2007年02月25日

宇多田ヒカル「ぼくはくま」

ぼくはくま
ぼくはくま
posted with amazlet on 07.02.25
宇多田ヒカル 冨田謙
東芝EMI (2006/11/22)
売り上げランキング: 2957


<言葉遊びのセンスをゆる〜い童謡に取り入れる>

 テディベアのぬいぐるみをプレゼントされた際にできたのが、「みんなのうた」に提供することにもなったこちらの楽曲。

 ひたすら「くま」を連呼するこの童謡めいた内容は、今までの宇多田ヒカルのキャリアとはまったく異なるアプローチです。よく言えば柔軟性のなせる業、悪く言えばお遊び要素ですね。とはいえ実はなかなか凝っているなーと思わされる部分もちらほらあったりもしまして。 

 『くるまじゃないよ』とか『くま 九九 くま/ママ くま くま』、あるいは『夜は「おやすみ、まくらさん」』などなど、言葉遊び的な向きが強いです。言葉遊びはマザーグースを引き合いに出せばわかりやすいですが、語感、発音の妙を楽しむもので、意味や内容は二の次だったりします。
 とはいえ単なる言葉遊びに留まらず、『歩けないけど踊れるよ/しゃべれないけど歌えるよ』と「くま」のキャラクターへの肉付けも混ぜ込んでみたりして。この辺りはおそらく「動かして遊んでもらう」ぬいぐるみの特性を面白く表現してみているのかなーと。 続いて、エセ音声学的な分析をしてみましょう。
 「くま」というなんでもない2語の単語。「ku」という発音は、口をすぼめる「u」の母音の中でも特に口を狭くして出すもので、対して「ma」は口を広く開ける「a」の母音。ついでに言えばマ行の音はいったん唇を合わせてからでないと発音できない音。…つまり「くま」という単語は、発音の点から見ると非常に差のある2音を組み合わせてできているのです。
 このことを意識して「くま くま くま」と連呼してみましょう。すごく口を動かす必要があることに気がつくはずです。この発音の面白さも、「言葉遊び」の一環としてとても魅力的な要素だったのではないでしょうか。

 出だしの『ぼくはくま くま くま くま』というフレーズを突然思いつき、それで作った…という話ですが、これは実際ほんとなんだろうなと。上記のように、「くま」の発音の面白さが、緩いスイングのリズムに乗って心地よく響く。『くるまじゃないよ』と言葉遊びがまず来て、それからキャラクターの掘り下げをおまけ程度に…という一連のゆる〜い楽曲作りの流れが想像できます。

 宇多田ヒカルはもともと言語感覚が鋭敏で、今までの楽曲でもわりと言葉遊び的要素は盛り込まれていましたし、その意味では完全異色作な今回も「らしさ」は出ているなあと感じます。
 緩い作りのせいもあるんでしょうが、間奏がちょっと変則的なリズムだったり、変拍子が挟まっていたりして意外と歌いこなすのにコツがいったりしますし。


posted by はじ at 03:11| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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