2007年12月17日

Perfume「ポリリズム」

ポリリズム
ポリリズム
posted with amazlet on 07.12.17
Perfume 中田ヤスタカ
徳間ジャパンコミュニケーションズ (2007/09/12)
売り上げランキング: 230


<立体的なサウンドが織り成す仮想世界>

 NHK・公共広告機構の共同キャンペーンCMに起用されたり、またネットを通じた認知度の広がりもあって、オリコンチャート初登場7位に食い込んできたアイドル界の新星。打ち込み全開で近未来的なコンピュータ系サウンドに、機械的かつ浮遊感ある歌声を組み合わせた楽曲が特徴で、位置づけとしては「テクノポップアイドル」というものになるようです。

 機械的にプログラミングされた音楽であるテクノがベースになっていますが、機械的なのは音だけではなく、声も同じ。ボーカルもまた加工され、感情的な要素を排し、音を構成する一部になっているかのような聴き心地です。
 これ、もちろん実際に加工されてもいるでしょうけれど、元々そうした方向性を狙って歌われているように感じます。歌い方から、ナチュラルな発声ではなく、もっと信号音っぽく平坦な発し方をしているんじゃないかなー、と聴いていて思うのです。
 また、メロディラインも多少そうした方向性を意識しているような。特にメロ部分は、ひたすら4部音符のみで構成されていたりして、「躍動感」を排したようなつくりになっていますし。歌い方も相まって、一音一音があたかも電話のプッシュトーンのように置かれていく、という印象を受けます。コーラスワークも、普通はメロディラインを補強するように沿って動くものですが、ちょっと分離しているような。おかげで、メロディラインの「ライン」っぽさを感じさせない、拡散していくような響きになってきているように感じたり。

 さて、表題の「ポリリズム」とは、一言で言うと、多層的なリズム構成のことを指します。長さの異なるリズムを組み合わせて同時に展開し、複雑で立体的なサウンドを作り上げる手法です。
 曲中でも、この手法が取り入れられています。特に中盤、4/4拍子進行の基本リズムの上に、付点8分音符(0.75拍)のリズムが乗り、さらにメロディラインがひたすら「ポリリズムポリリズムポリリズム…」と8分音符×5(2.5拍)がひたすら繰り返されていく部分が、その不思議なリズム感によって強烈に頭に残ります。曲後半は、エコーなども入ってきて、頭の中がぐるぐるになってきます。クセになる感じ。

 歌詞のほうは、「複合的なリズム」から派生して、「巡る」「繰り返す」というところがキーポイントになっているようです。確かに、ポリリズムで構築されたこのサウンドは、ループ感を満載していますし。
 また、機械的、非感情的な世界観は、サウンドだけではなく言葉にも表れています。たとえば『ほんの少しの 僕の気持ちも/巡り巡るよ』というフレーズ。感情が「ほんの少し」だけあって、それがひたすら巡るという言い方もポイントですし、一人称が「僕」である点も、女性ボーカルが少年視点で歌うときの中性的な印象を出そうとしている感があります。

 そして、『くり返す このポリリズム/あの衝動は まるで恋だね』…サビでも何度も「くり返す」という語が頻出してループが強調されていますが、注目したいのは「あの衝動」という言い方。「この衝動」ではないのです。ちょっとした距離感があるのですね。
 <今/この場所>ではない、<いつか/どこか>の「衝動」。それは、『とても大事な キミの想い』だったり「ほんの少しの 僕の気持ち」だったり、さまざまな人の感情なのでしょう。そしてそれらは、「廻る世界」=「ポリリズム」の中で繰り返され、交じり合っていく…というイメージが、ここから広がってきます。
 まるで、水面に石を落として、生まれた波紋が広がっていき「巡り巡る」のを眺め、感じている…そんな印象を受けます。個人的な感情/感覚を遠ざけ、むしろ巡り交じり合う世界そのものの光景を描写しようとしているように思えてくるのです。 このPerfumeですが、今けっこう注目を集めているようでして。特にその音楽性に関しては、単純なアイドルソングの枠を超え、あちこちで支持され始めているようです。テクノのことはよくわからないですけど、やたらと作りこまれているっぽいよなーとは感じます。
 ただ個人的には、音楽性よりも、「アイドル」という視点からこのユニットを考えることに惹かれます。

 歴史的に見ると、一般的なアイドルでこうした音楽性を持ったグループはいなかったはず。感情を排したパフォーマンスは、80年代後半から人気を博したWinkが先にあると言えなくもないですが、それとはまた全然別種の方向に感じますし。
 コンピュータサウンド+加工された女声、という組み合わせは、ユーロビートやトランスとかにもあったかもしれません。でもそれらは、非日常を感じさせるサウンド作りがしてあるとはいえ、音楽的にも歌詞世界的にもまだ現実的・感情的な内容があったのではないかなと。

 この楽曲は、なんというか非常にヴァーチャルです。その中ではどんな感情も「繰り返す」という設定の仮想世界を構築している、という感じ。これが、たとえば陽が昇り沈む一日とか、春夏秋冬の季節とかが描写されていれば「現実」の世界のことだと感じられるんでしょうけれど、そうじゃない。
 彼女たちの過去作品の歌詞を読むと、今回は特に非現実的な世界が展開されているというだけで、もっと感情をアピールするような楽曲もあるようです。でも、シチュエーションはどれも空想的。現実の感情が先にあるのではなく、仮想世界を設定しその中で感情を生み出している…と、そう感じるのです。

 サウンドメイキングやモチーフだけでなく、歌詞世界の構築方法においても、近未来的・空想的な手法が取り入れられているわけですね。アイドルっていう存在は「偶像」ですしもともとヴァーチャルな要素が強いんですけど、90年代以降はより身近な存在としてアピールする等身大路線が基調にありました。
 そこへ来て、仮想世界に徹するPerfumeの登場は、かなりのカウンターパンチだなあと思うわけです。まあJ-POPチャートだけをなぞっているとそう感じるんですけど、アニソンやゲーソンなど、その裾野は広がる一方の「オタク」界隈あたりでは、きっと数年間に渡り地盤が醸成されていたんでしょう。声優のアイドル化なんて流れもありますし、そうした流れもまた彼女たちの登場と切り離しては考えられなさそうだなあと。


posted by はじ at 03:17| Comment(1) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(は行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 Perfumeの最新アルバム『GAME』が、オリコン初登場一位を獲得しましたよ。
http://www.oricon.co.jp/news/confidence/53959/full/

 Perfumeなどへのプロデュースで、世間の注目度が急上昇中の中田ヤスタカ氏
http://www.contemode.com/ynakata.html
の作る曲は、最盛期の小室ファミリー並みにワンパターンなのですが、それでも人気が上昇している理由は、「サウンドのカッコ良さ」という点も一因だと思います。中田氏が作るテクノサウンドを聴いていると結構気持ちがいいですし、打ち込み系のアレンジを手がけている人ならば、彼の曲は絶対に良い手本になると思います。とにかく、彼の曲は音質の良いオーディオ機器で聴くことを絶対におすすめしますね。

 また、今のJポップ界では、バリバリのテクノサウンドを徹底的に追求しているのは意外と中田氏くらいしか見当たらないので、その点も彼が作る曲が個性的に聴こえる一因なのでしょう。
Posted by 金魚花火 at 2008年04月25日 12:52
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