2007年09月12日

DREAMS COME TRUE「きみにしか聞こえない」

きみにしか聞こえない
DREAMS COME TRUE 吉田美和 中村正人
ユニバーサルJ (2007/06/13)
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<想いを伝える「声」は、真摯なままに拡散していく>

 小説「Calling You」の映画版、「きみにしか聞こえない」主題歌。タイトルからもわかるように、映画のために作られた曲のようですね。

 タイトルにもなっているフレーズ「きみにしか聞こえない」声は、『きみの名前』を呼ぶ声です。「呼ぶ」ということは、『声を上げて 泣くことも』その他いろいろなことを教えてくれた「きみ」は、今は離れた場所にいるということですね。そして、『呼び続けている』のは、きっとまだ「きみ」のことが愛しくて忘れられないからなのでしょう。

 ただし、気をつけたいのは、この「声」は決して「君」だけへのものではない、ということです。
 『きみにしか聞こえない この声は今でも』とあるように、現時点では「この声」は「きみ」だけへ向けられた、他の人には届かない声です。でも、その後では、『この声がこれから/誰かに届いたら ねぇ見ていてね 繋がるように』とも言っています。今は「きみの名前」を呼ぶ「きみにしか聞こえない」声ですが、他の誰かに届く可能性も考えているわけです。

 つまり、この「声」は、「きみ」だけを想い愛する気持ち、ではないのです。もっと広い、誰か人を愛しいと感じる気持ち、くらいの意味合いではないかなと想像することができます。
 心が震えるような気持ち。名前を繰り返し叫んでしまいたくなる気持ち。そんな気持ちが「声」になって「きみ」に届いたからこそ、『誰かを思う/すごく大切なことを』知ることはなかった。そして、「きみ」を思い、離れた今もまだ気持ちは「きみ」から動いていない。でもいつか、誰かに届く日が来るかもしれない…というのが、詞の大まかな流れと考えていいと思います。 さてこの曲、構成が少し不思議です。サビ…というか、もっとも主要な部分と思われるまとまりが冒頭に出てくるのですが、これが3回繰り返されます。その後変化があり、もう一度戻ってきて、最後はコーラスとともに盛り上がっていく部分で終わる。図式化すると、A→A→A→B→A'→C、という形になります。
 この構成は、おそらくは「何度も『きみ』の名前を呼ぶ」というこの楽曲の中心部分を意識しての組み立てだろうと感じます。繰り返しながらだんだんと盛り上がっていく様子は、ただ曲を膨らませる演出というだけではなく、呼び続ける思いの真摯さを聴き手に印象付けることができるのです。
 ちなみに、ドリカム最大のヒットにして代表曲である「LOVE LOVE LOVE」も、似たような構成になっていましたね。図式化するとA→A→A→B→C(ほぼA'的な進行)→D(コーラス付き)。こちらもまた『ねぇ』という呼びかけを繰り返し、「愛してる」想いを深々と印象付けられるというような内容でした。

 で、今回もラスト、コーラス付き部分でのアドリブが素晴らしい。たいへんドリカムらしい、力強いボーカルが堪能できます。
 ここまでに、まず繰り返し「きみ」への気持ちを繰り返すことの強い印象付けがありました。今現在の主人公にとっては「きみにしか聞こえない」誰かを愛しく想う気持ちです。それは、いつかは別の誰かに届くかもという想像も間に挟みながら、このラストにきて、一気に広がります。
 主人公から発する「声」だけではなく、『誰かに届いてる きみの声は』と「きみ」が発する声、そして『誰かが答えてる』声もまた、歌詞に登場してくる。主人公から「きみ」へだけ呼びかけていたのが、誰かが誰かを想う「声」すべてにまで広がっていくのです。
 ラストの大きな盛り上がりには、構成やアレンジ、ボーカル力だけでなく、歌詞展開もまた非常に効果的に彩を添えているなあ、と感じた次第です。


posted by はじ at 03:49| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(た行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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