柴田淳 澤近泰輔
Viictor Entertainment,Inc.(V)(M) (2007/09/12)
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<初々しさと戸惑いが、成就した想いの強さを物語る>
活動中にリアル引きこもり期間があったり、部屋に閉じこもって曲を作るというエピソードを持ち、それが納得できるような内省的・翳のある作風が目立つ柴田淳。前作「HIROMI」でも、その胸に迫る鬱っぷりを発揮していました。
が、今回の楽曲では、「片想いが成就した」という、明る設定を歌っています。
こういうシチュエーションって、意外とあんまり見覚えがなく、新鮮です。「告白してOKでハッピー」とか、「恋人として安定期」の狭間、付き合いだしてしばらくの初々しさが、フレーズの端々から漂っています。
憧れの存在だったのに、『目の前にいるあなたが不思議/どうしてわたしと喋っているの?』と戸惑ったり、片想い時代を思い返して『あなたに片想いしてた日々/恥ずかしくなる』と言ってみたり。こういうのって、徐々に二人でいることに慣れてからはきっと、二人で過ごすことに違和感もなくなり、片想いの頃の想い出も薄れてくるのでしょう。まだ不安定な感情なのですが、でも「期間限定」なぶんもあってか、鮮烈な印象を残します。
『好きになってもどうせ叶わない/そう思って諦めてきたの』と歌う「わたし」は、明らかに控えめな性格の持ち主です。しかも、突然の幸せにどぎまぎしたり、過去の自分を恥ずかしく思う一方で『あなたに出逢う前のわたしを/愛しくなる』と言ってみたり、かなり内向性の度合いが高い感じ。
そんな「わたし」にとっての「あなた」の存在は、ただ恋人というだけでなく、精神的な拠りどころとして、ものすごく強い存在であるように感じます。「あなた」と気持ちが辻あったら、白黒の世界がカラフルになり、『生きる意味がわからなくて/歩かされてたみたい』だったのが『でも今は歩きたいの/あなたと…』と思えるようになる。「あなた」に寄せる気持ちの大きさを、ひしひしと感じる言葉が並んでいます。
恋愛感情はもちろん、生きていく力を与えてくれた「あなた」への想い。その大きさ強さを描き出すために、まだ戸惑ったり信じ切れなかったりする「幸せへの慣れなさ」が効果的に作用しているなあ、と感じました。