ケツメイシ
トイズファクトリー (2007/06/27)
売り上げランキング: 7077
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<季節が巡る描写が、オトナな感傷を生み出す>
PVはほとんど蛯原友里のDVDかと思うような、夏らしい爽やかでちょっと感傷的なポップチューン。
ケツメイシは、他の同系統のユニットよりも多少「大人」な楽曲を作るような感覚がありますね。それはアレンジのせいもあるのでしょうが、たとえば来る夏に『君が綺麗になって 戻って来る』というようなフレーズのセンスも、また一因なのではないかなと。
この曲は、『光る髪は 潮風になびく/浴びる太陽 波音に抱かれ』なんてテンプレどおりの描写に溢れた、夏=出会いの季節、恋の季節という図式そのままのサマーチューンです。しかし、そこに登場する人間関係は、少し違っています。
この種の曲だったら、開放感に任せ、闇雲に「誰か」を求めたりとかするのがセオリーですね。不特定の水着の女の子にモーションをかけようとしていたり、あるいはこの夏に新しく出会ったヒロインに夢中になったり…しかし、この曲では、「君」は夏に「戻って来る」という言い方になっているわけです。
ここでの「君」は、特定の人物のように描き出されてはいますが、毎年夏が来るたびに『少し大人になって』いくすべての女性たちのイメージを重ねることもできるでしょう。ただ、どちらにせよ、「僕」は「また君に会える」と、知らない誰かとはじめて会うのではなく、旧知の、再会する相手として「君」を見ています。
ポイントは、見ず知らずの相手ではないこと、そして確かな時の流れを感じさせる表現を多用していること。前者はマジメな恋愛を求める今の世相に合っていますし、後者は『ここへ何度 通ったろう?』『来年も眩しさまた変えて』と、移ろう時間を意識させ、素敵なこの夏も過ぎ去っていくことを暗示し、感傷的な雰囲気を形作っています。
季節の循環を描くことで郷愁や感傷を生み出すのは、大ヒットした「さくら」でも色濃く出ていた要素です。で、こういった手法が、楽曲の精神年齢を引き上げているんだろうなあ、と感じるのです。