2008年06月21日

ポルノグラフィティ「あなたがここにいたら」

あなたがここにいたら
ポルノグラフィティ
SME Records (2008-02-13)
売り上げランキング: 3126


<二面の情景描写が「不在」を鮮やかに示す>

 ポルノグラフィティというと、軽快な楽曲とイマジネーション豊かな歌詞世界、というイメージが中心にある人も多いかと思います。
 が、今回はミディアムテンポにメロウな歌詞。二人体制になってからは、「ROLL」「Winding Road」などこうしたタイプの楽曲もありキャリアと落ち着きを感じさせたりしていましたが、それらの曲は岡野昭仁の作詞だったりします。今回は、新藤晴一の作詞。空想性に富んだ世界を得意とする彼の作風にしては、とても現実的な表現が並んでいます。

 空想性がないと言っても、クリエイティビティは高い位置を保持しています。それがよくわかるのが、Aメロのつらつらと言葉を並べていく展開。1コーラスでは『冬の公園 夜のバス停 校庭 帰り道』と様々な風景をひとつずつ示していくのですが、どれもこれも過ぎ去った「郷愁」を感じさせる単語ですし、かつ冬から夏まで、身近な場所から遠くまで、とても幅広く取り入れています。

 さらに、歌い出しのこの流れは、その後ふたつの場所へつながっていきます。
 ひとつは直後のBメロ。さまざまに郷愁を誘う風景たちも、「あなた」がそばにいた間は、ただの『背景だったのに』とこぼしているわけです。どんな胸を揺さぶる景色も、「あなた」の前では脇役だった。それだけ「あなた」の存在が大きかったということが伝わってきます。
 また、2コーラスのAメロでは、単語を並べていく「手法」は同じでも、示される内容が異なっています。『旅立ちの朝 新たな暮らし 出会い 戸惑い』…「郷愁」を導く過去ではなく、この先、現在から未来に属する単語が連なっているわけです。

 「あなた」を失ってしまった。そのことは、ただの背景だったはずの過去の記憶の風景を鮮やかに郷愁たっぷりによみがえらせ、また、これからの生活の風景の中にも『今もあなたがここにいたら』そう考えさせてくる。過去と未来の両面の情景が、そこにいない人物の「不在」を鮮やかに映し出してきています。
 この巧みな構成になっている描写と心象が、『いっそ粉々に砕け散ってほしい』とまで言ってしまう苦しさに結びついているなあ、と感じます。


posted by はじ at 02:49| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(は行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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