2006年01月09日

レミオロメン「粉雪」

粉雪
ビクターエンタテインメント
レミオロメン, 藤巻亮太, 小林武史

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<粉雪の淡いはずの情景は、ひどくドラマチックな激情で彩られる>

 レミオロメンの冬のバラードは、彼らの才能を決定的に知らしめるような大ヒットになりつつあります。ここまで来ると息の長いセールスにつながりそうで、今年のウインターソング最大のヒット曲になりそうな気配もします。

 この曲、非常に難易度が高いです。まず、Aメロは穏やかなのですが、Bメロに変わると一転、メロディラインが上に下にと動き回り、幅がぐっと広がります。彼らの曲はわりと毎回そういう傾向があり伸び伸びとして感じるんですが、今回は全体を通して、実に高低差2オクターブ近くの振れ幅があります。
 そして、コードから浮き気味のメロディライン。メロの出だしも、そして例の絶大なインパクトのあるサビ頭『粉雪』も、和音上とは違う音になっていて、難しい反面、響きの鮮やかさにつながっています。
(ちなみにこのサビ頭の高音、「こなゆき」の「な」もそうですが、ほとんどが母音「ア」の音です。口を大きく開ける母音をもっとも高い場所や伸ばしに当てると、その重要な音を効果的に響き渡らせやすくなります)
 そんな特徴のためこの曲は、ただカラオケで歌いこなすのは至難だというだけでなく、実にドラマチックな印象を与えてくれます。バラードで、しかも「粉雪」という題材はともすれば色味のない詞世界になってしまいそうなものですが、変幻自在に動くメロディラインによって、単調さに堕さず鮮烈な印象を聴き手に与えてくれています。

 本来は白く淡い情景であるはずの「粉雪」舞う風景は、こうして鮮やかさに彩られています。その上に描かれているのは、『いつもすれ違い』『永遠を前にあまりに脆く』といった、「ひとつになれない」という哀しみ、そして『それでも僕は君のこと守り続けたい』という決意です。
 曲中では、『僕は君の全てなど知ってはいないだろう』『分かり合いたいなんて 上辺を撫でていたのは僕の方』と、徹底的と言っていいほど「完全に分かり合う」ことが不可能である、と断言しています。別々の人間である以上それは絶対的な真理ではありますが、あえて口にするのはそれだけその不可能を乗り越えたいと強く思い、そして乗り越えられずに深く悲しんでいるからなのでしょう。
 そんなどうにもならないもがきが、「粉雪」の儚さとリンクします。『ざらつくアスファルトの上 シミになっていくよ』と描かれるように、為す術なく消えていく粉雪と同じくらいに、「完全に分かり合う」ことができない現実の前の自分をちっぽけなものだと感じているわけです。

 そんな「僕」の拠りどころは、たとえ二人の思いをひとつにすることはできなくても、『一億人から君を見つけた』こと、『君のかじかんだ手も 握り締めるだけで繋がってた』と感じることです。儚く散る粉雪を見て絶望しつつも、そんな『根拠はない』ようなことに希望をつなごうとする、それこそが「僕が君を守る」という決意の強さを、逆説的に証明しています。

 さて、この曲はドラマ「1リットルの涙」主題歌です。ドラマの内容に照らそうとすれば、「分かり合えなさ」が強調されているぶん、「人は他人を救うことができない」ということを「離れ離れになってから思い返す」といったような、ひどく悲しい決別の歌として解釈することもできそうです。
 どこか残酷なくらい真理を言ってのけているとはいえ、ずっとマイナーで収束していたのが最後にはメジャーで終わっていたりと、本来的にはそこまでダウナーな内容ではないとは思うのですが、まあ曲がドラマチックなので、悲劇的な昂ぶりにもすっと繋がってしまいそうだなあと。


 ドラマに使われたということで、ファンの間で人気が高いバラード「3月9日」もじわじわと売れているそうです。こちらもまた、穏やかなメロと一気にテンションの上がる高音パートとの対比が鮮烈な一曲ですね。


この記事へのコメント
こんな風に、歌詞やメロディを分析してる人がいらっしゃるんですね。<br />
ちょっと驚き!<br />
すごい論理的。<br />
論理的に分析する方の一番好きな歌はどんな歌なのか興味深々♪
Posted by Michi at 2006年05月05日 22:31
こんにちは。<br />
意外とこういうことしている人って少ないんですよね。やってみると、とっても奥が深いものなんですよ。<br />
<br />
ここでは論理的にやってますが、さすがに自分の好きな歌は感情的に選んで聴いてますよー。<br />
でも「自分はこの曲のどこが好きなんだろう?」と考えたりはしてますけれど。<br />
<br />
一番好きなのは、ポップスを聴き始めたころからスピッツです。マニアックに全曲解説した別サイトがあるので、よかったらそちらもどうぞ。<br />
http://www.geocities.jp/haji2490/spitz.html
Posted by はじ(管理人) at 2006年05月13日 17:06
 レミオロメンを手がけている小林武史の手腕はやはり凄いですな。90年代後半に「人気音楽プロデューサー」と言われた人々の中で、今でも絶好調なのはこの人だけですもん。<br />
 もっとも、小林武史自身が作曲も手がけている楽曲は、2000年代に入ってからはヒットに恵まれていませんね(Bank Band with Salyu「to U」は久々の大ヒットでしたが)。MY LITTLE LOVERはセールスが失速してしまったし、salyuはセールスが上昇傾向にあるけれどまだ本格的なヒットまでには至っていない、綾瀬はるかは沢尻エリカや長澤まさみなどの他の女優に比べてもセールスで見劣りしているわけですし。結局、ミスチル、レミオなど編曲のみを手がけているアーティストでヒットを連発しているわけですね。彼の場合、才能のあるバンドを見つけてくる手腕が上手いのでしょうかね?また、彼は烏龍舎という事務所の社長でもあり、ミスチル、レミオ、salyuなどのマネジメントも担当していますね。<br />
 3年前、ある音楽誌で、「90年代の音楽プロデューサーブームは、単に『音楽プロデューサー』を名乗りたかっただけの人達のブームでしかなかったが、小林武史は真にプロデューサーと呼べる人物の一人」という紹介記事がありましたが、これはヨイショ気味ではあるけれど、確かにその通りだと思いますね。
Posted by シスターチルドレン at 2007年01月17日 12:50
小林武史の作る曲は良くも悪くも本人のクセが強いですからね。salyuはさらに輪をかけて歌のクセが強いですが。<br />
編曲だとそのクセが抑えられて、キラキラした万人に好まれやすいものに寄るので、アーティストの魅力を引き出しやすいのかな、と思っています。<br />
<br />
もちろんその主張してくるクセが自分は好きですし、そのクセゆえに引用された紹介記事のような評も出てくるんでしょうね。
Posted by はじ(管理人) at 2007年01月21日 16:19
でも、この「粉雪」のイントロ、シンセといいギターのフレーズといい、すぐに小林武史だとわかるアレンジですねえ。まあ、僕は小林武史信者ですけど。
Posted by シスターチルドレン at 2007年01月22日 19:14
この、音が立っているんだけど一体化して聴こえる空気感の演出はつくづくうまいですよねー。
Posted by はじ(管理人) at 2007年01月24日 00:51
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