すぎもとまさと すぎもとまさと&KANA すぎもとバンド 千代正行 ちあき哲也 建石一 星川裕二
テイチク (2007/02/21)
売り上げランキング: 385
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<同世代に響く要素は、「母への追慕」以外にも秘められている>
2007年紅白出場、その前からじわじわと人気を得ていた楽曲。歌い手であるすぎもとまさと/杉本真人/杉本眞人は、音楽業界に身を置いてから35年、58歳で紅白初出場。最年長タイ記録だそう。同率最年長は大泉逸郎「孫」なのですが、こちらは亡くなった母親に捧げた楽曲ということで、好対照を成しています。
吾亦紅とは、花の名前。秋に咲く、バラ科にしては花弁がなく地味に感じる、特徴的ながらもどこにでもある花です。『盆の休みに 帰れなかった』ために、吾亦紅が咲く頃になってひとり会いにきた…というシチュエーション。そして会いに来た相手は、亡くなった母親です。
少し肌寒くなってきた田舎の風景が浮かんできます。そんな場所に嫁いできて、ひたすら「強い母」として生き抜いた「あなた」のことを、今になってひしひしと感じられるようになった。親孝行したいときに親はなしの格言のように、「あなた」の大きな愛をようやくわかってきた。『あなたの あなたの 見せない疵が/身に沁みて行く やっと手が届く』なんていうフレーズが、物悲しさとやるせなさと、何より「あなた」の強い生きざまが感じ取れます。
盆に来ることができなかったこと、そして「あなた」の偉大さに今頃気がついたこと。後悔するかのように、『あなたに あなたに 謝りたくて』『ばか野郎と なじってくれよ』などの言葉が並んでいます。これは、弱気さだったり「あなた」の死に心が折れてしまったりというようなことを思わせますが、ちょっと違うのではないでしょうか。
最後に噛みしめるように語る『髪に白髪が 混じり始めても/俺、死ぬまで あなたの子供…』という呟き。この「あなたの子供」なんだということを再確認するために、謝る/叱られるというような行動を求めているんじゃないかなあ、なんて思います。
そしてそこには、子供として親に甘えたいというような感情ではなく、親の生き方を学び見習って強くあろうとする意志が込められています。「吾亦紅」の語源には「われもこうありたい」という言葉から付けられたという説があるようですが、まさに「あなた」のようになりたいんだ!という思いが、歌と言葉から伝わってきます。続きを読む