2007年02月20日

Mr.Children「しるし」

しるし
しるし
posted with amazlet on 07.02.19
Mr.Children 桜井和寿 小林武史
トイズファクトリー (2006/11/15)
売り上げランキング: 735


<心のうちに込み上げる感情を、もっとも確かに伝える方法とは>

 ミスチルの中でもかなりのロングヒットとなった、壮大さを漂わせる歌い上げバラード。

 桜井和寿が長年思い悩んできたテーマのひとつ、「思いを伝えること」が、この曲のひとつのテーマになっています。
 「君」への気持ちを、他ならぬ「君」に伝えたい。でも『どんな言葉を選んでも どこか嘘っぽいんだ』と、言葉では正しく表現できない感情にやきもきする「僕」。言い表すことはできない、ならば『心の声は君に届くのかな?/沈黙の歌に乗って…』と、心そのものが伝わればいいとも考えたりもします。確かに、強い気持ちはどんなに言葉を尽くしても伝えられるようには思えない、この言葉にできない気持ちがそのまま伝わったらどんなにいいだろう、そう思ってしまうことは誰にでもあることでしょう。
 しかし、その考えは、曲中で自ら否定しています。『心の声は誰が聞くこともない/それもいい その方がいい』…それは果たしてなぜなのでしょうか?

 さて、閑話休題。
 以前リリースされた「Sign」という曲。こちらは今回とかなり近い性質を持つ語であり、最初に新曲が「しるし」という題だと聞いたときは、それって「Sign」とはどう違うんだろう?と疑問に感じました。
 そして実際にフタを開けてみると、両者の単語の意味合いはかなり違うなー、と感じまして。さて、では「Sign」と「しるし」のふたつの似た単語に持たせられた意味の違いとはなんでしょうか? 『いろんな角度から君を見てきた』
 『それとも似てきたのかなぁ?』
 『面倒臭いって思うくらいに/真面目に向き合っていた』
 …フレーズの端々からは、「僕」と「君」がある程度の時間を共に過ごしてきていることが伺えます。それも、たくさんの「君」を見たり、真面目に対峙したり、似てきたかもしれないと思えるくらいに真摯に向かい合っていたわけです。

 「Sign」は、「君」やすべてのものから伝わる「サイン」を『もう 何ひとつ見逃さない/そうやって暮らしてゆこう』と誓う歌でした。「思いを伝え合う」術を見出し、これから進んでいく、そんな立ち位置にいたんですね。『新芽みたいな』『でもいつかは』など、この先で「わかりあっていく」ための萌芽を感じさせる内容だったわけです。
 対して。今回の二人は、すでに確かな時間を歩んできています。「僕」には、記憶を埋め尽くすほどの「君」との思い出があります。『泣いたり笑ったり 不安定な想いだけど/それが君と僕のしるし』…積み重なった二人の時間が作り上げたのは、二人の間で不安定に揺れ動く「想い」そのものなのですね。時に伝わったり伝わらなかったり、お互いに喜怒哀楽を与え合ったり、そんな二人の間のやりとりの中で生成される「想い」こそが、確かな「しるし」としてそこに存在しているのです。

 「サイン」とは、これから読み取るもの、二人の関係を深めていくための手がかりでした。そうして二人での関係を重ねていった結果、そこに出来上がったものが「しるし」なのですね。
 言葉では表せない。心そのものを伝えることはできない。本当に正しく感情を伝える方法なんて、いくら考えてみてもありません。でも、「いろんな角度から」「真面目に向き合って」時間を積み上げた果てに、不完全ながらもしっかりと気持ちを伝え合ってきた果てに、二人の間には確かな「絆」が出来上がっていたのです。…それはもしかすると、完全に気持ちを伝え合えることよりも、ずっとずっと素晴らしいことなのかもしれません。


posted by はじ at 00:12| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(ま行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こっちでは初です。よろしくデス。これからも体に気をつけて更新頑張ってください〜。
さて、この曲がどうして支持されてロングヒットし伸びたのかよく分かりませんでした。タイアップ先が話題のドラマで視聴率もけっこう良いということから何度も耳にすることはあったから馴染みがあるのは分かります。ケドだからといって、そこまで売れるほどのものなのか?というとかなり疑問です。歌番組でそのよさを分かろうと頑張って聴きましたが、とても分かりませんでした。歌詞も右脳だのよく分からなかったし、曲がいいといってもよく分からないし・・・。ミスチルってだけで良いって図式があるのかもしれません。はじさんのこれからの論評に期待です!
Posted by 硬水 at 2007年02月20日 19:58
通りすがりのものですが。 >>硬水さん
右脳は直感的で左脳は理論的 的なイメージでよく語られるからかと思います。

でも、しるし、俺もすげぇぇぇとは思いませんでした。抽象的すぎるというか…。
「別れの曲とも告白の曲ともとれる…」
とインタビューかなんかで見ましたが、そのせいですかね。
これは「and I love you」あたりもそうだったんですが、あんま桜井さんが起承転結的なことにこだわらなくなったんですかね。

えっと、はじさん、がんばってください。
応援してます。
Posted by at 2007年02月20日 22:26
この曲、ドラマ「14歳の母」の主題歌なだけあって、ちゃんとドラマの内容を意識した歌詞になっているのですね。
Posted by 金魚花火 at 2007年02月22日 08:37
>硬水さん、通りすがりさん
続き書きましたけど、どうでしょう。お二人の疑問を晴らすことができたでしょうか…?

この曲は、バラードのヒットする条件ど真ん中だなーという感じがします。壮大で、耳に残りやすく、話題性もあって。
で、バラードのヒットはひとえに大きくなりやすいものです。

あと、やっぱり細かいフレーズの書き方とか巧いと思いますよ。自分は特にちょっとひねりのある表現好きですし、そういったツボを刺激してくれます。

起承転結にこだわらなくなったというか、無理に「答え」を出そうとしなくなった、というのはあるでしょうね。

もうちょっと別角度から書きたいことはあるのですが、それはメルマガのほうでやろうかなと。

>金魚花火さん
ドラマの内容は細かくは知りませんが、まあどんな形であれ沿っているんじゃないかなと。恋愛の歌とも、子供に向けた歌とも、「しるし」が生まれ来る子供なんだ、とも当てはめられそうですし。
Posted by はじ(管理人) at 2007年02月23日 00:38
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