2007年11月21日

吉井和哉「シュレッダー」

シュレッダー
シュレッダー
posted with amazlet on 07.11.20
吉井和哉
EMIミュージック・ジャパン (2007/08/22)
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<過去を失うこと、消していくことに嘆かない強さ>

 ソロになってから、特に今の吉井和哉名義になってからはどちらかというと内省的でストイックな内容の楽曲を多くシングルリリースしている印象です。が、久しぶりに彼の特徴である「妖艶さ」がぷんぷんと漂ってくるような歌だなーと感じました。
 『あぁそばにいて そばにいて』のような、べったりと湿った語りかけ。『絡み合った 探り合った』と、ちょっとエロティックな香りを感じる表現。言葉の字面以上にえもいわれぬ妖艶さが立ちのぼってくるのは、やはり本人の特質がそうさせるのでしょう。

 とは言いつつも、この歌に込められているテーマの本質は、そうしたエロスの面ではないようにも思えます。「WINNER」がそうだったように、「静かなる強さ」のようなものを感じさせてくる、そう感じるのです。
 たとえば、『神様にあったらこんな風に言うんだ/「どんな目にあっても生きていたいです」』というこのフレーズは、非常に確固とした硬い信念を感じさせます。それでいて、積極的すぎることもない。力強くはあっても、力んではいない、そんないいバランスの上に立っているなあと。
 感動的すぎず、かつ感傷的すぎないフレーズの淡々としたテンションもそうですし、何よりもこの局の中心である『背中のシュレッダー』にも、そんな方向性を感じ取ることができます。

 シュレッダー、というモチーフは、あまり見かけないものです。かつ、たいていの人は、そこに掛けられているのはあんまりいい意味合いじゃないんじゃないか、と思うことでしょう。実際、『楽しかったあの日は/背中のシュレッダーにかけ』と、いい思い出を切り刻んでなくしてしまっていく、そんな文脈で使われています。
 ただ、そこには、嘆きはないように思えます。ま、ちょっとはあるんでしょうけれど、『背中のシュレッダーにかけ/だからかすぐに消えた』と飾り立てもせずに述べる雰囲気には、激しい感情は込められていないように感じます。今までのことを「シュレッダー」にかける=忘れていく/失っていくことに抵抗せず、ただあるがままに受け入れていく…そんなスタンスが表れているんじゃないかなと。

 過去を粉砕していくシュレッダーは「背中」にある、ということもポイントです。この「背中」は、ひとつには「目の前を過ぎ去ったそばからすぐに」思い出は消えていってしまう、ということを表現したかったからかなあと推測します。
 そして、自分の体にくっついていると示すことで、受動的に「消えていってしまう」ではなく、能動的に「消していく」ものなんだ、ということも同時に示しているのでは…と思えるんですね。
 そこに悲哀はありません。余計な感情はありません。自ら過去を消去し、そのうえで、未来を受け止めていく。ひたすらこの繰り返しを受け止め受け入れている、そんな凄みをひたひたと感じます。


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