2007年03月19日

倖田來未「Cherry Girl/運命」

Cherry Girl/運命
Cherry Girl/運命
posted with amazlet on 07.03.19
倖田來未 Kumi Koda Andreao“Fanatic”Heard The Conglomerate Masaki Iehara
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ (2006/12/06)
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<攻めも受けもこなす、「現代の女性」の旗手>

 倖田來未の形容としてすっかり認知された「エロかっこいい」という言葉。それは、当初は間違いなく男性に向けてのアピールがあってのことでした。そうでなければそれまでのR&B路線からは予想もつかない「キューティーハニー」のカバーなんて出しませんよね。
 ただ、この曲のヒットによって倖田來未の人気が上昇してきてからは、彼女の「エロさ」アピールは違った意味を持ち始めます。男性の欲望に忠実な繋がれたエロさではなく、不敵に煽り誘惑する、「オンナ」を武器に男を手玉に取る…そんな「かっこいい」女性像として、同性からの支持を急速に集めるようになっていったんだろうなあと。
 なので、「エロかっこいい」とは、男性のためにある言葉ではなく、女性のためにある言葉なのだと思っているわけです。

 なんでそんな話から入るかというと、両A面のうちハードなほう、「Cherry Girl」に、『そして男ってロデオを/うまく乗りこなさなきゃ』あるいは『今は女が強いんだから』というようなフレーズがあったからで。
 対等な関係を宣言し、そして強気に攻めていくアグレッシブなスタイルが、ずんずん迫りくるようなサウンドに乗って提示される。それはひとえに世の「強い女性」の象徴として、倖田來未本人のキャラクターに重なって、同性にとっての憧れに映るのだろうなあと。

 『周りの目を気にしていたら/ちいさい女で終わりだから』というのも、やはり同性に向けての訓示。『そんなこと…なんて女でもいいのよ』という意味深な言葉も、男性への誘惑のようではあるものの、『やりきればね』と続くことから、これも女性に対する投げかけだったりするわけで。
 扇情的でありながらも、決して男には媚びない、『使われないように』する。男女平等の精神が浸透してきている昨今、「性」を意識することを避けるフェミニズムとはまったく違う、「性」をあけすけにアピールする方向で、女性の精神的な解放の旗手になっているのが倖田來未という存在なのかもしれません。


 …と言いつつ、もう一曲「運命」のようなバラードになると、途端に古典的な「女性らしい想い」を歌い上げるのが彼女でして。
 『遠くにいても 支えたいと/心からそう願うから』と「支える」存在であることを希望したり、そもそも二人の出会いを「運命」として信じたかったり。「Cherry Girl」とはほぼ別人のようです。

 や、どっちがいいとか悪いとかっていう話をしたいわけではないですし、また、一貫性がないと非難したいわけでもないです。
 「エロかっこいい」という、強い女性のひとつのあり方として記号化された表現のもと人気を得た…という文脈でも倖田來未を語ることはできますが、彼女の歌詞ってどちらかというと、ナイーブな乙女っぽい部分、受け身な姿が多かったりするのです。で、それもまた彼女らしさであるわけで。このギャップが、さらに広く同性の共感を呼ぶのに一役買っているんじゃないかな、とは前にも書きました。
 ま、でもこの曲でも『君のこと包み込み/今すぐ抱きしめるから』『守るべきものを』など、相手よりも強くあろうとする姿が描かれていたりもします。ただこれ、主人公が少年という可能性もあるので、一概には言えません。


posted by はじ at 23:50| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
倖田來未が本当にやりたい音楽は、「恋のつぼみ」のようなアイドル風の曲などではなく、この「cherry girl」や最新曲「BUT」のような洋楽志向の楽曲なのではないでしょうかね?もっとも、こういった洋楽志向の曲は日本では一般ウケしにくいですけどね。
Posted by 金魚花火 at 2007年04月06日 15:53
>金魚花火さん
音楽的にはそうなのかもしれませんねー。ヒットする前はずっとそういう曲を歌っていましたしね。
ただ彼女の場合、自作の歌詞がどちらかというと少女漫画的で、J-POPらしいなーって感じることのほうが多かったりするんですが。
Posted by はじ(管理人) at 2007年04月11日 00:36
 「考えるヒット2」(近田春夫:著、文春文庫)という本の中に著者の近田さんと作詞家・作家の阿久悠さんの対談(1998年)が載っているのですが、この中で阿久さんは面白い指摘をしていますね。小説や映画は金を払った人しか内容を知ることができないけれど、音楽の場合はCDを買わなくても街角などで聴こえてくるものである。阿久さんが作詞家として活躍していた1970年代では、レコードが30万〜50万枚売れれば御の字、100万枚も売れたらまさに国民的ヒット曲で、レコードの売り上げ枚数の数十倍〜数百倍もの数の人達が「今こんな曲が流行っているんだな」ということを知っていた時代だった。ところが、90年代に入ってミリオンセラーが続出したけど、それらの曲を知っているのは主に若い人達でしかない。もしかしたら、今では200万枚売れた曲は、実はCDを買った200万人くらいしか知らないんじゃないか・・・という趣旨の発言をしていましたね。

 これを読んで思ったのですが、実は倖田來未の人気にもこの阿久さんの指摘が当てはまるのではないか?という事ですね。例えば彼女は12週連続シングルリリースという前代未聞の企画を行い、それらのシングルをまとめたアルバム「BEST〜second session〜」は176.9万枚売れました(オリコン推計)。他の主な女性人気アーティストの最近のアルバムセールスと比較すると、浜崎あゆみ「(miss)understood」が87.7万枚、大塚愛「LOVE COOK」が83.2万枚、宇多田ヒカル「ULTRA BLUE」が89.5万枚、中島美嘉「BEST」が113.9万枚であることを考えるとまさに大変な数字ですね。ところが、これほど売れているのにもかかわらず、12週連続シングルのうち何曲知っているのかと聞かれたら、CDを聴いた人以外はほとんど知らないわけなのですね(ちなみに12週連続シングルのうち一番売れたのは「you」の19.0万枚、「No Regret」の13.1万枚でした)。まさにCDを買った約200万人くらいしか彼女の楽曲は知られていない、まさに約200万人のみの閉じられた世界だといっても過言ではないかもしれませんね。だいたい12週連続シングルと言っても、その奇抜なCDリリース手法ばかりが話題になって、肝心の楽曲そのものはあまり話題になりませんでしたからね。だから、「これからは浜崎あゆみではなく倖田來未の時代だ」という芸能メディアの宣伝や、「12週連続でシングルを出すと言うなんだかすごいことをやっているな、どんな曲なのかちょっと聴いて見ようか」という感じでCDを買った人がほとんどのような気がします。
 
 もっとも、このアルバム以降に出された「恋のつぼみ」「4 hot wave」「夢のうた/ふたりで・・・」といったシングルはいずれも30〜40万枚前後のセールスを記録し、「恋のつぼみ」では着うたが200万ダウンロードを記録するなど、彼女の楽曲の世間への浸透度は高くなったのだけれど、昨年末に出たアルバム「Black Cherry」は94.3万枚と、前2作のベスト盤よりセールスが半減しているのだから奇妙なものですよねえ。
・シングルセールス→
http://www7a.biglobe.ne.jp/~yamag/kodakumi.html
・アルバムセールス→
http://www7a.biglobe.ne.jp/~yamag/al_kodakumi.html

 以前から書いているように、確かに彼女の歌手としての実力は認めるのだけど、なんか今の人気に違和感を感じる理由は、彼女の人気が楽曲そのものの評価よりも、所属レコード会社によるメディアを総動員した「売り方の技術」に支えられている面が大きいということと、あと、彼女の音楽がCDを買ったリスナー以外にはあまり広がっていないということもあると思いますね。
Posted by 金魚花火 at 2007年04月14日 16:29
>金魚花火さん
長らく放置してしまって申し訳ありません…
音楽というものは、はじめは「みんなで聴くもの」だったのが、「それぞれが同じものを個人で買って聴く」に、そして「それぞれが違うものを聴く」というように変遷してきているような気がします。
自分は、それは決して衰退ではなく、自然な変化だと感じているのですけれど。

>「12週連続でシングルを出すと言うなんだかすごいことをやっているな、どんな曲なのかちょっと聴いて見ようか」という感じでCDを買った人がほとんどのような気がします。
…なのかどうかはわかりませんが、大きな話題になったことが、倖田來未の連続リリースを支えていたことは疑いないでしょうね。また、「エロかこいい」というキャッチフレーズも。

「話題性に左右されず、いい曲が売れるべき」みたいな主張をする人もいますが、本当にそれを100%実現するのであれば、リリースされる楽曲はみんな匿名にならざるを得ませんし、人の評判も聞くべきではありません。それができないのであれば、評判や知名度が売り上げに影響してくるのは当然ですし、それを利用した販売戦略が練られるのも仕方がないよなあと。
Posted by はじ(管理人) at 2007年06月07日 23:26
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