2008年03月27日

今週の出張音楽コラム:3/27

 ニュース系メルマガ大手「忙しいあなたの代わりに新聞読みます」にて、毎週木曜日、音楽コラムを連載中しています。
 今週は、こんな内容を書いています・・・



昨年の春、ピュアな片想いを綴った「CHE.R.RY」をリリースし、
『恋しちゃったんだ』と初々しい気持ちを歌い好評を博したYUI。
自分のブログで取り上げた際に、その甘酸っぱい内容を分析したりしました。
http://j-pop.kget.ne.jp/article/10424.html

そんなYUIの今春の新曲「Namidairo」は、
マイナー調でどこか哀しげな雰囲気も漂っていますが、
個人的には・・・



この続きは、本日発行されたメルマガにて掲載中。興味のある方は、どうぞ読んでみてください。


posted by はじ at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 今週のコラム紹介。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月22日

ERIKA「Destination Nowhere」

Destination Nowhere
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<自然に身を置き、前進しようという意志を放つ>

 「FREE」で華々しくデビューした新人アーティスト?ERIKAの2ndシングル。ドラマ「モップガール」主題歌でもありました。
 まあ沢尻エリカの変名プロジェクトなわけですが、例によって当ブログの方針により、沢尻エリカ自体のあれやこれやについては特に触れません。

 曲調はロックテイストで、そこに『私はどこまで歩いてゆけるのだろう』とつぶやいてみせる歌詞がそこに乗ります。
 「砂漠」「星」「雪」「風」など、自然情景描写が多いのが特徴でしょうか。雄大な景色の中に「私」を置いてみせるこうした歌が多いのは、現実から自身を切り離せる、ということが大きいでしょう。自問自答をして、「自分らしさ」だったり「これからの未来」を考えたりするために、日常の喧騒ではなく、大自然の中にぽつんと立ってみる…ということは、実際に多くの人がやっていることなわけで。それを歌詞の中、イメージで作り出しているんだと考えるとわかりやすいでしょうか。

 また、そんなキレイな自然描写の中で、『目先のことに迷うな』とちょっと強めのメッセージが入っているのもポイント。はっきりした決意をしたんだというアピールを感じます。『聞こえない声さえ聞こう』というあたりも、貪欲に前進しようという意志を感じさせます。

 細かく見るのであれば、特にメッセージ部分に関しては、表現において焦点を絞りきれていないかなあという感はあります。
 顕著な例が、『夜のうちにつもってた 雪を踏むように/静かに歩いている』なんてなかなか素敵なフレーズだと思うんですけど、サビでは『Take off to the sky』と、歩くんじゃなく空を目指しちゃっているのとか。
 『目的地なんかいつも通過点』『今を感じて』と、とにかく進んでいきたい!という気持ちが強いのは感じます。だから、歩いてでも飛んででも、みたいになっちゃったのかもしれませんね。
 そういうわけで、歌詞は意外と荒削りな気持ちが見え隠れする一曲なのでした。
posted by はじ at 12:44| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月19日

mihimaru GT「I SHOULD BE SO LUCKY」

I SHOULD BE SO LUCKY/愛コトバ(通常盤B)
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<メッセージを頼りにしないポップ性の高まり>

 オーストラリア出身のアイドル的歌手カイリー・ミノーグが、1988年にリリースし日本でもヒットした楽曲のカバー。
 原曲をほぼまったく知らないので、両曲の比較のようなことはできません。なので、ここでは別の角度でこのカバーの意義を見てみたいと思います。

 まず音は、デジタルで華やかで、いかにも80年代な雰囲気を残しています。
 80年代の音楽って、というか音楽に限らずこの時代の雰囲気って、バブリーかつ華やかなものがあります。でも、そうした要素って、今の時代に合わないものとして認識されていたり、派手すぎると感じられたり、ずっと忌避されていたように思います。

 『愛されて Lucky Lucky Lucky Lucky/愛しましょ Lucky in Love』
 サビの歌詞です。たぶん原曲とそう大差ないんだと思いますが、まったく内容はなく、サウンドの賑やかさ華やかさのイメージに沿っているだけ、という感じ。これを見て「なんのメッセージ性もない!」と批判したくなる人も多いのでは。
 でも、音楽って「サビに伝えたいメッセージを込める」という定義はありません。また、80年代とは言わず90年代くらいに遡ってみても、そうした楽曲はかなりの比率で存在していたように思います。

 00年代前半のJ-POP歌詞には、「メッセージ性の重要視」という大きな暗黙の了解があったように思います。
 赤裸々に自分を曝け出したりポジティブさやありのままの生き方を「生の」言葉で投げかけるメッセージソングの隆盛はもちろん、恋愛をテーマにしている楽曲でもまた、自分自身や相手の人間的な成長(「強くなれる」「傷を癒す」「大切な思い出」といった要素ですね)を含んだ歌詞が人気を集め、ヒットしていく。そんな流れがありました。
 それは単に音楽業界の流行り廃りも関係しているのでしょうけれど、恐らくは、時代や世相を反映した面も少なからずあるのでしょう。9.11事件や長引く不況、引きこもりなどの自閉化・内向化する人の増加。そういった社会的な影響が、真摯な生き方や実利的な考え方、「繋がり」や「癒し」を盛り込んだ楽曲を大衆に求めさせたのではないか…なんて個人的には考えていまして。

 で、今もなお楽曲に込めたメッセージこそが重要なんだ!という向きはあるものの、少しずつ肩の力が抜けてきたなあ、という印象もあって。ブログのレビューでも、スキマスイッチ「全力少年」平井堅「POP STAR」あたりで、ポップさの復権について語っています。

 そして、今回のmihimaru GTに至っては、さらにポップさのみを追求しています。続きを読む
posted by はじ at 20:57| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(ま行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

まだ仮再開。

 さて、引越しは無事に終わっているのですが、もろもろの事情でまだインターネット環境がない状態だったりしまして。そのため、通常の更新ペースの再開が難しい状況です。

 とりあえず、おそらく3月中は更新がおぼつかない状況になると思われます。もうしばらく長い目でお待ちくださいませ。
posted by はじ at 20:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 近況やお知らせ。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月08日

過去ログ発掘のコーナー その35。

 メールマガジン「現代ポップス雑考。」のおまけコンテンツ「今日の一曲」。
 毎回そのときの気分で一曲選んで紹介するこのコーナーのバックナンバーから、新しいレビュー更新が滞ったとき、ちょこっとずつ抜き出して紹介していきます。メルマガを読んでいない人にはちょっとした暇つぶしに、読んだことのある人にも何か新たな発見があれば幸いです。



≪現代ポップス雑考。≫ Vol.127 2007/12/16
#中島美嘉「愛してる」

『大事な事はあなたが好きで/私を好きかどうかはいいの 今だけは』

 中島美嘉の初期バラードで、いちばん好きなのがこちら。
 この曲は、スタイリッシュさがウリの初期中島美嘉バラードの中ではもっともベタな内容ですが、でもそのストレートさに感情がこもっていていいなあと。

 『愛してる 愛してる 愛してる あなただけを』
 つごう5回も「愛してる」と繰り返すサビ。表現の妙、なんて考えない、この力押しっぷりがいいのです。繊細なサウンドと危うげな歌声には一見合わないような気もするんですけど…感情が抑えきれずにこぼれ落ちてくるような聴き心地になって、迫ってくるものがあるのです。

 引用した部分は、相手の感情よりも自分の感情を優先する、なんというか熱に浮かされたような印象を受けるフレーズ。『大好きさ君がなんて嬉しすぎる照れるね』とか、歌詞にしては飾り気がない文章が満載なんですけど、それが、あふれ出る感情を制御し切れていない雰囲気を醸し出していて。
 なので、表現が拙いと切り捨てるのはもったいない、素敵な味わいとして楽しみたいところ。

BEST
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中島美嘉
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 この土日、引越しをします。無事に終了し、パソコンが繋がったら、更新を再開します。すみませんが、どうぞよろしく。
posted by はじ at 01:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 過去ログ発掘。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月07日

Acid Black Cherry「愛してない」

愛してない
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Acid Black Cherry 林保徳 久保田早紀 kiyo
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<「狂おしさ」漂う感情を奔放に追求>

 Janne Da Arcのボーカルyasuのソロプロジェクト、3作目。ゴリゴリのヘビーなロックだった1作目「SPELL MAGIC」、ジャジーに揺れるサウンドを展開した2作目「Black Cherry」と今までにない内容を提供してきましたが、今回はかなりポップ。どこか歌謡曲っぽさもある哀愁のメロディラインを歌っています。

 もともとこうした歌謡曲っぽい、ちょっと泥臭くだからこそ印象に残るポップセンスは、バンドの時にもあちこちに匂っていました。また、3作続けての女性視点でのソングライティングも、見覚えがあるものです。
 ただ、ソロでは、バンドでは展開していなかった曲調にチャレンジしたりしているのもそうですが、非常に伸び伸び生き生きと持ち味を出して
いるなあ…と感じていまして。

 シングル3作はともに女性視点であると述べましたが、共通しているのはどれも「狂おしい」と言ってしまえるほどの強い愛情が表現されているという点です。想いが募りすぎて、平常心でなんていられない、ひたすらに激しい感情を昂ぶらせていく女性の姿が描かれているのですね。
 で、今回は『もう声にならないくらい』に愛しいあまり、別れの時を直視できなくなってしまっています。『優しさはもういらないの…』『あぁ…もうヤダ…愛してる…』と、込み上げてくる感情がすっかり錯綜してしまっているようです。

 そんな狂おしい感情の昂ぶりを表現したい!という意図は、たとえば言葉の上では「…」の多さなんかに表れています。意識の上に出てくる以上に言葉にならない感情があるのかもしれない、あるいはもう声になっていないということなのかもしれない…というように、「…」の使用によってよりいっそうの情感を演出しているわけです。にしても、いくらなんでも使いすぎのような気もしますが。
 そういえば、場所によって点の数が2〜4個と差があるようですが、これは意識的に変えているのでしょうか。どこの歌詞サイトを見てもそういうようになっているんですよね。考えてみたんですけど、ちょっとその差までは読み取れませんでした。点々をとにかくめっちゃ使いまくる、という高度な笑いどころなのかなーとも思えるくらいです。

 ところで、曲の構成にも「狂おしさ」を出すための工夫を感じます。
 まず、メロとサビではっきりと役割が違うこと。メロ部分に関しては、割合すっきりしたメロディラインで、曲世界の背景を語っています。一方、サビでは、ひたすらに感情が爆発。「…」も多いです。そして、感情をぶちまけたり、あるいは会話のやり取りを描きながら、メロディラインもまた「高まり」を感じさせるつくりになっているんです。
 言葉だけでなく、音も相乗して「狂おしさ」を表現しているんですね。もともとの歌謡曲的な流れもそうですし、さらに半音を多用しているのも粘りつくような感情を表しているかのようです。

 持ち味の作曲センス、そして女性視点を取り入れながら、それを「狂おしさ」を感じさせる激しい表現で発揮している…これが、伸び伸び生き生きと楽曲を作り歌っているという印象の源泉になっているのかなと。
posted by はじ at 02:08| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月06日

Salyu「iris〜しあわせの箱〜」

iris~しあわせの箱~
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Salyu JONI MITCHELL 渡辺善太郎
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<同じものを共有しながら、別々の道を行く>

 前作より小林武史の手を離れ、渡辺善太郎プロデュースに移行しているSalyu。「LIBERTY」は抑制から解放されたかような迸るエネルギーに溢れた一曲でしたが、今回はしっとりとしたミディアムナンバーです。

 描かれているのは、別れの情景。『車窓』『鉄路』などのフレーズから察するに、鉄道でどこかを離れどこかへと向かう「私」は、「あなた」と『また会えることを信じて 約束もせずに手を振った』…どことなく寂しさは漂ってはいるものの、再開を信じていますし、決して何か不幸なことがあって二人が別れるというわけではないようです。別の道を目指すために、あえて道を分かつという印象が。
 なので、哀しい歌というよりは、離れて相手を思うことで二人の絆を再確認する…というような、清々しさを感じます。

 さて、この曲の気になるポイントは、以下の部分。
 『それぞれの想いで 同じ唄を愛した』
 『違う景色の中にも 同じ色が輝いてる ことを知ったの』
 ふたつのフレーズは、とても近い内容に触れています。すなわち、<別々でも繋がっている>というようなことです。それぞれ独立しながらも、共有するものを持てるんだ、という確信が、ここからは感じられます。
 そしてそれは、離ればなれになる二人というシチュエーションにも共鳴してきます。別々になっても、どこかで繋がっているから、心配しなくてもいい。そうした感情が、『背中合わせの間に ある 温もりをきっと感じていける』なんてフレーズに込められているわけです。背中合わせになっているということは、まったく逆の方向を向いていることになります。でも、背後はくっついていて、そこに温もりを感じられる。異なる道を行こうとも、確かに繋がっていることを信じている、ということなのですね。

 『あなたが置いた約束』を『私の箱にしまっていく』という表現で語るところも、上記の<別々でも繋がっている>という確信にかかっているように感じます。自分とまったく同じではない異質な「あなた」に属するものを受け入れ、内側に取り込むためには、「箱に入れてしまっておく」というやり方がちょうどはまっているなあと。
posted by はじ at 03:12| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(さ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月05日

過去ログ発掘のコーナー その34。

 メールマガジン「現代ポップス雑考。」のおまけコンテンツ「今日の一曲」。
 毎回そのときの気分で一曲選んで紹介するこのコーナーのバックナンバーから、新しいレビュー更新が滞ったとき、ちょこっとずつ抜き出して紹介していきます。メルマガを読んでいない人にはちょっとした暇つぶしに、読んだことのある人にも何か新たな発見があれば幸いです。



≪現代ポップス雑考。≫ Vol.131 2008/01/14
#SINGER SONGER「オアシス」

『愛が今/足りないなら/愛はまだ/降り注ぐように』

 音楽のメルマガとブログをやっているにもかかわらず、数年に1回程度しかライブに行かない出不精な自分ですが、先日誘われましてCoccoのライブに行ってきました。

 最新アルバム「きらきら」は非常に明るいアルバムで、活動休止以前の暗さ重さが好きだった人には反発する向きもあるでしょうけれど、ライブに行くときっと受け入れられるだろうなあ…なんて思わされました。
 昔と決別したわけでは決してなくて、ライブでも「強く儚い者たち」や「樹海の糸」など、昔の曲をかなり披露してくれていまして…当時の活動が今に繋がっていること、そして今の方向性とは違う種類の楽曲もしっかりと組み組んで歌いきっていくCoccoには、明らかな成長が感じられたのです。
 純粋に「ああ、いいなあ」と。

 さて、そうした第2ステージのCoccoの始まりは、くるり岸田繁らと組んだSINGER SONGERにありました。ということで、このところそのアルバム「ばらいろポップ」を聴き返している中から、この曲をピックアップ。
 メロだけを聴くと、ちょっと重めのマイナー調。どうしようもない負の感情をたぎらせ迸らせるサビも想像できそうです。が、そこに現れるのは、暖かな広がりを感じさせるサウンド。シングルとしてリリースされた「初花凛々」も大好きなのですが、始終キラキラした明るさを振りまくそちらよりも、曲作りの転換がはっきりと感じ取れる一曲です。

 叫ぶように、でも確かな強さを持って降り注ぐ愛を描き歌うCoccoの声は、その変遷も踏まえて聴くと、よりドラマティックに胸を打ってきます。ただ、先にも述べたように、今までの彼女自身の音楽を捨てたというわけでもないのです。
 「愛が足りないなら」と呼びかける。「愛が降り注ぐような」と描写する。気をつけたいのは、「愛をあげる」ないし「愛が届く」とは言っていない、ということ。これだけで、Coccoが安易な気持ちで「愛」を前向きに歌い始めたわけではないということが、ひしひしと感じられはしないでしょうか。

 「愛」はあります。足りていない人がいても、それは絶対量が少ないからではなく、降り注ぐ「オアシス」はどこかにある。そういう希望を描く一方、必ず誰にでも届くとは言わないし、あげるとも言わない。重みを知っているからなのか、自分でつかみとるべきだと考えているからか、すべての人が満ち足りるのは無理だということなのか…ただ言えるのは、Coccoが愛を求めることの厳しさを忘れたわけではないのだろうということ。そして、その厳しさを知っていてなお、精一杯の救いを歌おうと試みているということです。

ばらいろポップ
ばらいろポップ
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SINGER SONGER Cocco 岸田繁
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 昨日の「ジュゴンの見える丘」のレビューと合わせてどうぞ。
posted by はじ at 09:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 過去ログ発掘。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月04日

Cocco「ジュゴンの見える丘」

ジュゴンの見える丘
ジュゴンの見える丘
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Cocco こっこ 西條八十
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<変化の中で生まれた、上辺だけではない「強さ」>

 SINGER SONGER「初花凛々」以降、音楽活動を再開したCoccoは、以前のような焼け付くような鋭さはなく、緩やかで広がりのある作風になってきています。
 その中で、シングルでも「陽の照りながら雨の降る」などに見られるように、故郷・沖縄の手法や雰囲気を楽曲に織り込んでくるようになってもいます。発声の仕方も、沖縄民謡のような伸びやかなものに変わってきている気もしますし。自然体、という言葉が似合うような作風に変化してきているなあと。

 で、この「ジュゴンの見える丘」も、沖縄音階を奏でる三線の音色に始まり、沖縄民謡独特の掛け声を思わせるコーラスで終わっていきます。メロディラインもまた、どこか土着の雰囲気を持ったものですね。
 曲調だけでなく、テーマもまた、地元に根ざした内容です。沖縄の海に現れたジュゴン、しかし米軍基地建設が進むと彼らはその場を追われることになってしまう…そんなニュースを知り、ジュゴンたちのことを思って作ったという経緯があるのだそうでして。
 『泣きたかろうに』と気遣い、『もういいよ/少し おやすみ』と呼びかける。そうした態度は、活動休止前の彼女からは考えられないものです。ひたすら内側に溜め込んだ想いをふつふつと煮えたぎらせていたのが、自分以外の他者へ優しさを投げるようになったわけで。感情の発露の仕方が、180度と言っていいくらい変わってきているのです。
 それが物足りない、と感じる人がいるのはまあ当然と言えば当然なのですが、個人的には歌い手の変化って成長や広がりを感じることができて好きだったりします。Coccoにおいても、それは同じ。

 『悲しみは いらない/やさしい歌だけでいい』なんてフレーズがあります。理想的ですが、まあそうは言っても、哀しみをすべて排除してやさしさだけを得ようとするのって、限りなく不可能に近いわけです。
 では、叶いもしない理想を歌うのは、無意味で思慮が足りないことなのでしょうか?自分はそうは思いません。むしろ、「たとえそれが困難でも」などと付け足したりもせずに、臆することなく理想を歌い上げるのは、よほどの強さがないとできないことだと思うのです。
 『継いで接いで連ね/恥さらせ』というフレーズもありますが、こちらも同様。恥をかかないようにすることよりも、恥を堂々とさらそうとできるほうが、ずっと精神的な大きさを思わせるスタンスだなあと。継いだり接いだり、何度もやりなおし加え繕っていく、そして見栄えが悪くなってもいいんだ!という価値観が、この詞の強度を確固たるものにしているように思うのです。別のものを繋いでいってもいい!というのは、本人の方向転換を包括している
ようにも聴こえますしね…

 『あなたに降り注ぐ全てが/正しい やさしいになれ』
 こんな言葉は、暗く痛々しい言葉ばかりを綴っていた彼女だからこそ、強さ暖かさを感じさせるのでしょう。単に楽曲の力だけではなく、歌うCocco自身の遍歴もまた、楽曲をドラマティックに聴かせるスパイスになっています。
posted by はじ at 02:56| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月03日

EXILE「I Believe」

I Believe
I Believe
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EXILE TAKAHIRO ATSUSHI Masaaki Asada
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<飾らないシンプルさが、逆に新鮮な印象に繋がる>

 ちょっと大人しめかな?とも思いつつ、全体的にはいつものEXILEらしい、ミディアムナンバー。あえて特筆すべきことは、第二章から加わっている新ボーカル・TAKAHIROの作詞によるもの、という点でしょうか。

 『今すぐに 抱きしめて 君だけを見ていたい』と歌うサビからもわかるように、胸のうちで高まる「君」への想いを伝えようとする、という内容です。
 まず1コーラスのメロ部分で、片想いの始まりを描く。そして、膨らむ想いを伝えたいと考えていることを述べて、サビで愛のメッセージを並べていく…という、非常にオーソドックスな構成。使われている言葉も平易で、『耳に残る君の 声が 悔しいほど愛しくて』なんてフレーズが個人的にはなかなか好きな感じですが、全体的には目だったところはない、ソツなくまとまった王道曲という感じ。

 しかし、オーソドックスな構成とは言いつつも、片想いから素直に気持ちを告白しようとするスタイルって、実は最近そんなになかったタイプのような。特に、『僕は何故か急に切ないよ』と歌いつつも、一方では『ずっと愛し続ける/僕を信じて』などと歌ってしまっていたりもする、弱気さから強気さまで幅広くカバーしているところとか。
 ここ直近のJ-POP業界は、ちょこちょこと語っていますけれど、何かと「切なさ」を強調する傾向があったように感じていて。片想いであれば、その切なさを狂おしく描いて見せたり、ひとり悶々と思い悩むばかりというような種類のものが多かったように思うのです。

 また、「成長」を考慮していない点も、逆に新鮮。たとえば「僕」や「君」が傷ついていたりしていてそれを救ってあげる…とか、二人ならばもっと強くなれたり人間的に成長できたりする…とか、そういう恋愛+αな要素がないのですね。深く自問自答をするわけでもなく、『君のもとへ 飛んでいきたい』と、ただ「好き」だけの直球です。そういう意味で、90年代前半くらいまでみたいな雰囲気を感じるのかも。
 オーソドックスなのがむしろ興味深い、肩肘張らないで聴き楽しむことがことができる一曲だなあと。
posted by はじ at 01:44| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月01日

KAT-TUN「Keep the faith」

Keep the faith
Keep the faith
posted with amazlet on 08.03.01
KAT-TUN 氷室京介 SPIN 三上吉直 ha-j
ジェイ・ワン・レコーズ (2007/11/21)
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<どちらかに偏らず交錯する硬派さと優しさ>

 KAT-TUNの5枚目のシングルは、氷室京介の手による硬派な印象のロックナンバー。
 ここまで、奇数枚目は名の通った大物からの提供、偶数枚目はそうでもないもの、とはっきりと順番を考えて交互に出してきている感があります。適度に話題性も持たせつつ、でもプロデュースべったりにしてしまうと、彼らのイメージにそぐわないから…というところでしょうか。あんまり過保護な印象を付けたくないのかもしれません。

 そんな意図があるのかないのか、この楽曲も、優等生っぽくなさを醸し出そうとしているようです。『とばすぜ 燃え上がれ本能』『足りない言葉 ピエロは痛み抱え 作り笑い 立ちつくしてる』などなど、男っぽい口調やアウトローな表現が多数。というか、あー氷室京介っぽいなあ、という。なんというか、黒革でキメている感じです。
 ただ、アウトローっぽくはあるものの、底にあるものはとても真っ直ぐだったりします。『俺らが 明かりを灯すから』と言い放ち、『君をそこから 救い出すよ』と助けようとする。無頼っぽくても、きっちりと優しさを見せてくるわけです。氷室京介そのものの方向性もこういうところありますが、『俺ら』とぶっきらぼうに言いつつ『泣かないで』とまで言っちゃうあたり、やはり甘さが多めな気がします。

 で、ハードにロックを決め込んで、低音ラップも織り込んで、『敵無し 不可能も無し』と強気ながらも『だから 近くに…“Sweety”』なんてはっきりと「君」を求める。このあたりのバランスが、KAT-TUNの方向性なのでしょう。
 ただの甘い囁きにはしないし、かといって恋愛や繋がりを思わせる要素を抜き去り、本当の意味でハードボイルドに決めるわけでもない。『間違いだらけの街』の闇を疾走していくようなカッコよさを見せつけつつ、「俺ら」はちゃんと「君」=ファンのほうを向いているんですね。
posted by はじ at 04:41| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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