2007年12月25日

おしりかじり虫「おしりかじり虫」

NHKみんなのうた おしりかじり虫
おしりかじり虫 松前公高 うるまでるび
Amuse Soft Entertainment, Inc.(AMS)(M) (2007/07/27)
売り上げランキング: 12958


<コミュニケーション不全社会への果敢な挑戦、なのか?>

 2007年度セールスオリコン43位、10万枚以上を売り上げた怪作。ふと耳にして、何だこれは!と思った方もきっと多いはず。
 もともとは「NHKみんなのうた」で発表され、話題を集めてのCDリリースという流れでした。このへんは「だんご3兄弟」など、同番組や他の子ども向けファニー系のヒット曲と同様ですね。昨年のキグルミ「たらこ・たらこ・たらこ」もCMから火がつきましたし、1年に1枚くらいこの手のヒットが出てくるなあと。

 奇抜、というより奇妙かつキテレツな名前ですが、これはキャラ造形からこの曲まですべてを手がけたアートユニットうるまでるびによると、「世知辛い日本を元気にするため、おしりにかじりつくことで人を笑顔にする」というコンセプトが込められているとか何とか。

 確かに、現代では、コミュニケーションが少なくなっている、という傾向が指摘されています。引きこもり問題もそうですし、ネットやメールなど顔を合わせないコミュニケーションの発達、接客のマニュアル化の進行なども、人と直接やりとりする距離感を狂わせる一因となっているような気もします。
 そんな内向的な現代人へのカウンターとしての「おしりかじり虫」。おしりにかじりつく、なんて行動は、コミュニケーションとしてはかなり突飛で過激です。しかし、それくらいの勢いがなければこの現状を打破することはできない、という危機感を感じてのことかもしれません。インパクトがある名前でなければ、その警鐘も見過ごされかねませんし。…また、「虫」という存在を立てていることも、すでにただ人間同士で取り組むだけではこのコミュニケーション不全問題を解決することはできない、とでも言いたげな皮肉も含まれているのではないでしょうか。
 歌詞中には『「都会のおしりは苦かった…」』なんてフレーズも現れます。その点を考えても、現代の病に真摯に向かい合おうとするはっきりとしたスタンスを見て取ることができます。おしりをかじるなんてという非道徳的なアクションで世の中を変えようとする、アナーキー、革命的な姿勢も感じます。これを子ども向けソングという形にして世に出すのは、既存の価値観を打ち壊す概念をこれからの世代に早い段階で植えつける、啓蒙のためなのかもしれません。

 …などと真面目ぶってあれこれ吹いてみるのはとても楽しいんですが、まあそんなに深い意図はないでしょう、たぶん。
 おしりをかじるというのも、社会的どうこうというよりは、どちらかというと単に「ゆるキャラ」「変キャラ」の範疇でしょう。キャラクター産業は、市場が広がりすぎて今やインパクトがある造形や設定などがないと厳しいですからね。
 「虫」なのも(本当は妖精らしいですが)そりゃ「おしりかじり男」とかだったらただの変態かよって話ですし。「都会のおしりは…」云々も、メッセージ性を真剣に考えるんだったら、「なんだそりゃ!」とツッコまれるのを期待しているユーモアなんだろう、と片付けるほうが近そうです。発案段階では実際に「この歌で世の中を明るくしよう!」という意図もあったのかもしれませんが、基本的にはコミカルさを重視しているんじゃないかと。

 それにしても、ひたすらエフェクト全開のボイスで、『おしりかじり虫』と繰り返すだけのこの楽曲、そのシンプルさゆえにインパクトは絶大。平坦な発音はまるで呪文のようで、聴いているうちに洗脳されそうになります。やたらと多い転調もクセモノ。
 「たらこ・たらこ・たらこ」が民謡/歌謡曲調に激しく上下するメロディラインだったのとは正反対ですが、どちらも中毒性があるという点では凶悪なレベルです。


posted by はじ at 03:55| Comment(5) | TrackBack(0) | J-POPレビュー企画もの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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