![]() | 忘れ咲き GARNET CROW, AZUKI 七, 古井弘人 GIZA このアイテムの詳細を見る |
今は遠く離れている相手への想いが、ときに記憶の奥からふっと現れてきて、どうしようもなく胸がざわついたりする。そうしたさまを、思い出の「忘れ咲き」と表現しています。
そんな美しいタイトルに負けず、詞の内容も繊細に作り上げられています。1コーラスの中、つまりメロからサビへ流れるなかで「風景描写→(過去の出来事)→今の主人公の気持ち」と内容が移っていきますが、まず世界に引き込み、シチュエーションをそれとなく示し、盛り上がるサビで伝えたい思いのたけをぶちまける、と実に効果的な作詞の王道アプローチなので、詞を自作する/したいアマチュアのみなさま方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
その表現も練られています。『さよならも言えず傘に隠れた』というフレーズがありますが、この短い一文で「想いを伝えられず別れてしまった」という物語がまず見え、また「そのことを後悔している」心情を聴き手に匂わせ、さらに「傘に隠れた」という表現で、フレーズの独自性と、「雨降り」というドラマティックな場面を想像させています。高等テク。
気になるのは、口調の変化が大きいこと。綺麗な情景描写や「人は〜」と大きく語るなどの格調の高さが目につく一方で、『ずっとね』『ほらね』『そんな風にいれたらいいなって思う』という親しげな呼びかけがそこかしこに差し挟まれてまして。書き手のレンジが広いのはいいことですが、やや散漫な感じ。
ただしこのユニットはボーカルの声質が独特で、格調高さと親しみやすさの両者を共存させるのには、かなりプラスに働いているんじゃないかなと。
胸に込み上げる切なさを押し殺し、『思い出そっと枯れゆくまで』やり過ごそうとする。でも「花」とは、何度でも再び咲くものです。そうして「君」の記憶は、いつまでも繰り返しよみがえり、残り続けるわけです。
美しければ美しいほど辛い、思い出の花。何度でも咲く花の特性にマイナス要因を含ませた使い方が、「伝えられなかった想い」のセンチメンタリズムと組み合わさって、いい味になっています。下手に聴くと、聴き手の記憶からもつられてあれこれと咲いてしまう力があるので、注意が必要です。
そして何だか急かしてしまったようでスイマセン。<br />
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それにしても見事なレビューでございます。<br />
僕もこんなの書けたらなぁ〜、とため息出ちゃいます。<br />
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AZUKIさんの口調の幅はC/W「Flower」にも表れてますよね。<br />
“自己啓発なんて ah くだらないなー無力”なんて表現、表題曲と同じ人間が書いているとは思えませんよ。<br />
GARNET CROW以外での作詞だとまただいぶ作風も違いますし、中村さんのボーカルに影響されているのは間違いないでしょうね。<br />
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いやぁ、もう1度言いますが、ホント見事なレビューです。<br />
お礼のトラバ返しも申し訳ないくらいに…。
ファンであり自分よりずっと詳しいアイデアルさんのレビューであれこれ先に書かれてしまったのと、久しぶりの更新であること、そしてけっこう曲そのものを気に入ってしまったために、かなり力入りました。はい。<br />
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GARNET CROWでは「夢みたあとで」が好きなのですが、今回は詞だけなら間違いなく自分の中でその上を行ってますね。