2006年06月26日

大塚愛「フレンジャー」

フレンジャー
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
大塚愛, 愛, Ikoman

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<「絶対」ではなく「できるだけ」の範囲を宣言することが、より強い共感を呼ぶ>

 ロングヒットした「プラネタリウム」から、ひさびさのリリースでした。脳天気めなアップテンポ・ポップかしっとり和風なバラードか、という二極化がすっかり定着している感じですが、彼女に関しては今後もそのまんまでいてほしいものです、と最近思うようになりました。いい意味で。

 「フレンド」+特撮戦隊モノの「レンジャー」で「フレンジャー」。ピンチのときには駆けつけるから頼ってよね!と友人に呼びかける歌です。なので、「あなたにとってのヒーロー」モノに分類してもいいんじゃないでしょうか。詳しいことはEXILE「HERO」の記事をご参考ください。

 ま、それだけじゃなく、戦隊モノの基本である「色」を詞の中に散りばめているのがすぐに読み取れます。『ミルクパンをほおばりつつ/チョコパイにも手を伸ばす』とかにも「白」と「黒」が出てきてますね。
 ただ『いろいろとエネルギーが必要 緑で補給して』とか、ちょっとそりゃ無理やりだろうと思いました。今回のノリだと「野菜を食べよう」くらいの脱力加減のほうがむしろ雰囲気に合ったんじゃないでしょうか。や、現行の無理やり感もある意味合っているんですけれど。

 今回、もっとも興味を引かれたのは、『何かイヤになったら できるかぎりで/いつだって そこにかけつけてあげる』、サビ頭という重要地点でした。「何かイヤ」になったとき、という漠然ぶりからも広げられそうですが、それよりも何よりも「できるかぎりで」です。「何があっても」じゃないんですね。「いつだって」と矛盾してんじゃん!というツッコミは野暮なので、ここは気持ちはいつでも、くらいに考えておきましょう。
 こういう友情をテーマにした曲の場合、友人がピンチのときは「何があっても」だろう!と思う方は多いでしょう。なんか冷めてるなあ、結びつきが弱いなあ、現代っ子はこれだから…とまとめてしまうのは、しかし、ちょっと待ってみましょう。
 「何があっても」というのはこういうときの常套句であって、気持ちがそうだったとしても、実際問題として駆けつけられないことだって現実にはきっとあるでしょう。そのことを考えると、「何があっても」と約束するのは無責任だ、とも言えるわけです。無理なことは無理、ときちんと言っておいたほうが、本心からの言葉っぽいし、真摯だ、みたいに感じるということもあるわけです。
 「何があっても」よりも、「できるかぎりで」のほうがいい。こういう感覚は、けっこう最近のものですよね。たとえば「頑張れ!」という言葉は重荷になるから/言外に「協力しない」と感じさせるからあんまりよろしくない、みたいなことが言われているのと何かリンクするような気がします。

 あと『1人はとてもめんどうだから』友達同士で助け合いましょう、というのも、なかなかぶっちゃけているなあと。「つまんないから」とかじゃなく、「めんどうだから」。きわどいですが、確かに「助け合い」の裏返しですよね、これって。
 こういう「できるかぎりで」とか「めんどうだから」とか、常套句やきれいごとでないフレーズというのはなかなか評価できると思います。まあ狙ってやっているんじゃなくって感覚で書いたと思うのですが、そうじゃなきゃ出てこないフレーズだと感じるのですね。作詞家には書けないでしょう、きっと。
 いろいろ至らない点はあるし危なっかしいんですけど、だからこそ表現できることというのもあるものです。そういう意味で、他にこういうキャラがどうも出てこない今、彼女の存在は割と貴重じゃないかなと。なのではじめに書いたように、しばらくこのままでいてほしいなあ、という。


posted by はじ at 00:21| Comment(6) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この「フレンジャー」は「さくらんぼ」パターンの曲ではありますが、サビよりもAメロBメロのほうがメロディーに勢いがありますよね。僕はこの曲は別に嫌いではないけれど、凡作だと思いますね。もっとも、これは音楽評論家の近田春夫さんが言っていたことですが、人気歌手のシングルというのは何も毎回傑作である必要は無く、ある一定のクオリティーの維持されていればある程度売れるわけですからね。連載漫画と同じで、「ずっと続いてくれさえすればそれだけでうれしい」みたいな。<br />
<br />
ちなみに彼女の作風は、僕の分類ではいくつもありますね。<br />
@「さくらんぼ」パターン・・・「さくらんぼ」「happy days」「smily」「フレンジャー」など<br />
Aaiko風パターン・・・「桃ノ花ビラ」「甘えんぼ」「大好きだよ。」「恋愛写真」など<br />
B「金魚花火」パターン・・・「金魚花火」「プラネタリウム」<br />
Cその他もろもろ
Posted by シスターチルドレン at 2007年01月08日 12:06
分類、だいたい自分の中のものと一致してます。<br />
うち、1と3は毎回いい感じなんですけど、2と4がたまに危なっかしく感じますね、シングルの場合。
Posted by はじ(管理人) at 2007年01月08日 14:49
「AとCがたまに危なっかしく感じますね」と管理人さんはおっしゃいますが、そんなもんでしょうかね?Aで言えば、彼女はaikoの作風を真似た曲を作るのが本当に上手いと思いますが(同じく大阪出身で、プライベートでも交流があるというくらいだし)、恋愛の歌詞はaikoのほうがやはり年の功のおかげなのかレベル的には上だと時々指摘されますね。でも、大塚愛の恋愛の歌詞は確かに幼稚かもしれないけど、「ネコに風船」や「ユメクイ」のメルヘンチックな世界観のような得意な路線を持っているし、「黒毛和牛〜」では焼肉をセックスに例えてしまうような発想の面白さを感じさせますよね。<br />
 まあ、彼女はまだ24歳なわけだし、この若さでバリエーション豊富な曲を書き分けられてヒットを連発できているのだからそれだけで大したものじゃないですか。曲作りのテクニックも、いくつもの曲を作っていくうちにうまくなっていくだろうし。例えば歌詞の評価が高いMr.Childrenの桜井和寿でも、20代前半の頃は平凡なラブソングの歌詞ばかり書いていたわけですから。
Posted by シスターチルドレン at 2007年01月09日 20:49
ええと、自分は大塚愛の多彩さというのは半分くらいはアレンジャーの力だと思っていまして。本人の作曲するラインは基本シンプルで、だからこそ耳に残りやすいという利点もありつつ、基盤にあるのはそれほど多くないと思っているんですよね。<br />
そこを多彩な世界にしているのはひとえに詞の展開だったり、アレンジだったりなんじゃないかなと。<br />
ノリのいい1のタイプはアレンジも賑やかにできるんですが、ゆったりだとどうしても気になったりするんですね。「金魚花火」など和な曲調では目立たないんですけれど。<br />
<br />
具体的に言うと、「甘えんぼ」「黒毛和牛〜」あたりの三連バラードは個人的にはもう一歩かなあと。<br />
<br />
もちろん、さまざまな曲調や詞世界にチャレンジしようとしている姿勢には好感を持っていますし、これからの可能性には大いに期待しています。実際、作曲技術に関してはどんどんよくなっていると思いますしね〜。
Posted by はじ(管理人) at 2007年01月10日 00:11
 確かに、大塚愛の現在の隆盛ぶりはアレンジャーのIkoman氏の力量が大きいだろうと言う事は多くの人達が認めているところです。彼は1976年生まれで、まだ今年でも満31歳の若さなのですから、将来小林武史や亀田誠治らに匹敵する大物プロデューサーになれる素質があると思いますよ。そういえば、作曲者と編曲者が別の人間なら、作曲者の本当の力量は判断しにくいというのは一般論として多くの人が指摘していることではありますね。<br />
 ちなみに、実は僕は彼に何度か質問などを書いたメールを送っているのですが、ここ2〜3日はちゃんと返事をくれましたよ。結構マメな人なんだと思いましたね。
Posted by シスターチルドレン at 2007年01月10日 07:44
31歳!そりゃ若いっすね。今後の活躍、期待がさらに高まっちゃうなあ。<br />
そしてメールにきちんと返事まで…見習わなければ…
Posted by はじ(管理人) at 2007年01月14日 00:02
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