2007年02月23日

チャットモンチー「シャングリラ」

シャングリラ
シャングリラ
posted with amazlet on 07.02.22
チャットモンチー 高橋久美子 福岡晃子
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<ポジティブじゃ物足りない、負の感情さえも巻き込んで暴れまわる強い衝動>

 個人的に大注目しているチャットモンチーの、アニメ「働きマン」エンディングテーマになったシングル。

 タイトルにもなっている「シャングリラ」は、「理想郷」を意味する言葉です。曲中で繰り返し放たれるし、それだけでなく、手前で拍子を1拍余らせ一定のリズムをわざと崩すことで、余計に印象づかせてもいます。
 しかし、これは楽園のような「どこか」を明確に目指している歌ではありません。『僕らどこへ向かおうか?』と、進む道さえも、いやその前に「君」と二人で共に進んでいけるかさえ、かなり不安だったりします。

『夢の中でさえも上手く笑えない君のこと/ダメな人って叱りながら愛していたい』
『君を想うと今日も眠れない僕のこと/ダメな人って叱りながら愛してくれ』
 叱る。あんまりJ-POPではお目にかからない言葉です。
 ここ、叱らないでただ「愛する」だけだと、互いに相手の弱さを受け入れあいたい、みたいな文脈になり、そっちのほうがより「ラブソング」らしいです。でも、そうじゃない。反発し、それでいて愛していたいし、愛してほしい。「受け入れる」じゃぬるい、もっと赤裸々な関係でいたい。そんな激しい感情が背後には見え隠れしています。

 チャットモンチーの本質はそんな激しさだと個人的には感じていて。ポップスの歌詞って、何かと優しさを感じさせる内容や甘いささやき、退廃やノスタルジーなどキレイなものに終始しがちなのですが、その裏側にある「負」の感情を曝け出してくるんですね。
 「恋の煙」では独占欲、「恋愛スピリッツ」では嫉妬心。ただうっとり幸せなだけの恋愛じゃ物足りないし、満足できない。そんな強烈な衝動が、彼女達の作る歌詞には現れてくるんです。

 聴きやすいボーカルと適度にソリッドで実験的なサウンドメイクよりも、自分はこの強い衝動に惹かれるんですよね。
 転んでも『君の手を引っ張って離さない 大丈夫さ』なんて、何が大丈夫なんでしょう。すごく自分勝手な主張で、しかもそれをわかった上で(だってそんな「僕」を「叱りながら愛して」ほしいんですから)言ってのけている。
 利己的な自分を曝け出しながら、それだけ「君」といたいんだと主張している。優等生じゃない言葉だからこそ、その強い感情が浮き彫りになるんです。
 『希望の光なんて/なくったっていいじゃないか』…その強い感情の行く先が、たとえ悲劇であってもですね。そう考えると、理想郷「シャングリラ」というタイトルは、なにか逆説的な響きを帯びても響いてきます。


posted by はじ at 00:23| Comment(2) | TrackBack(1) | J-POPレビュー女性(た行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして!いつも楽しく読ませていただいております。

さて、彼女たちのインタビューで読んだのですが、「シャングリラ」はここでは理想郷の意味ではなく、誰なのか何処の国の人なのかも特定できないような女の子の名前として付けたそうです。
それを踏まえて歌詞を読むと、「僕」が身勝手で赤裸々な感情をぶつけている「シャングリラ」という女性は正体のおぼつかない存在として描かれているわけで、確証の持てないものに自分の感情を委ねる様から、思春期特有の衝動的で不安定な心模様が浮かび上がってくるように思います。
この曲に限らずチャットモンチーの歌詞はいつも面白いですよね。ルックスなども含め表面的には素朴な感じがするのですが、本質は激しく赤裸々な感情を吐露しているというギャップが魅力的だと思います。

ところで、はじさんの歌詞解釈における洞察力の深さと鋭さにはいつも感嘆しております。これからも期待しています!
Posted by adeliem at 2007年02月25日 18:21
>adeliemさん
はじめましてー。というか実はリファラか何かでたどったのがきっかけで、そちらのブログも見に行ったりしていたりします。たいへん参考にさせていただいてます、実は。

シャングリラはそういう意味だったんですねー。最近こういうの多いな…気をつけないと。
とすると、今回のテーマは、不確かな存在への「依存心」というとこなんでしょうね。彼女達の不安定さ、アンバランスでアンビバレンツな衝動というのは本当に新鮮です。

スガシカオがどこかで「いいことだけ歌っている歌が多すぎる」とJ-POP界を批判していまして。これは確かにもっともなことで、特に最近はどうもこの傾向が顕著だなあと。
そんな中で負の面をこれだけ面白く表現してくれる彼女達は、稀有な存在だと思うのですよ。
Posted by はじ(管理人) at 2007年03月01日 00:52
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叱りながら愛していたい♪「シャングリラ」Chatmochy(チャットモンチー)
Excerpt: 「シャングリラ  幸せだって叫んでくれよ  時には僕の胸で 泣いてくれよ  シャングリラ  夢の中でさえうまく笑えない  君の事ダメな人って  叱りながら愛し..
Weblog: スタヂオ学び舎日誌
Tracked: 2007-02-24 17:35
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