2006年08月03日

安室奈美恵「CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK/人魚」

CAN’T SLEEP,CAN’T EAT,I’M SICK/人魚
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
安室奈美恵, Michico, T.KURA, NOKKO, Nao’ymt

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<切れ目なく流れる旋律の中、パッパッと切り替わる「織り交ぜ型」の言葉>

 すっかり独自路線を走りつつ、しかし確かな評価を得ている最近の安室奈美恵です。今作「CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK」も、現在同時代のどんな曲とも違いつつ、かなりクセになる魅力がある感じ。
 聴いていると、メロディやバックの切れ目のなさが面白いですね。メロディラインがシンプルで明確な定型を持たずに、つらつらと流れ続けていくので、聴いていてどんどん奥のほうに連れて行かれるような気がしたり。パッと聴いて口ずさめるようなわかりやすさはない代わり、でもなんだか聴いていて印象に残る…そんな作りになっている感があります。

 バックの音の切り張りの仕方とか、ウイスパーボイスとか、洋楽っぽい雰囲気を漂わせながら、日本語と英語織り交ぜた歌詞の作り方は昔から続くJPOPの手法。『その他大勢見えないの Am I fool?』とか『全部ダーリン次第のeveryday』とか…こうして歌なしで書き出すと違和感ありますが、曲に乗るとそう不自然でもないんですよね。恋愛に溺れる詞の内容なのですが、あんまりバカっぽく聴こえてこないのは、彼女のスタイルがしっかりしているからでしょうか。
 にしても、『少しめまいがしてきたみたいhold me』とかまで来ると、この「日本語英語織り交ぜ」型の歌詞というのは、ひとつの新しい言語表現になっているんじゃないかとさえ思います。「めまいがしてきた」⇒「だから私をしっかり受け止めて(=hold me)」というように、ここには「流れ」が生じているわけですよね。「めまいがしてきたみたいだから抱きしめて」とすべて日本語で言っても、あるいは英語にしても、混ぜたときのパッとふたつの思考が切り替わる感覚は生じないでしょう。そう考えると、けっこうすごいのかも。ヒップホップのラップ部分でも、韻を踏むときにこういうことが起こりますよね。


 カップリングの「人魚」もまたいいですね。NOKKOの代表曲のカバーですが、自分の歌い方のスタイルできっちり勝負しているというか…声の掠れさせ方とか、すっかり板についてきましたし。

 それにしても『アカシアの雨にうたれて』ってすごい鮮やかなイメージだなあ。ひらがなが多いこともあり、全体的にやや子供っぽいイメージで彩られているのに、そこに『本気で思った 抱いて抱いて抱いて』というような、強く強く相手を求めるフレーズがビシッと入っているから、聴き手としてはドキッとしますよね。
 『すてきな事もさみしさも輝きに似て』と、別種のものをすべて「輝き」にまとめあげてしまうような感性というのは、女性的だなあと思います。で、そんな感性が、「あなた」への一言じゃ表せない、何語かかっても伝えられなさそうな溢れる感情を『抱いて抱いて抱いて』というひとつの呼びかけに集約させるんだろうな、と。
 表現を費やすよりも、感情や感覚をどんと投げてしまうことで、その強さ大きさを表すこともできるんですね。


posted by はじ at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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