましょう。一般的な楽曲では、4小節くらいを単位にして、8小節や16小節でメロやサビのひとまとまりができていることが多いわけです。それぞれのパートの繋ぎで増えたりすることもありますし、可変ではありますが。
 「蕾」の場合、Aメロこそ8小節ですが、Bメロは10小節。これは主に、次のサビへのつなぎの部分、『きっと きっと きっと わかっていたはずなのに』でひと盛り上げがあるためです。まず「きっと」をハイトーンで3回繰り返してから、いったんメロディは下に戻り、そして再度上がっていって伸ばし…と、サビ直前でしっかりと展開の足場を固めまくっているわけですね。
 そしてサビ、こちらは12小節です。5〜6小節めでひとつピークがあって、そのまま8小節でもまとめられそうなのですが、そうではないんですね。9〜11小節めでは、『上手に乗せて 笑って見せた あなたを思い出す』と同じ型の上昇音型が3回繰り返し。…で、さらにおまけ、最後12小節めで『一人』がつく、と。
 その後の伸ばし2小節ぶんも、コードの完結を考えると含めたほうがいいんでしょうか。そうすると、8小節でも終われそうなところを実に14小節やっている、という形になります。

 まあ、こうした饒舌なメロディラインはもちろん何もコブクロに限ったことではなく、誰でもやっていることです(ヒップホップとかだと、トラックをループさせる関係でほとんどないんじゃないかと思いますけど、それはまた別の話)
 ただ彼らの場合は、かなり意識して取り入れているように感じるんですよね。分析してみるとやたら過剰で冗長に思えるんですけど、聴いているとそうは感じないわけで。それはメロディラインにはっきりした起伏をつけていたり、ハモリの部分とソロとを使い分けたりといった部分を工夫しているからなのかなー、と感じるのです。


 さて、次は歌詞を見ていきましょう。続きを読む
posted by はじ at 19:32| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月15日

KREVA「アグレッシ部」

アグレッシ部
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KREVA 熊井吾郎
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<自らを強く肯定する「部」のメンバーとは>

ヒップホップ系のアーティストの中でも、どちらかというとどっしり重量感のある楽曲を多く生み出すKREVA。今回も、「音色」あるいは「THE SHOW」あたりを思い出す、聴かせるトラックが楽しめます。

 ヒップホップって自己肯定メッセージ色が強く、そこが苦手という人も多いようです。自分も正直、そんなに感情移入できるほうではなかったりするんですが、KREVAの場合は何となく受け入れやすいんですよね。
 というのは、どこか落ち着きのある目線で語っているからかもしれません。『他の誰でもない オレがキーマン』なんて、すっごく自己主張が強いんですけれど、『いただきます おはようございます/ちゃんと言えるよう』とか節度をわきまえたフレーズもあったりして、微笑ましかったり。
 あと、自分を肯定するとき、他を否定していないのも好感度の高くなる理由かもしれません。「〜なんかよりオレは凄え」とか「ウジウジしている奴は置いてくぜ」みたいなdis発言が、彼の詞からはあんまり見えなくて。そのぶん親しみやすい、というのはありそう。むしろ今回なんかは、周りは関係ない、ただ自身を高めるために自分の内側で完結させようとするストイックさに溢れています。

 で、歌詞中では普通に表記してあるのに、タイトルが「アグレッシ部」な件ですが。
 「部」であるからには、一人では成立しない。KREVA本人は入るとして、じゃあ後は誰だ?上述のとおり自分自身についてフォーカスしていて、他人が挟まる余地はなさげなのに…続きを読む
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2007年05月27日

クレイジーケンバンド「てんやわんやですよ」

てんやわんやですよ
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クレイジーケンバンド
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<悩みをコミカルに描けるのは、「オトナ」ゆえの余裕から?>

 クレイジーケンバンドを取り上げるのははじめてですね。ボーカル横山剣を中心とした、大人の魅力溢れるバンドでございます。なんでも横浜市のゴミ清掃車がBGMに使っているとか何とかいう噂もありますね。なんにせよ、横浜の港町を根城にしているような、昭和レトロの香りがぷんぷんする音楽をしています。

 彼らのファン層は比較的年齢が高めです。それはレトロな雰囲気があるせいかというと、必ずしもそれ自体が一番ではないんじゃないかなと。だって今の30代、また40代くらいでも、こういう歌謡曲サウンドよりももっとポップな音楽になじみがあるんじゃないかと思うのですよ。だからルーツを感じたり、懐古趣味というわけではないんじゃないか、と思うわけです。

 ポイントは、このバンドの持つユーモア、諧謔味なんじゃないかと。
 最近登場した若い世代のバンドって、基本的にみんなマジメです。恋愛のすばらしさを歌い上げたり、真剣に悩みながら答えを探したり、生きていく為のメッセージを投げかけたり。もちろんそれはそれで素晴らしいことなんですが、やっぱりあれこれ人生に悩むのは思春期とか、思春期/学生時代の特権的なものでもあるわけですし、そればかりだと疲れてしまうものでもあります。
 この曲もまあ『もうやんなっちゃうよ Everyday』とあるように悩んでいる歌ではあるんですが、最近の若い世代のそれと比べればもっと現実的/即物的ですし、どこかしらユーモアがあるんですよね。

 『だから結局あれだな』から『もうなんなんだよこれ』、そして『もうてんやわんやですよ』って、具体的には一体何がどうなっているんだかさっぱりですが、これはわざと説明しないようにしているんでしょう。パニクっている様子はこのほうが伝わりますし、頭の中が混乱している男の姿を、意識的に情けなく、面白おかしく描こうという意図があるんだろうなあと考えられます。
 客観的な視点からユーモラスに悲哀を描いてみせるやり方、特にこういうリアルに取り乱した姿を描く手法は、やはり10代20代だと難しいですし、やりたいと思う人もそういないものでしょう。だから、彼らの存在は貴重でかつ重要です。主観的でマジメな歌だとちょっとお腹に溜まる…という人にとっては、こういう肩の力の抜けたスタンスがちょうどいいんだろうなあと。
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2007年05月10日

小池徹平「君に贈る歌」

君に贈る歌/ラッキーでハッピー
小池徹平 ウエンツ瑛士とガチャピン・ムック 小池徹平 小松清人 前嶋康明 ウエンツ瑛士とガチャピン・ムック TSUKASA
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<たとえ離れても、どこまでも「君」に理解を示す彼氏像とは…?>

 WaT・小池徹平のソロシングル。ソロとはいえ、カップリングにはウエンツ瑛士がガチャピン・ムックと連名での楽曲を歌っていて、しかもそちらの曲順が先のバージョンも発売と、あんまり一人立ちという感じではないようで。
 あくまでもWaTの活動の一環としてバラバラに曲を作って歌ってみる、くらいの意味合いが強いのかなあというところでしょうか。ソロ活動を始めるにはちょっと早いような気もしたのですが、こうした意向があったのならば納得もいきますし、またアーティストではなく男性アイドル界隈での牽制のためにも、それぞれの個性を強く打ち出しておくことは重要だという判断があったのかもしれません。
 まあ、2バージョン出してくるあたりは、正直ファン狙いの売り上げ向上の臭いもしますが…

 さて楽曲ですが、なんというかWaTのど真ん中路線をそのまんま持ってきたような印象です。どこがって、そりゃもうまさにサビ『わかるわかるよ君の気持ち』です。つまりこれって、「5センチ。」「ボクラノLove Story」に見て取れたのと同じ、「女の子の気持ちをすべて理解し受け止めてくれる」ある種の理想の彼氏像なのですね。
 とはいえ本当にすべてを理解できる!なんてことは難しいですし、そこまで完璧にやっちゃう完全無欠人間というのは、今の時代は流行りません。だから、『そう言える僕になれるように』『心からそう言えるように』と、これはまだ実現できていない願望だけど気持ちはそうなりたいんだよ…という補足が付きます。
 できない言い訳ではなく、むしろ真摯な答えだ、という風に受け取られるんですね。つまり、これがまさに現代の模範解答なのです。たぶん。

 この言葉をさらっと言えるのは凄いよなー、やっぱり自覚的に理想の彼氏を演出しているよなー、素だったらほんと天然記念物ものだ!なんて感心しきりだったんですが、でもこれ全体を見ると恋人同士の歌ではないんですよね。『別々の道歩いたって』とあるように、別れ別れになる展開だったりするのです。
 これがちょっと違和感ありまして。続きを読む
posted by はじ at 02:28| Comment(1) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月04日

Gackt「野に咲く花のように」

野に咲く花のように
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Gackt Gackt.C Chachamaru
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<どんな人も、名前のない花として「咲く」ことができる>

 シンプルなアコースティックのスローバラード。どちらかというと派手で空想的な楽曲のイメージがあるGacktにしては異色だなあ、と思ったら、ラジオ番組の縁で知り合った高校生のために、その卒業式で披露された幻の楽曲なのだとか。

 卒業をテーマに、『僕たちはそれぞれの思い出を胸に抱いて歩き始める』というメッセージ。飾り気はないですが、そのぶんわかりやすく、実際に卒業する人にとってはグッとくるのではないでしょうか。
 あんまり書くこともないのですが、とりあえず「野に咲く花」というモチーフに注目してみましょう。ポイントはいくつかあります。
 (1)匿名性。桜とかタンポポとか、名前のある花じゃないということ。
 (2)派手ではない、どこにでもあるもの。
 (3)育てられるわけではなく、一人でたくましく育つもの。
 一人称は「僕達」。新しい道を歩みだす仲間たちは、特に目立った存在ではないけれど、それでもみんなそれぞれに人生があるわけです。『決して負けずに強く咲きたい』というのは、個人的な思いではなく、名もないすべての人に向けてのメッセージとしてとらえるべきでしょう。
 誰もが大輪に咲き誇る美しい花ではないけれど、そんな人全員をすくい上げ呼びかける歌というわけです。まさに卒業式に合唱するにはぴったりですね。

 そんな「みんな」へのメッセージであるのに、『君だけに伝えたい』と「君」側を限定しちゃっているのはどうもなあ、という気もしますが…まあ、これは一人の高校生をきっかけに作られた歌なので、その辺がちょっと混ざっちゃっているんでしょうか。
 ついでに言うと、「野に咲く花」がテーマなのに、このジャケットの花はそぐわないような気も…ささいなことですが。Gacktがこういう素朴な歌を歌う、ということ自体は、うまいことギャップにもなって面白いなあと想います。
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2007年04月14日

GLAY「100万回のKISS」

100万回のKISS
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GLAY TAKURO 佐久間正英
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<その数は無限ではなく、確かに築きあげていくもの>

 たとえば空想的、退廃的な観念の世界を作り上げるL'Arc〜en〜Cielに対し、現実を確かに歩んでいこうとするスタンスの楽曲を作り続けているGLAY。今回も、まさに彼ららしい、この社会のどこかに生きる人の息遣いが聞こえる内容です。

 「100万回」という数字は、かなり突飛ではあります。でも、もしかしたら不可能ではないくらいの数字でもあるわけで。『永遠など 信じちゃいないよ』というように、この100万という数は「無限」とほぼ同等に使われているのではなく、あくまでも達成できるだろう遥かな目標として設定されているものです。
 なんの紐付けもない「とりあえず大きな数字」ではなく、やはり今この現実から積み上げていこうとする数字、なんですね。

 それにしても、『現代に生きる 僕達の悩みとは』とか、『決して 楽じゃない 暮らしの 終わりに』とかを見ると、恋愛へのトリップ感は全然ないです。その分、確かな足取りで二人歩んでいこうとする強い意志を感じさせるわけですが。
 そもそも、この曲のテーマである「KISS」というのは、恋愛の中でも特に甘い部分なわけじゃないですか。でも、この曲ではそこに『愛を伝えるだけじゃなく』、「あなた」の全てを伝えてくるもの、お互いをそのものを感じる行為なんだ、というように、甘さ以上の深い意味を付与しています。
 こうした描き方もまた、彼らのスタンスがはっきりと表れている部分でしょう。
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2007年03月22日

関ジャニ∞「関風ファイティング」

関風ファイティング (通常盤)
関ジャニ∞(エイト)
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<中華サウンドの中に、アイドルらしさと哀愁もちらりと覗く>

 関西密着型アイドルユニット関ジャニ∞、今回はチャイニーズ感あふれるサウンドに乗った楽しげなダンスチューンです。関西じゃなくて中国じゃん!と思わずツッコミそうになりますが、まあ「関風」だし、『チャイナタウン』と言っているのできっと神戸の中華街あたりなんでしょう。

 サビがなぜか『ドラゴンが/舞い降りて』なんですが(ジャッキー・チェンとかにちなんでいるのかしら)基本的には、『ふられたら笑っチャイナよ』と、重過ぎないさらっとした励ましになっています。サビだけそうじゃなく冗談めいているのも、軽くて明るい雰囲気を出すためなのかもしれません。

 それにしても、強烈にチャイナな楽器群が響き渡っているためにそれだけっぽくも感じてしまうとこですが、でも陽気でキメキメなブラスセクションはいかにもジャニーズらしい賑やかさを演出しています。また、重低音の「ウーハー」から裏声の「フゥフゥ」とコーラスも充実。
 さらに言えば『かっこ悪いね 迷える孤独な男さ』というつぶやきなんかからは、さりげなくもかなり歌謡曲チックな未練と情念の世界がチラ見できたりも。この哀愁系歌謡曲ノリは、地域密着かつジャンルとしては「演歌」である彼らの特色として育てていってほしいかなーと。たぶんこの方向に行く若手アーティストは他にいないでしょうから…
 でも、歌謡曲でこそあれ、演歌じゃないよなあ。
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2007年03月21日

KAT-TUN「僕らの街で」

僕らの街で (通常盤)
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KAT-TUN 小田和正 MA-SAYA 江上浩太郎
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<明確な答えのないつぶやき、だからこそ生まれる空気感>

 小田和正の提供曲ということで話題を呼んだ、KAT-TUNの3枚目のシングル。
 聴いているだけで本人の声が響いてきそうなくらい、いたるところに小田和正らしさが溢れていると感じるのは自分だけではないはず。サビの入り『やがて いつからか』とか、『はじめて 君を 見つけたあの日』あたりは「いかにも」というメロディワークですし、アレンジ面は多少考慮されて賑やかめになっているような気がしますが、やっぱり本人が歌ってもそう違和感がないくらい。

 なので、小田和正が自らの持ち味を生かした楽曲を提供して、それがKAT-TUNに合っている…というよりも、そもそも小田和正自身の生み出す楽曲が驚くほどKAT-TUN世代そのものだった、ということが確認できた一曲だよなーというか。少なくとも小田和正側には、無理して合わせたという感じはしないです。59歳にしていまだその少年性は現役そのものということで、いやはや。


 で、問題はそんな少年性を受け取るKAT-TUN側。わりと賛否両論はあったようです。
 前までの2曲とは明らかに方向が違います。また、コンセプト的にジャニーズの中でも非優等生的、斜に構えたカッコよさを打ち出していくのかなあという印象があったので、ぐっとメロウなこの楽曲はなかなか意外ではありました。小田和正に任せる時点でこういう曲想になるのは考えていたはずですが。

 この曲、曲想だけではなく、詞においても大きな特性があります。これが賛否の「否」を唱える人たちの違和感にも繋がっているんじゃないかなと。
 「僕」と「君」の出会いを通して、街の中の自分を意識し、とりとめのない物思いにふける。青くやるせなさを感じさせる雰囲気に満ちていながら、そこに明確な方向性、メッセージは示されていないのです。
 『僕らは なんだか 急ぎすぎている/大切なことさえも 忘れるくらい』
 『誰も 僕らを決して 認めはしないだろう』
 『確かなことは きっと どこかに あるよね』
 などなど、「僕」の思い浮かべること、「君」に話しかけることは、今の自分たちの不安定さについてが多いです。しかし、そんなつぶやきは、どこにも向かいません。「もっとゆっくり生きてみよう」とも、「認めない連中なんかほっといてがんばろう」とも、「確かなことを探しにいこう」とも、ポジティブなメッセージには結びついていかないのですね。
 これは大きなポイントです。「夢」ははるかに遠く、その近くに行けることすら『でもそれは まだ ずっと 先のことみたいだ』。夢との距離感も感じてしまいつつ、不安定な「今の自分」への自覚は、どこにも着地点を持たないままに、『突き抜ける 青い空が ただ 続いていた』とイメージの中で宙に浮いたままに締められていくのですね。

 最近のJ-POPの歌詞は、おしなべて「結論」のある曲が多数を占めています。夢に向かう曲、絶望から立ち直ろうとする曲はもちろん、ラブソングも失恋した曲さえも、よりよい自分になるためや相手との関係を改善していくためにこうしていこう…というスタンスが曲中で示される歌ばかりという印象がありまして。
 だから、せいぜい『今の自分を 信じていたい』という願望がちょこっと垣間見えるくらいのこの楽曲は、特にイマドキの十代リスナーなんかにとっては違和感を感じる人も多いのではないかなあと思うわけです。しかも彼らはジャニーズ。自分たちに向けてのメッセージを期待しているファンも多いことでしょうから、そんな願いが「すかされた」ような、宙ぶらりんな感じになってしまった人もいるのではないかなと。

 とはいえ、最近の傾向もあって浮いて見えることはあるでしょうけれど、そもそもこうした「明確な答えを出さない」楽曲は決して悪いものではなく、むしろ今、少なすぎるようにも個人的には感じます。歌って、別にメッセージが必須条件ではないわけですから。
 どこか胸を締め付けるようなこの曲の空気感は、明確に方向を導き出さずにぼんやりと「今」を考えているからこそ、生まれているものです。無理やり結論めいた言葉をつけてしまったら、きっと全体の曲想が台無しになってしまっていたでしょう。
 「この曲、結局何が言いたいのかわからない!」という不満を感じている人は、ぜひこの曲の雰囲気、つぶやきの行間を想像して楽しむことも考えてほしいなあと思うのです。続きを読む
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2007年03月11日

KinKi Kids「Harmony of December」

Harmony of December
Harmony of December
posted with amazlet on 07.03.11
KinKi Kids Tatsuro MASHIKO ha-j Satomi Ken YOSHIDA Daisuke MORI
ジャニーズ・エンタテイメント (2006/11/29)
売り上げランキング: 24920


<歌うのは、満たされた感情だけじゃ物足りない?>

 ソロではそれぞれの好きな道へと突き進んでいる二人ですが、キンキではどこか哀愁だとか郷愁だとか、漂う楽曲がメインストリームになっている感があります。
 今回の曲も、内容だけを見ると『つないだ指がとてもやさしい ふたりきりの温度』と、ささやかな幸せを胸いっぱいに感じるといったハッピーなシチュエーションだったりします。メロは確かにふんわり穏やかに進んでいくんですが、サビではオリエンタルな装いになって、単純に幸せを描いているだけではない雰囲気になっています。

 『君に会いたい いま会いたい 離れた一秒も』…ふたりでいる幸せを12月の景色と共に描くメロ部分の流れからは、ちょっと想像できないサビの展開。だって直前で『ふと気づけばいつも隣で笑ってる』って言ってるのに!本当にほんの少しでも離れていたくない、穏やかな曲調の中ですが、そういう激しさがあるのでしょうか。
 また、描かれる二人の様子にはあんまり不安要素もない気がしますが、そんな中で『消えないでいて この恋よずっと』と願いを込める。ただ上手く進んでいる恋に浸るんじゃなく、不安を抱えていたりもして。

 こういう歌を聴くと、やっぱり今現在の「ツボ」というのは、郷愁だとか切なさだとか、そういう想いのほうなんだなあと考えてしまうのです。
 ただ「幸せ」な気持ちをつづるだけじゃなく、「会いたい」という募る感情が、この幸せがずっと続いていければと不安がり一心に願う真摯さが、サビに盛り込まれる。これが聴き手を揺さぶるためにいま必要なことなのだろうな、と。単純なハッピーさ、安定感ある関係性だけを押し出すんじゃダメなんですね、きっと。
 
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2007年02月04日

KREVA「THE SHOW」

THE SHOWポニーキャニオンKREVAこのアイテムの詳細を見る


<自分自身にも、そして周囲を沸かすことにも手を抜かないスタンスを表明>

 サウンドメイキングも歌詞の方向性も、「音色」を思い起こすような一曲。すなわち、ゆったりテンポに太いリズム、どこか熱っぽい音、自分自身の考えを表明するかのような、ユーモアも交えつつシリアスな言葉。

 『狙い外さねぇ つーか狙わねぇ』スタンスで進み続ける決意表明とも言える内容ですが、注目すべきは『one for the money,two for the show,/three for the people』だと述べていること。つまり「一にお金、二にパフォーマンス、三に観客」ということでしょうか。これは非常に興味深いです。まずは稼ぐことが一番で、ファンは後回し…ととれてしまいそうです。そんなこと言っちゃっていいのか!?という。
 でも現実を考えれば、まあこうかもしれません。ファンが何よりも大切、と呼びかければ聞こえはいいけど、そういう奇麗事は言いたくない、そんな思いが見え隠れしているように思います。
 他の部分を読んでも、『人は人 俺は俺/やいのやいの言う前によこしなbeat beat』などなど、まず誰よりも自分自身を押し出そうとしているのがわかります。なので、「money」=自分が生活していくこと、「show」=楽しめる場を作ること、そして「people」=観客を楽しませようとすること、この「自分→周囲」へと広がっていく流れも主張に沿っていると言えそうです。

 もちろん、別に番号順に優先順位がついているというつもりではないのかもしれません。タイトルに座っているのも二番目の「show」ですし、『人の心に通じなくちゃつまんねぇ/でも楽しむ気持ちなくさねぇ』というフレーズはそれぞれ「people」「show」を見据えてのものでしょう。少なくとも、3つ挙げたうちのどれにも手を抜こうとは思っていないことは間違いないのではないでしょうか。
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2007年01月22日

ゴスペラーズ「Platinum Kiss/陽のあたる坂道」

Platinum Kiss/陽のあたる坂道
KRE
ゴスペラーズ , 安岡優 , 黒沢薫 , 妹尾武 , 野崎良太

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<壮大なバックに合わせた「白銀」色/夕暮れに伸びる影の方向は、未来か過去か>

 同時リリースされた27・28作目のシングル。2007/01/01に両方入っているバージョンが発売されています。

 「Platinum Kiss」はまさにゴスペラーズの真骨頂、メンバーの声(と指)のみのアカペラナンバー。ソロ回しからハモリに移っていく展開が実に心地よいです。彼らの場合、ハモリももちろんいいんですが、裏で動いているハーモニーが耳に優しくてステキなんですよね。すごく厚いのに重たくない。

 曲ですが、『プラチナ色のくちづけ』を「あなた」に捧げる愛の歌。そのキスで『あなたが目覚める物語さ』とあるのは、童話になぞらえているのでしょうか。『大地を目指す流星』「運命」『果てしない未来』などの壮大な言葉が展開されていますが、コーラスの厚みと歌唱力がその世界観をゆるぎなく支えています。
 「プラチナ」なのもそのあたりの壮大さに通ずるところからでしょう。で、曲全体が暖かいという響きではないので、暖色系等ではなく白銀を選んだのかなと。続きを読む
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2006年12月19日

ザ・クロマニヨンズ「タリホー」

タリホー
BMG JAPAN
ザ・クロマニヨンズ , 甲本ヒロト , 真島昌利

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<まだまだ立ち止まって考えたりせず、形を変えつつも前へ前へと>

 ハイロウズを解散し、シングル「真夏のストレート/天国うまれ」をリリースして、このままソロ活動にはいるかと思われた甲本ヒロトですが、再びバンドを結成です。真島昌利とのタッグはこれで3バンドめ、21年めの付き合いということになりますか。

 個人的には、ソロで自分の世界を突き詰めていってもらえたら、きっとものすごいものができるだろうと期待していたので、そこはちょっと残念。でも本人は、自分を彫り下げていくよりも、仲間とまだまだ走り続けていたいんだろうなあ…という思いを感じ取れるかのような一曲。
 「タリホー」とは、猟のときの掛け声だそうで、その言葉自体に意味は宿っているわけではなく。しかも『わいタリホー さめタリホー』ときたもんですから、その単語に意味を込めている、というわけでもなさそうです。
 他の部分も、綴られるフレーズのとりとめのなさからは、音楽だけでなく、言葉さえも勢いとノリで突っ走ろうとしているんだと感じます。

 その中でひとつ、この曲のメッセージをすくい出せるとするならば、それは『形は変わる 自分のままで』という部分に集約されるのかなと。「わいたりさめたり」し、『氷もほっときゃ 流れるぜ』『あのとき僕は ああだった』などなど、さまざまな形で「変化」につながる表現が目立つんですね。
 すべては変わっていくし、何にでもなっていく。それは活動の形を3回4回と変えることになったヒロトやマーシー自身に重なってもきます。だから『涙の記憶 消えたりしない』が珍しくもちょっと切なく響いてきたりしたのかも。
 もちろん決して後ろ向きではありません。とりとめのない詞は無軌道さを感じさせ、それでも「海」や「空」をはっきり志向していて、ノリのいい曲調と合わせてワクワクさせられます。あれこれ細かく考えず、まだまだ前に進んでいこうという意志は、まだ衰えてはいません。
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2006年10月24日

KinKi Kids「夏模様」

夏模様
ジャニーズ・エンタテイメント
KinKi Kids,Satomi,井手コウジ, マシコタツロウ, 佐久間誠, 佐藤泰将

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<イメージとしての「日本の夏」その懐かしさを呼び起こすには>

 今年前半はそれぞれソロをこなしていた二人ですが、半年近いスパンを終えてまたユニットとしてシングルをリリース。意外と珍しいメロウで落ち着いた楽曲となっています。やっぱりこういうのはそれぞれのソロじゃ出てこないよなと。二人ともだいぶ伸び伸びやっていたせいか、妙に安心して聴けたり。

 非常に沖縄っぽい、南国の夏の雰囲気が漂っています。これはやはり三線の音色と、イーヤーサーサーという掛け声の力によるものなんでしょう。メロディラインも歌詞の内容も特に沖縄っぽいわけではなく、『蝉時雨の波 追いかけてた』というような情景は、沖縄の海よりはむしろ山奥の田舎といったイメージで、本州のものだという感じがします。
 笛の音とかは単に「和」を感じさせるだけだし、メロディラインも特に五音音階というわけでもない。三線ですら沖縄音階を意識させこそはすれ完全に沖縄五音ってわけでもないのです。それでも沖縄っぽいのだから、三線の威力というのはすごい。

 上でもちょっと触れたように、懐かしい古き良き日本の夏のイメージが歌詞中には展開されていて、といっても郷愁の切なさをぐわーっと押し出しすぎもせず、心地よい懐かしさに浸ることができるようになっています。夏のイメージと言えば!のひまわりではなく、慎ましやかなアザミを持ってくるあたりも、穏やかな曲調を崩したくない配慮があったのでしょう。
 …ただ、実際のところは、こういう懐かしさはあくまで「懐かしいイメージ」なんですよね。こういう情景の中『小さな夢 抱えながら/躓き転んで/膝を擦りむいた』なんて経験を本当にした人っていうのは、やっぱり若い世代になるにつれ少なくなっているはずなんです。それでも懐かしいものは懐かしいので、人間って不思議なものだ。

 上記を踏まえて、『蒼い夏の日』という表現に注目してみましょう。この「蒼い」は、「イメージとしての懐かしさ」を楽しむ人向けの表現だと思うのですよ。実際に小さな頃にこの曲のような体験をした人には、この「蒼い」は実感とちょっと乖離しちゃうんではないかなあと。思い出は美化されるものにせよ、やっぱり「蒼い」という言葉には、草いきれや土の匂いに欠けるところがあるはずで。
 だからってこの表現はダメだっていうんじゃなく、この曲の情景を実体験していない人にとっては、単に「青」というより「蒼」のほうがカッコイイし、イメージが膨らみやすいのではないでしょうか。これは、「アザミ」にしろ「蝉時雨」にしろ同じですね。体験に共鳴せずとも、その単語の響きがそれだけでイメージを喚起する、そんな言葉を選んで使っているように思えるのです。

 つまりこの曲は、実際に田舎の夏の風景を知らない人にもそのイメージを喚起させ、懐かしい雰囲気を感じてもらおう…そんな意図があるように思うのです。
 まあ、作詞者も実体験がなくってイメージで描いた、ってことなのかもしれませんが。
posted by はじ at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月22日

コブクロ「君という名の翼」

君という名の翼
ワーナーミュージック・ジャパン
コブクロ, 小渕健太郎

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<コブクロの楽曲は、なぜドラマティックに響くのか>

 ベスト盤も好調、楽曲をモチーフとするドラマも作成されたりと、すっかり不動の人気を得たコブクロ。夏にリリースされた新曲は、軽やかなテンポで奏でられる爽やかな雰囲気に満ちています。

 コブクロの楽曲の大きな特徴は、「長いフレージング」だったりします。標準的なメロディラインよりも気持ち長めだったり、盛り上がりのピークがなかなか下がらなかったりしているんですね。結果、聴き手はより耳を引き付けられる時間が長くなり、より強い印象を受けるようになる。つまり、「ドラマティックに聴こえる」ようになるのですね。
 この件に関しては、「ここにしか咲かない花」の時もメルマガで触れました。また「永遠にともに」「桜」についても、形は多少違えどもこの「ドラマティックさ」をことさらに強調するような手法がとられているのがわかります。数あるシンガーの中でここまでコブクロが躍進したのは、ここに起因する部分もあるんだろうなあと考えています。

 今回の曲で言うと、ほとんど伸ばしなしで続くメロもそうですが、サビが二段階に分かれているところが大きいですね。
 『あきれる程 真っ直ぐに』で始まる、上から降りてくる形のキャッチーなサビ冒頭フレーズがまず8小節間ある。それがもう一度繰り返されて終わるのかと思いきや、途中で『胸いっぱいにかき集めて』から新しいメロディが出てきて、そこから最後の『君という名の翼で』まで、もう一度別の山に突入していくのですね。オーソドックスな形式なら8小節のフレーズ×2パターンで終わるところが、2パターン目の後半からはその後のもうひとつの山に続く助走部分になっているという。
 「ここにしか咲かない花」でも何度も山がやってきましたが、今回はフレーズごとの間も取らず矢継ぎ早に次のフレーズを繰り出してくる形になっています。ピーク維持の度合いは「ここにしか〜」のほうが上ですが、今回はテンポが速いので、この方式のほうが効果的かもしれません。

 さて詞の内容ですが、『間違いだらけの あの日々に 落とした涙と答えを』などから察するに、不器用な恋の思い出、今なら大切とわかる「君」へ想いを投げかける過去振り返り型ソングです。つまり、非常にベタなテーマです。とはいえ、風景描写を絡めてみたり表現を工夫してみたり、ありがちと感じさせないようにあれこれ骨を折っている感じ。

 最後に『もう一度 あの空 あの風の向こう側へ/君という名の翼で』とあるので、きっと止まった二人の時間をやり直したいんだろうなと。
 でもこれ「もう一度」がなかったら、「君」との思い出を胸に抱いて新しい道を歩き出す(=君のことは諦める)とも読めてしまうから、ちょっとわかりにくいかもしれないですね。そもそもタイトルにもなっている「君という名の翼」からして、内容読むまでは二人で飛んでいくラブラブな歌だとばかり思っていましたし…
 メロディ的にもちょっと合わせ方が気になりますし、このあたりはぱっと聴きのカッコよさを優先して作ったのかなあという気がします。
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2006年10月14日

KAT-TUN「SIGNAL」

SIGNAL (通常盤)
JOne Records
masaya,JOKER,白井裕紀,新美香, KIRA

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<ちょっと斜に構えつつポジティブさは崩さない、アイドルグループの新しいスタイル>

 スガシカオ作詞・B'z松本孝弘作曲の「Real Face」でデビューを飾ったKATTUNの、セカンドシングル。前作はジャニーズらしいまっすぐなポップチューンでしたが、今回はちょっと趣向を変えて、ミディアムテンポで歯切れのよいダンサブルな楽曲になってます。CMタイアップの関係もあるかもですが、あんまり方向性を限定せずにいろんなことをやりたい、やらせたいのでしょうね。
 デビュー曲でも(実は)そうでしたが、『癒されちゃ もの足りない…/頑張るだけじゃ 救われない…』というような、ちょっと「斜に構えた」スタンスが感じられます。今までのジャニーズグループだとこういうのってわざとらしかったり、なんだかんだ言って優等生っぽく感じちゃったものですが、彼らははじめてナチュラルにそういったイメージを出せるグループなのかなあ、と。
 まあ、最終的な落としどころは『Your heart 決して ひとりじゃない/話してごらん』とファルセット混ぜて優しく語りかける、というようになってはいるんですけどね。まーアイドルグループが救いのない絶望的な歌なんか出したらそれは世界の終わるときなので、こうでもらえないと、というか。

 ただリードボーカルをチェンジしていくだけというわけじゃなく、サビでは全員+一人がリズム良く切り替わっていったり、メロディの下に『Take it easy now』などをかぶせてきたり、ちょっとスローになってファルセットでの歌い上げパートからサクッとラップに繋がったり、リフレインではアドリブっぽく「Yeh〜」とフェイクを絡めてみたり、チキチキ言ってたり、咳したり…と、なかなかに多彩です。こういう単色イメージの曲はえてして飽きやすいものですが、曲そのものが短くまとめられていますし、こうしていろいろ手を変え品を変えやってくれるといいですね。ところで、前奏で咳しているのは一体誰なんでしょうか。
 ただ、せっかくの歌い上げパートからすぐに低音ラップに移り変わるのは、余韻を潰しちゃっているような気も。間奏入れてからラップやって、それでサビリフレインに持っていったほうが良かったのでは。
 ところで、咳しているのは一体誰なんでしょうか。

 なんにせよ次回はまたさらに趣向を変えて別の方向に挑戦してもらってもいいかなと。じゅうぶんにファンはいるし、それは今までにないスタンスだからこそという面もあるでしょうし。
 彼らは男性アイドルのパラダイムシフトそのものたるべき存在として登場したのでしょうし、せっかく事務所全体が今好調で活発な時期なんですから、守りに入らずにあれこれチャレンジしてほしいなあと思います。
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2006年10月07日

GLAY「G4」

G4
東芝EMI
TAKURO, GLAY, 佐久間正英

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<確かな重みのある「ずっしり感」漂う曲世界>

 昨年はEXILEとのコラボ「SCREAM」のみしかシングルを発表せず、実に「ホワイトロード」以来のオリジナルシングルとなります。お久しぶりです。

 で、そんな長い沈黙開けの新曲は4曲構成になっています。どの曲もそれぞれ個性はあるものの、それぞれにいかにもGLAYらしい王道で作られているような感じ。良く言えば安定感信頼感があるし、悪く言えばマンネリといったところ。まあ久々なので、改めて自らの音楽性を確認するような意図なんでしょうか。

 とはいえTAKUROという人は基本的にマジメな作曲家なので、自らの作風を守りつつデッドコピーにはならないよう毎回ちゃんと味付けを変えたり工夫したりしてるんですよね。
 「ROCK'N'ROLL SWINDLE」ではサビの『WAY!』の連呼が耳を引きつけますし、「誰かの為に生きる」ではリフで珍しくコートに対してM7の音を効果的に使っていたり、「LAYLA」はその名前を繰り返し呼ぶパターン化したメロ部分、「恋」はさりげなく混ぜられる2種類の調性。そういう要素を常に開拓しつつ、サビのキャッチーさや真摯な主人公像は押さえておく、という作り方は常に考えているんだろうなあと。


 さて、では曲ごとに詞を見て行きましょう。続きを読む
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2006年09月27日

甲本ヒロト「真夏のストレート/天国うまれ」

真夏のストレート / 天国うまれ (初回生産限定盤)(DVD付)
BMG JAPAN
甲本ヒロト

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<あえて細かさのない荒削りで、それでもふいに奥まで迫ってくるような言葉たち>

 ブルーハーツを10年、ザ・ハイロウズを10年、フロントマンを務め続けてきた甲本ヒロトの、初のソロシングル。
 …とはいえ、すでに朋友マーシーこと真島昌利と再び手を組み、クロマニヨンズとしてバンド活動を再開していたりします。なのでこのソロは、非常に貴重な一枚なのかも。

 シンプルなメロディワークとシンプルな言葉を選ぼうとする曲の作り方は、今までと何ら変わっていません。それでいて『「明日こそは」と つぶやいて/泣いたのは おとといだった』と、平易で飾り気のない言葉だけで奥行きのある意味生み出してしまうセンスも、また。
 こういう凄さって解説しづらいんですが、単純に言ってしまえば「明日よりも今日」「今が一番大事」というメッセージなんですが、それだけなら誰にでも言えちゃう、誰が言っても同じなわけです。それを、『明日なんか もう知らないよ/今日の勝ち』と、ユーモアを交えつつただ一人しか表現できないフレーズにしてしまっている、と。

 この曲での「真夏」とは、イメージです。燃えたぎる情熱とか、渾身とか、ハイテンションとか。夏という季節自体がかもし出す昂揚感とか、そういうものを全部凝縮して一言にまとめたのが「真夏」。だから『夏が終っても/真夏はそのまま』なんです。季節が移り変わっても、夏のようなギラギラした感情はいつまでも「まっすぐ」持ったままだ、というような。
 それにしても、『ワッハッハ 我こそは/この身体の/総理大臣』と言っちゃうのも、他人には真似できないセンス。もちろん自分自身が身体を動かしているんだから当たり前と言えば当たり前なんですが、悩める若者だと「いや、でも僕の意識というのは…魂は存在するのか…」とかなんとか、あれこれ考え込んでしまいがちな人もいるでしょう。そういう葛藤を軽くぶった切って、偉そうにすっぱりと言い切ってしまうこの爽快さ。あれこれ思い悩むよりも、不敵な自信を持って笑っていたほうが、ずっと賢いのかもしれません。


 カップリングの「天国うまれ」は、映画「THE有頂天ホテル」での挿入歌として使われた一曲。とはいえ、こちらは「真夏のストレート」よりも不思議な世界。

『ドンキホーテ サンチョパンサ ロシナンテ & 俺/ふるさと遠く 天国うまれ』
 セルバンテスが書いた世界初の近代小説といわれている「ドン・キホーテ」の登場人物と、そこに加わる、俺。これは単に有名人と俺は同列、みたいな強い自己主張というわけではなく、その小説の暗示するような生き方をしたい、くらいの意思表示なのかなあと。
 風車を敵(竜?)と勘違いして突進していったりして、かなりアレなんだけど、騎士の高貴な精神を持ち続けているドン・キホーテ。(サンチョは付き人でロシナンテは馬。一般常識の範囲かもですが一応)まあ、キレイに言えば「人に笑われても自分の行き方を貫く男」というキャラクターです。とはいえ、原作は生き方を貫いたばっかりに散々な目に遭う喜劇として描かれているんで、まったくカッコいいキャラではなく。でもだからこそ、「カッコいい」よりも「笑い者」の要素が強いからこそ、この3拍子の緩やかな雰囲気の曲に乗せて「俺」を並列にしようとしたのかもしれません。
 天国の生まれで「ふるさと遠く」ということは、単純に繋げると今は天国から遠い場所にいるということで。それはすなわち「現世に生きている」ということに他ならないのではないでしょうか。…まあ、曲中で『チンタッタ 3拍子で』と言っちゃったり、ゆる〜い雰囲気の曲なんで、あんまり難しく考えないで聴いていたほうがいいのかもしれません。『叶わない恋もある あきらめてしまえ /叶わない夢はない あきらめるな』という対句もなんだか意味深ですが、あんまり真剣に意味を探ろうとしても面白くない類のフレーズのような気がします。(ある種、正論ですし…でも正論だと思って見ちゃうと、つまんない)「なんとなく、響くかも」くらいで、ぶらぶら歩く心地で聴くくらいがちょうどよさそうです。


 バンドの音楽も形態もそれはそれでいいものですが、本音を言うともっとソロを続けてほしかったかも。バンドだとやっぱり、形態としての「ロックンロール」に縛られてしまう面もあるはずなので…ロックの枠にとらわれず、でも思想は(今回のように)ロックな、適度に力の抜けたタイプの名曲がきっとザクザクできたと思うんですよね〜。
 もちろん、まだまだバンドで突っ走ろうとするその飽くなき活力は、それはそれで尊敬してしまうところではありますが。
posted by はじ at 00:53| Comment(1) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月27日

関ジャニ∞「∞SAKAおばちゃんROCK/大阪ロマネスク」

∞SAKAおばちゃんROCK (通常盤)
テイチクエンタテインメント
関ジャニ∞(エイト), 久保田洋司, 馬飼野康二, 相田毅, haj, 飯田建彦, 大坪直樹

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<ユーモア満載のの中にも、ほんの少しの絆/地域性アピールにとどまらない、地元愛ある哀愁ソング>

 このところ非常に活発な展開をしているジャニーズ勢力ですが、その中でも独自の方向性を開拓しているのがこの関ジャニ∞。「浪花いろは節」 「大阪レイニーブルース」 「好きやねん、大阪。」と、ひたすら地元関西(今のところ特に大阪)に根ざした歌ばかりをシングルで発表し続けています。大阪ネタが尽きやしないかと心配ですが、そうしたら京都や神戸なども歌っていくようになるんでしょうか。

 さて、この曲はひたすら大阪のおばちゃん達の生態を陽気に挙げていく内容になっています。『買いもん行ったら 絶対値切る』とか「ああ、ありそう」と思うものから『ベルのかわりに 自分の口で チリンチリン』とか「マジで!?」と思うようなものまでいろいろ。嘉門達夫とかウルフルズあたりもやってそうな、地元に根ざしたユーモアです。
 途中には掛け合いのセリフ回し(もちろんおばちゃん言葉で)もあったり、面白さを主軸にしている中にも、『おかん わかるで ボクだって その心意気 継いでるで』と家族の絆を見せたりも。それも『見習うべきは ずうずうしさと たくましさと ムラサキメッシュ』と、さりげなーく「たくましさ」を混ぜ込んでいて、うまいなーという。いい言葉を最後に持ってくると感動は高まりますが、それよりも大オチを優先するところは、さすが関西密着型を標榜するだけのことはあります。

 でもこれ絶対ロックじゃないよなー。ジャンル的には、ブギウギ?だいぶ懐かしい感じですね。まあ、大阪のおばちゃんの生き様は確かにロックかもしれないので、これでいいのかも。


 で、カップリングの「大阪ロマネスク」はしっとりとした哀愁歌い上げ系の楽曲で、デビュー前からファンの間では人気の高かった一曲なのだそうで。
 あるひとつの、大切な恋の回想。さまざまな思い出が生まれた関西の各地が歌詞に織り込まれています。御堂筋、梅田駅、心斎橋、難波の庭園、神戸、戎橋…どこかまでは詳しくないのでわかりませんが、曲中登場する『ふたりではしゃいだ 観覧車』にも、おそらく実際のモデルがあるんでしょうね。『振り向いた 交差点』は、さすがに特定はないかな。

 で、まあ地名を織り交ぜて過ぎた日々を想う、とかだとほとんど演歌や歌謡曲の世界で、実際曲調もそれを意識しているのだと感じます。ただやっぱりキラキラ感のあるアレンジは、レトロさを感じさせつつ、しっかり今時のポップですね。
 さらに歌詞で上手いなーと思ったのが、『この街の言葉 乱暴と言ったね/でも僕は 変えないよ/「好きや」と言うから』という一節。大阪をただ舞台にするだけにとどまらず、大阪を愛していることが示されているんですね。単純な「ご当地ソング」ではなく、そこに根ざした「地元ソング」になっているわけです。

 ところで、街の言葉になじまない「君」は、関西圏の人じゃないんでしょうか。別の土地からやってきた「君」と地元の「僕」とのロマンス…というとドラマっぽいですね。「君」は今はずっと遠くへ行ってしまったのでは、というように想像も広がりますし。
 まあ、大阪内でも地域によって言葉は微妙に違っていたりはするので、そこまで遠くとかではないのかもですが。
posted by はじ at 14:44| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月17日

GOING UNDER GROUND「VISTA/ハミングライフ」

VISTA/ハミングライフ(初回限定盤)
ビクターエンタテインメント
GOING UNDER GROUND, 河野丈洋

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<持ち味を生かしつつ曲構成への挑戦を/日常賛歌を素晴らしく響かせるために>

 ベスト盤も発売したGOING UNDER GROUNDのこのシングルは、今までの胸キュン系爽やかロックサウンドを踏襲した「VISTA」と、穏やかなシャッフルのリズムを打ち出して斬新さを感じさせる「ハミングライフ」との両A面シングル。


 これまでの路線に沿っていると上に書いた「VISTA」ですが、まったくいつもどおり、というわけではないです。4/4の中に2/4が挟まってきたり、3連のリズムがぐぐっと盛り込まれてきたり、突然のリズム転換が非常に頻繁に行われます。
 途中、いったん曲が止まり、またイントロのフレーズから再開するなど、ドラマティックな展開が仕込まれているんですね。『きみを景色に重ねてた/違う世界に生きていると思ってた』という考えから、『いまぼくらを つまぐ世界はひとつだろう』と感じるようになるまで、曲構成のダイナミックさが詞世界のストーリーをイメージさせてきます。また、前へ前へと進もうとしているような感覚も自然と匂わせることになります。

 このため、全体にかなり動きのある構成ではあるものの、滑らかなメロディラインとボーカルが安心感を与えてくれるので、せわしないというようなマイナスの感触はあんまりなく、まとまっています。
 こういう挑戦的な作りの曲を聴くと、バンドが成長しようとあれこれ試みているのが見て取れて面白いですね。続きを読む
posted by はじ at 02:31| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月14日

KAT-TUN「Real Face」

Real Face (通常盤)
JOne Records
KATTUN, スガシカオ, JOKER, CHOKKAKU, 久保田洋司, 長岡成貢, 原一博

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<キャッチーでめくるめく大掛かりな曲の中に垣間見える、「生」の感覚への志向>

 さて、今さら紹介するまでもない話題のジャニーズ最新ユニット、KAT-TUNのデビューシングルです。去年くらいまで「かっつん」ってあだ名っぽいなーとか思っていたことは秘密です。
 それにしても、ずっとCD出さないで音楽活動を続けさせていて、修二と彰「青春アミーゴ」で強烈な追い風が吹いたところで、堂々のデビュー。実にうまくいった例ですよね。やっぱりジャニーズ事務所はすげえ。

 とりあえず、ここ最近のジャニーズになかった雰囲気がありますよね。一人称が「僕」じゃなくて「俺」っぽいというか、優等生じゃないぜ、って言いたそうとか。ワルっぽいというとちょっと違うんですが…どこかで誰かが言ってたんですが「ホストっぽい」というのはひとつありますよね正直。
 曲調からも、そんなイメージを出していきたいのが感じられます。嵐やNEWSのデビュー曲はなんだか展開が派手でドラマティックに作られていて、この曲もその流れを踏襲しているんですが、前者がポップ基調でラップを取り込んでいた形式だったのに対し、今回はやはりラップがあるものの基調はロックサウンドになっています。ま、それでもバックはジャニーズっぽい感じではあるんですが、でもストリングスじゃなくエレキギターですし。

 作詞がスガシカオ、作曲がB'z松本孝弘。狙いとしては「若者の等身大の視点」+「わかりやすいロックらしさ」というところでしょうか。結果的に、どちらも自分の仕事をきっちりやってるなあという印象。彼ららしさをそのまま出しているかって言うとそうじゃなく、「求められていること」を盛り込んでいる感じ。どっちもエンターテイナーだなあ、と。
 とはいえまったく彼ららしさがないかというと、そうでもなくて。松本孝弘のメロディラインなんか、CHOKKAKUのアレンジでちょっとごまかされてますが、らしい特徴が出ています。
 それはスガシカオにしたって同じ。歌詞の中に「→」や「×」とかが入っていたりしてずいぶんキャッチーに作ってますが、丸々遊び心だけってわけでもなく。『ギリギリでいつも生きていたいから』、この「ギリギリ」という感覚がいかにもスガらしいですね。遥か彼方まで何かを超えていっちゃうんじゃなくて、どっちに転ぶかわからないような危なっかしい位置をあえて好むようなところが。あと、『夢を語るフリしてれば/なんか大人になれる気がして』っていうどこか冷めた自覚とか、『雨上がり濡れた堤防で/はじめて君についたウソは/いまも 乾いちゃいない』みたいな、皮膚感覚を伴ってくるシーンの切り取り方とか。

 さて、この曲は『リアルを手に入れるんだ』と歌っています。これはつまり裏を返せば、「リアル」は今は手元にないんだ、ということです。
 歌詞とは聴き手へと届けるものであり、聴き手の共感を呼ぶために考えて作られたものです。ということはこの曲は、今「リアル」を感じられていない聴き手へ向かってアピールされているわけです。『思いっきりブチ破ろう』としなければ、「リアル」は手に入りすらしない。今はそんな時代なんだ、とこの歌は主張しているんですね。
 そしてそれは「ギリギリ」を求めることと深く関連しているのかもしれません。普通にただ生きていると、あんまり「ギリギリ」って感じませんもんね。『舌打ち』にしろ、『ずぶ濡れ』にしろ『牙をむき出し』にしろそれは同じで、すべては作り物でない「生」の感覚を志向しているなあ、というところで統一されているように感じます。
 そういう意味で、今までの先発隊と違ったメンバーの雰囲気も、作り物っぽくない、いまこの時における「生っぽさ」を、より感じさせようとした結果、こうなっているのかもしれません。

 しかし本当にいろんな要素を取り込んでいて豪華な曲ですが、分解していくとけっこうバラバラかもなあ。スガシカオの詞だけでも感覚的な描写とキャッチーさとユーモアとが同居しているし(それはある意味「よく時代を表している」と言えそうですが…)、ラップは輪をかけてスゴイことになってるし。でも聴いてみるとそれほど違和感ないのはすごい。CHOKKAKUの為せる業なのか。

 さて、デビュー曲にしてグループ名は定着しましたが、まだまったくメンバー名は亀梨和也しか浸透していない状況です、…よね?とりあえず今後はまた大物プロデュースでいくのか、そうしないのか、別の話題を狙いに行くのか…最近大当たりしているジャニーズの動向ですので、注目したいところです。
posted by はじ at 23:41| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月28日

KREVA「国民的行事」

国民的行事
ポニーキャニオン
KREVA, SONOMI

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<大胆なサンプリングに潜む、スリリングなマッチアップ>

 やー、クラシック風に言えば「モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』の主題による変奏歌曲」とでもいいますか。厳密に言うと変奏曲じゃないけどね。というわけで、誰でも知ってるクラシックの名曲をほとんどそのままサンプリングした怪曲になっています。やー、ここまであからさまなそのままサンプリングはある意味トンガリキッズ「B-dash」並。
 ネットでのパクリ論争も過熱気味な今のご時世にこんな思い切った曲を作って、しかも『無限の組み合わせ/試しな好きなだけ』とか歌っちゃっているあたり、痛快ですね。ここは人同士の出会いにも当てはめられるし、象徴的なフレーズです。『神の巡り合わせ/待てないからこの手で組み合わせる』なんて、男女の縁だと考えるとかなりの強気なメッセージになりますし。ちょっと言葉の当てはめ方が無理やりですけど…

 そのもの直球サンプリングも、ただ知名度のある楽曲、ヒップホップとは程遠い感のあるクラシックというカテゴリー、そういうインパクトや話題性のためだけにやっているわけでもなさそうで。たとえばラップ部分。この部分で使われている「アイネ〜」の旋律はたっぷりしたアウフタクト(弱起…早い話が、リズム的に「前フリ」に当たる部分ですね)があって、ラップよりも先行して展開していく印象を聴き手に与えます。モーツァルトの旋律とKREVAのラップが「追いかけっこ」しているようなスリリングさがここで生まれているんですね。最終的には『国民的行事!』というコーラスも絡まってきて大変なことになってきます。

 というわけで、実に意欲的な一曲です。欲を言えば、ここまでやるならさらにもっと原曲からあれこれ引っ張ってきてみたほうが面白かったんじゃないかなと。あと、ラップからブリッジ(サビ)に行くときが少々無理やりかな。まあサンプリングでクラシックの「展開の美しさ」を期待するのはちょっと無理だし筋違いだとは思いますが。
posted by はじ at 22:05| Comment(2) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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