平井堅 亀田誠治 中西康晴 HALFBY
DefSTAR RECORDS (2007/02/28)
売り上げランキング: 8056
DefSTAR RECORDS (2007/02/28)
売り上げランキング: 8056
<ただ列挙するだけじゃない、より深く印象付けるためのテクニック>
本格男性R&Bシンガーから、最近はすっかりポップス職人に移行しつつある平井堅です。今回のこの曲は、なんというかまさにJ-POPど真ん中とでも言うべきポップさに溢れた一曲になっているなあと。
列挙、というのは非常にシンプルかつ効果的な表現手法です。たくさん重ねれば重ねるほど、気持ちの強さがそこに立ち表れてくるのですね。この曲の場合は、タイトル通り「君の好きなとこ」を列挙して、それだけ好きだという感情を強く伝えられているわけです。
こういう風に「君」の特徴を挙げていくのは、パッと思い浮かぶところではMr.children「over」とかでしょうか。こちらはもう会えなくなった「君」のことを幾つも思い出すことで、失恋後も引きずっている思いの深さを表しているのですね。
この手の「過去」を列挙する歌は、特に感動を与えやすいもので。卒業式の答辞で、「みんなで行った遠足」「クラス一丸となった運動会」…とか、行事の数々を振り返っていく時って、やっぱり泣きどころじゃないですか。
なのですが、現在進行形の恋人の好きな部分を挙げるこの歌も、ただ列挙するだけでなく、ひとひねりを加えることで印象を深めていたりします。それは何かというと、『いざ目の前にすると 何も言えなくなってしまう』ってことでして。
サビ前半を丸々、2コーラスさらにリフレインに至るまで同じフレーズを繰り返さず(ここに、列挙の手法を最大限に活用しようとした意図が見て取れます)多数挙げて、こんなにも「僕」は「君」のことが好きなんだ、と訴えかけてきながら、実際に会ったら『一つも言葉に出来なくて』…ただ好きだという感情をまっすぐにアピールするのではなく、そこに「うまく言えない」という逡巡を付加する。そうやって、じれったさやもどかしさといった心のひだをくすぐる感情を混ぜ込み、そしてまた、「うまく表せないのは、本当に好きだから」というような主張も暗に潜ませることができているのですね。
実際、好きなのにうまく「好き」と伝えられないというのは、共感する人も多いことでしょうしね。『困った顔 見たくて いじわる言ってみる』なんて辺りも、特に男子連中にとっては、わかるなーとうなずける人ばかりなのではないかなと。続きを読む