Mr.Children Kazutoshi Sakurai
トイズファクトリー (2007/01/24)
売り上げランキング: 23440
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<嘘と偽物だらけの世界で、それでも前に進んでいこうとする強さ>
「しるし」という壮大で感動的な作品の後にリリースしたのは、ダークで尖ったサウンドに乗った、『すべてはフェイク』など、後ろ向きとも感じられる言葉の並ぶ楽曲でした。
遠くは「マシンガンをぶっ放せ」、そして「ニシエヒガシエ」「掌」あたりを想起させるこうした曲調は、最近の人間肯定路線からは離れてはいますが、しかしこれもまたミスチルらしいものではあります。
そして、近年のポジティブなメッセージから、ただ奇をてらって反対方向に揺り戻してみた、というわけでもないのではないかなと。つまり、一見後ろ向き、否定的ではあるものの、そこには以前のような苦悩や諦めは感じられないなあと。
『言ってしまえば僕らみんな 似せて作ったマガイモノです』
「フェイク」「マガイモノ」「上げ底」「偽者」「嘘」…隠したりごまかしたり、そんなキーワードがごろごろと出てきて、いかにも負の感情に彩られた内容なんだと思ってしまいがちです。
しかし、そうした「フェイク」を肯定することは、イコール諦めなのでしょうか。自分には、どうもそうは感じられないのです。確かに斜に構えてはいるものの、それは後ろ向きな姿勢なのでしょうか? 大事なのは、いやな感情で満たされてしまう自分への嫌悪感から『苦肉の策を練ってなんとか今日を生きてるよ』とする態度であったり、ダメなことだらけで何度やり直しても『まだ自分を嫌いになれずにいるみたいだ』と感じたりする気持ちであったりなのではないでしょうか。どんなに自分や世界に負けても、騙されても、それを必死で乗り越えようとする姿こそが、この楽曲で描きたかったことなのではないでしょうか。
『この手が掴んだものは またしてもフェイク』だった。世界なんてそんなものだ、本物なんてありはしないんだと絶望してみせながらも、その『世界中にすり込まれている嘘を信じていく』、つまり「フェイク」ばかりの世の中をそれでも肯定し、生きていこうとする。そんな強い意志を感じさせます。
これはやはり、「箒星」や「しるし」といった、込めるべきメッセージをゆっくりと前に進めているミスチルの成長とみて然るべきなんじゃないかな、と考えるわけなのです。