2007年11月22日

東京事変「キラーチューン」

キラーチューン
キラーチューン
posted with amazlet on 07.11.22
東京事変 椎名林檎 浮雲
EMIミュージック・ジャパン (2007/08/22)
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<人生は「贅沢」なもの・負の側面の自覚・実感を伝えるための表現>

 「OSCA」に続いて、2ヶ月連続でのリリース。そしてどちらも作曲は椎名林檎ではなくメンバーで、今回はキーボードの伊澤一葉が作曲を行っています。

 「OSCA」では作詞作曲ともに浮雲によるものでしたが、今回は作詞だけ椎名林檎自ら手がけています。
 彼女の一般的なイメージだと、旧仮名遣いを使ったりなど独特の表現方法が思い浮かぶ人も多いでしょうけれど、この「キラーチューン」はかなりその点おとなしく、わかりやすい言葉で綴られているといった印象です。むしろ「OSCA」のほうが抽象的・断片的で難しいと感じるはず。
 キラーチューン、というタイトルどおり…まあ彼女の場合もっと深く込み入った意図があるのかもしれませんが、この詞は、積極的に「貴方」に向けた想いを伝えようとしている感があります。『空も恋も騙せないよ/私は貴方の一生もの』なんて、びっくりするほどストレートな告白だったり。

 冒頭の『「贅沢は味方」もっと欲しがります』はインパクト大。「贅沢は敵だ」「欲しがりません勝つまでは」と叫ばれたという戦時中の標語を持ち出すあたりも、それに真っ向から対抗するあたりも、彼女らしいと感じる人は多いのでは。
 で、これも単にインパクトを狙っているだけじゃなくて、その後の『この感度は揺るがないの/貧しさこそが敵』に繋がってきます。どんなことがあっても、(世界へのor「貴方」への)感性をすり減らすことがないように生きていきたい…伝えたい趣旨は、きっとこちらにあるのでしょう。

 さらにこの流れは、その後も別の文脈へと拡大していきます。
 サビ『季節を使い捨て生きていこう』というようなフレーズも、それって「贅沢」な生き方だよなーと感じさせる表現。しかし、考えてみれば、時はどんどん流れるから、人間ってこういう風にしか本当は生きられないわけで。その贅沢さを噛みしめて、留まることなくどんどん「今」を感じて前に進んでいこう…という意味合いが込められているように思えます。
 この感覚は、その後『「今日は一度切り」無駄がなけりゃ意味がない』とも出てきますね。

 また、2コーラス目も『贅沢するにはきっと妬まれなきゃいけないね』と始まります。で、これは実に椎名林檎らしいフレーズだなあと。
 彼女の作風って、たとえば愛を語るときに「独占」したかったり「依存」したかったりと、強い愛情はある種の負の側面も伴うことを自覚していて、それを前提に翻弄されたりあえて引き受けようとしたり…というパターンがあるように感じます。このあたりの感覚も、きっと彼女としては無視できない部分なのでしょう。
 「贅沢する」を「強く深く愛し合う」と置き換えるとするとわかりやすいですね。誰よりもお互いを求め合うということは、その他の人間を疎外する、差別するということでもある。それを自覚し、その上で愛し合おうとする覚悟がここにはあって、だからこそ「私」の強い愛情が浮かび上がってくるわけです。
 ただ「好き」と言い、二人が想い合う素敵な世界をイメージや空想で生み出すことも、歌という表現方法では可能です。でも、彼女としてはそういうことはしたくないのでしょうね。きっちりと生の手触りを持った感覚や思考を表現したいというスタンスなのでしょう。


 椎名林檎の場合、難しいと思われがちな表現の裏には、単純には表現できない/したくない感情を何とか表現したいというような執念めいたものを感じることが多いです。すべてがそうなのかもしれません。難解で読み取れなかったり、うまく解説できないものも多数ありますが…
 で、今回は、かなり明快な中にも、やっぱり一筋縄ではいかない部分と、だからこその奥深さを感じさせるフレーズが多いなあという印象でした。


posted by はじ at 08:55| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(た行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最近の彼女の書く詩には「今日は一度きり」ということを意識したフレーズがよく出てきます。最新アルバム「娯楽」の「私生活」とか、「キラーチューン」の次のシングル「閃光少女」などなど・・・。以前から、そういった刹那的な思考は現れていましたが、最近はそれがポジティブに解釈されている気がします。
Posted by yumi at 2007年11月24日 00:41
>yumiさん
コメントありがとうございました!
なるほど、そういえば「ギブス」でも、写真を嫌ってみせることで「今」の自分を見て、と主張をしていましたよね。一貫しているんだなー。
ポジティブになりつつある、というのも面白そうです。「閃光少女」まだ聴けていないので、チェックしてみますね!
Posted by はじ(管理人) at 2007年11月29日 00:04
はじめまして!PNサンサャンライトと申します。
先日から「現代ポップス考。」を読んで楽しませてもらっています!
本当はこっそり繋がらせてもらおうぞと思っていたのですが・・けど此方ってリンクフリーですよね? 
では貼らせていただきますね。余計な報告すみません。(汗) 
・・かなり阿呆丸出しの文章ですね。自分に呆れます(涙)そしてお前は何の為に書き込んだのか、といいますと
「応援してます」というラブコールです!
林檎の歌詞についてはただ臆測だらけだったのですが、此処のブログのおかげでより興味深く考えることができました。 これからも参考にします!
Posted by サンサャン at 2008年02月18日 15:25
>サンサャンさん
はじめまして。
リンクはご自由に追加してもらって構いませんが、報告していただくのももちろんOKですし、応援してもらえるのは嬉しいですよ。ありがとうございますー。
Posted by 柚木はじめ(管理人) at 2008年02月23日 23:37
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