![]() | 夢のうた/ふたりで… Kumi Koda , Tohru Watanabe , hwonder 倖田來未 このアイテムの詳細を見る |
<対照的なシチュエーションの中でも、相手へと向ける想いは同じ>
12週連続シングル、4曲入りマキシシングルなどとにかく量重視のリリースを続けてきている彼女ですが、今回はひとつの曲にふたつの詞を乗せ別個の曲としてリリース。詞で見ると量産ですが、曲で見ると節約。どちらで考えるかは人それぞれでしょうけれど、どちらにせよ話題性はありました。
似たようなケース…つまりリアレンジ等ではなく別個の歌として同一メロディを使用しているパターンとしては、たとえばさだまさしが「関白宣言」の数年後に自己パロディ的に「関白失脚」を歌ってみたり、THE 虎舞竜の大作「ロード」のうち第一・二・七・十三章を同一のサビに統一したりなどが思い浮かびました。ただ、これらはまったく違う部分もあるんですけど。純粋に同じメロディを使ったものとしてはASIAN KUNGFU GENERATION「サイレン」があり、これはタイトルも、確かアレンジも同一のものだったかと。
「夢のうた」は失恋後の歌。対して「ふたりで…」は恋愛中の歌ということで、詞の内容は両者で明確に分かれています。片方は『また今日も一人』、もう片方は『これからも 側でそう笑いたい』と明暗がくっきり。どちらも一途に相手のことを切々と想っているあたりは、「エロかっこいい」の通称に似合わず乙女な詞を書く傾向のある彼女らしいというか。まあ、2曲をはっきり対照的に見せるために、あえてそうしたのかもですね。
アレンジの雰囲気も対照的。「夢のうた」はピアノでストイックな雰囲気を作り出し、ストリングスで悲劇的に盛り上げていますね。一方、「ふたりで…」はビブラフォンの多用からもわかるように、ファンタジックで穏やか、柔らかめな印象があります。
歌い方もおそらく意識してある程度使い分けているよう。ちなみに、シャウトというかアドリブというか、間奏Cメロ後(リフレイン前)や後奏の歌詞のない部分なども、「ふたりで…」のほうはファルセットを多用して、ふわっと抜ける感じになっています。地声で歌い続ける「夢のうた」のほうが、やっぱりどこか悲痛な響きを帯びて感じるわけですね。
それにしても、メロディだけでなくコード進行や展開のしかたまでほぼ同じなので、もっと明確に分けちゃってもよかったような気もします。特にコード進行なんか、もっと大胆にふたつで変えちゃってもよかったんじゃないかなと。
これ、大元が、どちらかというとマイナー気味なのです。メロはマイナーで始まるし、サビ前の盛り上げかたにしてもこれはマイナーのそれの手法っぽいですし、もともと暗い歌用に意識して作った曲だと思うんですよねー。先に「夢のうた」があって、明るい「ふたりで…」版は後から付け足された内容のような気がします。もちろんただの推測ですが。
だから「ふたりで…」はだいぶ頑張って明るくしている感じ。アレンジャー大変だったんじゃなかろうか。
あと細かいツッコミどころとしては、「夢のうた」の『どうかお願い もう泣かないで/心迷ってしまうけれど』の「泣かないで」は誰に言っているのか、「ふたりで…」の『あなたがもしも 「もうやめたい」と/言ったなら 側に寄り添って』の「もうやめたい」がなんのことなのか、がイマイチ不明確。前者は「泣かせないで」あるいは「もう泣きたくない」のどっちか、後者はコーラス違いの同じ部分『あなたがもしも 悩んだ時は』となんとかして区別させたかった、あたりかなあと…
試みとしては面白いと思うんですけど、12作のときもそうだったように、彼女の場合はあんまり作詞面で無理させないほうがいいと思っているんですけどねー。
あと、歌詞についてですが、倖田來未の歌詞はいつも恋愛の話ばかりでつまらないという評価もネットを見ると結構多いですね。
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恋愛の話ばかりなのは、何も彼女だけに限ったことじゃないんじゃ…!?<br />
…まあ、その背後を読むならば、彼女の詞はわりとパターン化している感はあります。描かれる感情もシンプルで、それゆえわかりやすく共感を得ているんだと思いますが。<br />
あとは、曲の中でひときわ印象に残るキャッチ的なフレーズが少ないんですよね。浜崎あゆみなんかはなんだかんだでその辺がうまくて、マンネリ化しつつも必ず入れているんです。だから未だに人気が急落しないのかなと。<br />
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「恋のつぼみ」では『めちゃくちゃ 好きやっちゅーねん!』がインパクトありましたが、これも関西弁という飛び道具ですからね。他、ファン以外にとってはタイトルは覚えていてもサビ頭の言葉が思い浮かばない、そんなものが多いのかなと。<br />
だから曲それぞれに印象付けが薄く、似たような…という感想に繋がるのではないでしょうか。