Salyu Takeshi Kobayashi
トイズファクトリー (2006/11/01)
売り上げランキング: 23946
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<待ち望む二人の「再会」の時を、幻想的な風景に描き出す>
前々作「Tower」前作「name」と作詞に一青窈を起用していましたが、このアルバム先行シングルではプロデューサーの小林武史がまた詞を書いています。
一青窈は感情的かつ色彩感が強めな言葉を生みますが、小林武史の場合はどちらかというとどこか浮世離れしている透徹した視線で、透明感を感じさせる言葉になります。この曲でも『音の隙間を流れていく』とか『舞い上がる 木の葉のように切ない時』あたりでそれを感じることができますね。
さてタイトルにもなっている「プラットホーム」。曲中では『二人のプラットホームは/きっと現れる』と、待ち焦がれる場所、見つけたい場所として描かれています。位置づけとしては「人と人とが出会う場所」。つまりは、クロスロード(交差点)に近い表現なのでしょう。
でもクロスロードではなく、わざわざプラットホームという単語を当てたのは、ちゃんと理由がありそうです。単に使い古しではない表現を選んだということもあるでしょう。また、言葉のイメージ的に、単なる交差点よりも駅のホームのほうが、より明確な「スポット」であるイメージができます。そのため、「約束された場所」的な印象を強められているのではないでしょうか。
また、「交差点」だと「道を歩いて到達する」という地に足のついた雰囲気を同時に喚起させてしまうので、それだと浮遊感のあるドリーミーな曲調に多少そぐわないかもしれません。ここでの「きっと現れる」という言い方も、そのあたりを意識した表現なのかもですね。
さて、プラットホームで出会いたいのは当然「あたし」と「あなた」なのですが、詞を読んでいくとこれは初めての出会いを待ち望んでいるというわけではなく、再会を果たしたいという心情が込められているようです。『あなたを思い出したら』というフレーズもありますしね。
『あの時 あたしが選んだ道の端は/途切れて 見えなくなってしまっても』という回想。「選んだ道の端」というのは、つまり分岐点のこと。そして、…おそらくはそれが「あなた」と道を異にした別れの地点のことなのではないかな、と想像することができます。
二人離れた日がはるか遠くになってしまったけど、それでも再会するはずの「プラットホーム」が現れることを願い歌い続ける。ドリーミーで空想的な世界観で、でも芯のある独特のボーカルがそこに一本はっきりした芯を貫いているように響いてくるのが印象的です。