2008年02月06日

コブクロ「蒼く 優しく」

蒼く 優しく
蒼く 優しく
posted with amazlet on 08.02.06
コブクロ 小渕健太郎
WARNER MUSIC JAPAN(WP)(M) (2007/11/07)
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<回想をドラマティックに演出する技巧>

 昔、一度諦めた夢を思い返し、立ち止まって自らに問い直す。
 コブクロの新曲は、その過程をドラマティックに描き出しています。

 こうした曲の定石は、過去の自分を振り返ったうえで、もう一度夢を追ってみよう、となるのがパターンで、そこまでを曲中で追っていくとそれだけでドラマティックな展開になります。
 しかし、この曲は、ちょっと違います。もう一回やりなおしてみるぜ!とまでは行かず、『あの日の僕』に対し『少しだけ話を きいてくれるかい?』と語りかける…とまででまとめているのです。
 そんなわけで、中心に描かれているのは、「再出発」ではなくて「過去の自分への想い」なのですね。テーマはそこまででも、十二分に盛り上げていくテクニックは、さすがの一言です。

 「過去の追憶」は、使いやすいテーマではあります。無難にまとめれば、たいていの聴き手の記憶やイメージと結びついて、感動を生むことができるので。
 しかし、この曲はそんな使い勝手の良さに胡坐をかいていません。その象徴が、サビ直前『あの日のロッカー』。静かな中でハモるAメロ、楽器が増えるBメロが緩やかに続いてきて、急激にボルテージが上がるのがこの箇所。そこに、視覚的なフレーズをどどん!と提示するのですね。
 ここまではずっと抽象的な言葉を並べて、パッとイメージを与える。そしてサビ、タイトルにも出てくるように楽曲の中心イメージとなる『今よりずっと蒼く 優しく見えた空』に繋がっていく、と。単純に想い出を書き綴っていくよりも、ドラマティックな印象を聴き手に与えることができる書き方になっているのです。

 さて、2楽章の同じ部分では、『引き返して しまえばまた 後悔だけが 僕を待ってる 下り坂』と歌って、そして間奏に流れ込んでいきます。こちらも1コーラス目以上に劇的に歌い上げられているんですが、最初はなんで曲最高潮ともいえる盛り上がりの部分に「下り坂」というマイナスイメージの言葉を当てるんだろう?と疑問に思ったりしまして。
 しかしこれも、どうしても沸き起こってしまう、激しく狂おしい「恐れ」「不安」といった感情を表したかったのかなーと。
 2コーラスでは、その前にもこんなフレーズがあります。『何度負けても 間違っても 夢は 終わりじゃない/何度勝っても たった一度の 諦めに 崩れてゆく』…普通のポジティブ志向のメッセージであれば、この2行は上下反対の順で提示されるはずです。でも、ここでは最後の「諦めに 崩れていく」を強調したかったのでしょう。
 で、「崩れること」への恐れが、「下り坂」の歌い上げに結びついていく、と。この部分はどうも、曲中でのブレーキ、いったん「落とす」ためにフレーズが組まれているようです。

 で、その後、間奏のあとに音が静まり、「再生」が始まるのです。
 『心の叫びなど 誰にも聴こえない/だから笑うんだよ 涙が出るんだよ だから 輝くんだよ』
 そして再び楽器が加わり、もう一度盛り上がって、クライマックスになだれ込んでいく。これだけ展開が徹底してドラマティックに作りこまれていたら、そりゃあ感動するってもんです。 彼らのサビは、盛り上げを意識してか何かと冗長になる傾向がありましたが、今回はそういう面はないようです。その代わり、メロディラインをうねらせながらずっと高いテンションを維持している感がありますし、サビのリフレインは計3回。やはり、クライマックスは<長い>です。
 他にも、『何を忘れたんだろう?何を覚えたんだろう?』の問いかけを二人で反復させているのも、胸に迫ってくるものがありますね。

 ということで、盛り上げのためのテクニックは今回もあちこちに散りばめられていますが、手を変えてマンネリにならないようにしている努力が見えますね。
 あとは、どうしても彼らへの要請がある以上仕方ないですが、もっと砕けたユーモアのある内容も歌ってほしいところだなあと。出す曲全てが濃く重いので、個人的には軽いものも欲しくなっちゃいます。そういう方向もこなせる人たちだと思うので。


posted by はじ at 19:05| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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