2007年05月26日

中島美嘉「見えない星」

見えない星
見えない星
posted with amazlet on 07.05.25
中島美嘉 長瀬弘樹 羽毛田丈史 尾崎豊 Tomi Yo
ソニーミュージックエンタテインメント (2007/02/21)
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<再会を心待ちにする、切なくも甘い「寂しさ」>

 映画「NANA2」主題歌「一色」でNANAとしての活動に区切りをつけた中島美嘉、再び原点とも言えるシンプルなバラードに戻ってきました。

 彼女のバラードは「WILL」だったり「雪の華」だったり、なんだか壊れそうな雰囲気があるものが印象深いですが、今回もその系統。昔はかなり危なっかしいな…と感じていましたが、最近はこれが味なんだとわかったこと、そしてもっと安定して聴こえるようになったので、繊細な音楽として耳に入ってきます。
 この不安定さは、少なくともこの曲に関しては、メロディラインとコードの対応の不安定さに一因があります。彼女の曲はセブンス以上、4音以上ある深い響きの和音構造になっている率が高く、さらにはサビ頭の『立ち止まり見る星のない空』の前半なんかは、その深いコード構成からも外れた音でメロディが動いていて、なんともいえない浮遊感が生じていたりします。リズムはそこまで砕けてはいませんが、響きだけならジャズに近いセンスがあるんですね。

 で、詞も今回はなかなか面白い。
 『寂しさ共感(わか)り合えた人より/こんな寂しさくれるあなたが 愛しい』
 現代J-POPにおいては、「孤独を分け合う」という関係が何かと描かれがちです。傷ついていた自分に手を差し伸べてくれたとか、あなたといると不安な気持ちが溶けていくとか、まあそういった類のフレーズを、きっとどこかで聞いた覚えがあるはずです。
 「寂しい」気持ちをダシに使うのではなく、あえて肯定してみせる。共感できる関係が何かと持てはやされるポップス界隈にぽんと放り込まれたからこそ、斬新さを感じさせられます。
 安心でなく、不安をもたらしてくれるからこそ、大事な相手と感じる。心を揺さぶられているのだから、と思えば、確かに説得力があるように感じます。実際、よく考えると、安心も不安も両方とも抱えるものなんじゃないかなあという気もしますが、かなり印象的なフレーズになっているので、これは素直に見事です。

 そんな、会えない間の不安を表現するのに、「星の見えない夜空」を持ってきているわけですね。
 確かに輝いているはずなのだけど、闇の中に紛れて見えない。…それはとてももどかしいものではありますが、でも、「そこにある」という感覚が前提にあることを忘れてはいけません。何が言いたいかというと、この曲の寂しさは、片想いの寂しさではなく、両想いゆえの寂しさなんだ、ということですね。
 すでにパートナーである二人。離れている間も心は繋がっている(=星は空にある)のだと思えはするけど、姿が見えないとつい寂しくなってしまう…そんなバランスが、実は背後にあるんです。
 「星が見えない」といっても、そこにある寂しさは絶望感に繋がるものではありませんし、孤独に打ちひしがれるわけでもないのです。「私」が『どれくらい会えない時間を/また埋められるだろう』と考えているとき、その想像は、やがて必ず訪れる再会の瞬間を思い描き、甘い感情に包まれているはずなのです。
 この曲の寂しさは、どこか心地よくすらある、スイートな寂しさなんですね。


posted by はじ at 03:09| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(な行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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