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<「絶対」ではなく「できるだけ」の範囲を宣言することが、より強い共感を呼ぶ>
ロングヒットした「プラネタリウム」から、ひさびさのリリースでした。脳天気めなアップテンポ・ポップかしっとり和風なバラードか、という二極化がすっかり定着している感じですが、彼女に関しては今後もそのまんまでいてほしいものです、と最近思うようになりました。いい意味で。
「フレンド」+特撮戦隊モノの「レンジャー」で「フレンジャー」。ピンチのときには駆けつけるから頼ってよね!と友人に呼びかける歌です。なので、「あなたにとってのヒーロー」モノに分類してもいいんじゃないでしょうか。詳しいことはEXILE「HERO」の記事をご参考ください。
ま、それだけじゃなく、戦隊モノの基本である「色」を詞の中に散りばめているのがすぐに読み取れます。『ミルクパンをほおばりつつ/チョコパイにも手を伸ばす』とかにも「白」と「黒」が出てきてますね。
ただ『いろいろとエネルギーが必要 緑で補給して』とか、ちょっとそりゃ無理やりだろうと思いました。今回のノリだと「野菜を食べよう」くらいの脱力加減のほうがむしろ雰囲気に合ったんじゃないでしょうか。や、現行の無理やり感もある意味合っているんですけれど。
今回、もっとも興味を引かれたのは、『何かイヤになったら できるかぎりで/いつだって そこにかけつけてあげる』、サビ頭という重要地点でした。「何かイヤ」になったとき、という漠然ぶりからも広げられそうですが、それよりも何よりも「できるかぎりで」です。「何があっても」じゃないんですね。「いつだって」と矛盾してんじゃん!というツッコミは野暮なので、ここは気持ちはいつでも、くらいに考えておきましょう。
こういう友情をテーマにした曲の場合、友人がピンチのときは「何があっても」だろう!と思う方は多いでしょう。なんか冷めてるなあ、結びつきが弱いなあ、現代っ子はこれだから…とまとめてしまうのは、しかし、ちょっと待ってみましょう。
「何があっても」というのはこういうときの常套句であって、気持ちがそうだったとしても、実際問題として駆けつけられないことだって現実にはきっとあるでしょう。そのことを考えると、「何があっても」と約束するのは無責任だ、とも言えるわけです。無理なことは無理、ときちんと言っておいたほうが、本心からの言葉っぽいし、真摯だ、みたいに感じるということもあるわけです。
「何があっても」よりも、「できるかぎりで」のほうがいい。こういう感覚は、けっこう最近のものですよね。たとえば「頑張れ!」という言葉は重荷になるから/言外に「協力しない」と感じさせるからあんまりよろしくない、みたいなことが言われているのと何かリンクするような気がします。
あと『1人はとてもめんどうだから』友達同士で助け合いましょう、というのも、なかなかぶっちゃけているなあと。「つまんないから」とかじゃなく、「めんどうだから」。きわどいですが、確かに「助け合い」の裏返しですよね、これって。
こういう「できるかぎりで」とか「めんどうだから」とか、常套句やきれいごとでないフレーズというのはなかなか評価できると思います。まあ狙ってやっているんじゃなくって感覚で書いたと思うのですが、そうじゃなきゃ出てこないフレーズだと感じるのですね。作詞家には書けないでしょう、きっと。
いろいろ至らない点はあるし危なっかしいんですけど、だからこそ表現できることというのもあるものです。そういう意味で、他にこういうキャラがどうも出てこない今、彼女の存在は割と貴重じゃないかなと。なのではじめに書いたように、しばらくこのままでいてほしいなあ、という。
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ちなみに彼女の作風は、僕の分類ではいくつもありますね。<br />
@「さくらんぼ」パターン・・・「さくらんぼ」「happy days」「smily」「フレンジャー」など<br />
Aaiko風パターン・・・「桃ノ花ビラ」「甘えんぼ」「大好きだよ。」「恋愛写真」など<br />
B「金魚花火」パターン・・・「金魚花火」「プラネタリウム」<br />
Cその他もろもろ
うち、1と3は毎回いい感じなんですけど、2と4がたまに危なっかしく感じますね、シングルの場合。
まあ、彼女はまだ24歳なわけだし、この若さでバリエーション豊富な曲を書き分けられてヒットを連発できているのだからそれだけで大したものじゃないですか。曲作りのテクニックも、いくつもの曲を作っていくうちにうまくなっていくだろうし。例えば歌詞の評価が高いMr.Childrenの桜井和寿でも、20代前半の頃は平凡なラブソングの歌詞ばかり書いていたわけですから。
そこを多彩な世界にしているのはひとえに詞の展開だったり、アレンジだったりなんじゃないかなと。<br />
ノリのいい1のタイプはアレンジも賑やかにできるんですが、ゆったりだとどうしても気になったりするんですね。「金魚花火」など和な曲調では目立たないんですけれど。<br />
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具体的に言うと、「甘えんぼ」「黒毛和牛〜」あたりの三連バラードは個人的にはもう一歩かなあと。<br />
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もちろん、さまざまな曲調や詞世界にチャレンジしようとしている姿勢には好感を持っていますし、これからの可能性には大いに期待しています。実際、作曲技術に関してはどんどんよくなっていると思いますしね〜。
ちなみに、実は僕は彼に何度か質問などを書いたメールを送っているのですが、ここ2〜3日はちゃんと返事をくれましたよ。結構マメな人なんだと思いましたね。
そしてメールにきちんと返事まで…見習わなければ…