2007年10月31日

Hey!Say!7「Hey!Say!」

Hey! Say!
Hey! Say!
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Masaya Suzuki Akio Shimizu 石塚知生 Hey!Say!7 Erykah はしもとみゆき
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<世代を強調することで明確化するスタンス>

 平成生まれのメンバー7人でのユニットがHey! Say! 7で、そのデビュー曲が「Hey! Say!」。実にわかりやすいです。
 しかしながら、それだけ強調するインパクトが「平成生まれ」という言葉にはあると言えます。良くも悪くも、元号は明確な時代の区分として、日本社会における日本人の意識に大きな影響を及ぼしているわけですね。平成元年に生まれた世代が18歳として社会に出てくる今年を狙ってデビューさせているのからしても、「新しい時代の先陣」としてメンバーを位置づけているんじゃないかなーという気がします。

 楽曲の中でも、ラップ部分では『僕らは平成Only! 昭和でShowは無理!』なんて言い切っています。おいおい、と昭和生まれとしては挑戦状を叩きつけられたような気分にもなりますが、他はそこまで新世代を強調しているわけではありません。『未来にきっと 夢があるから』というピュアなフレーズや、『どんな欠点も 意味無いよ 君はそのままが一番』という「ありのまま」を肯定するイマドキのメッセージで埋め尽くされています。

 「僕たちは新しい世代だ!」みたいな主張をもっとするようにも作れたはずなんですけど、そういうコンセプトにしなかったのは、なぜでしょうか。
 まず考えられるのは、彼らより上の昭和生まれ世代のファンも獲得したいから、ではないでしょうか。平成生まれの同世代だけに呼びかけるのであれば、もっとそこを強調したほうが強い支持を集められるはずです。
 もうひとつは、そもそもそうした「世代の繋がりを重視した呼びかけ」は、彼らの世代にはあんまり効果がないと考えたのかもしれません。それよりも、『大きな翼があれば ハダカでいいじゃない』とか、『この星が 僕ら輝くStage』といった壮大かつ等身大な表現が響く、そう考えてのことなのかもなあと。

 どちらにせよ、この曲で印象深く感じるのは、彼らの初々しさです。声変わりしていない声も混じる時点でもうインパクトありますが、単純に歌い方も幼い感じ。
 そして、『出会い燃えてるよ 命かけて守る』なんてフレーズも、この初々しさゆえに微笑ましいピュアなものとして受け取ることができます。やっぱりこんな直球は、大人が放っても仕方がないものですから。続きを読む


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2007年10月30日

モーニング娘。「女に 幸あれ」

女に 幸あれ
女に 幸あれ
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江上浩太郎 湯浅公一 モーニング娘。 つんく
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<マクロ路線を脱却し、ミクロな哀愁を届ける>

 このところ、明らかにソーシャルな楽曲からパーソナルな楽曲へとシフトしていき、それに合わせるかのように歌謡曲テイストも香ってきているモー娘。です。
 今回なんかは、『あなたの口癖/まだ耳に残る』『あの子といつから/仲良しなの?あなた』と、失恋しながらも忘れられないでいる具体的な主人公像が描かれてきています。一時期はもっと広く、多くの人に開かれたメッセージを発している内容のものばかりだったりしました。近年では「歩いてる」くらいで、あとは具体的個人的なストーリーのある曲ばかりです。

 そういう歌詞の方向性の変化に沿うかのような「歌謡曲」テイストの復活は、実にぴったりです。音作りもどこかレトロさがありますし。こういうタイプの曲調は、哀愁を感じさせ、主人公の哀しみに聴き手を引き込む効果が強いわけです。
 恋人を別の子に取られてしまうけど、心変わりを嫌いになれない…というシチュエーション設定も、なんだか実に歌謡曲的。『都会に憧れ/遮二無二暮らした』なんて言い方も、タイトルからしてもそういう懐メロテイストを意図してのものでしょう。

 にしても哀愁調といい、『バカね バカね バカね』なんて決めどころといい、つんくらしさが発揮される曲が再び多くなってきた(「笑顔YESヌード」なんかでも感じましたし)のは、決して悪くない流れだと思います。一時期のようにマクロな人気を回復するのはもう難しいと思いますが、こうしてミクロな個人にフォーカスした楽曲
をリリースしていくのは、選択として正しいんじゃないかなと。
posted by はじ at 00:54| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(ま行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月28日

メルマガ、Vol.121発行。

メールマガジン≪現代ポップス雑考。≫
Vol.121 2007/10/28 発行部数:めろんぱん 439/まぐまぐ 152

<雑考バトン:新曲レビューリレー>
安藤裕子「海原の月」
 〜持ち味を生かしつつ、感動を生む曲展開

<新着レビュー>
松浦亜弥「笑顔」
 〜柔らかく懐かしい感触の「清純派」王道

<ひとこと寸感>
やなわらばー「いちごいちえ」
アンジェラ・アキ「孤独のカケラ」
Base Ball Bear「ドラマチック」
リア・ディゾン「恋しよう♪」
Crystal Kay「あなたのそばで」
FUNKY MONKEY BABYS「ちっぽけな勇気」
SUEMITSU&THE SUEMITH「Sagittarius」
鬼束ちひろ「everyhome」
上戸彩「涙の虹」
音速ライン「恋うた」
秦基博「鱗」
Rie fu「ツキアカリ」
GOING UNDER GROUND「TWISTER」



 「年間チャートより抜きレビュー」、今回は「ひとこと寸感」で手一杯でできませんでした。次から2002年ということで、よろしくお願いします。


 ※メルマガについての詳しい説明は、こちらへどうぞ。
  バックナンバーも開放しています。
posted by はじ at 17:29| Comment(2) | TrackBack(1) | メールマガジン。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月27日

SEAMO「Fly Away」

Fly Away
Fly Away
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Shintaro “Growth” Izutsu 鈴木ヒロト SEAMO 2BACKKA KOZUE 高田尚輝 HAMMER Mago
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<メッセージは「歌い上げる」のではなく「語りかける」ように伝える>

 昨年「マタアイマショウ」がロングヒットし、今年も「Cry Baby」をリリースしたりとメロウなセンスが目立つSEAMOですが、今回はノリのいいアップテンポ楽曲。「ルパン・ザ・ファイヤー」は元曲がかなり大きくフィーチャーされていたので、オリジナルのアップテンポなシングルをちゃんと聴くのは初めて。

 感じたのは、全体的にはノリノリなディスコチューンなんですけど、フック(いわゆるサビ)の部分はちょっと哀愁が漂っているなあという点。4つ打ちのダンサブルな雰囲気は変わっていないんですけど、ストリングスのせいでしょうか。
 さらに途中に『Should be! You will be do』とコーラスが挟まるので、メロディアスなひとつの流れがなく、聴き手を引き込むツカミとしては若干弱いかなあという印象です。

 ただ、それはそのフック部分というよりも、そのぶんラップ部分に力を注いでいるからなのかも、とも感じます。スピーディーに展開していくリリックは聴き心地がよく、『地味に足を地に付けてきてこそ 変わる いずれ肉と血に』『まだまだ自分を引き出せてないな』などメッセージ性にも富んでいて、韻も意識し工夫して揃えられています。
 そうした熱い意志をラップで語りまくり、フックはあくまでも『舞い上がれ』『今ならね 飛べるはずだから』と、一歩下がった立ち位置から後押しするような形になっているわけです。いわゆる普通のポップスにおけるメロ/サビとは違う書き方になっていますね。

 近年はヒップホップ楽曲でも、フック=サビ、もっとも中心となる聴かせどころとして構成している楽曲が増えています。そのほうがやっぱり、耳に残る印象的な部分を作ることができて、ヒットしやすいのでしょうね。
 SEAMOもまた非常にメロディアスなフックを作れる人で、それが「マタアイマショウ」で評価されたのでしょう。ただ、すべてそういう形で作るのではなく、強くメッセージ性を込めた今回なんかは、歌い上げるんじゃなく、ラップの強みである「語りかけるように伝えられる」利点を生かしたかったのかなと。だから、あえてフックの重みは削り、ラップパートに重きを置く作りにしたのかなー…なんて考えました。
posted by はじ at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(さ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月26日

大塚愛「PEACH」

PEACH/HEART
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愛 Ikoman 大塚愛
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<収束しないまま詰め込む連想モチーフ>

 「CHU-LIP」に続き、今年2発目の脳天気系アッパーチューン。夏リリースということで、季節も意識したかなりノリ重視の速いテンポで展開していきます。
 「桃」=「おしり」という発想だけだとベタですが、この曲では「ハートマーク」の逆さまの形とも見立てているところがポイント。確かにそうだ。「CHU-LIP」のときもそうでしたけど、こうしたちょっと面白いネタを拾ってきますね。

 で、この発想を中心に据え、そこから広げていくように(+夏っぽさ陽気さを加えつつ)詞が綴られています。ハートの形は『一点で不安定だからすぐ一転する』=桃の形になる、『だけど返してみるよ』。つまり、カッコよく言えば<愛ってとてもアンバランスなものだけど、たとえ何度つまづこうとも、私はあなたへの想いを貫いてみせる>といった感じでしょうか。
 真面目なことをあえて真面目に書かず、あえてユーモアを交えて軽く書いてみせる…というよりは桃→ハートの発想から単に広げてみたという感じでしょうけど、結果的には脳天気でポップな楽曲にそういうメッセージを織り込み、ちょっと深みを持たせているわけですね。
 あと、「おしり」への連想も入ってます。2コーラスでは「PEACH」を「BEACH」にして、『お尻だらけの誘惑/少しくらい心配したっていいじゃない、信じてるけど』…と、バランスを崩した状態=誘惑が多い、と合わせている、と。

 そういうことで、脳天気な中にもあれこれ意味が織り込まれているわけですが…ただ、あんまり設定を詰め込もうとするあまり、字余りや字足らずが多くメロディラインが安定しないのが気になるところ。相変わらずキャッチーなことはキャッチーなんですけど、言葉がうまく乗っていない点があるため、ちょっと間延びしたような印象を受けてしまいます。
 また、あれこれイメージを広げていくのはいいんですが、中身がとっ散らかっている感はぬぐえません。桃やハートの一節と『夏だねぇ!』という季節設定および「お尻の誘惑」にはあんまり繋がりが見えないですし、『機嫌直して 楽しもうよ』というのも唐突で、あれ?ケンカしてたの?みたいな。まあ「PINCH」って言ってますけど、状況説明があんまりうまくないなーと。
 前回「CHU-LIP」でも、というかずっと前から感じていましたが、彼女の詞の乗せ方はあんまりうまくないのです。それが今回は特に気になってしまいました。また、「フレンジャー」なんかもそうでしたが、歌詞にあれこれ詰め込みすぎて、中心がぼやけてしまいがちな傾向もそうですね。まあ、これはこれでバラエティ豊かでいいんじゃないか、とも言えそうではありますが。

 そういう素っぽさと、だからこそのわかりやすい言葉や音、そしてマイナス面が気にならないくらいにカバーするアレンジ力が彼女のアッパー系楽曲の特徴でして。今回も、手拍子の合いの手や『愛しちゃうから』のキメ部分なんて、実にうまいですよね。
 ただ、そうしたあれこれでカバーできない部分で息切れし始めてしまっているような気がします。だからリリースラッシュさせずにゆっくり育てるべきだ、って「金魚花火」の時点で言ってたんですが…

 アッパー⇔しっとりの往復だけでなく、新しい方面に挑戦したり、誰かに曲を提供してもらったり。あるいは充電期間を置くという選択もあるかもですが、とにかくちょっと次の段階に移る時期なんじゃないかなーという気がします。
posted by はじ at 23:52| Comment(4) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月25日

RIP SLYME「熱帯夜」

熱帯夜
熱帯夜
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RIP SLYME Luis Gonzaga RYO-Z David Nasser Zedantes ILMARI PES SU
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<ローギアからじっとりと漂ってくるエロス>

 ピコピコ音がクセになりそうな、夏の熱い夜を描いた一曲。チープな打ち込みの淡々とした響きが、じっとりと汗ばむような蒸し暑さと、官能的なささやきめいたエロさを盛り上げています。

 RIP SLYMEの音楽は、どこかギアがローで、迫ってくるような暑苦しさを感じさせない曲が多いです。それが気だるさとなって表れると「楽園ベイベー」や「黄昏サラウンド」になり、飾らない等身大なスタイルの表明として表れると「One」になるのかなと。
 で、今回の場合、このローさが怠惰でただれたプライベートを感じさせる、押し殺したアダルトなムードを醸し出しているんだろうと考えるのです。そう考えると、「熱帯夜」というじっとりとした熱さを感じさせるシチュエーションに官能性を乗せるのは、彼らのスタイルにピッタリだなあと。

 リリックでは、とにかく印象的なのは『あなたなら Ah 私なら Woo』の部分でしょう。これがどこか扇情的に聴こえてインパクト大なのは、とにかく覚えやすいフレーズだという点と、あとはメロディによる部分も大きいのかなと。
 特にヒップホップの分野だと、こんなメロディラインでキメの1音(ここでは「Ah」「Woo」のところ)が最後にある場合は、強調したいために音が上がることこそあれ、下がることはあんまりない印象があります。そこをあえてだらりと下がった音で発声するので、まるで吐息のような響きになり、色っぽく響くのかなあと。

 そして、細かいですが『ホテらすネツタイヤ』と、「熱帯夜」の「ツ」をはっきり発音しているところも見逃せません。「ツ」は声帯が震えない無声音ですが、やっぱり「吐息が漏れた」ような響きを生みますから、この文脈だとエロさに一役買う形になります。
 実際に発音してみると、この「ツ」のアクセントがあるのとないのとでは、受ける印象が大きく違ってくるのがわかるでしょう。
 これと似たようなところでは、『もう元に戻れないぜ 二人のまれ/街中熱く染まるファンファーレ響くぜ』というMCパート部分が、「ふ,たりのまれ」「ま,ちじゅう」「ひ,びくぜ」なんて区切って歌われているなんてのも。もちろん韻やリズムの制約はありますが、単語の中での区切りをわざわざ強調して言っているフシがあります。これも、はっきり区切ることで、昂ぶっているムードを演出しているんだろうなあと。

 トラックで言うと、チープさローさのもたらす効果は先に述べたとおり。
 そして、「Ah」「Woo」の歌い方と同じく、コードもそれをなぞるトラックも下降音型を軸として構成されていて、それが静かに立ちのぼるアダルトな雰囲気に貢献しています。

2007年10月23日

スピッツ「群青」

群青
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スピッツ 亀田誠治 草野正宗
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<柔らかくぼやけた雰囲の中で語られるアクティブさ>

 異色のコラボとして話題になったKREVA「くればいいのに feat.草野マサムネ from SPITZ」ですが、その後に発売されたこちらのシングルは、スピッツ王道を行く爽やかでポップなサウンドです。

 スキマスイッチ大橋卓弥と植村花菜がコーラスに参加していますが、実はメロからサビからすべてにコーラスが振ってあるという、ちょっと変わった作りになっています。そのぶんハイトーンが控えめで、ちょっと地味にも聴こえますが、激しい上下動の少ないメロディラインと合わせ、歌い上げすぎない耳馴染みのよい歌を楽しむことができるかなと。
 『心取り戻せ』とか『裸足でかけだす』とか、特にスピッツにしてはわりとアグレッシブめな行動が描かれているのに、『青く染まっていくよ』というイメージにすっと収束できるのは、上記のコーラスをはじめとする、攻撃的でなく柔らかめすっきりめな音作りが影響しているのではないでしょうか。

 『どれほど遠いのか知らんけど 今すぐ海を見たいのだ』
 詞は、この「海」を目指そうとする気持ちなど、全体に前向きでアクティブな内容です。
 このフレーズ、砕けた、どこかユーモラスな口調ではあるものの、「何が何でも目的を果たそうとする」意志を表していますよね。そういう強さをわざとごまかして茶化すように描くのが、スピッツ流。その後の『明日とか未来のことを 好きになりたいな少しでも』も、「未来を信じたい」なんて直球には言わず、あえてちょっとぼかしている感じがします。「とか」あたりとか。


 あとは、過去の歴史と照らし合わせたりしつつ語っているファン向けのレビューを、すでにこちらにアップしています。もっとディープな内容が読みたい方はどうぞ。
posted by はじ at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(さ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月22日

Aqua Timez「ALONES」

ALONES
ALONES
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Aqua Timez 太志
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<奮起よりもリラックスを促す、「頑張るな」というメッセージ>

 Aqua Timezの新曲は、スピード感を持って進んでいく軽快なナンバー。これまでのシングル群は、基本ミディアムテンポで進行し、歌詞の内容と共にどっしりとした印象を与えてくるものでしたが、その枠組みから少しだけ外に踏み出した感があります。
 とはいえ、リズムの刻みを広くすることでどっしり落ち着く部分も多いですし、また歌詞も非常にメッセージ性が強く、芯の部分はほぼこれまでと同じと考えてよさそうです。

 「君」への呼びかけは、強さではなく、優しさに重きが置かれています。
 『もう誰かのためじゃなくて 自分のために笑っていいよ』
 『こらえることだけが勇気じゃない』
 人に気を配ったり、我慢したりして疲れたりしないで、そんなことはさせたくない。こうしたフレーズを見ていくと、中心になっているのは、「無理して頑張らなくていい」というこの一点に集約されていることがわかります。
 陽性のメッセージではありますが、「頑張れ」と発奮を促す応援ソングとは、正反対の主張なのです。無理をせず、自分のペースでいい。もっと自分を大切にしよう…こうした観点に立って練られたメッセージになっているのですね。

 で、この曲中ではさらに、どうして「頑張れ」とは言わず「頑張るな」というメッセージを選んだか?について、根拠というか背景に当たると思われる内容も綴ってあります。
 『君は少し 青すぎる空に疲れただけさ』
 『時にこの世界は 上を向いて歩くには 少し眩しすぎるね』
 空の青さ、そして眩しすぎる世界。何か悪い物事が起こったためではなく、むしろ良さげな性質のものが「君」の障害になっているのでは…と類推しているわけです。

 問題はないはずなのに、世界は素敵なもののはずなのに、なんだか疲れてしまう。便利で裕福な生活を送っていても満たされない、という現代の病理を思わせます。そんな中で、最近は「頑張れ」という言葉は無責任に感じる、なんていうふうにもよく言われるようになりました。少なくとも、うつ症状の人にとっては、重荷になってしまうとして、絶対に言ってはいけないとされていますよね。
 普通に生活を送っている中でも『依然として忍び寄る孤独』に怯えたり、つい周りに合わせたり、劣等感にさいなまれたりしてしまう。うつに限らず、そんな感覚を持って苦しんでいる人へ届けるメッセージは、「頑張れ」ではなく「頑張るな」のほうが適切なのかもしれません。
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2007年10月21日

メルマガ、Vol.120発行。

メールマガジン≪現代ポップス雑考。≫
Vol.120 2007/10/21 発行部数:めろんぱん 439/まぐまぐ 152

<雑考バトン:新曲レビューリレー>
松浦亜弥「笑顔」
 〜「方向」は変わっても「方針」は変わらず?

<新着レビュー>
ET-KING「ギフト」
 〜「ハートフルな語り」の新潮流

<年間チャートより抜きレビュー>(2003年)
倖田來未「real Emotion/1000の言葉」
 〜ブレイク以前のスタンスとその苦闘


 「年間チャートより抜きレビュー」のコーナー、来週から2002年に移っていきます。正直、2001〜2003辺りはあんまりきちんとミュージックシーンに触れていなかったので、なかなか辛いものがあります。
 まあ、逆にニュートラルな立場から語りやすいと言えるのかもしれませんが。

 というわけで、これは取り上げてほしい!というヒット曲がありましたら、お気軽に情報をお寄せくださいませ。


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2007年10月20日

Acid Black Cherry「SPELL MAGIC」

SPELL MAGIC
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林保徳 Mr.Rose Nobuhiro Mitomo Acid Black Cherry 千沢仁
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<エンターテインメントとして提示する「エロ」>

 Janne Da Arcのボーカルyasuによるソロプロジェクト、だそうで。
 ジャンヌダルクって、ビジュアル系の中でもわりとライトめな感じなんですが、こちらはかなりがっつりと様式美に染まっています。楽曲もヘビーめでズンズン響いてきますが、歌詞は完全にアダルト路線。吹っ切れてます。

 視点は恋に溺れる女性からのもの。『子宮がまた疼いて 鮮明に蘇る熱帯夜』とか、『よがりよがって恋に堕ちて!』とか、直接的な表現が満載。
 もともとジャンヌでもエロ路線や女性視点を描く人なので、それ自体はそこまで衝撃的ではないですが…『×∞』とか『バカだけど幸せになりたい』とか、悪い男にたぶらかされたっぽい主人公女性像が、だいぶジャンクに突き抜けています。このくらい派手にやると、ソロで活動する意義もあるというものですね。

 『噛みつく A (kiss)/ジャレついて B(愛撫)/飲み干して C(sex)』…ABCの隠語って、もう通じない世代も出てきているんでしょうかね。とりあえずわざわざカッコで解説してくれるあたりは、彼なりのエンターテイナー性なのかなあと感じます。
 ちなみに、バンド名も頭を取るとABCですよね。ソロはひたすらエロ路線で行くとのことなので、その辺は織り込み済み、かつデビュー曲にABCを盛り込んでいるのも意図的なものでしょうね。
 ちなみにその2。「飲み干して」に関しては、曲タイトルにかけているような気がするんですが…これもヘンに想像しすぎということはないのではないかなと。
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2007年10月19日

木村カエラ「Samantha」

Samantha
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會田茂一 根岸孝旨 木村カエラ
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<憧れに掲げた人物が、自己嫌悪の暗さを払拭する>

 BEAT CRUSADERS提供だった前作「Snowdome」はぐっとメロウでとっつきやすい一曲でしたが、ここでまたロック感溢れるナンバーをリリース。
 余計な音のないバンドサウンド、ぐっと密度が高まる変拍子の混ざり込み部分、ハイトーンに飛ばず低い重心の低いサビ。これだけ並ぶと実にとっつきにくそうな玄人志向の楽曲っぽいんですが、でも聴いてみると案外聴きやすかったりします。本人の声質もあるのでしょうし、「You」「TREE CLIMBERS」などを思い出すエッジの利いたガリガリした響きは、けっこう耳に心地よく響いてきます。

 『あーこんな自分は/あーダメダメなんだ』と、自己嫌悪に陥っているわけではあるものの、「あー」とかコミカルな表現をしているため、あんまり暗さは感じません。ひらがなも意図的に多かったりしますし、深刻さよりは穏やかさを感じます。
 それは、『どんな時も たのしむため』という考え方に拠るものでしょう。さまざまに起こるマイナスの要因も、「たのしむ」こと。こうしたスタンスが、いつだって辛いんだ!と宣言しながら『毎日はきっとすばらしい』と言ってのけるような芯の強さに繋がってきています。

 「あーサマンサのような/大きな人になりたいな」と持ち出されるこのサマンサとは、海外の有名ドラマ「奥様は魔女」の主人公からだとか。どういうところが憧れなのか?については、『私よりも大切な人を/いちずに思い 守れる事』あたりでしょうか。「奥様は魔女」のサマンサは、夫のために魔法を使わない生活を選び、夫に寄り添おうとしたわけなので、確かに「いちず」ですよね。
 また、コメディドラマらしいサマンサや物語の明るい雰囲気も、織り込まれているように感じます。それが、『あーこんな自分は/さよならで バイバイ』というような、深刻すぎない自己嫌悪と身軽さに通じているのかなあと。これは、実に彼女自身に沿ったスタンスでもありますね。続きを読む
posted by はじ at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(か行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月18日

過去ログ発掘のコーナー その26。

 メールマガジン「現代ポップス雑考。」のおまけコンテンツ「今日の一曲」。
 毎回そのときの気分で一曲選んで紹介するこのコーナーのバックナンバーから、新しいレビュー更新が滞ったとき、ちょこっとずつ抜き出して紹介していきます。メルマガを読んでいない人にはちょっとした暇つぶしに、読んだことのある人にも何か新たな発見があれば幸いです。



≪現代ポップス雑考。≫ Vol.046 2006/05/07
#YUKI「ハミングバード」

 『白いキャンバスに描く空/深いスカイブルー越えたら
  広がる 無限のジオラマ』

 ゴールデンウイークということで、1泊2日の旅行に連続で行ってきました。ひとつは母方の実家のある福島、ひとつは地元の友人と房総半島へ。

 福島で、イトコと車ででかけたのですが、そのとき車内でかけてくれたのがCaravanという人の「RAW LIFE MUSIC」というアルバム。彼は以前このアルバムの曲を聴いたのがきっかけで、思い立って沖縄まで旅行に行ってきたのだとか。そんな気持ちが、聴いているとよくわかるんですよね。シンプルなんだけど、まるでさまざまな町の片隅で弾き語っているような、自然に体が動いてしまうような心地よいリズムが印象的でした。

 で、そのアルバムに入っている曲を、YUKIが詞を一部書きかえアレンジしたのが、この「ハミングバード」なのだそうです。元歌の歌詞が見つからなかったので、とりあえずYUKIバージョンの、旅っぽい雰囲気の部分を紹介しておきます。やっぱり旅っていいものですねー。


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RAW LIFE MUSIC
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 YUKIのシングルコレクション、素敵です。曲がどれもいいし、本人のライナーノーツもかなり興味深いものばかり。

 この曲は、原曲とちょこちょこ歌詞が変わっていて、改めてふたつを比べてみるとなかなか楽しいです。『13回目のファイナルアンサー』なんてユーモアのあるフレーズはそのままに、かなり違うシチュエーションになっていたりして。
 また、あんまり難しく考えず、穏やかさに浸って聴くのもいい感じ。
posted by はじ at 03:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 過去ログ発掘。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月16日

ORANGE RANGE「イケナイ太陽」

イケナイ太陽
イケナイ太陽
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ORANGE RANGE
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<ネットリした歌謡サウンドで、男女がお互い燃え上がる>

 ORANGE RANGE・ミーツ・歌謡曲といった、こってりした熱気の漂うナンバー。なかなか新鮮な感じです。
 このところの彼らはアッパーチューンかメロウかの両極端な二極族が進んでいました。今回はアッパーではあるもののマイナー気味でどこかねっとりした歌謡調の曲作りをしているのが、今までにない感じです。『騙し騙され胸うずく 下手な芝居が より盛り上げる夜』なんてフレーズも、まるでサザンかと思うような世界になっていますね。
 どうもわりと前から暖めていた曲らしいですが、タイミング的にはちょうどよかったのかなーと。

 ベースはロックサウンドなんですけど、だいぶ低音が強い感じ。こういう重心の低さを感じるのも、久々かなと。でもその一方で、『Na Na Na Na…』とイントロとアウトロにあるスキャットは、今までどおりキャッチーなツカミのためにきっちりと用意されています。

 内容は、『お前のセクシー・フェロモンで オレ メロメロ』な、勢い任せの夏のアバンチュールです。『熱く奥で果てたいよ』とか、エロ方面に持っていくのもお約束。
 ただポイントは、こういうのってたいてい男が女を誘う、そんで雰囲気たっぷりに持っていっちゃうか、もしくは勇気が出なかったり返り討ちにあったりするヘタレパターンか、のどちらかが多いものなんですけど、この曲では女性からの視点も含まれているところ。しかも、『徐々に高鳴る鼓動 止められないわ!』とノリノリです。
 男性側も女性側も、『オレはイケナイ太陽』『あたし イケナイ太陽』と並置され、同じように扱われているところを見ると、お互いにテンションが上がっている状態なんだろうなと聴き手は想像できます。両サイドの盛り上がりを描くことで、相手がどう思っているかわからない、どう「落とす」かというスリルはなくなりますが、テンションは2倍になる。この歌は、どう転ぶかわからない「駆け引き」の歌ではなく、二人で一気にボルテージを上げていく「フィーバー」の歌なんですね。
 ドラマ「花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」の主題歌ということですが、このタイトルからしてフィーバーしている作品にもテンション的には近かったのかもしれません。

 あと『きっと キミじゃなきゃ やだよ』の「きっと」が利いてますね。細かいことを押し流して、テンションだけで持っていく真夏の若者らしい雰囲気。純愛ストーリーものに真っ向から対抗している感じで、まあそんなつもりはないでしょうけれど、なかなか痛快です。
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2007年10月15日

ACIDMAN「REMIND」

REMIND
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<世界を「発見」する感動を求める密やかな意志>

 デビュー以来、高いクオリティで自らの目指す音と世界観をストイックに貫いているACIDMAN。今回もまた、全開でテンションを上げていくと思ったら次の瞬間ふっと静寂が訪れたり、途中で一回曲が止まっとかと思ったら拍子が変わったり、変則的な面が多数あります。が、奇をてらっているというよりは、とにかく表現への貪欲さを感じるんですよね。

 そして歌詞は、今回全英語詞になっています。
 『Remind me,the moonlight is holding the night nice and calm』
 サビの部分を意訳気味に読むと、(月の光に照らされた平穏で素晴らしい夜を思い出させて)というところでしょうか。
 『Remind me,the world made the night so we don't miss the glow』
 (夜は、我々が光を見逃さないためにあるということを思い出させて)
 こちらでは、夜が『a faint glow』(ほのかな光)を浮かび上がらせる存在として描かれています。

 その他、「night」は至るところに頻出します。これはそのまま時間としての夜を表しているのかもしれませんが、もうひとつ、「隠された何か」がそこにある場、という意味合いも含んでいるのかな?とも思うのです。
 『We can't see the real treasure with our eyes』
 (本当に大切なものは目に見えない)という言葉どおり、「夜」に
 潜んでいる何かを見つけ出したい!という気持ちが、「Remind me」という呼びかけには込められているのではないのかなと。

 そして一方では…
 『Find the air,Finding the earth,Finding water,Finding fire』と、
 世界の根幹を成すものを「find」=「見つけて」あるいは「悟って」とも呼びかけてみる。このようにこの曲には、「発見」を指し示す言葉が溢れているのです。で、それは同時に、それらの「発見」による感動も暗示しているのではないかなーと感じるのです。大気や大地や水や火を、改めて「発見」する…それは、たとえば素晴らしく雄大な景色を見たとき、自然の神秘に触れたときなどに誰もが感じるような、世界に対する畏敬の念のような感覚。これを指しているのではないでしょうか。

 ACIDMANの歌詞世界は、世界を透徹した視点から眺めたり、まさしく今回のように「発見」したりという内容が多いです。で、そこへ来ての「remind me」と繰り返される叫びは、もっと「世界」の神秘を見つけ出したい、もっと感じ取りたい…という意志がこもっているように感じるのです。「remind」は「思い出させる」という意味の語ですが、ここでは「伝えて」、「〜と思わせて」くらいの感情が込められているんじゃないかなーと。
 ACIDMANの表現しようとしている詞のスタンスをはっきりと提示している、ある種彼らのアンセムのような一曲だなあ、と思いました。

 ちなみに、英語で詞を書いたり、「he」に語らせてみたりしているのは、人間の意志を強く表に出さない、感じさせないようにしたいからなのかなと。「僕は世界を感じたい!」じゃ、ストレートすぎるわけで。人の感情など介在しない圧倒的に雄大な「世界」の存在を描きたいから、あえて感情を見出しにくい英語だったり、セリフは顔のない「he」のものだったりしているんじゃないでしょうか。
 そう考えると、「remind」という単語を選んだのも、その延長線上にあるのかもしれませんね。「する」ではなく「させる」と、自分の意志ではない見せ方になっていますから。
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2007年10月14日

メルマガ、Vol.119発行。

メールマガジン≪現代ポップス雑考。≫
Vol.119 2007/10/14 発行部数:めろんぱん 441/まぐまぐ 150

<雑考バトン:新曲レビューリレー>
ET-KING「ギフト」
 〜人気獲得に強いリスペクトソング

<新着レビュー>
秦基博「青い蝶」
 〜手に入れたいものは、どんなイメージ?

<年間チャートより抜きレビュー>(2003年)
ORANGE RANGE「上海ハニー」
 〜嫌われやすい点こそ、この時求められていた


 3連休が頻繁にあったので、土日休みだけだとなんだか物足りなくなってしまった感が。や、ちゃんと2日休みがあるだけ喜ばなきゃいけないところですが。

 それにしても、また一段と仕事が忙しくなっています。今月いっぱいくらい、もう少し更新ペースが落ちてしまうかもしれません…スピッツのニューアルバムを聴きつつ、頑張りたいところです。


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  バックナンバーも開放しています。
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2007年10月13日

浜崎あゆみ「glitter」

glitter/fated
glitter/fated
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H∧L HIKARI CMJK 浜崎あゆみ ayumi hamasaki
AVEX GROUP HOLDINGS.(ADI)(M) (2007/07/18)
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<長いブランク開けに、ポジティブなリスタート宣言>

 2本構成のベストアルバム「A BEST 2」を発表してはいたものの、かなり久々となる浜崎あゆみのシングル曲。シングルとしては「BLUE BIRD」以来、1年以上のブランクを経ての新作は、歌詞の内容もリスタートを感じさせるものになっています。

 『この夏 僕達の 新しい旅が始まる』『まだまだ 加速は/止まらない』と、夏という季節に合わせ、勢いに乗って進んでいこう…というのが大まかな展開。サウンド面もキラキラ感満載で、これからの広がりを期待させる雰囲気です。
 キラキラな打ち込みというのはもうお馴染みの「浜崎スタイル」で、改めて王道を打ち出してきたなーという印象です。

 で、ただ、夏だ!前へ進もう!というわけではなく、大切な「君」を支えよう、尽くそうとする心情を見せるのも彼女らしい部分です。
 「君」が笑う、『その為には 空も/飛べるはず』。どんなことでも『ねぇ ちゃんと 解っているつもりだから…』と、この「わかっている」という言い切りじゃなく「そのつもり」くらいの感覚が、気持ちの真摯さを感じさせるポイントになっていたりしますね。

 ただ今回は、過去への感傷が少なめです。『変わったものは 一体 何だろう』と一応今までについて振り返ってはいて、多少変わってしまっていくことについて想いを馳せていますが、『So... I'll be with you!!』と一緒に進んでいくポジティブさに結びついていきます。
 過去の傷とか辛い思い出とかは出てこないので、切なさ成分が控えめです。なんか浜崎あゆみというとそういう感傷があるものという感覚なんですけど、それはさすがに偏見か。
 今回は久しぶりのシングル、しかも夏の曲でアッパーで、ということで前向き度合いを重視したのかもしれませんが、もしかしたらちょっと変化が出てくるかもなあと思いました。
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2007年10月12日

ポルノグラフィティ「リンク」

リンク
リンク
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ak.homma Porno Graffitti ポルノグラフィティ 岡野昭仁 新藤晴一
SME Records (2007/07/18)
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<曲とも連動しての、すっきり筋の通ったメッセージ展開>

 ポルノのデビュー以後、シングルA面曲の大半はギター新藤晴一が作詞を手がけたものでした。ボーカル岡野昭仁も、これまでの活動の中でかなり多くの曲を作詞作曲しているものの、A面でリリースされたのは「音のない森」「ROLL」(「ネオメロドラマティック」と両A面扱い)そして「Winding Road」の3作のみです。

 新藤晴一作詞の楽曲の多くはプロデューサーのa.k.hommaが作曲しています。a.k.homma楽曲は、メリハリがはっきりしていて、展開が速く、どこかオリエンタルな哀愁を含みつつ、キャッチーなメロディラインをしています。そうした要素が、歌う岡野昭仁の声質と合っているんですよね。おそらくはやはりプロデューサーとしての客観的な視点から、意図的にボーカルとの相性・キャッチーさを取り入れて作っているんだろうなあと思うのです。

 一方、岡野昭仁は詞と曲の両方を自ら手がけることが多く、そのせいもあるのか作風もシンガーソングライター的なものが多いように感じます。すなわち、自問自答の中で答えを見つけていく…というスタイルですね。
 ボーカル自身が作る曲というのは、やはり本人の歌いたい、主観的なメロディラインになるもの。特に今作では、語られるメッセージに合わせるかのように、楽曲の展開が工夫されているように感じます。

 ロックにうねるイントロから、そのままのテンションでなだれ込むように早くまくし立てられるAメロ部分では、「疑問」や「世界への皮肉」といった、マイナスの内容が語られます。愛し合う二人が、互いに互いを求め合いながらも『それでも嘘だの まがいものだのって/手探りを繰り返すことに意味があるのか?』とつぶやいてみたり『流した涙も偽物とされてしまう』と嘆いてみたり。
 もちろんそれらは、伝えたいメッセージへの伏線になっています。『体も心も知っているんだ』という短いフレーズから、世界は変わり、ぐっと緩やかで広がりのあるサビに突入すると、そこにあるのは疑問への強い答え。『真実はこんなにも「ぬくもり」を持っていて』と、思い悩む必要はない、この重ね合った手に感じるぬくもりを信じればいいんだ…というメッセージに落とし込んでいくわけです。

 「辛いこともある」→「でも大丈夫だ」この流れは、メッセージソングにおいては基本とも言えるもの。それを忠実になぞっているなあ、とこの曲の詞を読むと感じます。しかも、1コーラス・2コーラスのメロ→サビで、それぞれふたつの流れをきちんと作っているっぽいですし。

 さらにラストのリフレインでは、「でも大丈夫だ」からもう一段階先「だから前に進んでいこう」というところまでメッセージを進めていくようになっていまして。作詞のお手本になるような、すっきりした流れが作られているなあと。

 メロディラインやアレンジといった音の部分もまた、詞の展開に寄り添うように作られているわけで。総じて、たいへんまとまりを感じる一作になっています。
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2007年10月10日

KREVA「くればいいのに feat.草野マサムネ from SPITZ」

くればいいのに feat.草野マサムネ from SPITZ
KREVA 草野マサムネ
PONYCANYON INC.(PC)(M) (2007/06/20)
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<コラボパートナーを選んだ意図と意義>

 KREVAのニューシングルは、なんとスピッツのボーカリスト・草野マサムネとのコラボレーション。これはかなり意外な組み合わせでした。

 KREVAは、「音色」のように印象的なトラックを生み出したり、かと思えば「国民的行事」のように思いっきりクラシックをサンプリングする無茶さとユーモアがあったり、何かと面白い活動をしている人で。インパクトのあるトラック作りにしてもユーモアにしても、きっと本人の中にエンターテイナー精神が息づいているからなんだろうなーと思ったりします。

 今回なんかまさに、彼の持ち前のエンターテイナー精神が発揮された内容。
 まずビッグネームとのコラボという話題性。そして、「くればいいのに」なんていう、自分の名前にかかったタイトル。そして哀愁の漂うトラック…
 彼はどこか歌謡曲的なセンスもあり、マサムネパートのメロディラインなんかは、実に日本的な哀愁メロディだと感じます。

 HIPHOP系の人のコラボ楽曲って、女性と組むパターンのほうが多いイメージがあります。ここに考えられる理由はふたつ。ひとつは、男性視点と女性視点の掛け合いができて、多層的な歌詞世界を作ることができるという利点があること。そして、ラップで畳み掛ける/滔々と語っていく男声ボーカルと、起伏あるメロディラインに乗って豊かに歌う女声ボーカルという対比を際立たせ、楽曲のトーンのバランスをうまく配分することにも役立っているということです。
 草野マサムネの声は、ハイトーンでも決して熱を帯びすぎない特徴があります。なので、低めの声で淡々とつぶやくようなKREVAの声と、とても鮮やかな対比になっていまして。そういう点では、女声ボーカルと同様の対比効果が得られているんではないかなと。

 そのマサムネパートに乗る『逢いたいと思うその時には あなたがいない』という心情は、KREVAと同じ男性視点です。ラップパートでもひたすらにつぶやき積み重ねている「逢いたい」という心情を、思い切り出している印象になりますね。

 これが女性とのコラボであれば、ここにくるのは主人公が「逢いたい」と願う相手の女性からの「私も逢いたい…」というような返答、が妥当かつ効果的なところでしょう。しかし、同じ男性である草野マサムネが歌っていることで、別視点からの見せ方ができない代わりに、同じ視点からの同じ感情を別の形で表すことができているわけなのですね。

 ということで、草野マサムネの起用には、女声ボーカル的な対比効果+同じ男性としての視点の共有、という二つの効果があるわけなのです。
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2007年10月09日

東京事変「OSCA」

OSCA
OSCA
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東京事変 浮雲 伊澤一葉 椎名林檎
TOSHIBA-EMI LIMITED(TO)(M) (2007/07/11)
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<楽曲製作の広がり、曲世界の広がり>

 東京事変の久々の楽曲は、中心人物・椎名林檎ではなくギタリスト浮雲の作詞・作曲によるもの。なんでも、椎名林檎の意向として特に曲に関しては他のメンバーが作ったものを使用していきたい、ということらしく、最新3rdアルバム「娯楽(バラエティ)」では一切曲を書いていなかったりしますし。
 確固とした世界観を持ち、かつ病的なほど凝り性の椎名林檎ですが、楽曲を自分のみならず他人に任せるというのは、あえてハードルを上げたかったのか、メンバーを信頼しているからか、それとも自家中毒に陥らないように新しさを求めたのか。個人的には、自分だけでなく複数の人間で世界を構築したいという気持ちが強まったのかなあ、という想像をしています。そもそも、あえてソロからバンドに活動をシフトしたのも、より刺激しあう環境を作りたかったのでしょうし、そういう気持ちが強まったのかなと。
 で、こちらの楽曲ですが、なんだかんだで椎名林檎的な性質を感じるというか、パッと聴きでそんなに違和感はありません。まあ、わざと濁らせるアクの強い歌い方や、鋭利な音作りをするバック陣が健在なのでそう感じやすいという点はありますが。曲の途中でテンポが上がってラストは疾走と、また今回はやたらと攻撃的です。

 内容は、ちょっと難解ですが、おそらくは男女間の駆け引きを軸にしているんじゃないかなと。で、特に『実は腹の下』とか『異種なら交配』とか、肉体関係を示唆すると見られるフレーズが多いです。『嗚呼 疑わしい無罪 そのデバイス』というのも、「デバイス」っていうのは「接続」する機器ですからね。
 男女関係を複雑な言葉や言い回しで描くのは椎名林檎の作風でもありますが、彼女の場合はもっと情念的で生々しさや張り詰めた雰囲気を出してくるもので。『底無しで癒えない 嬲ろうか』なんて言い方とか韻とかは林檎的。ただ、『なけなしの羽振りで揺さぶろうか』『ノンケだしもう摂理で動くのだ』とかその辺りのフレーズは、どことなくユーモアというか、ひょうきんな匂いがします。駆け引きを描いているので緊張感はあるものの、軽さもあるんですよねー。
 これはつい出てしまった書き手の特性なのか、それとも林檎本人のパロディ的な感覚で書いたのか。そういう感覚がテーマに据えられているのかもですが、それだったらやっぱり今までの林檎にはない要素で、新鮮ですね。

 OSCAというのは、スポーツカーの種類だそう。とすると、「DS」はシトロエンDS、「ALFA」はアルファロメオのことでしょうか。スポーツカーはよく女性に喩えられたりしますし、ここでもそういった使われ方とみても問題なさそうです。
 タイトルにこうした現実的なモチーフを採用するのも、林檎にはない傾向ですよね。
posted by はじ at 03:13| Comment(2) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(た行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月08日

メルマガ、Vol.118発行。

メールマガジン≪現代ポップス雑考。≫
Vol.118 2007/10/08 発行部数:めろんぱん 442/まぐまぐ 150

<雑考バトン:新曲レビューリレー>
秦基博「青い蝶」
 〜既存路線のミックス系がいい?

<新着レビュー>
SOPHIA「青空の破片」
 〜もっとも深い「愛」の形とは

<年間チャートより抜きレビュー>(2003年)
中島みゆき「地上の星」
 〜広い世代からの長い支持


 年間チャートより抜きレビューのコーナーですが、当初は3〜5曲くらいと言ってたのになかなか絞れません。1年ごとにピックアップする曲、もう少し増えそうな感じです。まあ、なんとなくそうなりそうな気はしていましたが…


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posted by はじ at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | メールマガジン。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月07日

過去ログ発掘のコーナー その25。

 メールマガジン「現代ポップス雑考。」のおまけコンテンツ「今日の一曲」。
 毎回そのときの気分で一曲選んで紹介するこのコーナーのバックナンバーから、新しいレビュー更新が滞ったとき、ちょこっとずつ抜き出して紹介していきます。メルマガを読んでいない人にはちょっとした暇つぶしに、読んだことのある人にも何か新たな発見があれば幸いです。



≪現代ポップス雑考。≫ Vol.068 2006/10/09
#コブクロ「毎朝、ボクの横にいて。」

 『たぶん君は見飽きているのでしょうが/もぉ少し どうぞ お付き合い』


 実家に帰ってみたら、妹がコブクロの2枚組ベストアルバムを購入していたので、聴かせてもらいました。

 コブクロって、けっこう具体的な描写の曲が多いんですね。「君」の仕草や言葉をはっきり描いている、明確なキャラクター付けのある曲、ベスト収録で言えば「雪の降らない街」「blue blue」など。
 ただ、ヒットに繋がった曲はどれもわりと抽象性の高い曲ばかりで、どっちがいいってわけじゃなく今の時代はそういうほうがやっぱり好まれているのかなあ、と思ったり。

 で、今回の一曲はその中から、所ジョージとタッグを組み「トコブクロ」としてリリースした一曲のセルフカバーで、アコギ中心のシンプルな弾き語りバージョンになっています。吉田拓郎みたいな字余りの、メロディを崩した歌い方をしています。それでもきっちりコーラスが同じリズムでハモっているのは、感嘆するべきか、それって崩した歌い方とはちょっと違うよなあとツッコむべきか。

『思い出はなし出すなら 今以下の事をネ/今以上のものなんか 聞いててかったるい』みたいなチクッとした毒っ気は、このコブクロバージョンではすっかり中和されて穏やかな言葉になってしまっているような。ちょっと物足りないような気もしますが、何でもない日常を賛えるという側面は原版よりもより強まっているように感じます。


ALL SINGLES BEST (通常盤)
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コブクロ
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 コブクロって、フォーク系サウンドのわりには力のこもったドラマティックな作風なので(最近は特に)所ジョージの肩の力の抜けたこの雰囲気っていうのは、別の魅力も提示できるいいコラボだったなーと思います。
 CMの企画ユニットとしてだけでなく、たまーに活動してみてほしいなあとちょっと思っています。
posted by はじ at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 過去ログ発掘。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月06日

スキマスイッチ「マリンスノウ」

マリンスノウ
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スキマスイッチ
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<その海を満たすのは、「絶望」ではなく「喪失感」>

 すっかりベテランの風格も漂いつつあるポップス職人ズのこの夏のシングルは、熱さのない、淡々と傷心の胸のうちを描いていくミディアムナンバーでした。

 彼らの楽曲における詞世界は、どれもきちんと計算されたうえで構築されています。今回も例に漏れず、『君のいない海で生きていこうとしたけど 想い出の重さで、泳げない』なんていうキラーフレーズを中心に、「君」を失ってからの悲しみを、海に沈んでいくさまになぞらえて、全体をそのテーマでまとめ上げています。
 一緒にいるのが当たり前だった「君」…というありふれた素材も、『空気みたいだと思っていた 失くしたら息苦しくて』と「海に沈んでいく」イメージに合わせられ、そのぶん斬新さも感じられます。こういう点、巧いなあと感心してしまいます。

 ところで、「君」を失ってしまった主人公を包んでいるのは、途方もない喪失感です。『感覚が鈍っていく 何も聴こえない 目を閉じてるかもわからない』と、どんどん閉じた世界へと進んでいく。それが、暗くて遠い「深海」へ沈んでいくというように表現されているわけです。
 海に沈んでいくような喪失感。こうした描き方は、ちょっと気になるところです。
 『溺れてしまうのかなぁ』という思考がありますが、かなぁということは溺れているわけではない。『藻掻けば絡まり』ともあるけれど、曲からは、あまり激しくもがいて絡まっている感覚は漂ってきません。絡まるからもがかない、くらいの印象。
 激しく抵抗するのではなく、『体がただ沈んでゆく』。
『群青に染まっていく』ようにじわじわと、『涙も叫びも深海がさらっていく』。重く苦しい想いは、静かに淡々と深まっていくのですね。

 曲調も、哀しさや絶望がどーんと主張されるようなものではないです。スキマらしいきめ細やかなアレンジで、激しさはなくむしろ盛り上がり過ぎないようにしているんじゃないかくらいの抑制を感じます。ここにも、「深海に沈んでいく」ような「喪失感」を描こうとする意図を感じるのです。

 諦めきれない気持ちは、しかし外には向かわず、ひたすら内側でくすぶり続ける。もう一度会いにいくとかたまらずに叫びだすとかといったアクションには移さないけど、ひとりいつまでも感傷に浸る…
 激しく苦しみもがく絶望ではなく、ひとりいつまでもひっそりと抱え続ける。これが、現代の若者の感覚に沿っているんだろうなあ、という印象を受けました。続きを読む
posted by はじ at 12:26| Comment(1) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(さ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月04日

Golden Circle feat.寺岡呼人「ミュージック」

ミュージック
ミュージック
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Golden Circle feat.寺岡呼人/松任谷由実/ゆず 松任谷由実 寺岡呼人 ゆず 桜井和寿 上杉洋史
トイズファクトリー (2007/07/11)
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<「音楽」というモチーフの特性を生かした王道シチュ>

 ゆずとユーミンの夢の共演!…というのは実は本質ではなくて、このドリームチームの中心にいる人物は寺岡呼人です。1980年代後半に一大人気を得ていたJUN SKY WALKER(S)メンバーで、今は主にプロデューサーとして活躍している人物。ゆずとはもうずっと組んでいますし、一緒にThe Little Monsters Familyというユニットを結成して「星がきれい」なんて曲をリリースしたりもしています。
 で、このGolden Circleは、もともとは寺岡呼人のライブイベントの名前。その人脈と人望によるのか、毎回とにかく豪華な面々が参加している模様です。
 Golden Circle名義で楽曲をリリースするのも初めてではないですが、今回はいつものゆずにユーミンが加わり、さらには作詞だけではありますがミスチル桜井も参加するなど、過去最大クラスに豪華な面子になっています。

 顔ぶれはゴージャスですが、楽曲そのものは奇をてらわないポップなサウンド。歌詞に描かれているのも、壮大すぎないシチュエーションだったりします。
 ラジオから流れてくるのは、「君」とともにいた頃に聴いた思い出の曲。そして、二人の日々を思い出す…

 ここで語られている『忘れられぬミュージック』は、『眩しすぎる恋が この曲には全てこめられてる』とあるように、まさに「僕」と「君」の日々そのものとして扱われています。隠喩と言ってしまってもいいくらい。
 こうした手法は、ストーリーを描く際の王道テクニックだったりします。モチーフがたとえば「音楽」ではなく「花」だったら、あの季節が来て花が咲くたびに思い出す…という展開になります。「海」「公園」などの場所、「雪」「夕焼け」などの自然現象、もっと直接的に「写真」をアルバムに見つけるとかっていうのも考えられますね。

 その中でも「音楽」は、「他の人と共有することができる」という特性を持ったモチーフです。歌詞中でも『君みたいな人じゃないかな 匿名希望のリクエスト』と、「君」と「僕」だけじゃなく、別のカップルを想像し、世界を広げていたりしますね。
 そして、形のないもの。不定期に耳にするもの。そして、なくならないし色あせないもの。「あの曲」=「君との思い出」は、「僕」にとってそんな存在なのですね。目には見えないけどなくなってはいない、ふと思い浮かんでは、まったく変わらずに記憶の中に残っている…『もう誰も 愛せはしないと思う事がある』とも言ってのけていますが、それだけしっかりと残り続けるものとして描かれているわけです。

 この楽曲は、桜井和寿を含めた参加メンバー全員共同で作り上げたそう。なので、シチュエーションや言葉遣いはそれほど個性的に尖っているものはありません。でも、「音楽」というモチーフがしっかりと広げ噛み砕かれていて、真摯に作られているなあという印象を受けました。
 詞は誰らしいということもなく平易ですが、メロディラインはシンプルさがユーミンぽいなあという気はします。ゆずだったら、桜井和寿だったらなおさらですが、もっとリズムが細かく揺れるようなものになってくるよなあ、と。まあ、歌う際にわざと平べったくしているのかもですが。
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2007年10月03日

w-inds.「LOVE IS THE GREATEST THING」

LOVE IS THE GREATEST THING
LOVE IS THE GREATEST THING
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w-inds. shungo. Koma2 Kaz Izumi Arisato
PONYCANYON INC.(PC)(M) (2007/07/04)
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<カッコイイ「カッコ悪さ」を描く>

 作詞shungo.とのタッグもすっかり定着したw-indsです。なんというか、彼らのスタンスというのはまさにこの詞に象徴されているなあ、という気がするんですよね。

 『No…!! まだこっそり悩んで/いい加減に行動起こそうとしてた』
 悩んで、適当な生き方を選ぼうとしてしまうような弱さを自覚し、赤裸々に曝け出す。いい部分だけを見せるんじゃなく、悪い部分を見据えようとする、「等身大」な視点がここにはあります。
 その一方で、「No…!!」だったり、「行動」と書いて実は「アクション」と読ませていたり、という表現の装飾もかなりあります。英語も多用していますし、フレーズそのものは決して地味ではありません。
 『ただ待ってた…奇跡を/そんなんじゃ夢だって見れない』なんてのもそうです。待っているだけじゃダメだ、という過去の自分への辛辣な想いを吐き出しているところなんですが、「奇跡」は「Miracle」と歌っていまして。起こす時ならともかく、否定するときにこういう当て字をするのはどうなのかなーと思っちゃったり。

 こういう書き方を見て思うのは、「カッコ悪さ」というのは今や「カッコよさ」の一部分なんだなあ、ということです。
 どこからどう見ても欠点がない、ウジウジな悩んだりしないしいつでも前向き、そんな一面的な強さというのは今、あまり描かれません。むしろ、誰にでも弱い面はあるという前提のもと、そうした「弱さ」をはっきり認め、受け入れ、曝け出すほうがずっと強いんだ、というような空気があります。等身大視点で、「カッコ悪さ」をあえて描き歌うことが「カッコよさ」になるんですね。
 この曲の場合、自分の弱さを認め『君が僕を変えた』と「君」に救われ強くなっていこうとするさまが綴られています。そのプロセスは、まさに「カッコ悪さ」を「カッコよさ」として描くやり方です。しかも非常に自覚的だなあと思うのは、うまくいかない日々、やる気のない自分を描くときさえ『諦めたり…尽くせぬベスト』と、ちょっと飾った言い方にしているのですね。弱音や葛藤さえも「カッコいい」と受け取られるはずという自信、あるいは受け取らせようという意図がなければ、こういう書き方はできないよなあと。

 ところで、超ハイトーンが彼らの楽曲の特徴ですが、今回はその中でも特に高い。コーラスはさらに高いところで歌っているので、これはもう明確に高く高くと意識して作っていると思います。
 正直、血管切れるんじゃないかとハラハラしてしまうくらい苦しそうなんですが、大丈夫でしょうか。
posted by はじ at 23:24| Comment(3) | TrackBack(0) | J-POPレビュー男性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月02日

ERIKA「FREE」

FREE
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ERIKA 白鳥マイカ COZZi 安原兵衛 KENN KATO
ソニーミュージックエンタテインメント (2007/07/04)
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<別人扱いにすることで、キャラクターを独立させる>

 「フランス出身の新人アーティスト」としてデビュー、オリコン1位を獲得し颯爽と表舞台に現れた期待のニューカマー…という扱いですが、「沢尻エリカに激似!」どころじゃなく本人です。
 覆面での活動というならあんまり野暮なことは言わずにおこうかとも思うんですけど、誕生日などの公開プロフィールも同じだし、あんまり別人だと言い張るつもりは初めからないような感じです。事実上、別名義での歌手活動ということになるのでしょう。

 で、なんでわざわざ別人という見せ方をするのか。もちろん、「話題性」という点も大きいでしょう。もともとは清純派な役柄で出てきたのに、いつの間にか芸能ニュース常連、何かとお騒がせキャラで通っているみたいですし…あえて話題を作っているような面はあります。でもただ話題づくりというわけではなく、そういう彼女自身のキャラクターと切り離したかった、という意向もあるのかなあ、と思うのです。
 今回のこの曲は、ロック系サウンドに乗せ、『答えがあるから 今を生きてる/守りたいものが ここにある』と、純粋な想いをつづった内容。Kaoru Amane名義で出した「タイヨウのうた」とも違う方向性ですし、彼女自身のこれまでのキャラともちょっと違います。そもそも、一人称は「僕」ですしね。

 思うに、この「ERIKA」という設定は、何かとスキャンダラスな存在になった沢尻エリカ本人とある程度切り離して見せることで、音楽は自由にあれこれやっていきたい、自由に聴いてもらうようにしたいからこそのものなんじゃないでしょうか。
 たとえバレバレでも、別人として主張することで、「こんなの沢尻エリカらしくない!」という批判を封じ込めることができる…と言うと、わかりやすいですね。

 そういう意味では、作品中で演じた役柄名義でリリースした前作とはだいぶ意味合いが違ってくるのかなと。どちらかというと、DJ OZMAなんかと近そうです。あれも、氣志團ではできないディスコサウンドをやるには、本人そのままではなかなか難しい面があったでしょうから…
 特に今回なんか、『君がいるだけで 僕は飛べるよ』『失ってきたもの 手にしたもの/全部抱いて 走る』など、歌詞に描かれているのはとてもピュアな感覚です。こうした内容を効果的に演出するには、「あの人気女優が歌っている!」というよりも、「彗星のごとく現れた無名の新人歌手!」のほうが似合っている、ということもあるでしょうから。

 それにしても、2003年柴咲コウのRUI「月のしずく」以降、架空の設定でのリリースが増えてきています。フィクションが身近になった、楽しめるようになったという聴き手側の心理も背景にありそうです。
posted by はじ at 01:49| Comment(0) | TrackBack(0) | J-POPレビュー女性(あ行) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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