2007年05月30日

宇多田ヒカル「Flavor Of Life」

Flavor Of Life
Flavor Of Life
posted with amazlet on 07.05.30
宇多田ヒカル Alexis Smith 冨田謙
東芝EMI (2007/02/28)
売り上げランキング: 687


<質感のある描写の中で、シリアスさと遊び心が溶け合う>

 感情のこもった(そして奇をてらっていない)詞、親しみやすいメロディライン。ひさびさにパブリックイメージど真ん中、「宇多田らしい」楽曲をリリースしてきました。メロウなアレンジと表情豊かな声に浸ることができる佳曲ですね。こういう曲をさらっと出してくるあたりはさすがだなーと。

 メロディラインは、ほぼ2オクターブのとても広い空間を自由に動き回っています。メロは女性としてはかなり低い位置まで潜っているんですが、その分『収穫の日を夢見てる』からぐっと『青いフルーツ』に昇るのが印象的。
 この「青いフルーツ」という表現は、友達以上恋人未満の関係にある自分自身を喩えているわけですが、オトナっぽい言い方ですよね。これってやっぱり「熟れた」状態を知っているからこそ出てくる言葉だろうと。青いフルーツなんて言葉自体は青春真っただ中な感じですけど、そんな頃を見つめる視点で描かれているなあと。

 タイトルについてもそうで、恋愛の一歩手前で踏み出せずにいる純情な等身大の少女そのままの感覚では、初々しく描かれるひとコマひとコマを『淡くほろ苦い/Flavor Of Life』なんて総括した視点では言えないと思うんですねー。初恋のような気恥ずかしい切なさを感じさせつつ、視点はすごく冷静でオトナっぽい。これは「First Love」でもそうでした。

 『さようならの後に消える笑顔/私らしくない』とか心理描写が巧いのでなかなか気がつきませんが、宇多田ヒカルの詞はどこか客観的な視点から描かれているフシがあって。
たとえば「Traveling」では恋人に会いに行く浮き立つ気持ちをすごくコミカルに描いていたり、どこかで演出があるんですよね。今回も、切ない感情を炙り出す中に『じれったいのなんのってbaby』みたいな、ちょっと軽い言葉もすっと混ぜ込んでいたりして。作者自身が曲の主人公に完全に没入してしまうと、どうしても重くなりこういうフレーズは出てこないものです。
 こうした遊び心を含んだ演出こそが、彼女の最大の魅力だなんて個人的には思っていたり。そして、生々しい描写と雰囲気のあるボーカルがあるからこそ、シリアスもユーモアも自然に一体となって迫ってくるのだろうなと感じるのです。

 原点回帰・王道のようでいて、アレンジは最近の深めの響きがしますし、節々にはユーモアも感じさせます。スキのない出来だなあと思いつつ、スキのある曲をぽんと出せるのも彼女ならではなので、まだまだ遊び心のある曲も作っていってほしいものです。


posted by はじ at 02:50| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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