2007年03月21日

KAT-TUN「僕らの街で」

僕らの街で (通常盤)
僕らの街で (通常盤)
posted with amazlet on 07.03.21
KAT-TUN 小田和正 MA-SAYA 江上浩太郎
ジェイ・ストーム (2006/12/07)
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<明確な答えのないつぶやき、だからこそ生まれる空気感>

 小田和正の提供曲ということで話題を呼んだ、KAT-TUNの3枚目のシングル。
 聴いているだけで本人の声が響いてきそうなくらい、いたるところに小田和正らしさが溢れていると感じるのは自分だけではないはず。サビの入り『やがて いつからか』とか、『はじめて 君を 見つけたあの日』あたりは「いかにも」というメロディワークですし、アレンジ面は多少考慮されて賑やかめになっているような気がしますが、やっぱり本人が歌ってもそう違和感がないくらい。

 なので、小田和正が自らの持ち味を生かした楽曲を提供して、それがKAT-TUNに合っている…というよりも、そもそも小田和正自身の生み出す楽曲が驚くほどKAT-TUN世代そのものだった、ということが確認できた一曲だよなーというか。少なくとも小田和正側には、無理して合わせたという感じはしないです。59歳にしていまだその少年性は現役そのものということで、いやはや。


 で、問題はそんな少年性を受け取るKAT-TUN側。わりと賛否両論はあったようです。
 前までの2曲とは明らかに方向が違います。また、コンセプト的にジャニーズの中でも非優等生的、斜に構えたカッコよさを打ち出していくのかなあという印象があったので、ぐっとメロウなこの楽曲はなかなか意外ではありました。小田和正に任せる時点でこういう曲想になるのは考えていたはずですが。

 この曲、曲想だけではなく、詞においても大きな特性があります。これが賛否の「否」を唱える人たちの違和感にも繋がっているんじゃないかなと。
 「僕」と「君」の出会いを通して、街の中の自分を意識し、とりとめのない物思いにふける。青くやるせなさを感じさせる雰囲気に満ちていながら、そこに明確な方向性、メッセージは示されていないのです。
 『僕らは なんだか 急ぎすぎている/大切なことさえも 忘れるくらい』
 『誰も 僕らを決して 認めはしないだろう』
 『確かなことは きっと どこかに あるよね』
 などなど、「僕」の思い浮かべること、「君」に話しかけることは、今の自分たちの不安定さについてが多いです。しかし、そんなつぶやきは、どこにも向かいません。「もっとゆっくり生きてみよう」とも、「認めない連中なんかほっといてがんばろう」とも、「確かなことを探しにいこう」とも、ポジティブなメッセージには結びついていかないのですね。
 これは大きなポイントです。「夢」ははるかに遠く、その近くに行けることすら『でもそれは まだ ずっと 先のことみたいだ』。夢との距離感も感じてしまいつつ、不安定な「今の自分」への自覚は、どこにも着地点を持たないままに、『突き抜ける 青い空が ただ 続いていた』とイメージの中で宙に浮いたままに締められていくのですね。

 最近のJ-POPの歌詞は、おしなべて「結論」のある曲が多数を占めています。夢に向かう曲、絶望から立ち直ろうとする曲はもちろん、ラブソングも失恋した曲さえも、よりよい自分になるためや相手との関係を改善していくためにこうしていこう…というスタンスが曲中で示される歌ばかりという印象がありまして。
 だから、せいぜい『今の自分を 信じていたい』という願望がちょこっと垣間見えるくらいのこの楽曲は、特にイマドキの十代リスナーなんかにとっては違和感を感じる人も多いのではないかなあと思うわけです。しかも彼らはジャニーズ。自分たちに向けてのメッセージを期待しているファンも多いことでしょうから、そんな願いが「すかされた」ような、宙ぶらりんな感じになってしまった人もいるのではないかなと。

 とはいえ、最近の傾向もあって浮いて見えることはあるでしょうけれど、そもそもこうした「明確な答えを出さない」楽曲は決して悪いものではなく、むしろ今、少なすぎるようにも個人的には感じます。歌って、別にメッセージが必須条件ではないわけですから。
 どこか胸を締め付けるようなこの曲の空気感は、明確に方向を導き出さずにぼんやりと「今」を考えているからこそ、生まれているものです。無理やり結論めいた言葉をつけてしまったら、きっと全体の曲想が台無しになってしまっていたでしょう。
 「この曲、結局何が言いたいのかわからない!」という不満を感じている人は、ぜひこの曲の雰囲気、つぶやきの行間を想像して楽しむことも考えてほしいなあと思うのです。 ジャニーズにおいて、一転してメロウな方面に傾いたシングル曲といえば、SMAP「夜空ノムコウ」を思い出します。
 あれもまた、不安定な「今」に対するとりとめのないつぶやき、明確な答えの出ない(まま明日になってしまっていく)内容で、そう考えると今回の「僕らの街で」と、とてもよく重なってきます。

 それまで賑やかなパーティーチューンだったSMAPの楽曲は、「夜空ノムコウ」のヒットで転機を迎え、以後、その後のシングル曲の多様化につながり、幅広く支持を受けるようになっていきました。
 今回のKAT-TUNも、そんな「夜空ノムコウ」と同様、今後の多様化を見据えての投入だったのではないかなあとも思うのです。3枚目にして転機とはちょっと早いですが、それだけ今後を期待され重要視されていることの表れかもしれません。


posted by はじ at 18:37| Comment(5) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この曲は、イントロのギターのフレーズからして小田和正の曲であることがわかりますからね。そういえば中島みゆきが作ったTOKIO「宙船」も、作曲者の歌声が聴こえてきそうな曲でしたね(笑)。
Posted by 金魚花火 at 2007年03月21日 21:59
小田和正にしろ中島みゆきにしろ、個性がはっきりある人ですからねー。しかも、どちらもその個性がそのまま出てますし。提供がうまくいった好例ではないかなと。
Posted by はじ(管理人) at 2007年03月23日 01:59
以前メールでも紹介しましたが、TOKIOの次のシングルは甲斐よしひろ作詞作曲らしいですね。こうなってくると、次はユーミンや井上陽水あたりがジャニーズ系に楽曲提供かな・・・?
Posted by 金魚花火 at 2007年03月23日 06:42
まだもう少しこの流れは続きそうですね。
ただ、やっぱり中島みゆきにしろ小田和正にしろ相性とコンセプトが第一でしたから、そこを踏まえずに話題性だけ狙ってビッグネームをとっかえひっかえとかにならないといいなーと。

一方ではzoppのような新進作詞家も今のってますしね。バランスよくやっていくのが一番ではないでしょうか。
Posted by はじ(管理人) at 2007年03月24日 10:19
作詞家のzoppさんは「青春アミーゴ」以降はジャニーズの主要作家陣になりましたからね。

・本人のブログ→
http://yaplog.jp/zopp/
Posted by 金魚花火 at 2007年03月25日 08:48
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