2007年08月26日

吉井和哉「WINNER」

WINNER
WINNER
posted with amazlet on 07.08.26
吉井和哉
EMIミュージック・ジャパン (2007/05/23)
売り上げランキング: 1617


<強すぎない呼びかけ、漂う静かな強さ>

 昨年にはオンライン配信のみで楽曲の発表を行っていたとのことですが、通常リリースのシングルとしては、かなり久しぶりの登場となる吉井和哉の新曲。サッカー映画「GOAL!2」日本語吹替え版の主題歌で、前向きで勇気をくれる内容となっています。

 とはいっても、普通のメッセージソングとはどことなく違う味わいが、至るところから垣間見えます。
 たとえば、『君の勝利は自分で勝ち取れ』あたりの「いかにも」な言葉もありつつ、過剰に希望を煽ったりはしていないところとか。「きっとできる」とか「自分がついている」とか、そうした呼びかけはありません。『走れこのままじゃ何も変わらない』と煽ったり、『いつか笑い飛ばせますように』と祈ったり、それくらいのものなんですね。
 夢を抱かせるのではなく、不安を和らげたり、発奮を促したりする言葉ばかりなのです。

 「できる!」「頑張れ!」という応援は、誰にとってもわかりやすいメッセージです。でも、それを根拠もなく、外側から言われるのはイヤだ、という人もいます。そういう人にとっては、この曲の放つようなメッセージのほうがきっと耳に響きやすいのではないでしょうか。
 それほど大きな盛り上がりには繋がりませんが、静かな強さを感じさせる内容になっているなあ、と感じるのです。

 オリジナリティがもっとも発揮されているなと感じるのは、『笑顔がキレイな/君の裏側こそが美しい』という、ここでしょうか。
 人は誰も笑顔だけでは生きてはいけません。楽しそうな表情を作ってみせる、そんな作為に自己嫌悪の念を感じてしまう人は多いのではないかなと。でも、笑顔の「裏側」を掬いとってあげるこのフレーズは、そんな自己嫌悪にもすっと光を照らしてあげられるのですね。

 そして、象徴的なのは、『走れ止まらずにこらえるんだWINNER』の一文。メッセージを投げかける相手を、「WINNER」=「勝者」と呼んでいます。つまり、「勝利」は遥かな目標ではなく、前提としてすでにあるんですね。勝つために走るのではないんです。
 すでに勝っている、だから苦しくても止まらずに走り続けるんだ…得られるかどうかわからない「勝利」を目指させるよりも、先に勝者と呼んでしまうことで、まず確かなものを聴き手の意識に植えつけ、それを糧にさせているわけですね。あるいは、止まらずに走り続けるものこそが勝者なのだ、というメッセージなのかもしれません。
 いずれにせよ、誰もが確実に「WINNNER」となることができる、その可能性を充分に持ったメッセージになっているなあと。

 ファルセットを多用しつつ、全体的に緩やかなメロディラインもまた、この曲の持つ密やかな強さをほんおり香らせることに一役買っているなあと。暑苦しくなく、イケイケでもありませんが、確かな前進をもたらしてあげられる歌なのではないでしょうか。


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