2007年11月28日

aiko「星のない世界/横顔」

星のない世界/横顔
星のない世界/横顔
posted with amazlet on 07.11.28
aiko Masanori Shimada
PONYCANYON INC.(PC)(M) (2007/08/22)
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<何気ない日々にふと感じる「切なさ」と「愛しさ」/重過ぎない適度な「切なさ」>

 aiko両A面シングルは、どちらも「切なさ」を感じさせる内容。とはいえ、シチュエーションはまったく違います。

 まず、「星のない世界」のほう。こちらは最初は失恋の歌なのかなと考えていたんですが、どうもそうじゃないのかなと。サビだけを聴いたら、<失ってはじめてその大切さに気がついた/あなたとの日々を思い出すと強くなれる>という王道パターン2連続かなと思ったりしたんですが…現在進行中のカップルを歌っているみたいです。

 aikoって、こうしたミディアムテンポのしっとり楽曲が圧倒的に多かったりします。ドラマティックな展開よりも、こうした何気ない心地よさのある雰囲気のものが、彼女自身のモチベーションにもっともしっくりくるのかな、とか思ったりします。
 『昨日より少しだけ多めにあたしの事を考えてほしい』
 『思い出の帰る温かい匂いと共に抱きしめてほしい』
 日々の中で、ふと考えること。当たり前の生活の中にしみじみと相手の大切さや、自分の想いの強さ大きさを切々と見出す…どうもそんな描写になっているようです。

 こうした楽曲のフレーズを読んでいくと、なんというか、「何気なさ」を描き出すのが巧みだなあと感じます。大きな展開があるわけじゃなく、かつしっとりした曲調でも飽きさせないように言葉を繋げられるのは、やっぱり恋愛の細部を描写する彼女のスタイルだからこそ、ではないでしょうか。
 『許してくれるなら』『全部我慢してやっと溢れ出した涙』とあるので、すれ違いやぶつかり合いもこの前にあったのかもしれませんね。そのあたりを明確にしないところも、自然体の「思い」という雰囲気を醸し出しているのかもしれません。

 『星がない世界なら 目を閉じて証明するのに…』
 タイトルにもなっているこのフレーズですが、実はいまひとつピンときていなかったりします。なんか、すごくキレイな言い回しだし、感情もこもっているんだろうなあという一文なんですけど、じゃあ具体的にどういう感情を表しているんだろう?とちょっと考え込んでしまうのです。
 もちろん、そんなのは各自聴き手側で補完すればいい話です。もともと断片的な言葉の紡ぎ方をする人なので、自分なりにシチュエーションを補えばいいんですけど、個人的になかなかぴったりと落ち着かせられないのです。
 「たとえ暗闇の中でも…」と想いの深さを伝えようとする流れだろうなあとは考えつつ、目を閉じるのはなぜだろう?と。いろいろ考えましたが、自分の腑に落ちる解釈が見つかりません。いまのところ、「星がない暗い世界だったら、目を閉じてでもあなたとなら大丈夫なんだと証明できるのに」という、自分の想いの深さをなんとか伝えたいからこその空想なのかなあ、というのがもっともしっくり来るかな? さて、「星のない世界」に比べると、「横顔」はもっと活動的で明るいサウンド。ポップで開放的な音の一方で、シチュエーションは片想いです。

 片想いではあるものの、『起こされた想いは止まらないから躓いても/胸は風を切って』と詞にもあるように、非常に快活で前向きな印象があります。「好き」でいる気持ちが自分自身の活力になっている、そんな描かれ方をしているんですね。だから、アップテンポにも違和感はありません。

 出逢って、話をして、『次は触れたいといつからか願ってた』とエスカレートしていく気持ちや、偶然に助手席に乗ったときに『右肩がくすぐったくて』と意識しまくりな描写などは、さすが。こういう経験ある!わかる!と身に染みて感じる人も多いのではないでしょうか。

 でも、そんな中にはもちろん切なさの香りもあります。『電話が鳴る度に横顔が浮かぶのは/やっぱり少し切ない』のはどうしてでしょうか?これは、正面からまっすぐに顔を見て覚えられるほど近い関係になれていないから、ということでしょうね。
 ただ、「切なさ」の由来は、この「まだ横顔しか覚えられていない」くらいしか出ていませんね。たとえば、「叶わない恋なんだ」という切なさは、ここには漂ってはいません。もちろんそれはまだ知り合いたてだから、なのかもしれませんが、少なくとも相手の「あなた」には特定の恋人がいるわけじゃないんだろうなあ、とは考えられるし、車に乗ったり『電話が鳴る度に』とあるあたり、わりと好感触な感じもしますし…

 あんまり「切なさ」に傾かず、「あなた」をもっと知りたい!というもどかしさ程度にとどめ、全体的には恋の始まりのワクワク感が占めている感じ。ここも、快活な曲調とマッチしています。
 また、『あたしはとても切ない』が最後ではなく『あなたをとても愛しい』で締めているあたりも、メロウさを適度なフレーバーにとどめ楽曲の明るさを損なわない一因になっているなあと。文法的には「あなたを」ではなく「あなたが」が正しいように思えますが…でも、「を」のほうが相手を志向している雰囲気がありませんか?


posted by はじ at 23:47| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。通りすがりの者です。
2ndシングル「ナキ・ムシ」では、きちんと「あなたを愛しいと思う喜びも」と歌ってますので、今回はわざと拙い言い方を使うことで不器用さを演出してるんじゃないのでしょうか。「あなたがとても愛しい〜♪」だと切なさが半減します。
どうでしょう?
Posted by casey at 2008年01月15日 21:56
>caseyさん
はじめまして。遅くなってしまいすみません。
まったく仰るとおりで、「が」ではなく「を」を選んだのはaikoのセンスが為せる業だなあと思います。
彼女の場合、意図的に計算しているというよりも、特に考えず自然とそうしたやり方を選んでいるような気がしてなりません。センスの為せる業だよなあと。
Posted by はじ(管理人) at 2008年01月23日 01:22
http://improvisedcoffee.blog110.fc2.com/blog-entry-17.html
というブログでは、aikoについて、「単純さの底なし沼に自らハマって、ズブズブと沈みながらそのコピー&ペーストの痙攣状態に陥っているように見える」などと書かれていましたね。確かにこの人の楽曲は結構マンネリですね・・・。
Posted by 金魚花火 at 2008年02月02日 14:33
aikoの場合、曲を作るスタイルの問題で、アレンジを奇抜にしてみたり今までにないテーマを追い求めてみたり…ということは、あんまり意味がないしできないと思うのです。
それがマンネリだと感じる人には、そうとしか聴こえないでしょうけれども。
Posted by はじ(管理人) at 2008年02月04日 00:12
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