2008年05月14日

Perfume「Baby cruising Love/マカロニ」

Baby cruising Love/マカロニ
Perfume
Tokuma Japan Communications =music= (2008-01-16)
売り上げランキング: 4364


<音はデジタル、主人公は生身>

 コンピュータ感全開のテクノサウンド×アイドル、という新感覚ユニットPerfume。スマッシュヒットとなりその知名度と人気を一気に広げた前作「ポリリズム」には、ひたすらに人工的に構築された音、機械処理されたボーカル、そして歌詞もまた感情を排し、特定の個人の枠組みを脱して広がっていこうという表現意図がありました。

 今作も、音についてはやはり非常に機械的/人工的で、テクノサウンドならではの浮遊感、トリップする感覚を与えてくる仕上がりです。

 ただ、歌詞に関しては、はっきりと血の通ったものになっているなあと。『会いに行きたいよ』『ただ前を見ることは 怖くて しょうがないね』など、一個人(女の子っぽいですが、一人称は出てきません)の感情がはっきりと見てとれるのです。
 『何だって いつも近道を探してきた/結局大切な宝物までなくした』
 なんていう淡々とした述懐部分などは、メロディラインのせいもあるのか、YUKIのデジタル系の楽曲にも近い雰囲気があるなあと。

 過去の楽曲の歌詞をざっと読んでいっても、これだけ等身大の感情が描かれているものは珍しいようです。そもそも、一人称が「僕」と中性的だったりするものが多いらしく。 デジタルでなく、アナログに描かれる感情。それは、今までの楽曲よりも、歌い手である3人と歌詞世界を照らし合わせやすいということです。

 ヒット以後というこのタイミングでこうした方向性を打ち出してくるというのは、実に適切な判断かなーと。
 このユニットの特徴は、とにかく徹底した世界観作りにあります。非個人的な歌詞世界を描いてきたのも、その一環なわけで。ただ、この作りだと、本当に楽曲の内容勝負になるわけで。それよりも、歌い手のキャラクターに合わせて等身大の視点を取り入れた作り方なら、楽曲への好感度だけでなく、歌い手である彼女たち自身の好感度にも影響を及ぼしやすくなるのですね。
 ちょっと回りくどくなってしまったのでばっさりと噛み砕いて言うと、「歌詞の内容が歌い手本人に近いと、わかりやすいよね」という話です。

 もちろん、ただ人気を狙って安易に堕してしまった、というわけではなく。『遠い空間を』と「空間」なんて単語を使っているあたり、また後半のサビではエコーがかかったかのように輪唱になる見せ方などは、楽曲の雰囲気に合わせたバーチャルな世界観を形作るものです。
 特質を失わず、しかしより広い層へと浸透させるための布石として、今回の両A面シングルは作られているのではないでしょうか。 さてもう一方の「マカロニ」のほうですが、声はやはりトリップ感が出るようデジタルかつ浮遊感あるものに加工処理されているものの、歌詞だけを追っていくと普通の等身大の女の子の歌です。
 むしろ、『これくらいのかんじで いつまでもいたいよね』というような曖昧な感覚値を出してきたり、『大切なのはマカロニ ぐつぐつ溶けるスープ』のような五感に訴えてくるフレーズを入れたりと、生っぽさを強めに出してきているようにも思えます。

 と、全体の設計としては、「Baby cruising Love」で語ったようなデジタルサウンド+等身大感覚がより強く押し出されているように感じます。「Baby cruising Love」が遠くまで澄み渡るような広さと透明感を持っているのに対し、「マカロニ」は人肌のあったかさに満ちているあたりも、その感覚に拍車をかけます。あと、「〜の」で終わる言い方とか。

 どこか人形っぽくもある、バーチャルで不思議な魅力が彼女たちの持ち味ではありますが、この曲に関しては生身に近い魅力を打ち出してきています。世間に照らすと一般的な内容なのに新機軸っぽく思えるところが、特殊なこのユニットの特徴をよく表しているのでしょう。


posted by はじ at 02:06| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(は行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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