2007年09月19日

Gackt「RETURNER〜闇の終焉〜」

RETURNER~闇の終焉~
RETURNER~闇の終焉~
posted with amazlet on 07.09.19
Gackt Gackt.C Chachamaru
NIPPON CROWN CO,.LTD.(CR)(M) (2007/06/20)
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<トリッキーな中にもしっかりと根付いている美学>

 シンプルでアコースティックな「野に咲く花のように」から一転、ハードで重々しいロックサウンドに、響き渡る笛の音。そして、やたらと変拍子が混じる曲の展開と、実に独特の世界が広がっている一作です。

 独自というか、あんまり一般的ではない要素は、メロディラインを見てもいくつか挙げられます。たとえば、Bメロがすべてファルセットになっていて、まるでコーラスのようになっているところ。そして、サビのメロディの作り方も。サビ頭から3小節の旋律が流れたあとに、1小節の空白があるんですね。ここで、サビのメロディが、はっきりとふたつに分かれているわけです。もっとも聴き手に印象づける部分であるサビでこれだけの空白があると、求心力は若干弱まってしまいます。
 ただ、こちらの旋律に関する2点は、歌詞の内容を見ていくと、あえてやった表現なのかなと考えられるのです。

 歌詞は、「もう二度と逢えぬ微笑み」とあるように、おそらくは死別した恋人を想う哀しみに溺れている主人公像となっています。
 死別ってモチーフはわりと容易く深い哀しみを演出することができるのですが、実際にはそうあるわけじゃないもので。なので、濫発しすぎるのは何だかなーと思ってしまいますが、彼の場合はキャラクターがわりと非現実的なので、けっこう許せてしまうというか。PVもサムライなGacktが登場したりと、ファンタジックな世界になっていますしね。

 で、まずBメロのファルセット部分を見ていきましょう。ここの部分の歌詞は『暗闇で叫び続ける貴方が見える/遠過ぎて…』とあります。
 これ、恋人を失って生きる主人公というシチュエーションを考えると、「主人公を彼岸から見守る、死んでしまった恋人」の視線なのかもなーとも考えられるのではないでしょうか。二人称が他と同じ「貴方」なので、そんなつもりはないのかもしれませんが…別の視点からの言葉を、声を変えることで表現している、とすると、全ファルセットでの表現にも納得がいきます。

 さらにサビの空白について。ふたつに区切られた前半の部分歌詞は、『壊れるほど私を強く抱きしめて』という叫びです。ここに込められているのは、今は叶えることのできない悲痛な想い。とても強い感情なわけです。
 先に述べた1小節分の空白は、直前で語られるこの想いの強さを噛みしめる「余韻」として機能しているな、と感じるんですね。次の内容が入ってくる前に、ここでたっぷりと哀しみを聴き手に伝えることにつながっていると思うのです。

 そういうわけで、一般的ではない要素が多数盛り込まれたこの楽曲ですが、キャッチーさよりも表現したさを優先する、美学のためにやっていることなんだろうなあと感じます。


posted by はじ at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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