ACIDMAN 大木伸夫
EMIミュージック・ジャパン (2007/07/18)
売り上げランキング: 5049
EMIミュージック・ジャパン (2007/07/18)
売り上げランキング: 5049
<世界を「発見」する感動を求める密やかな意志>
デビュー以来、高いクオリティで自らの目指す音と世界観をストイックに貫いているACIDMAN。今回もまた、全開でテンションを上げていくと思ったら次の瞬間ふっと静寂が訪れたり、途中で一回曲が止まっとかと思ったら拍子が変わったり、変則的な面が多数あります。が、奇をてらっているというよりは、とにかく表現への貪欲さを感じるんですよね。
そして歌詞は、今回全英語詞になっています。
『Remind me,the moonlight is holding the night nice and calm』
サビの部分を意訳気味に読むと、(月の光に照らされた平穏で素晴らしい夜を思い出させて)というところでしょうか。
『Remind me,the world made the night so we don't miss the glow』
(夜は、我々が光を見逃さないためにあるということを思い出させて)
こちらでは、夜が『a faint glow』(ほのかな光)を浮かび上がらせる存在として描かれています。
その他、「night」は至るところに頻出します。これはそのまま時間としての夜を表しているのかもしれませんが、もうひとつ、「隠された何か」がそこにある場、という意味合いも含んでいるのかな?とも思うのです。
『We can't see the real treasure with our eyes』
(本当に大切なものは目に見えない)という言葉どおり、「夜」に
潜んでいる何かを見つけ出したい!という気持ちが、「Remind me」という呼びかけには込められているのではないのかなと。
そして一方では…
『Find the air,Finding the earth,Finding water,Finding fire』と、
世界の根幹を成すものを「find」=「見つけて」あるいは「悟って」とも呼びかけてみる。このようにこの曲には、「発見」を指し示す言葉が溢れているのです。で、それは同時に、それらの「発見」による感動も暗示しているのではないかなーと感じるのです。大気や大地や水や火を、改めて「発見」する…それは、たとえば素晴らしく雄大な景色を見たとき、自然の神秘に触れたときなどに誰もが感じるような、世界に対する畏敬の念のような感覚。これを指しているのではないでしょうか。
ACIDMANの歌詞世界は、世界を透徹した視点から眺めたり、まさしく今回のように「発見」したりという内容が多いです。で、そこへ来ての「remind me」と繰り返される叫びは、もっと「世界」の神秘を見つけ出したい、もっと感じ取りたい…という意志がこもっているように感じるのです。「remind」は「思い出させる」という意味の語ですが、ここでは「伝えて」、「〜と思わせて」くらいの感情が込められているんじゃないかなーと。
ACIDMANの表現しようとしている詞のスタンスをはっきりと提示している、ある種彼らのアンセムのような一曲だなあ、と思いました。
ちなみに、英語で詞を書いたり、「he」に語らせてみたりしているのは、人間の意志を強く表に出さない、感じさせないようにしたいからなのかなと。「僕は世界を感じたい!」じゃ、ストレートすぎるわけで。人の感情など介在しない圧倒的に雄大な「世界」の存在を描きたいから、あえて感情を見出しにくい英語だったり、セリフは顔のない「he」のものだったりしているんじゃないでしょうか。
そう考えると、「remind」という単語を選んだのも、その延長線上にあるのかもしれませんね。「する」ではなく「させる」と、自分の意志ではない見せ方になっていますから。