2008年03月05日

過去ログ発掘のコーナー その34。

 メールマガジン「現代ポップス雑考。」のおまけコンテンツ「今日の一曲」。
 毎回そのときの気分で一曲選んで紹介するこのコーナーのバックナンバーから、新しいレビュー更新が滞ったとき、ちょこっとずつ抜き出して紹介していきます。メルマガを読んでいない人にはちょっとした暇つぶしに、読んだことのある人にも何か新たな発見があれば幸いです。



≪現代ポップス雑考。≫ Vol.131 2008/01/14
#SINGER SONGER「オアシス」

『愛が今/足りないなら/愛はまだ/降り注ぐように』

 音楽のメルマガとブログをやっているにもかかわらず、数年に1回程度しかライブに行かない出不精な自分ですが、先日誘われましてCoccoのライブに行ってきました。

 最新アルバム「きらきら」は非常に明るいアルバムで、活動休止以前の暗さ重さが好きだった人には反発する向きもあるでしょうけれど、ライブに行くときっと受け入れられるだろうなあ…なんて思わされました。
 昔と決別したわけでは決してなくて、ライブでも「強く儚い者たち」や「樹海の糸」など、昔の曲をかなり披露してくれていまして…当時の活動が今に繋がっていること、そして今の方向性とは違う種類の楽曲もしっかりと組み組んで歌いきっていくCoccoには、明らかな成長が感じられたのです。
 純粋に「ああ、いいなあ」と。

 さて、そうした第2ステージのCoccoの始まりは、くるり岸田繁らと組んだSINGER SONGERにありました。ということで、このところそのアルバム「ばらいろポップ」を聴き返している中から、この曲をピックアップ。
 メロだけを聴くと、ちょっと重めのマイナー調。どうしようもない負の感情をたぎらせ迸らせるサビも想像できそうです。が、そこに現れるのは、暖かな広がりを感じさせるサウンド。シングルとしてリリースされた「初花凛々」も大好きなのですが、始終キラキラした明るさを振りまくそちらよりも、曲作りの転換がはっきりと感じ取れる一曲です。

 叫ぶように、でも確かな強さを持って降り注ぐ愛を描き歌うCoccoの声は、その変遷も踏まえて聴くと、よりドラマティックに胸を打ってきます。ただ、先にも述べたように、今までの彼女自身の音楽を捨てたというわけでもないのです。
 「愛が足りないなら」と呼びかける。「愛が降り注ぐような」と描写する。気をつけたいのは、「愛をあげる」ないし「愛が届く」とは言っていない、ということ。これだけで、Coccoが安易な気持ちで「愛」を前向きに歌い始めたわけではないということが、ひしひしと感じられはしないでしょうか。

 「愛」はあります。足りていない人がいても、それは絶対量が少ないからではなく、降り注ぐ「オアシス」はどこかにある。そういう希望を描く一方、必ず誰にでも届くとは言わないし、あげるとも言わない。重みを知っているからなのか、自分でつかみとるべきだと考えているからか、すべての人が満ち足りるのは無理だということなのか…ただ言えるのは、Coccoが愛を求めることの厳しさを忘れたわけではないのだろうということ。そして、その厳しさを知っていてなお、精一杯の救いを歌おうと試みているということです。

ばらいろポップ
ばらいろポップ
posted with amazlet on 08.03.05
SINGER SONGER Cocco 岸田繁
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 昨日の「ジュゴンの見える丘」のレビューと合わせてどうぞ。


posted by はじ at 09:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 過去ログ発掘。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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