2008年08月13日

浜崎あゆみ「Mirrorcle World」

Mirrorcle World(DVD付A)
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浜崎あゆみ
エイベックス・エンタテインメント (2008-04-08)
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<自問自答の末に、はじめて見せる「揺らぎ」>

 10周年記念シングル。どのあたりが記念なのかというと、まず外側的には、先行してプロトタイプの曲を発表していたという点。すでに発売されている9thアルバム「GULTY」の1曲目に1コーラスだけ収録されている「Mirror」をフルバージョンにしているとのことです。
 そんな特別仕様のリリース体制だけでなく、内側的、つまり楽曲もまた特別感があります。ストリングスの長く壮大なイントロを持たせ、そこから激しくどこか切迫したアグレッシブなサウンドへと移行していきます。
 強く打ち鳴らされるパーカッションの音が、特に印象的です。メロではあたかも行進曲のようなリズムになっていて、強い意志、前に進んでいく力強さを演出。サビではそのリズムを前に崩し、加速がついた印象を与えてきます。

 さて、この曲のタイトルは「Miracle」ではなくて「Mirrorcle」となっています。元のタイトルが「Mirror」であることからもわかるとおり、「鏡」を意識した綴りを造っているわけですね。
『現在のこんな未来を僕は望んでいたのだろうか?
 現在のこんな未来を君は望んでいたのだろうか?』
『始まりなのかって?/終焉なのかって?』
 歌詞を読んでいくと、そのほとんどは、対句調になっている疑問系で作られているのがわかります。この構成とタイトルの造語を合わせて考えると、おそらくは「自問自答」を繰り返し行っている歌なんだ、と考えるのが妥当なのかなと。
 そして問いかけているのは、中身はいろいろではあるものの、総ざらいすると「時代」と「自分」の関係性について…でしょうか。『ねぇ僕等とこの世界は/減速する様子もなく』動き続けている。その中で自分はどうあるべきなのかを、自らに問いかけることで確認しようとしているかのようです。

 興味深いのは、最終的に「自分は自分だ!」「思うように生きていこう」と、ポジティブなメッセージで締められているのではないところです。
 彼女がカリスマ的存在として絶大な人気を得たのは、本人の魅力ももちろんあるのでしょうけれど…聴き手が自分の目標だと感じられるような、理想的な生き方や考え方を歌に綴ってきたそのスタイルが、たくさんの人の琴線に触れたからなんだろうと自分は考えています。
 でも、この歌は、誰かのためのパフォーマンスではないように感じます。これまでは、歌詞中の自問自答は、ポジティブな「答え」に繋げるためのものであったりしました。でも、今回の自問自答の繰り返しの中には、『ただ前に進めと/あなたが言うんじゃない』という叫びも混じります。ここには、<前に進んでいきたくない>ネガティブな感情が込められているようにも思えます。

 パワフルな歌いぶりは、激流のような時代の流れにも敢然と立ち向かおうとする強さを感じさせます。しかしそれも、急に静かになるラスト『泣かないでいられるのは/強くなったから/それとも.....』というフレーズで揺らぐのです。
 聴き手に向けて、揺らぎのないメッセージを綴ってきたという印象のある彼女。ですが、この歌は、自らの「揺らぎ」を盛り込んでいるのです。それは、10周年を迎えての振り返りが意識にあったせいかもしれません。それだったら一過性ですが、今後、こういう内省的な方向へ転換していく、という可能性も考えられます。
 節目を越え、新しいステージに進んでいく浜崎あゆみ。今後の展開がちょっと気になります。

ラベル:浜崎あゆみ
posted by はじ at 18:51| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(は行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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